キナン3選手がツール・ド・フランスさいたまで世界の強豪と肩を並べる

2018ツール・ド・フランスさいたまクリテリウムがさいたま新都心駅周辺で11月4日に開催され、キナンサイクリングの山本元喜、雨乞竜己、中西健児の3選手が参加。2018年のツール・ド・フランスを制したゲラント・トーマス(英国、スカイ)など世界トップレベルの選手と肩を並べ、力強い走りをみせた。

ツール・ド・フランスさいたまを走るキナン勢 ©︎KINAN Cycling Team / Midori Shimizu

その年のツール・ド・フランスで活躍した選手が集まるこのイベント。JRさいたま新都心駅周辺は大会カラーであるイエローに彩られ、「サイクルフェスタ」や、食のイベント「さいたまるしぇ」といった、レースにとどまらない催しで大にぎわい。まさに“祭典”という言葉がふさわしい1日となった。

市民のパレード走行、さらに出場選手全員によるオープニング走行からレース関連イベントが幕開け。選手たちは、ステージでスタートサインをしたのち、ゆっくりとコースを一周。早い時間帯から沿道には多くの観客が詰めかけ、選手たちは歓声の中でファンとハイタッチをしたり、声援に手を振りながら応えたりとサービスに勤しんだ。

レースは4名1組で競い、その勝者が決勝に進むスプリントレース予選に雨乞が出場。スタートから2kmはペーサーの後ろについてポジション争い。その後、残り1kmでジャンが鳴るユニークなレース。別府史之(ツール・ド・フランスジャパンチーム)、小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)、マッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)とハイレベルな組で出走した雨乞は、別府に続く2位。1位の選手のみが進出できる決勝へ出走はかなわなかった。

キナン勢の次なる出番は、3選手により編成される2.5kmチームタイムトライアル。チーム内最上位選手のフィニッシュタイムで順位が決まるため、作戦の立て方も大きなカギとなる。先頭交代をしながら終盤まで3人で走るチームや、発射台方式で順次切り離すチームなど、戦術はチームによってさまざま。キナンは中西を先頭にスタートダッシュ。雨乞がスピードに乗せ、満を持して山本がゴールまで駆け抜けるという切り離し作戦を実行。狙い通りの動きを見せたが、トップには2秒及ばす、3分16秒88で4位で終えた。

会場が熱気に包まれたところで、いよいよメインのクリテリウムレース。小雨が降る時間帯があったものの、レースに影響するまでには至らない。沿道にはキナンジャージを着用して応援するファンも見られた。

レースは、序盤に外国人選手数人の逃げができるが、メイン集団は容認。山本はメイン集団の中で積極的な走りを見せ、場内放送では何度もその名前がコールされた。

スタート・フィニッシュ地点が設けられるホームストレートを選手が通過するたび、スタンドからは大歓声やウェーブが起こる。そんな盛り上がりの中、最後は2018年の世界チャンピオンであるアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)の優勝で幕を閉じた。

本場ツール・ド・フランスの熱気を日本にもたらす、秋の風物詩は今回が6度目の開催。今大会より新設された「オフィシャルサポーターズヴィレッジ」は、選手と観客との距離の近さが特徴的。大会に協賛した観客が入場でき、スポンサーブースを楽しんだり、選手ピットの様子をのぞくこともできる。キナンの3選手は、レースの合間に観客スペースへ行き、写真撮影やサインの求めに応じていた。

そしてなにより、国内外のトップライダーが集うイベントに、観客も大興奮。会場から徒歩圏内に住んでいるという高齢女性は、初めて観戦するロードレースのスピードに驚き、握手などに気軽に応じてくれる選手の優しさに感動したと興奮気味に話していたことが印象的だった。そんな大熱狂の1日は、観客に後押しされた選手たちにとっても刺激的なものだったように思われる。(Report:清水翠、Edit:福光俊介)

山本元喜

山本元喜のコメント
第2回大会以来の出場だったが、その時と比べて観客との距離が近く、直接交流できる機会が多かったと感じた。レース中にアタックしたり、前に上がったりすると観客の反応が大きかった。“ゲンキー!”と名前を呼んでもらえて、いつも以上に一生懸命動くことができた。たくさんの観客のなかで走れたことは、これからのモチベーションになると思う。

