ツアー・オブ・ジャパンが新型コロナ禍で開催中止

ツアー・オブ・ジャパン組織委員会は、5月17日から24日まで全国8都市で開催する予定だったツアー・オブ・ジャパンを中止すると、3月25日に発表した。大会は2003年の第8回が新型肺炎・重症急性呼吸器症候群(SARS)によって中止されている。

新型コロナウイルス感染症が拡大している状況を受け、大会主催者はWHO(世界保健機関)や日本政府をはじめとする関係機関の対応や他の国際的なスポーツイベントの動向を注視し、大会の開催可否について検討を重ねてきた。

3月18日付で国際自転車競技連合(UCI)より「新型コロナウイルスの影響により4月30日までに開催予定のUCI公認レースは、関係者の安全確保のために中止とする」との決定がなされた。また、3月21日から欧州各国を含む計38カ国からの入国制限が開始され、日本人を含めた対象地域からの到着者すべてに2週間の待機が義務付けられた。

感染拡大防止策として無観客レースも検討したが、各開催地自治体とともに『日本の地域を元気にする社会貢献型の国際スポーツイベント』をテーマに掲げて開催する大会が目指す本質的な意義を実現することが困難であるとの判断に至ったという。

出場選手、観戦者、関係者の健康と安全を最優先に考慮した結果、3月24日に2020ツアー・オブ・ジャパンの開催中止を正式決定した。2020年大会は開催中止となるが、2021年に向けて動き始めた。2021年は新たに相模原ステージ(神奈川県相模原市)開催も予定しているという。

●ツアー・オブ・ジャパンの開催中止会見は3月25日(水)16時よりインターネットライブ配信で実施する

キナンのTOJメンバーがホームタウン・いなべ市で自転車安全教室

5月19日から始まるツアー・オブ・ジャパンを前に、KINAN Cycling Teamはホームタウンの三重県いなべ市の小学校を訪問。実際にツアー・オブ・ジャパンに出場するメンバーが児童を対象としたウィーラースクール(自転車安全教室)を実施した。実演を交えながら自転車の正しい乗り方を確認し、講習の後半には実技も行った。そして、児童たちと大会での活躍を約束。大会3日目に待ついなべステージでの勝利を誓った。

講師役を務めたのは山本元喜、大久保陣、新城雄大の3選手。阿下喜小の児童たちと ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

ツアー・オブ・ジャパンいなべステージの関連事業として、同ステージをホストとして戦うKINAN Cycling Teamが参画する各種取り組みの一環として行われている。この日は、いなべステージスタート地点近くに位置する阿下喜小に選手・スタッフが出向いて、全校児童との交流の場が設けられた。

講師役を務めたのは山本元喜、大久保陣、新城雄大の3選手。間近に迫るツアー・オブ・ジャパンへの出場が決まっている選手たちが参加するプレミア度の高いスクールに。また、進行役を中西健児アカデミーコーチが務め、選手たちや児童たちとの掛け合いを通して、安全で楽しい自転車の乗り方を説いていった。

スクールでは全校児童150人とともにレース映像を見ながらツアー・オブ・ジャパンの予習をしたり、選手たちが実演しながら自転車走行の危険例の確認、そうした危険を回避する手段としてのブレーキ方法などをレクチャー。「安全に、楽しく、じょうずに自転車に乗ろう」を合言葉に、スライドを用いながら自転車運転のマナーを学んでいった。

後半からは、実技として5~6年生約55人が自転車操縦に挑戦。一本橋やシーソー、ジグザグ走行など複数の障害物が設置されたコースでは、自転車走行に慣れている児童でも慎重に1つひとつの障害をこなしていく様子が見られた。選手たちが的確なアドバイスを送り、課題を克服する様子をみんなで応援するといったムードも徐々に高まっていくと、はじめのうちは緊張していた児童もやがてスキルアップ。なかにはスピードに乗せたままスムーズにすべての障害をクリアしていく児童の姿も見られた。

ウィーラースクール恒例の「おそおり競争」は、もちろんこの日も実施。数メートル先のフィニッシュラインまで、バランスを保ちながらいかにしてゆっくり進めるかを競うゲームは、大きなハンデを背負った選手たちと児童との真剣勝負。体育館には応援の声が鳴り響いた。

最後は、ツアー・オブ・ジャパン出場選手3人がレースでの活躍を約束。いなべステージ当日には、4~5年生がコースでの予定とあり、よい報告を届けることを誓った。そして、全校児童に応援グッズを配布し、それを手に選手たちとの記念撮影でスクールを終えた。

ツアー・オブ・ジャパンいなべステージは5月21日に行われる。午前9時20分に阿下喜駅前をスタートし、パレード走行を経ていなべ市梅林公園をメインとする周回コースでレースが展開される。

NIPPOは白基調のジャージでジロ・デ・イタリアへ

5月11日から6月2日まで開催されるジロ・デ・イタリア(UCIワールドツアー)、5月19日から26日までのツアー・オブ・ジャパン(UCIアジアツアー2.1)の2レース限定で、NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネはホワイトを基調としたスペシャルジャージを着用する。

