Garminコーチがさらに進化…パーソナルに目標達成を後押し

GPSで計測した走行データを分析し、設定した目標をクリアするために必要なトレーニングメニューを提示してくれる「Garmin(ガーミン)コーチ」が飛躍的に進化した。陸上部などに所属せず、指導者を持たない一般ランナーにとっては、とても便利なプログラムだ。

世界でトップを行くコーチからの専門的なアドバイスがもらえる

ラントレーニングの理想は、専門知識を有するコーチに直接指導してもらい、ターゲットとする目標や実力レベルに合ったメニューを組んでもらうこと。でも普通のランナーにはそんな環境は望めない。有料のランニングクリニックに参加するなどが精一杯だ。

右上の丸が記録達成の確実を示す。緑はほぼ確実、黄色はもっと努力する必要がある
GPSで取得したこれまでのデータをもとに検証済みのワークアウトが提示される

そこで、光学式心拍計を搭載したGPSデバイスを使ってトレーニングする方法をご紹介。GPSデバイスは購入する必要があるが、アプリは無償ダウンロードできるので、手持ちのスマホがあれば十分。アプリ名はGarmin Connect。パソコンではインターネットサイトのconnect garmin.comで同様のことができる。

アプリを起動させるだけでデバイスと自動的に同期が始まる

これまでは5km練習しか設定できなかった

ちょうど1年前にも「Garminコーチ」を使って2019東京マラソンのためのトレーニングを試みたのだが、その当時は大失敗した。目標とする距離設定が「Garminコーチ5K」しか選択できなかったからだ。

●以前のコラム
心拍計搭載のGPSウォッチとアプリでGARMINコーチにランニング指導を受けてみた

素人考えで、「レース距離は違っても走る練習だから」と5kmのタイム向上を目指す練習メニューをやってしまったのだから、当然のように無理があった。

算出される実績がよかったことも拍車をかけて、精神的にちょっと弱いボクのハートには負荷が高かったようだ。筋肉群は順調に強化されたが、精神的に不安定になってしまって、一時期練習を中断するハメに。

やっぱりフルマラソンはフルマラソンのメニューでなければダメです。

この日のメニューを消化するとオレンジのデータが表示され、よくできましたとホメてくれる
パソコン版のGarminコーチ。細かなパーソナル設定ができる

「Garminコーチ、使えないな」と思って、しばらく無視していたら、「10Kプラン」と「ハーフマラソンプラン」が追加になっていた。折しも2020東京マラソンの抽選に落ちたので、ターゲットを21週後のハーフマラソンに設定。そうして再び「Garminコーチ」を使い始めた。

結論から言うと、今回のアップデートでかなりのところまでできるようになっていた。初級者から中級者までのトレーニング指針となることは確実で、使いようによってかなり効果的にレベルアップに貢献してくれる。

日本語テロップがついたビデオメッセージも定期的に送られてくる

「Garminコーチ」ってどんなものなの?

「Garminコーチ」は、Garminデバイスで計測した各種データを無償提供アプリで自動分析し、スマホの中の仮想コーチがトレーニングメニューを提示してくれ、それをこなしていくうちにランの記録が向上していくという、夢のようなシステムだ。

今回のアップデートはGPSデバイスのほうではなく、アプリ側で改良された。数あるGarmin社製デバイスのなかで、VO2 Maxが測定できる機種なら「Garminコーチ」が使える。ボクが使っているデバイスはすでに購入から2年が経過しているGarmin Fenix 5 Sapphireだが、アプリ側のアップデートは定期的に行われているので、できることは今後もどんどん増えていきそうだ。

メニューは日程変更できるが、過ぎてしまったメニューは変更できない
ビデオや日本語訳されたテキストで効率的な練習方法を習得する

それでは実際に「Garminコーチ」を使ってみよう。

まずアプリをダウンロードしたスマホで、目標とする大会の距離を「5km」「10km」「ハーフマラソン」から選ぶ。続いて「週に何日走れるか」といった個人的な生活環境を入力すると、アプリの中でそれを考慮した週間メニューがプログラムされる。基本的には週末に所要時間のかかるメニューが組み込まれるが、そのあたりは編集することも可能。

