ツール・ド・フランスが訪れる7つの観光名所【ブルターニュ編】

世界屈指の観光大国フランスを一周する自転車ロードレース。ツール・ド・フランスはそれだけに現地の美しい観光スポットを数え切れないほど巡りながら一周する。そんなフランスの観光地を紹介。今回は開幕から4連続ステージが行われるブルターニュ半島編。

薔薇色花崗岩海岸、メアン・リュズ灯台 (第2ステージ) ©CRTB Thibault Poriel

🇫🇷第1ステージ ブレスト〜ランデルノー

第1ステージのスタート地点ブレスト、アトリエ・デ・キャプサンの展望台(第1ステージ) 
第1ステージの78km地点、カンペ―ル焼きの耳付きカフェオレボウル(ブルトンボウル) ©Atout France
くまモンが2019年にブルターニュを訪問した際に、ブルターニュ地方からプレゼントされた名入れカフェオレボウル ©Atout France

🇫🇷第2ステージ ペロギレック〜ミュールドブルターニュ

グラニット・ローズ(薔薇色花崗岩海岸)

カラフルな岩が詩情豊かな風景を見せてくれるグラニット・ローズ海岸。海岸線は思いがけない発見に満ち、まさに鳥たちとハイカーの天国だ。ここにはサメが、あそこにはウサギが、亀もいた。そして魔法使いも…と岩がさまざまなシルエットに見えるのがとても楽しい。

薔薇色花崗岩海岸、メアン・リュズ灯台 (第2ステージ) ©CRTB Thibault Poriel

岩の色はもちろんバラ色。日の光に輝く美しいサーモンピンクだ。松の木々の向こうには細かい砂の入江が見え隠れし、まるで数珠のように連なる小さな島々を正面に見つつ、グラニット・ローズ海岸はカーブを描きながらブレア島 île de Bréhat からトレブールデン Trébeurden まで続く。

ペロ・ギレック Perros-Guirec の沖合いにあるのは、海鳥の楽園であるセット・イル国立自然保護区 la réserve naturelle nationale des Sept-Îles。特にツノメドリやシロカツオドリ、ウがコロニーを形成している。

ブルターニュの海藻の恵み

水や海藻成分を使って治療や健康増進に役立てるというタラソテラピーは、ブルターニュ生まれ。海辺の気候がストレスや疲れをいやしてくれる。

🇫🇷第3ステージ ロリアン≫ポンタビー

ロリアンケルト民族フェスティバル Festival interceltique de Lorient

ブルターニュ半島の南側に位置するロリアン Lorient では1971年から毎年ケルト民族フェスティバルが開催されている。世界各地のケルト文化を伝承する国からアーティストが集まり、ともに音楽を奏でるイベントだ。

10日間にわたって行われるコンサートやイベントは他では見ることのできないものばかり。ガリシア地方からスコットランドまで、4500人ものミュージシャンやシンガー、ダンサーたちが集い、75万人もの観客を動員している。

中でも目玉となるイベントはグランド・パラード Grande Parade で、多くの人でにぎわう。津軽三味線デュオの吉田兄弟は2002年にフランス観光親善大使に就任し、このフェスティバルに参加した。

モルビアン湾

モルビアン湾 Le golfe du Morbihan。「Mor bihan」はブルターニュで話されるブルトン語で「小さな海」を意味する。海が陸地に入り込んできたのか、その逆なのか、判断がつきにくい場所。

まばゆい光、 無数の小さな島々、海沿いの美しい民家。それがモルビアン湾だ。ブルターニュ南部にある指定自然公園で、湾内には40ほどの小島が点在し、独特の風景を形成している。

モルビアン湾(第3ステージ) ©CRTB Loïc KERSUZAN – Morbihan Tourisme

船で簡単に渡れるモワンヌ島 île aux Moines やアルツ島 île d’Arz は特に有名。あらゆる曲がり角や、波をかぶるほど波打ち際にある花崗岩の家々が五感に響いてくる。刻々と移り変わる光は写真好きの人にとってはまさに天国。緑や青の色がこれほど多くのバリエーションで見られるところは他にない。

