自転車ショップはコロナ禍の移動手段を支援…事故増には警鐘

一般社団法人自転車協会が「緊急事態宣言発出による自転車販売店の状況と自転車利用時のお願い」を同協会ホームページに掲載した。加盟する自転車販売店が感染対策を実施しつつ、有効な移動手段となる自転車の販売や整備のために営業すること、利用者増による交通事故を抑えるために交通ルールとマナー遵守を呼びかけた。

新型コロナウイルスの感染は全国的に急激に拡大し、8月7日現在6都府県に「緊急事態宣言」、13道府県に「まん延防止等重点措置」が政府より発令され、先行きが不透明な状況に直面している。

不要不急の外出は自粛するようにと国や各自治体から要請が出ている状況だが、日常の買い物、通勤や通学、健康維持のための屋外での運動など外出が必要な場合もある。

その際、人との密を避けるための有効な移動手段として、自転車を新規に購入する場合や手持ちの自転車をメンテナンスして使用するなど、消費者のニーズに対応すべく、自転車販売店は来店者の感染リスクを最低限に抑えるような手段を講じたうえで営業を続けている。

「自転車でお困りの際は最寄りの自転車販売店にお気軽にご相談ください」と同協会。

一方、近年の自転車ブームに加えてコロナ禍による自転車利用者の急増で、事故も増加している状況だ。

「すべての自転車利用者におかれましては、自転車は道路交通法上の軽車両であるということを認識いただき、ルールとマナーの遵守をお願いするとともに、怪我をすることでひっ迫する医療機関に負担をかけないよう、乗車時にはヘルメットの着用、熱中症予防など安全への十分な配慮を重ねてお願いいたします」(同協会)

協会では、スポーツサイクル専門店のスタッフ(SBAA PLUS認定者)を対象にeラーニング形式でコロナ感染予防対策に特化した「SBAA PLUSブラッシュアップ講習」を実施している。2021年5月28日に閣議決定された「第2次自転車活用推進計画」で身体に合った自転車選びをアドバイスする人材としてSBAA PLUS認定者が取り上げられ、国も推奨している認定資格制度の普及の波をさらに広げていくために、認知拡大や資格の魅力・価値の向上を図る施策を引き続き検討・実施していきたいという。

●SBAA PLUSとは?

リチャル・カラパス…東京五輪の金メダリストのストーリー

エクアドルのリチャル・カラパス(28)が2021年7月24日に開催された東京五輪男子ロードで2位に1分07秒差をつけた独走を決めて金メダルを獲得した。隣国コロンビアは自転車強豪国として定着したが、エクアドル勢は今回のレースでもわずか出場2人の新興国。カラパスの大躍進が母国の自転車シーンに強烈なセンセーションを巻き起こしている。

自転車をするために家族とともに隣国コロンビアに移住

カラパスが生まれたエクアドルはコロンビアの南西にあり、南米大陸で人口第7位の国。コロンビアと同様にスペインの旧植民地で、言語はスペイン語。そしてどちらにもアンデス山脈があり、標高3000mを越える山岳地帯にも人々の営みがある。有酸素運動の高い能力を備えた逸材を輩出する環境がある。

カラパスがエクアドル選手として初優勝。2018ジロ・デ・イタリア第8ステージ © Gian Mattia D’Alberto – LaPresse

南米大陸で最初に自転車レースが盛んになったのはコロンビアだ。1983年、ツール・ド・フランスが例外的にコロンビアのアマチュア選手で構成されたナショナルチームを出場させた。翌年には国営企業のカフェ・ド・コロンビアをスポンサーにして、針金のように細い四肢のルッチョ・エレラが最難関のラルプデュエズでステージ優勝し、1985年と1987年には山岳王になった。多くの国民が熱狂し、子どもたちが自転車レースを始めたのは言うまでもない。

カラパスが2019ジロ・デ・イタリア第4ステージで優勝 ©Fabio Ferrari/LaPresse

一方、エクアドル選手のツール・ド・フランス初出場は2020年のカラパスまで待たなければならなかった。高地で生まれたカラパスの周囲には自転車文化がなかった。2015年に自転車競技の盛んなコロンビアに家族とともに移住した。U25ブエルタ・ア・コロンビアで総合優勝したことが欧州チームの目にとまり、2016年のシーズン途中からスペインのモビスターに研修生として加入。2018年のジロ・デ・イタリア第8ステージで、カラパスが残り1kmからメイン集団を抜け出して初優勝して脚光を浴びた。

