ログリッチがトーマスから3秒奪って最終決戦へ…ジロ・デ・イタリア

第106回ジロ・デ・イタリアは5月26日、ロンガローネ〜トレチメディラバレド間の183kmで第19ステージが行われ、バーレーン・ヴィクトリアスのサンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア)が独走して、2022年に続く大会通算2勝目を挙げた。

コロンビアのサンティアゴ・ブイトラゴが天王山で独走勝利 ©Marco Alpozzi/LaPresse

総合優勝争いは首位ゲラント・トーマス(英国、イネオス・グレナディアーズ)と2位プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)が3位ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)を突き放してゴール。

2023ジロ・デ・イタリア第19ステージ ©Fabio Ferrari/LaPresse

ログリッチがゴール前でトーマスに3秒差をつけ、総合成績の差を29秒から26秒にして最後の山岳タイムトライアルに挑む。

ブイトラゴは2022年に続くジロ・デ・イタリア通算2勝目

トレ・チーメ・ディ・ラヴァレドはイタリア北部のドロミテ山塊にある象徴的な山岳だ。トレ・チーメはイタリア語で「3つのピーク」という意味を持つ岩山群で、最も高い真ん中のチーメは標高2999mだ。今回のゴール地点はそのトレ・チーメの麓にある道路で、標高2304mまで駆け上がる。

第13ステージで通過する予定だったグランド・サン・ベルナルド峠(標高2469m)が想定外の大雪と雪崩の危険性があるとしてカットされたため、大会最高峰の特別賞が懸かるチーマ・コッピはこのトレ・チーメ・ディ・ラヴァレドに変更された。

コースは中盤から2級、1級、1級、2級の山岳ポイントを越え、1級カテゴリーのトレ・チーメ・ディ・ラヴァレドにゴールする。獲得標高はなんと5400m。まさにクイーン・ステージと呼ばれるにふさわしい舞台だ。

総合優勝争いは前日の第18ステージで変化があった。1分にも満たない変化だが、終盤戦になってもこれだけ接戦を展開している今大会だけに、かなり大きな局面転換だ。18秒遅れの総合2位でマリア・ローザに届く位置にいたジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)が、総合1位ゲラント・トーマス(英国、イネオス・グレナディアーズ)、29秒遅れの総合3位プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)の2人から遅れを取ったのだ。

第19ステージのスタート時点でマリア・ローザはトーマス、総合2位に浮上したログリッチが29秒遅れ。総合3位に下降したアルメイダは39秒遅れだった。今大会の総合優勝争いはすでにこの3選手に絞られたといってもいい。

2023ジロ・デ・イタリア第19ステージ ©Marco Alpozzi/LaPresse

レースは快晴の中で125選手がスタートした。イスラエル・プレミアテックのデレク・ジー(カナダ)らが38km過ぎに仕掛けると、EFエデュケーション・イージーポストのマグナス・コルト(デンマーク)らが加わり、第1集団が形成された。ブイトラゴはメイン集団から抜け出して、57km地点で合流し、15選手の逃げが始まった。

176km地点でトップに立ったのが、今大会で積極的な走りを見せるジーだ。これを追ってブイトラゴが単独で追走集団から抜け出した。そしてトレ・チーメ・ディ・ラヴァレドの残り3kmでブイトラゴがジーを逆転。最後はブイトラゴがジーに51秒差をつけてフィニッシュした。ジーは今回の3週間で4回目の2位となった。

34年前の1989年ジロ・デ・イタリア、トレ・チーメ・ディ・ラヴァレドでは、コロンビアの伝説的ヒルクライマー、ルッチョ・エレラが優勝している。コロンビア勢が初めてステージ優勝したのはちょうど50年前のチョザス・ロドリゲスで、通算34回目の勝利となった。

「トレ・チーメ・ディ・ラヴァレドは、このジロ・デ・イタリアで最も重要なステージだ。ここでソロで勝つことは素晴らしい。勝つための脚があることは知っていたが、ハードな走りを余儀なくされた。有力選手を含むプロトンが後ろでなにをしているのかを理解するのは困難だった」とブイトラゴ。

