アダム・イェーツが逆転サヨナラでツアー・オブ・オマーン総合優勝

ツール・ド・フランスを運営するA.S.O.の主催大会、ツアー・オブ・オマーンは最終日となる2月14日、山岳のグリーンマウンテンにゴールする第5ステージが行われ、15秒遅れの総合8位につけていたUAEエミレーツのアダム・イェーツ(英国)が単独になってゴール。総合成績でも1位になって優勝した。

アダム・イェーツがツアー・オブ・オマーン総合優勝 ©A.S.O. Oman Cycling Association/Thomas-Maheux

イェーツは前日まで首位だったチームメートのフィン・フィッシャーブラック(ニュージーランド)を牽引していたが、総合成績で逆転を仕掛けたスーダル・クイックステップのヤン・ヒルトの走りにたまらずフィッシャーブラックが脱落。これを見てイェーツがヒルトを追いかけ、ゴール手前で加速してステージ優勝。後続を突き放したことで総合成績でも逆転した。

ツアー・オブ・オマーン第5ステージ ©A.S.O. Oman Cycling Association/Pauline-Ballet
ツアー・オブ・オマーン第5ステージ ©A.S.O. Oman Cycling Association/Pauline-Ballet
ツアー・オブ・オマーン第5ステージ ©A.S.O. Oman Cycling Association/Pauline-Ballet
ツアー・オブ・オマーン第5ステージ ©A.S.O. Oman Cycling Association/Thomas-Maheux
アダム・イェーツがツアー・オブ・オマーン総合優勝 ©A.S.O. Oman Cycling Association/Thomas-Maheux

【ツール・ド・フランス現場雑感】かれこれ30年目。選手とともにパリのゴールを目指す

兄弟対決は弟アダムが兄サイモンを制し、総合成績で首位に

第110回ツール・ド・フランスは大会初日の7月1日、スペインのビルバオを発着とする距離182kmの第1ステージが行われ、UAEエミレーツのアダム・イェーツ(英国)が初優勝。2020年の4日間に続いて首位に立ち、マイヨジョーヌを獲得した。

アダム・イェーツがマイヨジョーヌを獲得 ©A.S.O. Pauline Ballet

この日は残り7.5kmから双子のイェーツ兄弟が抜け出し、ジェイコ・アルウラーの兄サイモンを弟アダムが制した。アダムは2016年新人王。サイモンは2019年のツール・ド・フランスで区間2勝している。

2023ツール・ド・フランス第1ステージ ©A.S.O. Charly Lopez

このまま行っていいか、無線で確認して兄と走った

「エースのポガチャルを牽引する動きをしていたら兄と2人になってしまった」というアダム。兄弟はチームが異なるが仲がよく、アダムは無線で監督に2人でゴールを目指していいのかを確認。双子の一騎打ちを制した。

「ボクはあくまでもポガチャルのアシスト。これからも仕事をこなすよ」とアダム。

バスクの旗が打ち振られる ©A.S.O. Pauline Ballet

●4賞ジャージ
マイヨジョーヌ(個人総合成績)アダム・イェーツ(英国、UAEエミレーツ)
マイヨベール(ポイント賞)アダム・イェーツ(英国、UAEエミレーツ)
マイヨブラン・アポワルージュ(山岳賞)ニールソン・ポーレス(米国、EFエデュケーション・イージーポスト)
□マイヨブラン(新人賞)タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEエミレーツ)

アダム・イェーツが区間3位のポガチャルと抱き合う ©A.S.O. Pauline Ballet

iPhoneのシャッター音が欧州対応となり、いつものように自動で消える

ツール・ド・フランスの全日程を単独で回ったのは1997年が最初。コロナ禍で現地入りを断念した2020年と2021年を除いて、現場取材はそれ以前10年間の自転車雑誌時代を含め30回以上になります。

車両ステッカーはブルー・ピンクで、広告キャラバン隊を1日に1回限定で追い抜いていいという権利がある

若いころはどんな挑戦が待っているんだろうとワクワク感しかありませんでしたが、いまはどんなアクシデントに遭遇するのかと心配しかありません。2023年は大移動がないので関係者としては難しくないルートだというのに。

とりあえずストレスをお金で回避すべく、往路のアムステルダム行きは追加料金8万円でビジネスクラスに昇格。フライトの30時間前から席に空きがあれば、わずかなプラス料金で快適な座席に移ることができるんです。

出発30時間前にアップグレードできたビジネスクラス

今回はアムステルダムを経由して、その日のうちにフランスのボルドーへ。外国人特権でフランス車を免税で購入できるシステムの陸送受け取り場所がボルドーくらいしかないからです。

トランジットのアムステルダムのハイネケン330ml缶が1000円することをチラ見しました。物価高騰と円安のダブルパンチは目をつむるしかありません。不注意でホテルをダブルブックするとかミスで無駄金を払うなどのことがなければ、必要な出費はもう仕方ないと考えるようにしています。ビールが必要な出費なのかはわかりませんが…。

