ターマックSL8は前モデルと比較して距離40kmで16.6秒短縮できる

スペシャライズドが2023年8月7日、新型ロードバイクTarmac(ターマック)SL8を発表。空力性能、軽さ、ライドクオリティーをこれまで不可能とされてきたレベルで達成し、先例のないスピードを実現させた。

科学好きのエンジニアたちがターマックSL8を作り上げた

20年以上の開発を重ねて第8世代となったSL8は、Tarmac史上最速なだけでなく、世界最速のレースバイク。日本での販売開始は8月18日を予定。S-Works Tarmac SL8 – Shimano Dura-Ace Di2は179万3000円(税込み)、SRAM Red eTap AXSは173万8000円(税込み)。

Made in Racing…世界最高の選手と協業するレース現場での開発が強み

空力性能 x 軽量性 x ライドクオリティー = 速さ。3つの要素をこれまで不可能とされてきたレベルで達成し、世界最速のレースバイクとして誕生したのがTarmac SL8。前モデルのTarmac SL7を基準として、距離40kmの走行では16.6秒を、ミラノ~サンレモでは128秒を、ツールマレー峠頂上までは20秒を短縮。

ターマックSL8

エアロなだけ、あるいは軽いだけではレースに勝てない。速さが重要だからだ。その速さを実現するには、空力性能、軽量性、剛性、そしてコンプライアンスのどれにも妥協をせず、そのすべてを高いレベルで融合させる必要があったという。

すべてをエアロにした世界最速のレースバイク

同社風洞実験施設Win Tunnelでの試行錯誤を重ねて10年。エンジニアたちは一歩先の空力デザインを先駆けて取り入れられるよう、空力に関するすべての理解に努めていた。見た目をよくするだけでなく、実際に効果のある部位の空力性能を高めている。その過程で完成したのが、あのVengeを超える、最も空力性能に優れたロードバイクだ。

2023ツール・ド・スイス第7ステージで優勝したレムコ・エベネプール ©Zac Williams/SWpix.com

平たい翼型断面のダウンチューブとシートチューブは、空力性能に優れていそうに見える。しかし、乱流に囲まれるため、空力的な効果はあまり見込めず、それどころか重量を増やし、乗り心地を大きく損ねる。そのため、風洞実験では空力性能にわずかに優れる結果が得られても、実際の走行では遅い。

開発目標はいたってシンプル。空力性能を過去最高のレベルにまで高めること、そしてパワーメーターやペダルなど、実際のレースに必要なコンポーネントをすべて備えたときに、UCI規則ギリギリの重量で組み立てられるようにすることだ。そのためにも、ダウンチューブ、シートチューブ、バイク後部の軽量化を最優先させながら、Aethos開発の経験を活かした。

空力性能、軽さ、ライドクオリティーをこれまで不可能とされてきたレベルで達成したターマックSL8

フレームの形状により負荷を効率よく分散させるため、余分なカーボンレイヤーで剛性を高める必要は皆無に。また、乱流発生部に平たいチューブを使って見せかけのエアロ形状を作らなければ、フレーム全体の表面積を減らして軽量化もできる。さらに、フロントローディング(前倒し)開発と呼ばれる新たなプロセスを利用し、デザインを繰り返しコンピュータ上でテストした。

こうしてチームは、Tarmac SL7より15%軽く、ワールドツアーに出場する他のどのバイクよりも軽い、わずか685g(S-Works)のフレームを完成させた。

Tarmacは、ライダーの意図をテレパシーのように汲む伝説的なハンドリング性能と爆発的なレスポンスにより、現代で最多の勝利数を挙げてきたバイク。最新世代となったTarmac SL8は、もっとも過酷な状況下で精確なハンドリング性能を、ペダルを踏み込んだ瞬間に迅速かつ効率的なレスポンスを発揮する。

デミ・フォレリングがターマックSL8に乗る

世界のトップライダーたちとの数十年にわたる協力関係から生まれたデータに基づき、この新型のために設定された、無謀とも言えるこれらの基準。開発チームは見事にすべての基準を上回るバイクを完成させた。ボトムブラケット、ヘッドチューブ、フロントエンドの剛性目標を驚異的な軽さとともに達成し、重量剛性比はSL7より33%向上している。

一方で、シッティングで感じられるコンプライアンスは6%向上。ピーキーな挙動のレースバイクが多い中、しなやかでバランスの取れた乗り心地を保ったまま、ひび割れや段差の多い舗装路の上を浮かぶように進み、コーナーに鋭く飛び込める。

2022年の世界チャンピオン、レムコ・エベネプール

新型Tarmac SL8のカラーとデザインは、アドレナリンが全身を駆け巡り、感覚が研ぎ澄まされるライド中の瞬間をヒントに、フレームにエネルギーと生命を吹き込む。可能な限り少ない塗料で重量を増やさずにそのような感覚を創り出すべく、チームは新しい塗装技術と顔料を開発。例えばStrata Redのフレームは、塗料をほとんど使用せずに優美な質感で動きを表現している。

上質な顔料を使い、端部をフェードさせることで可能な限り多くの色を取り入れると同時に、材質、顔料の配置、未加工のカーボンをベースにして驚異の軽さを維持。スペシャライズドの開発チームはこれらの技術をマスターするため、次々とフレームを塗装した。色彩豊かなのに軽量なフレームを作るのは簡単ではないという。 

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