雨乞竜己

雨乞竜己のコメント
スプリントレースはほどよい緊張感のなかでペーサーとともに2kmまで走り、そこからスタートだったが…最後は力及ばず。集中するなかでも応援の声は聞こえていた。“キナン!”だったり自分の名前だったり。応援を力に変えることができた。

中西健児

中西健児のコメント
スピードの速いレースだとは聞いていたが、想像していた以上に速かった。集団内のどこにポジショニングしていても、そのスピードを実感させられた。そんな中でも、沿道のとぎれない観客から多くの声援をもらった。完走できるか不安だった面もあるが、みんなの声に励まされて走り切ることができた。

熊野古道ヒルクライムで無事故を祈願しゲストライダーが那智山を参拝

和歌山県南部の那智勝浦町で11月4日に開催される熊野古道ヒルクライムを前に、ゲストライダーとして参加するキナンサイクリング選手・スタッフ、イベント関係者が同町の那智山を参拝。イベントの成功とサイクリストの活躍・無事故を祈願した。

©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

例年11月初旬に行われるヒルクライムイベントとして、すっかり定着した「熊野古道ヒルクライム」。それにともない、同県はもとより遠方からの参加者も増え、走行スピードやフィニッシュタイムといった面での水準が年々アップしている。そこで、事故なくスムーズなイベント進行が図れるよう、主催するSPORTS PRODUCE熊野の音頭のもと、関係者での安全祈願を実施することとなった。

那智山での祈願では、まず西国三十三所第一番札所の青岸渡寺へ。その後、隣接する熊野那智大社へおもむいての祈祷に臨んだ。ユネスコの世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の登録資産であり、熊野三山の1つである荘厳な空間で、これまで以上に質の高い催しとすることを誓った。

今回のイベントにはゲストとして、キナンから椿大志、山本大喜、トマ・ルバ、新城雄大、中島康晴の5選手が参加。また、Jプロツアーなどに参戦するイナーメ信濃山形から筧五郎と森本誠もスタートラインに並ぶほか、ライド後のトークショーにキナンの選手たちとともに出演が予定されている。参加者は30.7kmと14.6kmの2コースに分かれ、同町のブルービーチ那智を午前7時にパレードスタート。那智山の頂を目指す多くの参加者でにぎわうことが期待される。

井上亮がアタック一発で独走勝利…KINAN AACA CUP 2018 最終戦

キナンサイクリングがホストを務める東海地区のロードレースシリーズ「KINAN AACA CUP」は、10月27日に2018年シーズンの最終戦にあたる第11戦を実施。メインレースの1-1カテゴリーは、前半に形成された4選手による逃げグループが着々とリードを広げ、そのまま優勝争いへ。最終周回に入り、残り3kmを切ったタイミングでアタックを決めた井上亮(Magellan Systems Japan)が独走に持ち込んで優勝を決めた。

井上亮がアタック一発で独走勝利 ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

今シーズンは悪天候による2度の中止があり、急きょ10月の追加開催が決定。新たにレース機会が設けられたことも幸いし、トップの1-1からビギナーでも参戦できる1-4カテゴリー、さらには個人TTと、多くのライダーがエントリー。東海地区のロードレースシーンのレベルアップを主目的としつつも、プロ・アマ、年齢・性別を問わずチャレンジできるレースが今回も繰り広げられた。

シリーズ主会場の長良川沿いのコースで実施されたレースに、キナンからは椿大志、塚本一樹、中西健児、山本大喜、トマ・ルバ、中島康晴、新城雄大の7選手が出走。11月上旬に控える国際レース、ツール・ド・おきなわ(UCIアジアツアー1.2)を視野に調整段階にある国内プロチームからは、マトリックスパワータグも参戦。安原昌弘監督自ら“選手”としてレースに臨むなど、注目度の高い一戦となった。