あ、iPhoneのシャッター音が欧州対応となり、いつものように自動で消えました。

アムステルダムからフランス入りする飛行機が遅れて、ボルドー空港に到着したのは日本時間としてはすでに日にちが変わっていました。しかしこれは想定できたので、出国ロビーから歩いて行けて、24時間フロント対応のホテルに現地時間で午前1時着。

渡欧初日はベッドに横になれる瞬間がたまらないですが、今回は180度フルフラットのビジネスクラスで来てしまったので、それほどの感激がなく、バタンキューとはいかず。そして3時間ほど深く眠ると、さすがに日本時間としてはお昼となってしまったので寝ていられず午前5時から朝ごはん。大きな空港の近くのホテルは早朝に旅立つ人も多いですからね。

今回の取材の相棒はシトロエンC3エアクロス。実に操作性がよく時速130kmでも不安なく運転できる

そしてボルドーから自分名義の新車、シトロエンC3エアクロスを受け取って、陸路スペインへ。高速道路は全エリアで無料Wifiが利用できます。そして大会公式オランジーナで水分補給。フリースを着込まないと寒いです。

日本を離れた翌日には、ようやくツール・ド・フランスの現地入り。まずは米国の女性カメラマン、ベスに10年ぶりに遭遇。そして「あらー、髪の毛が随分グレーになったわね」との言葉をもらい、久しぶりとなる関係者にもごあいさつ。

この日から2日間はビルバオから20kmほど離れたムンギアという町の宿を確保していました。宿泊予約サイトのホテルドットコムから「この夜は祭りがあって騒音で眠れないから、キャンセルをおすすめします」というメールが来ていたのは知っていましたが、他ホテルを探すのも面倒なので読み飛ばしたままでした。

まだ日が暮れていないのにホテル前は大騒ぎだ

で、ホテルを訪ねるとスペイン語しか話せない主人と翻訳ソフトでのやり取りとなりました。

「眠れないからと、予約サイトに頼んでメッセージを英語で送ったのに」
「ボクの部屋はないの?」
「あるけど…、とにかく朝7時まで眠れないと思う」
「大丈夫。窓を占めるから」

と、なんとかキーをもらいました。この町に到着したのは午後5時前後ですが、すでに始まった祭りは凄まじいことに。男たちがホテル1階のバーで楽器とともに合唱し、隣の広場に集まった若い女性たちが音楽に合わせて深夜から合唱する。

ホテルの部屋から見た深夜3時の喧騒。普段は公共駐車場だがこの日は会場となった

それが朝7時まで続くんです。どんな体力をしているんでしょう。喧騒は壁や床を突き抜けて耳まで届く。バスク人の合唱をなめてはいけないと後悔するばかりでした。

ホテル近くに駐車場がないので、地面に水たまりのある未舗装地にクルマを停めておいたら、見事に泥だらけ。新車なのにカンベンしてください。そしてステッカーを盗まれたので、ゴールのペルマナンスに行ってもらわないと。こういのは経験値でカバーでき、あまり動揺しません。無駄に歳は取っていないですからね。

新車なのにカンベンしてください

いやはやの初日。無事にパリまでたどり着けるのでしょうか?

第2ステージにすすむ

🇫🇷ツール・ド・フランス2023特集サイト

エベネプールがUAEツアーで総合優勝…7日間のステージレースでも強さを見せる

中東を舞台とした唯一のUCIワールドツアー大会、UAEツアーは最終日となる2月26日に第7ステージが行われ、世界チャンピオンのレムコ・エベネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)が首位を守って初の総合優勝を遂げた。

エベネプール(左)とアダム・イェーツがゴールまでのラストバトル。UAEツアー第7ステージ ©LaPresse

最終ステージはUAEエミレーツのアダム・イェーツが独走勝利したが、エベネプールが10秒遅れの2位でゴールし、逆転を許さなかった。

UAEツアー第7ステージ ©LaPresse

「ジロ・デ・イタリアまでに改善の余地がある」エベネプール

「ジェベル・ハフィートの下から上まですべて全力疾走のオールアウトだった」とエベネプール。

「今年はあまりクライミングトレーニングをしていなかったので、自分のパフォーマンスに満足している。このレースに勝つとは思わなかった。いい結果が出たが、1分差で勝てるとは思っていなかった。今週はずっと調子がよかったし、今日はレッドジャージを守るために戦いたかった。ジロ・デ・イタリアまでに改善の余地があるが、この勝利には満足している」

UAEツアー第7ステージ ©LaPresse
第5回UAEツアー第7ステージ ©Luca Bettini/SprintCyclingAgency©2023
アダム・イェーツがUAEツアー第7ステージの最後の坂でエベネプールを突き放した ©LaPresse
UAEツアー第7ステージで独走勝利したアダム・イェーツ ©LaPresse
総合優勝のエベネプールを中央に左が2位プラップ、右が3位アダム・イェーツ ©Luca Bettini/SprintCyclingAgency©2023