エクアドル選手がグランツールと呼ばれる三大大会で区間勝利したのは初めての快挙だった。

マリアローザのカラパスとアシスト役のランダ。2019ジロ・デ・イタリア第20ステージ ©Fabio Ferrari / LaPresse

「ボクはジロ・デ・イタリアに初出場したエクアドル選手だけど、子どものころはこんなハイレベルのレースでこの位置で走れるなんて考えられなかった」とカラパス。

「母国に自転車文化がないのはちょっとさみしい。この勝利がきっかけとなって、エクアドルの子どもたちが自転車に興味を持ってくれるとうれしい」

2019ジロ・デ・イタリア総合優勝のカラパス ©Fabio Ferrari / LaPresse

そして2019ジロ・デ・イタリア第14ステージ。カラパスが独走を決めて、第4ステージに続いて2勝目、大会通算3勝目を挙げた。総合成績でもここで一気に首位へ。

「今日はエース選手の調子がよくなくて、ボクが首位をねらってアタックすることになった。自転車を始めた15歳の時からマリアローザは夢だった」

カラパスは最終的にエクアドル選手として初めて総合優勝した。中盤で首位に立った伏兵が最後まで逃げ切ったのは予想外だったが、「子どものころに抱いた夢は絶対に忘れちゃいけないんだ。決意をもって努力すれば現実になる」と語った。

2020ブエルタ・ア・エスパーニャで、ログリッチを振り切ろうとするカルパス ©PHOTOGOMEZSPORT2020

エクアドルの自転車競技界は選手層が厚いわけではなく、カラパスが唯一の存在。しかし母国では多くの人が快進撃に熱狂し、自転車レースへの関心が一気に高まったという。

イネオス・グレナディアーズに移籍した2020年はツール・ド・フランス初参加。2021年はチームエースとして走り総合3位。パリにゴールした6日後の東京で金メダルをゲット。身長170cmの小兵ながら、まったく疲れを知らない選手だ。

2020ツール・ド・フランス。ゴール後に健闘をたたえ合うポガチャル(左)とカラパス ©A.S.O. Charly Lopez

NHKの2020東京五輪自転車競技の見逃し配信

東京五輪の自転車競技の模様は民放テレビ局によるインターネットでのオリンピック公式競技動画配信サイト「gorin.jp」で配信されたが、NHKの東京2020オリンピック特設サイトで「見逃し配信」として視聴できる。

ペダルを漕がない自転車レースの日本予選大会は中止

レッドブルUCIパンプトラック・ワールドチャンピオンシップ2021を主催するレッドブルは、8月29日に福島県相馬郡の「しんちパンプトラック」で予定していた日本予選を、公衆衛生の状況と政府や自治体による対策に応じて中止した。

UCI公認の世界選手権となったパンプトラック ©Dan Griffiths / Red Bull Content Pool

ペダルを漕がない自転車レースの世界選手権、Red Bull UCI Pump Track World Championship(レッドブルUCIパンプトラック・ワールドチャンピオンシップ)は10月にポルトガルのリスボンで開催される予定。その日本予選として開催する計画で、7月21日から募集が始まっていた。参加料は全額返金されるという。

レッドブル・パンプトラック世界選手権を走る榊原爽 © Ryan Fudger / Red Bull Content Pool
ペダルを漕がない自転車レース…世界選手権代表選考会開催

レッドブルUCIパンプトラック・ワールドチャンピオンシップのホームページ

フレームバッグにシートチューブのボトルに干渉しにくいミディアム新登場

R250 フレームインナーバッグ ミディアム アーガイル リップストップ ブラックがワールドサイクルから発売された。最も脚に当たりにくいデッドスペースを利用したバッグで、シートチューブのボトルに干渉しにくいミディアムサイズが新登場。

走行中にさっと中身を取り出せる便利ポケット。撥水効果と耐摩擦性能の高い4層構造のアーガイルリップストップ生地を採用。スマホや携帯工具、財布やカメラ、予備バッテリーや補給食、自撮り棒やミニ三脚などを入れるのに便利。右側のジッパーがメインの荷室用、左側のジッパーは薄めのポケット。iPhone12がちょうど収まる。

トップチューブの前側2本のベルトと、ダウンチューブに取り付けるベルトの位置は、調整可能。トップチューブバッグのベルトとの干渉を避ける仕様だ。リフレクター付き止水ジッパーを使用しているので、少しの雨なら大丈夫。ジッパーの取っ手は指を入れるだけで引っ張ることのできるタイプ。特に冬のグローブで便利。

R250 フレームインナーバッグ ミディアム アーガイル リップストップ ブラック

あえて硬い芯材をどこにも使っていないことも特徴。小さいフレームにもクシュっとつぶれることで、取り付け可能。ダウンチューブに取り付けたボトルの飲み口と多少当たっても大丈夫。予備バッテリーを入れたときに便利な、コードを通す穴がある。

ハンドルやステムにマウントしたスマホやサイコン、ライトなどを給電しながら使用できる。撥水効果と耐摩擦性能の高い、4層構造のアーガイルリップストップ生地を採用。使い勝手を考えて、中の仕切りはあえてない。中身が見えやすいように内張は黄色。