前夜から降り続いた雨はスタート時に上がったものの、北からの風が強まり、周回前半が向かい風、後半は追い風というコースコンディション。それも関係してか、レース序盤は集団内での出入りが繰り返される状態。追い風を利用してスピードに乗せるも、向かい風区間で集団に戻されるなど、逃げ狙いの選手たちが悪戦苦闘する姿が目立つ。一時、椿を含む4選手がリードしたが、これも逃げグループ形成までは至らなかった。

その流れに変化が生まれたのは、6周回目。力のある4選手が集団から飛び出すと、後続との差を徐々に広げていく。リードする4人は、井上のほか、安原大貴(マトリックスパワータグ)、筧五郎(ロードレース男子部)、さらにキナンから中島。その差は最大で1分50秒近くにまで拡大した。

快調に飛ばす4人に対し、後続ではレース中盤に入って追走狙いの動きが散発。単独でのアタック、数人単位での追走グループ形成など、次々と選手たちが追撃を試みるがいずれも局面打開にはつながらない。

協調体制を保った先頭の4人は、後続とのタイム差を維持し、やがて逃げ切りが濃厚となる。十分なリードを持って残り1周を迎えると、最終周回の鐘と同時に安原がアタック。これを筧のみがチェックできず、優勝争いは3選手にゆだねられる。アタックを繰り返す安原に中島がすかさず対応。少し遅れて井上が追いつくといった構図。

そして、決定打は追い風となる周回後半に入った直後に訪れた。安原・中島が見合う隙を突いて井上がアタック。反応が遅れた2人を置き去りに、追い風を生かした井上がスピードに乗せる。プロ選手が多く参戦し、ハイレベルとなったレースを制したのは、最後の最後に独走に持ち込んだ井上だった。その後ろでは安原が中島を引き離し、井上を追い上げるも届かず。中島は3位、メイン集団から抜け出した選手たちによる追走は、ホセビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)が単独となり、最終的に4位でフィニッシュした。

優勝した井上は2018年の全日本選手権ロードレースで8位に入った実力者。普段はエンデューロなどで力を培っているといい、「これまで目立ったリザルトはなかったが、今回優勝できてうれしい」と笑顔。今後も実力派ホビーレーサーとして注目を集めそうだ。

中止分も含め、全11戦で争われた2018年のシリーズ総合成績では、中島が前節で年間1位を確定させていて、今回の3位で獲得した分も合わせてポイントを伸ばしている。年間総合表彰は、12月16日に開催されるサイクルエンデューロイベント「ヴェロフェスタ2018 in モリコロパーク」内で行われる。

そのほか、この日はキナンのサプライヤー企業のブースも複数出展。YONEXブースでは先ごろ発表されたエアロロードアイク「AEROFLIGHT」、MINOURAブースでは新作ハイブリッドローラー「FG542」といったニューモデルの展示が行われた。スポーツサプリメントの「ATHLETUNE」ブースではアイテム紹介のほか、各カテゴリーでの優勝の副賞出品などで協賛。

また、キナンの選手が講師を務める「レーススキルアップ講座」では、中西をメインに体幹トレーニングをテーマに実施。レベル向上を目指すサイクリスト以外にも、ファミリーでの参加など、誰もが気兼ねなく取り組むことのできるメニューを体験した。

東大発・電子トレカサービス「whooop!」にキナンサイクリングが参加

キナンサイクリングが電子トレーディングカードサービス「whooop!」(フープ)にした。オンラインでの選手トレーディングカードを発行し、購入者やコレクターに向けたオリジナル特典を用意することで、応援するファンとこれまで以上に密接な関係を築き、チーム運営に役立てていきたいという。

KINAN Cycling Team版トップページ

「whooop!」は東京大の学生を中心として結成されたベンチャー企業「ventus」が開発・提供する電子トレーディングカードサービス。スポーツチームが1枚300円のカードを発行し、購入代金の90%がチームの活動資金となるシステムだ。応援するチームの選手カードをオンライン上でコレクションできるのはもちろんのこと、保有枚数に応じた購入者・コレクター特典、オークション機能やトレード機能(近日実装予定)を利用して購入者同士でのカード取り引きも行うことが可能。

購入者は保持するカードや購入履歴を公開することができ、「応援するチームへの熱意」をアピールすることも可能。特定のアスリートやスポーツチームに対しての貢献度が高いユーザーは、ランキング上位として公開される。