セネ湿地帯鳥類保護区 la réserve ornithologique des marais de Séné からリュイ半島 Presqu’île de Rhuy、ナバロ港 Port Navalo の先で蛇行しなが ら大西洋に注ぐオレー川 rivière d’Auray、ガブリニスの巨石 mégalithe de Gavrinis、ヨーロッパ最大級の潮流のあるジュマン島 La Jument など、この地方の魅力を存分に満喫しよう。

またカキ養殖の仕事ぶりを眺めたり、多くの船が停泊している小さな港や、モルビアン独特の漁船であるシナゴ Sinagot やゲパール Guépard といった船やヨットが踊るように揺れ動く様子を見るのも楽しい。

カルナックはシューズではなく巨岩(30km地点)

野原に4kmにわたって続くメンヒル(巨石)。 新石器時代に入念に並べられたメンヒルに、誰もが驚嘆の声をあげる。これらの石はなぜ並べられたのか? そのミステリーに興奮させられる。

カルナック(第3ステージ) ©CRTB Simon BOURCIER – Morbihan Tourisme

より詳しく知りたい人は、巨石会館 la maison des Mégalithes へどうぞ。展示のほか、フィルム上映、参加型のイベントなどが開催され ていて、さまざまな側面から巨石文化に光を当てている。ガイディングツアーに参加すれば複雑な遺跡の見学もスムーズに。子供たちは古代の日常生活を体験するコーナーがおすすめ。 日の出から日没まで、訪れる時間帯によって雰囲気が変化していくのも巨石遺跡の魅力。

カルナック(第3ステージ) ©CRTB Yvon BOELLE

ジョスラン城 Château de Josselin(180km地点)

重厚な塔をウスト Oust 川に映すジョスラン城は、ブルターニュの旧家であるロアン家 des Rohan が歴代の城主を務め、ジョスラン市のシンボル的な存在。現在も創健したロアン家の子孫が住んでいるこの城の歴史と街の歴史は密接に関わってきた。大公巡り街道 route des Ducs を行く際にも必ず訪れたい重要スポット。

ジョスラン城(第3ステージ) ©CRTB Emmanuel BERTHIER

フランボワイヤン・ゴシック建築で、封建時代そしてルネッサンス時代の様式をよく残しているのも非常に興味をひく。城の庭園も合わせてぜひ見学したい。ヴォー・ル・ヴィコント Vaux-le-Vicomte 城の庭も担った造園家アシル・デュシェーヌ Achille Duchesne による設計。

ジョスラン(第3ステージ) ©CRTB Rafa PEREZ

🇫🇷第4ステージ ルドン≫フジェール

ルドン、ドゥゲ・トルワン岸壁(第4ステージ) ©CRTB Teddy Verneuil
第4ステージでスプリントポイントが設定されたビトレ。写真はアン・バ通り ©CRTB Noé C. Photography

フジェール城 Château de Fougères

結晶片岩でできた岩山に建つフジェール城は12世紀から15世紀にかけて建てられた防御用の城塞で、その迫力には圧倒される。2ヘクタールもの広大な敷地には13もの塔があり、かつては水が張られた堀に囲まれていた。城は全て完全に修復され、観光を心ゆくまで楽しむことができる。

フジェール城の城壁(第4ステージ) ©CRTB Clara Ferrand Wild road & Vanessa Martin Cashpistache

城壁の上を行く巡視用の通路を、城壁や庭園などを眺めながら散策するのも楽しい。ビデオ上映やさわれる模型、子供のためのオーディオガイドなどの設備も充実。見学がより一層楽しいものとなるよう、歴史を感じさせる演出やさまざまなツールでの工夫がなされている。