いくつかも項目を入力すれば、デバイス上のランニングコーチが無料トレーニングプランを提供してくれるという仕組みだ。

アプリにはコンディションの波も表示される
コンディションを把握すればレース日に絶好調を持ってくることができるかも

コーチから与えられるワークアウトは、同期を済ませているGarminデバイスとデータのやり取りをするごとに、自動的にデバイスに転送されるからとても便利。メニューは1週間単位で提供され、どうしてもこの日は走れないなと思ったらアプリでスケジュール変更すれば、次の同期時にデバイスに送り込まれる。 陸上部でもなく、ランニングクリニック参加者でもないボクにとって、ランのパーソナルトレーナーがいつでも身近にいてくれるという安心感がうれしい。

はじめのころに提供されるメニューは意外とクリアしやすい。経験上はここで頑張りすぎず、デバイスとの関係を良好にできるように気軽にこなしていくのがいい。そのうちにインターバルが登場したり、タイムトライアルをするように提案される。

トレーニング負荷を見れば練習が足らないか、オーバートレーニングかが見極められる

こういったメニューの消化率や実績、タイムトライアルのデータなどを取り込んで、次週のメニューが作られる。そのため翌週以降のメニューをクリックしても、「詳細情報は随時お伝えします」と明らかにしてくれない。

メニューは徐々にレベルが上がっていくが、うまく消化していくと設定タイムをクリアする確率も高まっていく。仕事や所用でメニューがクリアできなくても焦る必要はない。それはそれで次週のメニューが再構成されるからだ。

さらにレース日が近づくとコンディショニングのためにメニューが抑えられるので、なにも考えずに提案されたものをしっかりやっておけばそのままレース当日を迎えられるというのがいい。

そんなこんなで、意外ときめ細かい。次回のハーフマラソンでどんなタイムが出るか、とても楽しみ!

●GarminのGPSデバイスレビュー特設サイト
●connect garmin.comのホームページ

大迫傑と一山麻緒が東京五輪へ…マラソン男女代表が決定

ワコールの一山麻緒(22)が、3月8日に行われたMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)ファイナルチャレンジの名古屋ウイメンズマラソンで、日本女子歴代4位となる2時間20分29秒で優勝。東京五輪マラソン代表の座をつかんだ。

ナイキの大迫傑(左)とワコールの一山麻緒

また男子は、同日に行われたびわ湖毎日マラソンで、ナイキの大迫傑(28)が持つ日本記録2時間5分29秒を上回る選手がいなかったため、MGCファイナルチャレンジの東京マラソンでこの記録を出した大迫が東京五輪代表となった。

ナイキの大迫傑が2020東京マラソンで日本新記録
ナイキの大迫傑
22歳とMGC最年少の一山麻緒。東京五輪に「挑」と掲げた
一山麻緒はMGCで果敢に飛び出すが後半に失速した

●2020東京五輪マラソン男女日本代表
中村匠吾(26=富士通)
服部勇馬(25=トヨタ自動車)
大迫傑(28=ナイキ)
前田穂南(23=天満屋)
鈴木亜由子(28=日本郵政グループ)
ー山麻緒(22=ワコール)

富士通の中村匠吾がMGCで優勝
天満屋の前田穂南がMGCで優勝
富士通の中村匠吾
MGCで服部勇馬が大迫傑を振り切って2位に
トヨタ自動車の服部勇馬

激闘のMGCがついにフィナーレ

2019年9月15日に行われたMGCで、男子優勝の中村匠吾(26=富士通)、2位の服部勇馬、女子優勝の前田穂南(23=天満屋)、2位の鈴木亜由子(28=日本郵政グループ)を含め、男女各3選手の五輪代表が確定したことになる。

東京五輪のマラソンは男子が8月9日、女子はが8月8日、どちらも北海道札幌市で午前7時にスタートする。

MGC1位の前田穂南(右)と2位の鈴木亜由子
日本郵政グループの鈴木亜由子

●MGCのホームページ

2019年9月から2020年3月まで東京五輪マラソン代表を懸けたMGCシリーズが行われた

ブルックスも厚底…ハイペリオンエリート世界同時発売

米国ランニングシューズブランド「BROOKS」がトップモデルとしてHYPERION ELITE(ハイペリオンエリート)の世界同時発売する。日本ではアキレスが2月29日(土)から新宿西口ハルクや主要店舗10店のほか、「BROOKS」公式サイトで220足を限定発売する。

ブルックスのハイペリオン エリート

「HYPERION ELITE」は「BROOKS」がトップランナーとともに4年の歳月を経て開発したトップモデル。世界のトップランナーに寄り添うことをテーマに、彼らが求めていた速さと安定感を両立させることに成功した。独自のミッドソール材とカーボンプレートを搭載しているため、走行中の足首やその付近のブレが競合品より少なく、レース後半までの走力を少しでも温存し、より速くより長く走れるという。