キナンでは、所属11選手のカード(各選手数パターンずつ)の販売のほか、6種類の購入者特典(イベント)を用意。今後も、季節やチーム活動状況に合わせたユニークな特典を準備していく予定だという。

「レース会場やイベントなど、現地での直接的な応援やご支援にとどまらず、オンライン上で好きな時に好きな形で、ひいきのチームをサポートできる新たなシステムに、チームとしても大きな期待と希望を膨らませています。そして、購入してくださった方々も“KINAN Cycling Teamの一員”して、一緒にレースを戦っていけるようなサービスを提供してまいる所存です」と同チーム。

whooop!(フープ)
●公式サイト
●KINAN Cycling Team版トップページ
登録方法:登録するFacebookまたはTwitterアカウントで

収録カードイメージ

購入者特典(イベント)
■サイン入り選手着用レースウェアプレゼント
実際にレースで選手が使用したレース用のウエアにその選手が直筆サインを入れてプレゼント。
参加条件:KINAN Cycling Teamの「firstcard」をいずれか15枚使う

■あなただけに贈る! 選手からのメッセージ動画
所属選手1人につき、各先着1名に当該選手からのメッセージ動画が贈られる。推しの選手があなたの名前を呼び、感謝を伝える、世界で1つだけのスペシャル動画!!
参加条件:KINAN Cycling Teamの「firstcard」をいずれか15枚使う

■KINAN Cycling Teamシークレットイベント参加権利プレゼント
先着15名にKINAN Cycling Team主催のシークレットイベント参加権利をプレゼント! 開催場所や日時は権利獲得者のみにお知らせする、完全シークレットイベント。イベントでは選手とのサイクリングや食事会を実施予定。
参加条件:KINAN Cycling Team☆3の「firstcard」を10枚使う

■選手サイン入りチームグッズ一式をプレゼント
所属選手1人につき、各先着1名にサイン入りチームグッズ一式をプレゼント。チームオフィシャルのアイテムが「すべて」お目当ての選手のサイン入りで、あなたの元へ!
参加条件:KINAN Cycling Team☆1の「firstcard」を20枚使う

■ツール・ド・熊野 特別観戦体験をプレゼント!
先着5名にツール・ド・熊野最終日、VIPカーに乗車権利をプレゼント。ツール・ド・熊野第3ステージを、メインスポンサー「株式会社キナン」角口賀敏会長が運転するVIPカーで特別観戦。さらには、レース終了後のポディウムでKINAN Cycling Teamの選手たちと一緒に集合写真撮影も!
参加条件:KINAN Cycling Team☆2の「firstcard」を15枚使う

■11名早い者勝ち! 選手サイン入りグッズプレゼント
先着11名にサイン入りグッズをプレゼント。所属選手1人につき、各1名が当選。誰のサインで、どんなグッズかは届いてからのお楽しみ!
参加条件:KINAN Cycling Teamの「firstcard」をいずれか10枚使う
※イベント実施期間は、いずれも10月14日~12月1日
※各イベントの詳細、応募要項は「whooop!」内参照のこと

マルコス・ガルシアが逃げで積極的に展開…ジャパンカップ

アジア屈指のワンデーレースであるジャパンカップサイクルロードレースが10月21日、宇都宮市森林公園周回コースで行われた。キナンサイクリングは、スタート直後の古賀市林道の上りでアタックを決めたマルコス・ガルシアが逃げグループで展開。頂上に設けられた山岳ポイントを1位通過し、山岳賞を獲得した。また、チーム最上位はトマ・ルバの18位。優勝争いへはあと一歩届かず、ビッグタイトル獲得は来シーズン以降へと持ち越された。

山岳賞の表彰を受けるキナンのマルコス・ガルシア ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

19日のチームプレゼンテーションに始まり、20日には38.25kmで争われたクリテリウムに臨んだキナン。上位進出こそならなかったが、スプリント勝負までの選手間連携に手ごたえを得て、レースを終えている。