●フランス観光開発機構のホームページ

2021ツール・ド・フランス区間距離が最終のものに修正

2021ツール・ド・フランス公式サイトが各ステージの競技距離を最終のものに修正した。これまでは発表時の暫定距離だったが、コースを検証して安全性などを確保したルートを確定。改めて各ステージの正式な距離を通達することなく修正した。

2021ツール・ド・フランス開幕地のブレスト ©A.S.O. / JM Liot

●2021ツール・ド・フランスのコース

6月26日(土) 第1ステージ ブレスト〜ランデルノー 198km★
6月27日(日) 第2ステージ ペロギレック〜ミュールドブルターニュ 183.5km★
6月28日(月) 第3ステージ ロリアン〜ポンタビー 183km
6月29日(火) 第4ステージ ルドン〜フジェール 150.5km
6月30日(水) 第5ステージ シャンジェ〜ラバル・エスパスメイエンヌ 27.2km(個人タイムトライアル)★
7月1日(木) 第6ステージ ツール〜シャトールー 161km
7月2日(金) 第7ステージ ベルゾン〜ル・クルーゾ 249.5km★★
7月3日(土) 第8ステージ オヨナ〜ル・グランボルナン 151km★★★
7月4日(日) 第9ステージ クルーズ〜ティーニュ 145km★★★
7月5日(月) 休日
7月6日(火) 第10ステージ アルベールビル〜バランス 191km
7月7日(水) 第11ステージ ソルグ〜マロセーヌ 199km★★★
7月8日(木) 第12ステージ サンポールトロワシャトー〜ニーム 159.5km
7月9日(金) 第13ステージ ニーム〜カルカッソンヌ 220km
7月10日(土) 第14ステージ カルカッソンヌ〜キラン 184km★★
7月11日(日) 第15ステージ セレ〜アンドラ・ラビエイユ 191.5km★★★
7月12日(月) 休日
7月13日(火) 第16ステージ パスデラカセ〜サンゴーダン 169km★★
7月14日(水) 第17ステージ ミュレ〜サンラリースラン 178.5km★★★
7月15日(木) 第18ステージ ポー〜リュザルディダン 130km★★★
7月16日(金) 第19ステージ ムラン〜リブルヌ 207km
7月17日(土) 第20ステージ リブルヌ〜サンテミリオン 30.8km(個人タイムトライアル)★
7月18日(日) 第21ステージ シャトゥ〜パリ・シャンゼリゼ 108.5km
★は難易度

辻仁成が2021年のフランス観光親善大使に就任

フランス在住の作家・ミュージシャンの辻仁成が2021年度フランス観光親善大使に任命された。フランス国家唯一の観光推進機関であるフランス観光開発機構(アトゥー・フランス、本部パリ)が2021年5月28日に任命した。

任命状を手にする辻仁成 ©Kô ODA

フランス観光親善大使のタイトルは2000年、フランス観光開発機構の前身であるフランス政府観光局が創設し、フランスに縁のある著名人の個人的な視点からフランスの魅力を発信してもらうことを目的にこれまで45人を任命している。

新しく就任される観光親善大使には、駐日フランス大使、フランス観光開発機構総裁の署名入りの任命状が渡される。2021年はフィリップ・セトン駐日フランス大使、フランス観光開発機構カロリーヌ・ルブシェ総裁による任命状が、機構パリ本部でカロリーヌ・ルブシェから手渡された。

任命状を手渡すカロリーヌ・ルブシェフランス観光開発機構総裁(左)、辻仁成 ©Kô ODA 

パリから常にポジティブな言葉を発信

辻は2000年度初頭よりパリ在住。ブログやSNS、自身が立ち上げたウェブマガジン Design Stories を通じ、フランスでの日常生活のほか、コロナ禍にある世界やフランス情勢についても、未来を見すえポジティブな視点から精力的に発信を続けている。その高い発信力を評価し、フランス観光開発機構は2021年度フランス観光親善大使の任を辻に依頼することを決定した。