ハイペリオンエリートの3大特性

伸縮性に富むメッシュアッパーが快適なフィット感を生み出す

① ミッドソール材「DNA ZERO」フォーム

軽量(従来モデルから45%軽量化、15%ソフト化)なのに必要十分な硬度と反発力を持ち 、足首の内反やブレを軽減。ランニングフォームの安定に加え、エネルギーロスの軽減にもつながる。試走したアスリートから「足首 が安定し、力を伝えやすい」という声も聞かれた。

強力な推進力を生む可変形状カーボンプレートを内装

② 強力な推進力を生む可変形状カーボンプレート搭載

その復元力で踏み蹴り動作を助けふくらはぎ部・下腿三等筋(かたいさんとうきん)の筋活動を軽減。レース後半までの走力を温存できる。

③ 着地時の安定感をサポートするソール形状

接地面積を最適化したソール形状が安定した着地を生む

ドロップ(シューズのつま先と踵のソールの厚さの差)8mmで自然な前傾姿勢と体重移動を生み出す。

【価格】 2万7000円(税別)
【サイズ】 25.0~28.0cm
【ソール厚さ(大―小)】 35mm-27mm
【ドロップ】 8mm
【重量】 196g (27.0cm/片足)


ブルックスとは

「BROOKS」は1914 年の創業以降、数々の革新的技術を搭載したランニングシューズでビギナーからトップアスリートまで、多くのランナーたちをサポートしてきた。2018 年には米国ランニングシューズ専門店における大人用ランニングシューズカテゴリー(販売価格100ドル以上)で No.1のシェアを誇る。日常のランニングが身体と心にいい変化を与える“RUN HAPPY”をブランドアイデンティティに、ランニングがライフスタイルとして根付く米国で支持されている。また製造工程におけるブルーサイン認証の取得や昨今の環境問題にも配慮したミッドソールの開発など、サスティナブルな取り組みも高く評価されている。

ムーンスターも厚底! さまざまな部活で使える汎用モデル

国内大手シューズメーカーのムーンスターが、部活から日々の運動まで、各種トレーニングに向けた新カテゴリー「NEULON (ニューロン)」を、2020年2月中旬から全国のスポーツ量販店で順次販売する。今話題の、いわゆる厚底モデル

NL 002Mライム 25.0cm~28.0cm(ハーフサイズあり)

ムーンスターのスポーツシューズの歴史は1950年代までさかのぼる。当時はマラソン日本代表選手にランニングシューズの商品提供を行い、その後バスケットシューズ、テニス、ゴルフ、野球、サッカーなどさまざまなスポーツシーンへの商品展開を強化。これらは後に「ジャガーシリーズ」となり、長きにわたって愛される商品となっている。

そんなムーンスターが長年培った技術を結集した新トレーニングシューズ『NEULON (ニューロン)』を発売する。スポーツを始めるきっかけになるシューズとして、ランニングだけでなく部活動や各種トレーニングに使える。

トランポリンユニット機能

『NEULON (ニューロン)』の最大の特徴は”三層構造”により衰えない反発弾性と衝撃吸収性を実現し、360度どの方向の動きにも対応できる「トランポリンユニット」。

1層目には通常のラバーより強い復元力を持つムーンスター独自配合のラバー「レコーブ」を、2層目にはムーンスター最高峰の衝撃吸収・反発弾性をもつ独自配合のクッション素材「ニューロフォーム」を採用。この2つの特殊素材を靴内部に搭載することで 「高衝撃吸収性×高反発弾性の維持」を実現している。

さらに3層目に弾性と耐摩耗性に富んだ高弾性インジェクションEVAを採用。厚底設計ながら屈曲性もよく、マルチな動きにも 対応することを目指したトレーニングシューズとなった。

NEULONラインナップはオールラウンドとレーシングの2モデル

ソールの基本構造は共通の「トランポリンユニット」を採用。動きに合わせた2タイプ展開。


オールラウンドタイプ

オールラウンドタイプ

ジムでの運動や部活でのトレーニング、ダンスなどの変則的な動作にも。7900円(税別)。
・ミッドソールの全面に厚みのある「neulo foam(ニューロフォーム)」を搭載し底面を幅広く設計することで、バランスよく安定した体重移動をサポートし、 縦・横・斜めあらゆる動きに対応。
・アウトソールには全方向の動きに対応できるように縦横の溝を配置し、耐摩耗性の強いラバーを使用することで耐久性を実現している。