そして迎えたのが、アジア圏で開催されるワンデーレースとしては最上位のHCクラスに位置付けられる大会のメインレース。10.3kmのコースを14周回する144.2kmに、国内外の21チームが挑んだ。キナンは山本元喜、マルコス・ガルシア、山本大喜、サルバドール・グラルディオラ、トマ・ルバ、新城雄大の6選手が出走した。

レースのポイントとなるのは、標高差185mを一気に駆け上がる古賀志林道の登坂。特に終盤は、有力選手の攻撃が活発となる区間だ。また、登坂後のダウンヒルや平坦区間も見もので、上りで仕かけた選手たちと、それを追う後続選手たちとの激しい攻防が見られることが予想される。なお、3・6・9・12周回目の古賀志林道頂上には山岳ポイントが設定される。2017年は冷雨で周回数・レース距離が短縮された中で、ルバが山岳賞獲得1回を含む5位入賞。今回はそれを上回る好成績を目指した。

午前10時にスタートが切られると、すぐにやってくる古賀市林道で早速レースが動いた。オスカル・プジョル(スペイン、チームUKYO)のアタックにガルシアが反応。一気の動きに、あっという間に逃げグループが形作られる。さらに1人を加え、3人がレースをリードすることとなった。メイン集団は地元・宇都宮ブリッツェンがコントロール。先頭の3選手とのタイム差を約1分30秒として進行していく。

3周回目に入り、この日最初の山岳ポイントへ。頂上を1位通過した選手に山岳賞が贈られるが、これをガルシアが狙って動く。先に仕掛けたプジョルを追い、頂上目前でパス。トップでの頂上通過を果たし、山岳賞獲得が決定した。

その後も先頭交代のローテーションを繰り返し、快調に進んでいくガルシアら3選手。6周回目に設けられた2回目の山岳賞は、ともに逃げていたクーン・ボーマン(オランダ、ロットNLユンボ)が獲得。以降も態勢に変化はなく、着々と周回数を減らしていった。

レースの流れが変化したのは、9周回目。3回目の山岳賞を目指し飛び出したボーマンがそのまま独走を開始。ガルシアはプジョルを引き離し、ボーマンを1人で追走するが、11周回目でロットNLユンボ勢がメイン集団のペースを急激に上げると、ガルシアら先行していた選手たちは吸収され、さらには集団の人数が絞り込まれた。

こうした動きの中、前方でレースを進めたのがルバ。16人となった先頭グループにチームでただ一人残り、勝負どころを意識しながら走る。数十秒の差で追う第2グループにグラルディオラらキナン勢も含まれ、懸命に前を目指した。

12周回目の後半で、先頭グループにさらなる変化が発生。2選手の飛び出しをきっかけに、さらに4選手が追って、そのまま新たなトップグループへ。ルバがこの動きに乗り遅れ、やがてグラルディオラが入った追走グループがジョイン。そのまま6選手が後続との差を広げていき、ルバとグラルディオラは約15人の第2グループで終盤を迎えた。

第2グループは前との差を縮めることができず、上位フィニッシュ狙いの態勢に。優勝争いから2分26秒後、フィニッシュへとやってきた。ルバ、グラルディオラともにスプリントで上の順位を目指したが、それぞれ18位、19位で終えた。

その後、残るキナン勢4選手もフィニッシュラインを通過。山本大と山本元は、ともに第3グループでレースを終え、それぞれ36位と39位。HCクラスの上位40選手に付与されるUCIポイント圏内を確保した。

2017年以上の好成績を視野にレースに挑んだキナンだったが、優勝争いには届かず、選手たちを悔しさをにじませた。一方で、スタート直後から積極性を見せたガルシアが山岳賞を獲得。登壇を決め、多くの観客の前で山岳ジャージに袖を通した。次への期待と、巻き返しを誓って今大会を終えることとなった。

シーズンのうちでも大きなウエイトを占めていたレースプログラムを終え、チームは新たな目標を設定して走る続けることになる。今後はホストレースの「KINAN AACA CUP」やイベント出演に励んだのち、11月11日のツール・ド・おきなわ(UCIアジアツアー1.2)で2018年の公式戦を終える予定となっている。