任期中の活動
任期の間、辻はフランス観光開発機構やその協力先の各地方観光局と連携し、フランス各地の見どころについて発信していく。発信の場は主にウェブマガジンDesign Storiesで、フランス観光開発機構の公式サイト France.fr 内に設けるフランス観光親善大使特設サイトと連携。

セーヌ川クルーズライブ中の就任報告
就任から2日後となる5月30日、辻はセーヌ河のクルーズ船からオンラインコンサートを配信するという初の試みに挑戦。演奏の合間にフランス観光親善大使への就任を報告し、エッフェル塔やオルセー美術館などパリの名所をガイドするなど、就任後初の自身のイベントを観光プロモーションにつなげ、観光親善大使としての存在感を十二分に発揮した。

就任の抱負を語る辻仁成 ©Kô ODA

辻仁成のコメント

大変光栄なことにフランスの親善大使に任命されました。
パリに暮らし始めて20年が経ち、僕の息子もここで生まれ、来年は大学生になろうとしています。フランスに育ててもらったというのもあり、なにかフランスに恩返しができたらと思っていました。最近パリと田舎を行き来する中で今まで知らなかったフランスのよさに気づき、それを日本の人に伝えたいと思っていた矢先の親善大使のお話でしたので、これはちょうどいい僕の仕事だと使命感に燃え、オファーを請けさせていただきました。日本の皆さんにフランスの素晴らしさ、この国が持っている文化と教養、そして心のやさしさをすべて僕なりに解釈してお伝えできればと思っています。

カロリーヌ・ルブシェ(フランス観光開発機構 総裁)コメント
フランス観光親善大使の任命状を辻様にお渡しできて非常に光栄です。彼は才能豊かで、その感性をフランスの国民と分かち合い、とくに日本とフランスを結ぶ分野である文化、歴史、食、フランス流の暮らしを敏感に感じ、日本の皆様に伝えておられます。このような方に親善大使をお願いできるのは大変嬉しく光栄なことで、我々にとり大きなチャンスであります。氏を通して日本の皆様がフランスの文化、歴史、史跡、食を知り、この国やその多様な風土と人への理解が深まること、氏の著作や取材によりフランスについて良き反響が起こることを願ってやみません。

任命状 ©Kô ODA

辻 仁成(つじ・ひとなり)
作家1989年『ピアニシモ』で第13回すばる文学賞を受賞。97年『海峡の光』で第116回芥川賞、99年『白仏』の仏語版「Le Bouddha blanc」でフランスの代表的な文学賞であるフェミナ賞の外国小説賞を日本人として唯一受賞。映画監督として、1999年、第三回ドーヴィル・アジア映画祭コンペティション部門で監督作品「ほとけ」が最優秀イマージュ賞受賞。同作品でベルリン映画祭。監督作品「千年旅人」でベネチア映画祭、監督作品「アカシア」で東京国際映画祭にノミネート。ミュージシャンとしては80年代にECHOESを結成、作詞作曲した「ZOO」がミリオンセラーに。さまざまな分野で活動を続ける。現在は拠点をフランスに置き、日仏を行き来しながら創作に取り組んいる。帝京大学・冲永総合研究所特任教授。Webマガジン「Design Stories」、 デザイン&アートの新世代賞を主宰。
●WebマガジンDesignStories