素材:アーガイルリップストップ
サイズ:長さ360mm x 高さ130mm x 幅45mm
素材自体が柔らかいので、多少小さめのスペースにもキュッと入る
重量:120g
販売価格:5720円(税別)
●ワールドサイクルのホームページ

中身が見えやすいように内張は黄色

半年前に発売したラージサイズも

■R250 フレームインナーバッグ アーガイル リップストップ ブラック
サイズ:長さ430mm x 高さ110mm x 幅45mm
重量:162g
販売価格:5940円(税込)
●ワールドサイクルの通販ページ

榊原爽と畠山紗英…大親友でライバルが東京五輪BMXで再会

SAYAとSAEは1999年生まれの同級生。毎年開催されるBMX世界選手権では日本代表として、年齢別クラスで2人のどちらかが世界チャンピオンになってきた。ライバルだけど仲良し。SAYAこと榊原爽(さや)はその後、オーストラリア国籍を取得。SAEこと畠山紗英(さえ)は日本の第一人者に。2人は2020東京五輪BMXレーシングでそれぞれの国の代表選手として再会した。

榊原爽(左) © Jarno Schurgers / Red Bull Content Pool 畠山紗英(右) © Kunihisa Kobayashi / Red Bull Content Pool

2人のどちらかが世界タイトルを獲得してきた幼少期

BMX世界選手権には16歳までの年齢別にカテゴリーが設定される。17歳からジュニア、そして19歳になる年からエリートというチャンピオンシップカテゴリーになるが、日本勢は年齢別カテゴリーでは常に世界の頂点を争っている強豪国だ。2008年に日本代表として参戦した榊原が世界選手権初優勝。畠山が2009、2011、2012年と同タイトルを獲得。榊原は2010年に2勝目、さらに2013年から2015年まで3連覇。つまりこの年代の女子クラスでは日本勢がタイトルをほぼ獲得してきた。その黄金世代が21〜22歳となって東京五輪を迎えたのである。

ショートフィルム撮影のためドレス姿で走る榊原 © Andy Green / Red Bull Content Pool

榊原は父が英国人で母が日本人。生まれたのはオーストラリアのゴールドコーストだが、2歳の時から6年ほど東京都府中市に住んでいた。兄の魁(かい)がBMXをしていて、それを追いかけるように楽しみ始めた。

 17歳になる前に国籍を決める必要がありました。兄は国を挙げてスポーツ選手を支援するオーストラリアを選んでいて、私もオーストラリアに決めました」

スタートダッシュで攻める畠山(右) © Jarno Schurgers / Red Bull Content Pool

万全のサポートを受けられるハイパフォーマンスチームはBMX選手として男女各2人という狭き門にもかかわらず、兄妹はともに選抜された。残念ながら魁がレース中に重傷を負い現在もリハビリを続けているが、榊原は兄のためにも頑張ると五輪代表の座を射止めた。2018年にはワールドカップ初優勝。東京五輪での金メダル候補と言われるまで実力を伸ばしてきた。

「BMXを始めたのは日本なので、その場所に戻って五輪選手として走れるのってすごいストーリー。畠山ちゃんは5歳からずっと友達でありライバルなので、東京五輪で対決するのが楽しみです」

榊原爽と兄の魁(右) © Brett Hemmings / Red Bull Content Pool

2019年10月に五輪会場となる有明アーバンスポーツパークで開催されたテスト大会を制したのは榊原だ。しかし畠山も負けていない。2020年はシーズン開幕直前に手の骨折。国際大会に参戦できず、その後コロナ禍となった。地元の神奈川県寒川町に建設されたスタートゲートで、在学する日本体育大と日本自転車競技連盟が連携して動作解析。新しい練習方法も取り入れた。コロナの状況に応じて拠点をスイス、フランス、スペインと移しながら、練習に打ち込んだ。5月のワールドカップシリーズでは日本人初となる3位に。

「あまりライバルと言う意識を持ったことはないですが、あげるとすれば同世代で戦ってきたメンバーを意識する」とSAE。

榊原と畠山が出場するBMXレーシングは有明アーバンスポーツパークで7月29日に予選、30日に決勝レースが行われた。畠山は予選の最初のレースで落車負傷し、翌日の準決勝に進出できず。榊原は準決勝で敗れ、9位という成績。それぞれの五輪初出場が終了し、また新たな目標に向かって仕切り直しすることになる。

オーストラリア代表の榊原爽 © Jarno Schurgers / Red Bull Content Pool

 ◆榊原爽(さかきばらさや) 1999年8月23日、オーストラリア・ゴールドコースト生まれ。身長17cm。五輪初出場

畠山紗英 © Kunihisa Kobayashi / Red Bull Content Pool

 ◆畠山紗英(はたけやまさえ) 1999年6月7日、神奈川県生まれ。身長162cm。日本女子選手として五輪初出場