レーシングタイプ

レーシングタイプ

部活生からランニング初心者まで。7900円(税別)。
・ミッドソールには走行時の足圧の軌跡に即して「neulo foam(ニューロフォーム)」の厚みを調整して搭載することで走り(縦の動き)に対応。
・ソール全体を細身に設計することで、ALLROUND TYPE に比べ軽量性を実現。
・アウトソールには走り(縦の動き)に対応できるよう蹴り出し部分に軽量性と耐摩耗性のあるソリッドポリウレタンを配置し、踏み込みやすく走りやすい設計。
・屈曲性の高い厚底設計で通勤通学にも最適。


NEULON (ニューロン)試し履きイベントも

ムーンスター史上最も優れた反発弾性・衝撃吸収性を持つ『NEULON (ニューロン)』の機能性を体感できるイベントを全国のスポーツ量販店で開催。

●ニューロンブランドサイト
●ムーンスターのホームページ
●ムーンスターのfacebook
●ムーンスターのオンラインショップ

モデルのヤハラリカがアタカマ砂漠250km走破の写真展

モデル・MCのヤハラリカが2019年10月にチリのアタカマ砂漠250kmを7日間かけて走るアタカマクロッシングを走破。過酷なレースの中、GoProとSALOMONの機材提供により撮影した「砂漠ランナーだから撮れた景色」を選りすぐった写真展を開催する。

The Light of Atacama Desert〜ヤハラサハラ3〜

写真展タイトルは「RIKA YAHARA ’s Photo exhibition The Light of Atacama Desert~ヤハラサハラ3~」。会場は出身地でもある東京都昭島市のモリパーク アウトドアヴィレッジ。2度目となる写真展。入場無料。

The Light of Atacama Desert〜ヤハラサハラ3〜

会期:2020年1月11日(土)〜2月11日(火)
平日   11:00~20:00
土日祝日 10:00~20:00
会場:MORIPARK OutdoorVillage 屋内広場

モデルとして活躍するヤハラリカ

ヤハラ リカ
昭島市出⾝・在住。 モデル・⼥優・リポーター・MC・ラジオパーソナリティなど、幅広い分野で活躍。 楽しんで⾛るファンランナーとして、砂漠マラソン3連続完⾛(サハラ マラソン・ナミブレース・アタカマクロッシング)を達成し、2020年11⽉には南極マラソン出⾛予定。
●オフィシャルサイト
●Twtter、Instagram、TikTok @rika_yahara

ナイキの厚底シューズは一般ランナーもはきこなせるか?

2020年新春の箱根駅伝で陸上長距離界に衝撃が走った。アディダスと契約する青山学院大やアシックスの早稲田大を含めてほとんどの出場選手がナイキ社製の厚底シューズで激走。10区間のうち7区間で新記録が誕生する高速レースとなったからである。

マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)でも場選手たちの多くがピンク色のナイキ社製シューズを履いていた

アディダスは今回の箱根駅伝で青学大の出場選手に履いてもらうため、ナイキのズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%に対抗するモデルを開発。超軽量化をモットーとした従来路線を覆し、かかと部分を厚底化。こうして誕生したtakumi sen 6を青学大のスクールカラーであるエバーグリーンに装飾して2019年末にリリースした。

ところが、驚異的な大会新記録で2年ぶり5度目の総合優勝を遂げた青学大の10選手が使ったのはナイキ社製の厚底シューズだったのだ。

MGCでも上位3選手がナイキの厚底シューズ

2019年9月15日に開催された、2020東京五輪マラソン日本代表を選考するマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)でも場選手たちの多くがピンク色のナイキ社製シューズを履いていたことにも注目が集まった。当時新製品だったズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%である。

「新製品はこれまで以上にクッション性が高まり、脚を守ってくれる。後半に向けて(体力を)ためやすくなった。アッパーも水を吸っても重くならなくなった」と大迫傑選手は証言している。(2019年9月17日取材)

大迫選手も初めて厚底モデルを履いたときは、「もちろん違和感がありました」という。「それは自然と順応できていった。慣れたらはきやすいシューズだなと思います」

MGCで五輪代表に内定した富士通の中村匠吾選手とトヨタ自動車の服部勇馬選手、Hondaの設楽悠太選手らもその性能に言及している。(2019年9月30日取材)

「最新モデルのズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%は強度の高い練習をしても、翌日の疲労度が抑えられます。実際にMGCでも最後のスパートをするタイミングまでしっかり脚を残せて、その特徴が生かせた」とMGC優勝の中村選手は証言。