観光親善大使の就任を祝って乾杯する辻仁成(右) ©Kô ODA

●歴代のフランス観光親善大使・フランス広報大使
2017年:くまモン(熊本県キャラクター)、リカちゃん(着せ替え人形)
2016年:中村江里子(アナウンサー)、新城幸也(自転車選手)
2015年:大地真央(女優)、森田恭通(デザイナー)
2014年:高見沢俊彦(ミュージシャン)、池田理代子(劇画家)
2013年:川島なお美(女優)、鎧塚俊彦(パティシエ)
2012年:竹中直人(俳優)、蜷川実花(写真家)
2011年:寺島しのぶ(女優)、平野啓一郎(作家)
2010年:小山薫堂(放送作家)、諏訪敦彦(映画監督)、知花くらら(モデル)
2009年:市川團十郎・海老蔵(歌舞伎俳優)、夏木マリ(ディレクター)
2008年:滝川クリステル(キャスター)、假屋崎省吾(華道家)
2007年:城之内ミサ(音楽家)、佐藤陽一(ソムリエ)、櫻井寛(フォトジャーナリスト)
2006年:黒柳徹子(女優)
2005年:石坂浩二(俳優)
2004年:柴俊夫(俳優)、真野響子(女優)
2003年:貴乃花光司(元横綱)、野際陽子(女優)
2002年:阿川佐和子(エッセイスト)、檀ふみ(女優)、吉田兄弟(津軽三味線奏者)
2001年:東儀秀樹(雅楽師)、林真理子(作家)、藤野真紀子(料理研究家)
2000年:石川次郎(編集者)、市川染五郎(歌舞伎俳優)、岸惠子(女優)、高田万由子(女優)、藤本ひとみ(作家)、細川護煕(元首相)、山本容子(版画)

●フランス観光親善大使特設サイト

フランス入国にわずかな明かり…連載コロナ禍のフランスへ

新型コロナウイルス感染拡大に歯止めがかからない状況で、果たして2021ツール・ド・フランス取材に行けるのか? その道すじはかなり厳しい。2020年は現地取材を見送り、23年間続けてきた全日程取材がストップした。果たしてフランスに行けるのか。(第1回/2021年3月24日)

日本からの入国は特例としてOKになった

フランスは感染第二波が一向に収まらず、そのままの流れで変異株による第三波に移行。パリを含むイルドフランスなど16県ではみたびのロックダウンに追い込まれた。3月20日午前0時から最低4週間の外出制限が施行されている。生活必需品(本・音楽含む)を除くすべての店舗・施設は閉鎖されている。

その一方でわずかな明かりも差してきた。フランス政府は3月12日、感染状況が落ち着いているオーストラリア、韓国、イスラエル、日本、ニュージーランド、英国、シンガポールを到着地または出発地とする移動には、やむを得ない理由を証明する必要をなくした。皮肉なもので、フランス国内で英国型変異株の広がりが極めて広範囲におよぶ現状であり、比較的安定している国からの入国を拒否する理由がないからだ。

日本は外務省が海外安全情報でフランスをレベル3に指定し、渡航中止勧告を施行している。ただし法的な強制力をもって渡航を禁止するものではない。だから、「それにもかかわらず行く」という人の意志は曲げられない。結論として、日本からフランスには渡れるのである。

ただし、新型コロナウイルス感染拡大の防止のために、いくつものハードルをクリアしていく必要がある。

出発前72時間以内に実施したPCR検査の陰性証明書の提示は当然のことながら必要。しかも日本では容易に受けられる「唾液によるPCR検査」は正規のものと認定されず、フランスの空港に到着したあとに再度「鼻咽頭によるPCR検査」を受けなければならない。

また旅行前14日間に陽性者と接触した覚えがないことを証明するとともに、フランス入国後7日間の自主隔離を行うこと、この7日間の隔離期間終了後に2回目のPCR検査を受けることを誓約する宣誓書も日本の空港で搭乗する時に提示しなければならないという。

鼻咽頭によるPCR検査での陰性証明書などをフランス入国時に提示して入国できたら、フランス当局が決めたリストに掲載されたホテルで7日間の自主隔離を行わなければならない。その自主隔離を終えて、改めて2回目のPCR検査が実施され、陰性となればフランス国内を移動できるようになる。

