2度のツール・ド・フランス個人総合優勝をはじめ、グランツールと呼ばれる3週間のステージレースを7回制覇したアルベルト・コンタドール氏(スペイン)が和歌山県を訪れた。11月6日と7日には熊野地域を来訪し、キナンサイクリングとの熊野路ライドを行ったほか、チームのメインスポンサーである「キナン」を訪問し、自身が2010年に設立した「アルベルト・コンタドール基金」をPR。キナンはその活動に全面的に賛同し、今後の取り組みに役立ててもらうべく寄付金を贈呈。
■キナンサイクリングと熊野路を駆ける
コンタドール氏の和歌山県訪問は、同県、和歌山県観光連盟、日本貿易振興機構(ジェトロ)和歌山の三者共同事業として実現。同県観光連盟によるサイクリング事業「WAKAYAMA800~サイクリング王国わかやま~」を実走し、同氏のSNSなどでサイクリングロードや観光資源、地場産業など、和歌山の魅力を世界に発信することを目的とした。
コンタドール氏は、1982年生まれの35歳。スペイン・マドリード近郊で生まれ育ち、2007年のツール・ド・フランスを初制覇後、2009年にも個人総合優勝。ツールとならびグランツールと称されるジロ・デ・イタリアでも2度、ブエルタ・ア・エスパーニャでは3度制覇。合計7度にわたるグランツール制覇の偉業を成し遂げ、2017年に現役を退いた。
アンバサダーを務めた「2018ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム(11月4日開催)」を終えた脚で和歌山県へやってきたコンタドール氏。和歌山市を皮切りに、各所のサイクリングコースをめぐり、そのよさを実感していた。
6日にはキナン選手とともに那智勝浦町・那智山をライド。チームからは椿大志、中西健児の2選手に、加藤康則ゼネラルマネージャーがアテンド。現役時代は山岳で数々の激走を演じたコンタドール氏は血が騒いだのか、スタートからハイペース。キナンメンバーも負けじと食らいつき、自然あふれる山道を駆けた。この日は、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」に登録され、日本三名瀑の1つに数えられる那智の滝にも足を運んだほか、神仏習合による数々の伝承が残る那智山の荘厳なムードを感じていた様子だった。
■コンタドール氏の活動に全面賛同のキナン
翌7日は、キナンサイクリングのメインスポンサーであるキナン本社(和歌山県新宮市)を訪問。コンタドール氏の兄であるフランシスコ氏をともない、自身が2010年に設立した「アルベルト・コンタドール基金(フンダシオン・アルベルト・コンタドール/FUNDACION ALBERTCONTADOR)」の活動についてPRした。
この基金は、サイクリングの楽しみを年代・性別問わず広めていくとともに、自転車を通じた青少年育成、2004年と2006年にレース中のコンタドール氏を襲った脳卒中の予防と啓発、古くなったバイクを修理し寄贈するといった目的のもと活動。また、若い選手たちの育成にも力を入れており、UCI(国際自転車競技連合)登録のコンチネンタルチーム「ポラテック・コメタ」は同基金が運営している。
同基金の代表であるフランシスコ氏は、これらの活動内容は世界共通の課題としてとらえているといい、今後は日本における協力体制も築いていきたいと述べる。この熱意に耳を傾けたキナン・角口賀敏会長は、同社の歴史とともに、自転車による地域貢献やツール・ド・熊野の主催、各種イベントの運営に力を注いでいることを説明。互いに、手を取り合って絆を深めていけるよい関係づくりを約束した。
そして、話はサイクルロードレースへ。日本とスペインそれぞれの競技の実情に触れ、キナンとコンタドール氏主宰の若手育成チームとがともに高めていくための意見交換を行った。フランシスコ氏からは、「ポラテック・コメタをツール・ド・熊野に参戦させたい」との声も。夢がふくらむ一言に、その場にいた関係者から歓声が挙がった。
話し合いを通じ、キナンはコンタドール氏の取り組みに全面的に賛同することを表明。角口会長と角口孝幸社長から寄付金を手交し、今後の活動に役立ててもらうこととなった。
■地元サイクリストからの大歓迎に笑顔
7日のお昼には「キナン研修センター」で歓迎パーティーを開催。同社関係者のほか、地元のサイクリストも招待し、盛大にコンタドール氏を迎えた。会ではバーベキューのほか、近くの海で採れた海の幸、寿司のふるまいがあり、コンタドール氏も箸を使う“日本式”で熊野の味に舌鼓。食事後には即席のサイン会や撮影会が催され、選手・関係者、そしてファンからも愛される同氏の人柄を感じさせる温かな時間となった。
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