3大ステージレース全てで区間勝利を挙げているグルパマFDJのティボー・ピノ(フランス)が、2023シーズンの終わりに引退すると報じられた。2010年にプロデビューした32歳。
ジロ・デ・イタリア(5月6〜28日)に出場する予定で、7月のツール・ド・フランスにも参加したいという。ラストレースは10月末にイタリアで行われるイル・ロンバルディア。
フランス人がツール・ド・フランス総合優勝を期待した逸材
ツール・ド・フランスの総合優勝者を国籍別に見ると、地元フランス勢が36勝で、2位ベルギーの18勝を大きく引き離している。ところが1985年のベルナール・イノーを最後にフランスから総合優勝者が輩出されていない。すでに38年になる。つまり38歳以下のすべてのフランス人は自国選手がパリでマイヨジョーヌを着用するシーンを目撃したことがないのである。
1990年生まれのピノもフランス人優勝者を知らない世代の選手だ。近年のツール・ド・フランスで国民の期待を受けて、外国勢に真っ向から戦いを挑んで敗れた。
英雄的存在だったイノー以来となる「強いフランス人の出現」をフランス国民はいつも待ち望んでいた。そんなときに頭角を現したのがピノだ。
2012年にピノはツール・ド・フランス初出場を果たした。山岳コースの第8ステージで、ピノが後続の大集団からわずかに逃げ切り初優勝。一躍フランスの新星となり、イノー以来の優勝を期待された。
翌2013年にピノは、山岳初日となるピレネーのポルトデパイエールからの下りで足がすくんで動かなくなった。これがスピード恐怖症だった。ピノはこの年途中リタイアするのだが、その後モータースポーツなどでスピード感を養い、現在は病を克服している。
2014年は総合優勝には絡めなかったが、激しい新人賞争いを展開し、ピノがバルデを抑えて獲得した。