フランス入国後は接触確認アプリ「TousAntiCovid」(フランス語)をダウンロードし、感染予防措置と対人距離確保措置を厳守し、マスクを着用、発症または感染の場合は慎重かつ責任ある行動をとる必要があるという。【継続調査中】

3月24日現在、フランスは依然として感染高止まりの状況が続く

7日間の隔離にかかるホテル滞在費用は自己負担

ちなみに日本に帰国した際は、さらに長い14日間の自主隔離が求められる。感染拡大が収まらないフランスからの帰国者は、まず政府指定のホテルでの7日間の隔離を余儀なくされるのだが、この費用はフランスと違って日本政府が負担してくれる。隔離期間を終えたら、14日からその期間を差し引いた日数を自宅などで過ごすことが求められる。

といっても取材記者の場合は、パソコンと通信環境があれば日常業務が行えるので、日本に帰ってくることさえできればこっちのものだ。

さて話をもとに戻して、フランスに到着して7日間の隔離にかかるホテル代金など。フランス当局が決定したホテルリストをチェックしてみた。パリのシャルルドゴールに5つ、パリのオルリーが4、それ以外にミュルーズ、リヨン、マルセイユ、モンペリエ、ニース、トゥールーズのホテルが掲載されている。日本からの国際線はパリのシャルルドゴール空港に到着するので、5つのホテルから選択する必要があるようだ。

ツール・ド・フランスへの道のりはまだまだ遠い ©ASO Pauline BALLET

気になる料金はヒルトン・ロワシーポールが1泊3食付きで145ユーロ。これ以外に1人につき1泊2.88ユーロの滞在税が追加される。さらにメルキュール、マリオットなどの高級ホテルがあり、庶民派ホテルのカンパニールが最安値となる。シングルの素泊まりで49ユーロ、朝食7.9ユーロ、夕食は3品目と飲み物1杯つきで25ユーロと細かい料金表も掲載されている。ちなみにロワシーポールの夕食にはソフトドリンクがつくらしい。

ただし7日間の拘留期間、ではなく自主隔離期間は精神的なストレスを感じずに過ごしたい。カンパニールの質素な部屋で7日間の滞在に耐える精神力はない。カンパニールはどれも同じ作りのホテルで、広いガラス窓の外が屋外通路となり、他の宿泊客や従業員がひっきりなしに通過する。

一方のヒルトンはホテルガイドを見る限り、プールなどの施設があって快適に過ごせそうだ。ただし自主隔離者がどこまで立ち入りを許されるのか? このあたりを問い合わせてみたい。

🇫🇷ツール・ド・フランス2021特集サイト
●フランス政府のコロナ関連ホームページ

ラグビーW杯で日本戦2試合をホストするトゥールーズが歓喜

ラグビーワールドカップは前回の日本大会に続き、2023年にフランスで開催される。試合会場がある10都市のひとつ、トゥールーズがグループリーグで日本戦2試合をホストすることになり、盛り上がっている。

2019年6月15日、フランス国内1部リーグTop14の決勝戦でスタッド・トゥールーザンがASMクレルモンフェランを破り、トゥールーズのキャピトル広場で地元クラブの優勝を喜ぶ人々 © Carbonnel François -Région Occitanie

トゥールーズを域内に持つオクシタニー地方はフランスの中でもラグビー熱が盛んなところ。2023大会でも大会の鍵を握る地として5つの試合が行われ、うち2つが日本が参戦する試合となった。2023年9月10日、28日にスタジアム・ド・トゥールーズで行われる。

2019年9月東京、ラグビーワールドカップ日本大会のフランス対アルゼンチン戦でオク シタニー地方の旗を掲げて応援する地方ミッション © Datiche Nicolas Région Occitanie