「もちろん練習もしっかりと積んできたことはありますけど、シューズの性能がプラスに働いたと感じています。これからも使い続けたいなと思います」(中村選手)

一般ランナーの間では、「アフリカ大陸出身選手に見られるフォアフット(前足部)から着地する走法に適したシューズではウワサされることも多いが、中村選手によれば、「個人的な意見ですが、着地はあんまり関係ないかなと思います」とコメントした。

「ボクはフォアフット走法ではありませんが、着地のしかたが変わるというものではなく、フォームを改善したようなこともないです」(中村選手)

MGCで2位になり、東京五輪代表に内定した服部選手も、「ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%はフィット感があることと、撥水性があるのがいい。夏マラソンでは給水やスポンジなどの水分でシューズがグチャグチャになってしまうけれど、それがないのがいい点だと思いました」と語っている。

初代のヴェイパーから愛用していて、トラックからマラソンまでズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%を幅広く活用しているという設楽選手は、「レースを走ったときのダメージは、これまでのシューズと比べたら全然ないです。もともとシューズにはあまりこだわらないので、提供されたものをはくだけで十分です。どうだった?と聞かれてもあんまり分かんないです」とコメント。

それでも2018年の東京マラソンで16年ぶりに日本新記録を打ち立てた実績はナイキシューズとともにあったことは見逃せない。

市民ランナーにもおすすめできるモデルなのか聞いてみた

2019年の箱根駅伝ではナイキ社製の厚底シューズの性能は目を見張るものがあった。当時の最新モデル、ズーム ヴェイパーフライ 4% フライニットが着用率トップ。大会5連覇を狙った青学大は契約のアディダスを使用し、連覇を断たれる2位となった。その年の7月には最新版ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%が発売。そして2020年新春の駅伝シーズンではニューカラーとして薄いグリーンとオレンジのグラデーションモデルが登場。ニューイヤー駅伝を含めてテレビ画面で際立った存在となった。

「シューズの性能がプラスに働いたと感じる。これからも使い続けたい」とMGC優勝の中村匠吾

「はきこなせる、はきこなせないといわれるけど、だれでもはきこなせると思います。今回のMGCでも中村選手や服部選手など上位選手はすべてはいています。この商品が優れているから履いて、口コミで広がっている。設楽選手やボクがはいているからというのではなく、ホントにいいものはいいという世界です」(大迫選手)

その一方で、速く走るためにカーボン製のプレートが入っているので、脚へのダメージは意外とあって疲れやすいという特徴も。大迫選手もジョグは下位グレードのジームペガサスを愛用する。さらにトラック練習の時はスパイクシューズで質の高い走りを目指すという。

「一般ランナーにひとつアドバイスすることがあるなら、トップモデルはある程度マイル(耐用距離)が決まっていて、練習時から無駄遣いできないので、ペガサスターボやズームフライなど下のモデルをはいて、傾斜に慣れていくのがいいと思います」(大迫選手)

一般ランナーが厚底シューズを購入する際のアドバイス

「トップモデルは耐用距離があるので、練習用のシューズと併用するなどうまく使いこなすことがオススメです。ボクはスピード練習のとき、週に1回ほど使用して、それでも2カ月ほど使えます。一般の人は毎日使うとかではなく、本番前の足慣らしにはいて、そして気持ちよく本番に投入してほしい」(中村選手)

服部選手は最新モデルの性能を最大限に引き出すためには「しっかり練習すること」とポイントを挙げる。

「この靴を履いたら速くなれるというものはありません。自分自身もそうですが、まずはしっかりとトレーニング、しっかり練習。走るのは自分ですからね」

MGC2位の服部勇馬、後方が3位の大迫傑

練習ではナイキ・フリー、ポイント練習ではズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%しか使っていないという設楽選手は、「だれがはいているとかではなく、自分で試着して自分で決めるといいです」とアドバイス。

同じ持久系有酸素スポーツの自転車ロードレースでも同様の衝撃的機材が脚光を浴びた歴史がある。1989年のツール・ド・フランスで米国のグレッグ・レモンが投入したDHバーだ。それまではトライアスロンの米国選手が自転車パートで使用する機材だったが、それを欧州が主戦場となるロードレースにレモンが投入。ツール・ド・フランス最終日の個人タイムトライアルで逆転優勝することになり、以来DHバーは世界標準となったのである。

圧倒的に有利になる厚底シューズについては国際団体から規制がかかる可能性もあるという。かつての競泳のレーザーレーサーのように使用禁止となるかは、今後の議論次第である。

●大迫傑インタビュー