ジャパンカップサイクルロードレース(UCIアジアツアー1.HC、144.2km)結果
1 ロブ・パワー(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット) 3時間44分0秒
2 アントワン・トールク(オランダ、ロットNL・ユンボ) +0秒
3 マッティ・ブレシェル(デンマーク、EFエデュケーションファースト・ドラパック) +40秒
4 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、BMCレーシングチーム)
5 イヴァン・サンタロミータ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニ) +42秒
6 マルコ・カノラ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニ) +2分2秒
18 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) +2分26秒
19 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team)
36 山本大喜(KINAN Cycling Team) +5分9秒
39 山本元喜(KINAN Cycling Team)
60 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) +8分42秒
61 新城雄大(KINAN Cycling Team)

山岳賞
1回目(第3周回)マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team)

マルコス・ガルシア

マルコス・ガルシアのコメント
逃げグループでレースを展開することが理想だと考えていた。3人の逃げグループとなったこともイメージ通りだった。山岳賞は私にとってボーナスのようなもの。それ以上に、長い時間先頭で走ることを重視していて、そのまま勝負できる状況にできれば最高だと思っていた。それだけに、逃げ切りができなかったことだけは残念だった。
好調でこの大会に臨むことができ、全力を尽くすことができた。走りそのものは満足している。今後のレースでは、より落ち着いて、冷静なレース運びを心がけていきたい。

サルバドール・グアルディオラ

サルバドール・グアルディオラのコメント
序盤はマルコスの逃げをフォローでき、その後はメイン集団でレースを進めた。ジャパンカップはいつでもハイレベルの戦い。全力のパフォーマンスを見せないといけないし、19位というリザルトも受け入れるつもりだ。
今シーズンでも特に重要なレースを戦い終えることができてうれしい。新しいチームでのシーズンはとても素晴らしく、みんなが家族のような存在に思える。私自身、ベストパフォーマンスを続けられたのは、誰もが優しく接してくれたことに尽きると感じている。

トマ・ルバ

トマ・ルバのコメント
終盤の判断ミスがリザルトに響いてしまった。6選手が先行したときに対応できていれば、違った結果になっていたと思う。今年から126選手と出走人数が増えたが、レースの流れはこれまでと変わらない印象だ。それだけに自らの結果に対する言い訳にはできない。

上位進出ならずも世界の一線級相手に臆せずスプリント ジャパンカップクリテリウムのキナン

10月19日から各種イベントが行われているジャパンカップサイクルロードレースは、20日に宇都宮市中心部でクリテリウムを開催。翌日のUCI(国際自転車競技連合)公認の国際レース出場チーム・選手を対象に行われた38.25kmのクリテリウムで、キナンサイクリングは中島康晴の18位がチーム最上位だったものの、UCIワールドチームを中心に展開された主導権争いに挑み、スプリント態勢を形作った。上位入賞こそならなかったが、翌日に控える本戦へとつなげる果敢なトライとなった。

ジャパンカップクリテリウムをパレードするキナンチーム ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

前日は大観衆が詰めかけた中でのチームプレゼンテーションで、ファンの心を惹きつけるパフォーマンスを披露したキナンの選手たち。一様に笑顔を見せ、ムードのよさをアピールした。一転して、この日はハイスピードバトルに挑むとあって、各選手が集中した姿を見せた。

宇都宮市大通りを周回する、1周2.25kmのコースは、高低差こそほとんどないものの、たびたび訪れるヘアピンカーブでのポジショニングや、コーナークリア後の加速などが勝負するうえでのポイントとなる。スピードとバイクテクニックが要求され、優勝争いのスプリントは時速60km近くなることも。キナンは山本元喜、山本大喜、サルバドール・グアルディオラ、トマ・ルバ、中島康晴、新城雄大の6選手をセレクト。中島を軸にレースを展開することを確認した。

2周回のパレード走行後、15周回する総距離38.25kmの戦い。129選手が一斉にスタートすると、序盤はアタックと吸収の繰り返し。3周回目に2人が飛び出し、しばし先行するが、これは4周回目に設けられた1回目のスプリント賞通過を機にメイン集団へとバック。その後も7人程度の先頭グループが形成されかけるが、集団に対してリードを得るまでには至らない。8周回目に設定された、この日2回目のスプリント賞では、先に仕かけた選手を新城が猛追。しかし、わずかの差で届かず、スプリント賞獲得とはならなかった。