オクシタニー議長が日本ラグビーを全面プッシュ

複数の訪日経験があるオクシタニー地域圏のキャロル・デルガ議長は、日本チーム2試合の会場がトゥールーズに決まったとの報に接し、次のコメントを発表した。

「ラグビーの地オクシタニーが2023年ラグビーワールドカップの中で日本チームの試合会場となることに、栄誉と誇りを感じています。この出来事はオクシタニーの友人である日本のみなさまに、美しきわが地方を知ってもらう最高に素晴らしい機会となり、日本とオクシタニーの絆をさらに固くすることでしょう。私はこの絆が観光、経済、教育、研究のみならずスポーツの分野でも深めることを願ってきました」

さらに次のように続けている。
「直近の2019年9月の訪日の際、オクシタニー地域圏は東京で2023年ワールドカップ組織委員会との間で覚書を交わし、ワールドカップという世界規模のイベントへ積極的に関与する意思を示し、また、大会期間中に日本チームの試合会場となることへの意欲を示しました」

キャロル・デルガ オクシタニー地域圏議長 ©Grollier-Philippe-Région Occitanie

オクシタニー地方はラグビーが一番人気

19世紀後半にフランスにやってきたラグビーは、それ以降オクシタニーで重要な地位を築いてきた。ラグビーが持つスポーツや敬意、陽気に楽しむという価値はオクシタニーの文化として育まれてきたのだ。地域内に約400のクラブと8万人の登録選手がいるオクシタニーはフランス屈指の「ラグビー地方」と言える。

オクシタニーでラグビーはスポーツ以上の価値を持ち、まさにひとつの文化を形成している。この土地ではどこであっても楕円球のリズムを感じながら、チームの意義、自己の限界を超える意義、団結し、ともに朗らかに生き、楽しく過ごす意義を表現する文化がある。フランス語で「トワジエム・ミッタン」、第三ハーフと呼ばれるものがあるように、試合後にオクシタニーのホスピタリティと友愛の精神をもって仲間と集いながら、とくに土地のワインや南フランスの料理、それもグランシェフが作る料理を楽しむ機会がある。

オクシタニーでは誰もが楕円球への情熱を表現している。ラグビーはこの土地の住民の日常生活の中にあり、小さな村の試合であろうと国際試合であろうと、あらゆる試合結果を他人と楽しく共有する習慣がある。

オクシタニーはまた、国際的な観光地、たとえばカルカッソンヌ、ポンデュガール、サンシルラポピー、アルビ、ルルド、ピレネー山地などで有名な土地だ。トゥールーズ、モンペリエ、ペルピニャン、ニームなど活気あふれる都市があり、トゥールーズ・ロートレックや、ピエール・スーラージュらオクシタニー出身のアーティストに捧げられた美術館も有名。

オクシタニー地域圏スポーツ担当副議長のカメル・シブリは次のコメントを発している。
「このラグビーワールドカップは、日本の方々にスポーツに情熱を燃やす地方オクシタニーを知ってもらえる機会。住民の温かな心遣いをぜひ感じてほしい」

カメル・シブリ オクシタニー地域圏副議長(スポーツ担当) © Antoine Darnaud Région Occitanie

同副議長はツイッター上でも、トゥールーズのエルネストワロン・スタジアムで収録した日本向けメッセージ動画を発信している。
「オクシタニー地域圏はキャロル・デルガ議長とともに、次回ラグビーワールドカップでスタジアム・ド・トゥールーズが日本チーム2戦の会場となり、みなさまをお迎えできることを心からうれしく思っています」

●フランス観光開発機構のホームページ

シマノが欧州レースでニュートラルアシスタンスを開始

2021年3月、創業100周年を迎えた世界屈指の自転車部品メーカー、シマノがグランツールと呼ばれる三大ステージレースで技術サポートを担うことになった。ツール・ド・フランスでは地元メーカーが常にその業務をこなしてきたが、ついに日本企業がこれに変わった。欧州自転車界の景色が一変するほどの衝撃的ニュースだが、シマノに与えられたその任務とは?