ポイント賞はベルギーチャンピオンのティム・メルリール(スーダル・クイックステップ)で、区間2勝を挙げた。

区間2勝のティム・メルリールがUAEツアーでポイント賞を獲得 ©Luca Bettini/SprintCyclingAgency©2023

世界チャンピオンのエベネプールがUAEツアーに参戦決定

世界チャンピオンのレムコ・エベネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)が2月20日から26日まで開催されるUAEツアーに参戦することが決まった。同大会は中東で開催される唯一のUCIワールドツアーレース。

レムコ・エベネプール @woutbeel

UAEエミレーツに移籍した英国のアダム・イェーツも参戦。2016年には英国選手として初めてツール・ド・フランスで新人賞を獲得した。

アダム・イェーツ ©Photo Fizza

オーストラリアのカレブ・ユアンはUCIプロチームのロット・デスティニー(ベルギー)に所属。主催者推薦によりチームが出場できることになり、平坦ステージでの優勝を目指す。

カレブ・ユアン(右) ©Face Peeters

ボーラ・ハンスグローエのサム・ベネット(アイルランド)はスプリンター。2020ツール・ド・フランスではポイント賞を獲得している。

サム・ベネット

●UAEツアーのホームページ

タデイ・ポガチャルが区間2勝でUAEツアーを2連覇

UCIワールドツアー第1戦、UAEツアーは最終日となる2月26日に山岳コースで第7ステージが行われ、前年の覇者タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEエミレーツ)が独走で優勝。2年連続で総合優勝した。

2022UAEツアー第7ステージ、ポガチャルとそれを援護するアシスト陣 ©LaPresse – Fabio Ferrari

7日間の日程で開催された大会で、ポガチャルは2つある山岳ステージで優勝。第4ステージで混戦を抜け出して優勝し、首位に立つと最終ステージでもライバルを置き去りにして逃げ切った。最大の勝負どころとして最終日に設定された山岳、ジェベルハフィートでは3年連続のステージ優勝。

アタックしたアダム・イェーツに反応するポガチャル ©LaPresse – Fabio Ferrari

総合優勝を争うイネオスグレナディアーズのアダム・イェーツ(英国)が逆転を狙ってアタックしたが、ポガチャルはこれに反応。残り1kmでイェーツを振り切り、1秒差をつけてゴールに飛び込んだ。

総合2位は22秒遅れでイェーツ。総合3位は最終ステージで5秒遅れの区間3位でゴールしたペリョ・ビルバオ(バーレーンビクトリアス)。

ポガチャルがイェーツの出方をうかがう ©LaPresse – Fabio Ferrari

「チームメートがハードワークをしてくれたあと、ジェベルハフィートで勝ててほんとうにうれしい」とポガチャル。

「チームメートのラファウ・マイカがアタックした。ラファウがステージ優勝できればよかったが、ゴールまで距離があったので抜け出すことはできず、作戦を変更した。チームメイト全員が一生懸命引っ張った」

ポガチャルがUAEツアーを連覇 ©LaPresse – Fabio Ferrari

「アダム・イェーツが攻撃に出たが、それはボクが今まで経験した中で最もハードな攻撃の一つで、本当に大変だった。ハオ・アルメイダとラファウがボクのところに戻ってくるのを待った。ハオはステージ勝利のチャンスをつかむためにカウンターアタックしたが、ライバルたちが追従したので僕たちは勝利のためにスプリント争いに集中した。それはうまくいった」

「UAEツアーは今シーズン初の目標だった。ボクたちのホームレースだ。スポンサーにとって重要なので、冬の時間を無駄にしないで、このレースに向けて準備を進めてきた。これから次の目標に向けて、できるだけ長くコンディション調整していきたい」

2022UAEツアーを制したポガチャル ©LaPresse – Fabio Ferrari

ログリッチが最古のレース、ミラノ〜トリノで優勝

ユンボ・ビスマのプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)が10月6日にイタリアで行われた第102回ミラノ〜トリノで優勝した。シーズン13勝目。最後の上り坂でイネオス・グレナディアーズのアダム・イェーツとアタックし、残り250mで振り切った。3位はドゥクーニンク・クイックステップのハオ・アルメイダ(ポルトガル)。4位にUAEエミレーツのタデイ・ポガチャル(スロベニア)。

ログリッチとアダム・イェーツが最後の坂でアタック ©LaPresse – Marco Alpozzi

1876年に始まったミラノ〜トリノは、1892年にベルギーで始まったリエージュ〜バストーニュ〜リエージュよりも古い。何度が大会が行われなかったことがあり、現在まで継続されるレースとしてはリエージュに譲る。

世界選手権ロードを連覇したジュリアン・アラフィリップも参戦 ©LaPresse – Marco Alpozzi
距離189kmで行われたミラノ〜トリノ ©LaPresse – Marco Alpozzi
ミラノ〜トリノ ©Dario Belingheri/BettiniPhoto
第102回ミラノ〜トリノ ©LaPresse – Marco Alpozzi
ミラノ〜トリノを制したログリッチ ©LaPresse
残り250mでログリッチがイェーツを置く座りにしてゴール ©Tommaso Pelagalli/BettiniPhoto
ミラノ〜トリノ優勝のログリッチを中央に、左が2位アダム・イェーツ、右が3位アルメイダ ©Gian Mattia D’Alberto / LaPresse