レースが後半に入ると、UCIワールドチーム勢を中心に主導権争いが本格化。トレック・セガフレードやミッチェルトン・スコットが前方を占める中、キナン勢は中島を中心に陣形を整え、好位置を確保。山本元や新城らが中島のポジションキープに従事し、残り周回が減るにつれてルバやグアルディオラも位置取り争いに加わる。その間、12周回目に設定された3回目のスプリント賞に山本大が挑む。1位通過はならなかったが、積極的な姿勢を見せた。

決定的なアタックはなく、勝負は戦前の予想通りスプリントにゆだねられることに。キナン勢はグアルディオラが集団最前列でリードアウト。フィニッシュ前600mでの最後の折り返しで絶好の位置をキープした中島が勝負に臨んだ。

満を持してスプリンターとの争いに挑んだ中島だったが、周囲の選手同士で起きた接触の影響で加速しきれず。番手を下げ、挽回できずにフィニッシュラインを迎えることとなった。結果は18位。レースを終えた中島は、イメージとはほど遠い結果と、上位進出を託されていた責任から悔しさをにじませた。

一方、リザルトに現れる形での好結果とはならなかったものの、各選手がチームオーダーに基づき走り終え、世界の一線級の選手・チームを相手に戦った点では大きな収穫となった。心身ともにポジティブな状態で、次なる戦いへ向かう。

翌21日は、いよいよ大会の華であるロードレースが行われる。宇都宮市森林公園へ舞台を移し、10.3kmのコースを14周回する144.2kmで争われる。注目は、標高差185mを一気に駆け上がる古賀志林道の登坂。特にレース終盤は、有力選手の攻撃が活発となる区間。登坂後のダウンヒルや平坦区間も見もので、上りで仕掛けた選手たちと、それを追う後続選手たちとの激しい攻防が見られることが予想される。

UCIが公認するカテゴリーでは、アジア圏で行われるワンデーレースとしては最上級のHCクラスに位置付けられている。グアルディオラはクリテリウムのメンバーから、中島とマルコス・ガルシアを入れ替え。6選手がチームとしてはこの大会初タイトル獲得と、UCIポイントの獲得を目指してスタートラインにつくこととなる。

<strong>ジャパンカップクリテリウム(38.25km)結果</strong>
1 ジョン・デゲンコルプ(ドイツ、トレック・セガフレード) 42分38秒
2 キャメロン・スコット(オーストラリア、オーストラリアン・サイクリング・アカデミー) +0秒
3 マルコ・カノラ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニ宇都宮ブリッツェン)
4 ロバート・スタナード(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)
5 レイモンド・クレダー(オランダ、チームUKYO)
6 ローガン・オーウェン(アメリカ、EFエデュケーションファースト・ドラパック)
18 中島康晴(KINAN Cycling Team)
65 山本大喜(KINAN Cycling Team) +15秒
89 新城雄大(KINAN Cycling Team) +30秒
91 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) +32秒
105 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team) +43秒
111 山本元喜(KINAN Cycling Team) +47秒

中島康晴

中島康晴のコメント
今回は自分が勝負する役割を担うことになったので、メンバー間の連携を心がけて最終局面へと持ち込めるように走った。残り5周以降から(山本)元喜たちが中心になって動いてくれて、残り2周からはサルバが牽引、そして最後の半周は(新城)雄大が引き上げてくれて、自分としてはベストな状態でスプリント態勢に入ることができた。
トレック・セガフレードのトレインをマークしながら加速を始めたが、周りで接触があった関係で、それを避けるのに減速せざるを得ず、ねらい通りのスプリントとはいかなかった。チームがいい仕事をしてくれて、あとはそれに応えるだけだったので、みんなに申し訳ない。
明日はレース出走はないが、やるべきことは残されている。実際にレースを走るのは6人だけれど、応援してくださる方々が“7人目のライダー”だと思っている。その“7人目のライダー”たちを引っ張って、みんながチームとして戦えるよう盛りあげたい・