2021パリ〜ニースのニュートラルアシスタンスはシマノ ©A.S.O. Fabien Boukla

ツール・ド・フランスの景色が変わるほどの衝撃ニュース

シマノに与えられた任務はニュートラルアシスタンスサービスと呼ばれるもの。チームの分け隔てなく公平に機材故障に対処する車両を走らせる。ツール・ド・フランスではこれまでフランスのマヴィック社がこれを務めていた。車両は黄色で、フランス語でそれを意味する「ボワチュールジョーヌ」と呼ばれて親しまれてきた。その黄色が今季からシマノの企業色である青色に変わるのだ。

ジロ・デ・イタリアが3月5日にシマノとのコラボを発表 ©LaPresse

1973年のパリ〜ニースでマヴィックは初めて黄色いニュートラルアシスタンスカーを走らせた。すぐにその存在は知れ渡り、沿道にいるファンは黄色い車を見ればマビックだとだれもが分かった。選手たちの後ろを伴走する車両隊列の中で、一番目立つのがボワチュールジョーヌだった。

マヴィック社はシマノのようにあらゆる自転車部品を開発・販売する規模ではなく、かつては変速機やクランク周辺部など、現在も車輪やアパレルなどに特化して製造する。企業規模としては小さいが、主催者とともに大会を育んできた実績と貢献度は計り知れない。ツール・ド・フランスにとってマヴィックは協賛企業ではなく、協力企業という特別の立ち位置でもあった。

旧車、旧ロゴのマヴィックカーのミニチュア

ニュートラルアシスタンスサービスに従事するスタッフの出番はラジオツールと呼ばれる車載無線で指示されて始まる。

「ボワチュールジョーヌ、先頭集団で○○チームの選手がパンク!」

指示が入るや、「あのチームの後輪はカンパニョーロの11段変速だ」などと判断し、現場に急行するや適合する車輪を選択して交換する。

ジロ・デ・イタリアやストラーデビアンケのニュートラルアシスタンスもシマノ ©LaPresse

ボワチュールジョーヌの屋根の上には交換用の自転車本体も積載されているが、車輪の交換はひんぱんにあるものの、ボワチュールジョーヌが自転車を交換することはほとんどない。使用するペダルの形状がチームによってバラバラで、これに選手の体格によってフレームサイズの違いが加わるからだ。1秒を惜しんで前を走る集団に追いつきたい選手を前にして、ペダルを交換しているヒマはない。こういった場合はチームカーの到着を待つのがほとんど。

助手席にはステージごとにスポンサーなどのVIPが乗る。世界各国の得意先やメディアなどの名前が予約リストに掲載されている。競技のうえでなくてはならない存在なのかもしれないが、同時進行で社交が展開されている。このあたりに、自転車レースは伝統に裏打ちされた文化であることがうかがえる。

1990年代にようやく欧州市場でその存在が認められた後発メーカーのシマノは、いきなり世界最高峰のツール・ド・フランスでマビックを追い落とそうとはしなかった。まずは国際統括団体のUCI(国際自転車競技連合)が主催する世界選手権でニュートラルアシスタンスを始めた。

ブエルタ・ア・エスパーニャでシマノは大会協賛も ©PHOTOGOMEZSPORT2020

レースの勝敗に影響を与えかねないほどの高性能な機材を次々と開発していくシマノにとっては、競技規則を定めるUCIと蜜月関係を築きたいという戦略もあった。次に三大大会のジロ・デ・イタリア、さらにブエルタ・ア・エスパーニャでサポート業務を受注した。そして100周年の2021年、いよいよツール・ド・フランスへ。出場選手の過半数がシマノ部品を使うのだから、それは自然の成り行きだった。

ジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスの姉妹レースもすべてシマノが業務を担う。3月7日、ツール・ド・フランス傘下のパリ〜ニースが開幕し、青色のニュートラルアシスタンスカーが初めてフランスを走った。

●シマノ100周年の特設サイト