「ジロ・デ・イタリアの前にたくさん働いてきたから、この日勝つことは僕にとってとても大事なことだった。これからは自分自身の走りをさらに改善していきたい。いつの日か総合成績で最高位を争える日が来ることを願っている」(ブイトラゴ)

ログリッチとマリアローザのトーマスが総合3位アルメイダを置き去りにする ©Fabio Ferrari/LaPresse

一方のマリア・ローザ争いは、ステージ優勝を狙うグループとは別の熾烈な戦いを繰り広げていた。最後のトレ・チーメ・ディ・ラヴァレドではトーマス、ログリッチ、アルメイダの3選手が残してきたパワーを出し合った。

ログリッチは残り2kmで仕掛けて、トーマスの反応を見た。さらに残り500mでアタックしたが、ライバルを引き離すことはできなかった。しかしフィニッシュ目前の50mでトーマスに余力がなくなった。ログリッチは先行していたコルトを追い抜いて3着のボーナスタイムを獲得することはできなかったものの、最後の瞬間にトーマスとの差を広げ、貴重な3秒を獲得。総合成績でログリッチはトーマスとの差を29秒から26秒に縮めた。

わずかな差ではあるが、これが翌日の山岳タイムトライアルでどうなるかは、24時間後でないと評価することはできないはずだ。

最大のニュースはアルメイダが再びわずかに離されたことだった。アルメイダはログリッチに23秒、トーマスに20秒の差をつけられてしまった。最終日前日の個人タイムトライアルは総合成績でトーマスから59秒遅れ、ログリッチから33秒遅れでスタートすることになる。

59秒という差は記憶に新しい。2020年ツール・ド・フランスの最終日前日、ラ・プランシュ・デ・ベルフィーユで山岳タイムトライアルが行われたが、前日まで57秒遅れの総合2位につけていたタデイ・ポガチャルがログリッチを逆転。終わってみれば59秒差をつけてトップに立ったのである。

3年前の夏、ログリッチは最終日前日にマイヨ・ジョーヌを失ったことを忘れることはないだろう。

ゴール前でログリッチがトーマスに3秒の差をつけた ©Massimo Paolone/LaPresse

山岳ステージでマリア・ローザを死守したトーマスは、まずは安堵の言葉を発した。

「タフな1日だったが、アシストたちが本当によく走ってくれた。UAEチームエミレーツかユンボ・ヴィスマの選手がステージ優勝を狙うかもしれないと予想していたが、それは実現しなかった。

登りの多い長いレースだった。残り400mを走っているとき、フィニッシュまではまだ遠いと気づいたが、ジョアンからタイムを稼ぐことができたのでよしとした。明日のためにパワーをセーブすることにした。明日のレースは、今日の最後の500mよりも自分に合っていると思う。だから自分のことに集中して、できるだけ速く走ることをこころがけたい」

バーレーン・ヴィクトリアスの新城幸也は、チームメートの勝利から43分20秒後、他のチームメート2人とポイント賞ジャージを着用するジョナサン・ミラン(イタリア)をアシストしながら一緒にフィニッシュ。制限時間内にミランをゴールさせたことで、ポイント賞の獲得に大きく前進した。またチーム賞も1位を守った。新城の総合成績は5時間08分37秒遅れの122位。

第20ステージは個人タイムトライアル。しかも距離18.6kmで、標高752mから1766mまで上り詰めるヒルクライムだ。

新城は全体の4番目、11時33分(日本時間で18時33分)に出走する。トップ3はアルメイダが17時08分(日本時間で深夜零時08分)に、その3分後にログリッチ、さらに3分後にマリア・ローザのトーマスがスタートする。果たして総合優勝の行方は?

マリアローザを死守したトーマス ©Massimo Paolone/LaPresse

●4賞ジャージ
マリアローザ(個人総合成績)ゲラント・トーマス(英国、イネオス・グレナディアーズ)
マリアチクラミーノ(ポイント賞)ジョナサン・ミラン(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)
マリアアッズーラ(山岳賞)ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)
□マリアビアンカ(新人賞)ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)

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