年に一度、スペシャルジャージを着用することがルールで認められいる。チームはこれまでも注目度やプロトンでの視認度を上げるために、ジロ・デ・イタリアやジャパンカップなどで着用してきた。

スペシャルジャージはオレンジ色を基調とすることが多くなっていたが、今季はオリジナルのジャージデザインとの差別化を図り、ファンにとっての“サプライズ”となるべく、斬新なホワイトを基調としたデザインに仕上げた。

主要スポンサーロゴは従来どおりだが、袖に大きくENEOSのロゴが配置され、新たにサイドにもNIPPOのロゴが入った。イタリアのトップブランド・サンティーニ製で、ホワイトを基調とするデローザのチームバイクともよりマッチするデザインになる。

イタリアでは5月9日夜(日本時間5月10日早朝)、ジロ・デ・イタリアのチームプレゼンテーションが開催され、スペシャルジャージが正式公開される。

🇮🇹2019ジロ・デ・イタリアの特集サイト

ツアー・オブ・ジャパン伊豆ステージ応援ライドツアー

宇都宮ブリッツェンが出場する国内最大規模の自転車ロードレース『2019 ツアー・オブ・ジャパン』の第7ステージ伊豆を観戦する応援ライドを、チームのメインスポンサーを務めるミヤタサイクルが5月25日に開催する。

宇都宮ブリッツェン

ミヤタサイクルは、日本国内での独占販売権を有するMERIDA(メリダ)の試乗・展示施設 『MERIDA X BASE(メリダ・エックス・ベース)』(静岡県伊豆の国市)に『MERIDA CYCLING ACADEMY(メリダ・サイクリング・アカデミー)』を開設し、地域へのスポーツ自転車文化の浸透と発展を促進するプログラムを定期的に開催。今回のライドツアーもその一環。

この応援ライドは、MERIDA X BASEでMERIDAバイクをレンタルして、元宇都宮ブリッツェンフェアリーの杏寿沙さんと一緒にレース会場となる日本サイクルスポーツセンター(修善寺)を目指してサイクリングする。

現地ではレーススタート前に宇都宮ブリッツェンと交流を行い、レース中は応援ライド参加者のみの観戦スポットを用意。杏寿沙さんによるコース解説、レースの見どころ解説などもある。また宇都宮ブリッツェンオリジナルグッズ、選手のサイン入りポストカードの特典付き。

レース観戦後には、MERIDA X BASE と併設されているIZU VILLAGE HESO HOTEL の源泉掛け流し温泉も楽しめる。宇都宮ブリッツェンファンはもちろん、レース観戦が初めての人でも安心して楽しめる内容。参加予約は5月10日(金)よりMERIDA X BASE 公式HPの予約ページで受付を開始。

【講座概要】
2019 年5 月25 日(土) (MERIDA X BASE 集合)
受講料 8000 円(税込)
宇都宮ブリッツェングッズ特典付き
最少催行人員 5 名
講座の詳細・申込は、MERIDA X BASE 公式サイト

※XPERIENCE チケットが使用可能です。
※レンタル代、HESO HOTEL 温泉入浴代は含まれています。
※レンタルバイクはロードバイク、e-BIKE 等からご自由にお選びいただけます。
※食事代、サイクルスポーツセンター入場料を含まれません。MERIDA X BASE までの往復交通費、宿泊費等は各自で負担。
※スタートは早朝を予定しておりますので、MERIDA X BASE 周辺にご宿泊されますことを推奨いたします。

ゲストライダー杏寿沙さん

【ゲストライダー:杏寿沙さん】
2015年~2016年 宇都宮ブリッツェンフェアリー自転車競技部所属。現在はラジオパーソナリティ、栃木県内のイベントMC、スポーツジムでのインドアバイクトレーナー、J プロツアーイベントMC、自転車イベントのゲストライダー、宇都宮ブリッツェンコラムを担当するなど自転車を中心に幅広く活動中。心拍計POLAR アンバサダー、サイクルアパレルブランドASSOS アンバサダー。

【注意事項】
※MERIDA X BASE にてロッカー利用をご利用いただけます。
※下記の備品を無料でご使用いただけます。
ヘルメット/グローブ/フロントライト/テールライト/サドルバック(チューブ&タイヤレバー入り)/ボトルケージ/携帯ポンプ
※SPD/SPD-SL はお貸出し可能ですがシューズはご持参ください。上記以外のビンディングペダルをご利用の場合は、ペダルとシューズをご持参ください。
※早朝のサイクリングとなりますので、ウィンドブレーカー等の防寒着のご持参を推奨いたします。
※食事代、サイクルスポーツセンター入場代は含まれておりませんので、小銭の携帯を推奨いたします。
※中学生以下の方は必ず保護者の同伴が必要です。

マルコス・ガルシアがツアー・オブ・ジャパンで初の総合優勝

2015年の初出場から4度目の挑戦で、キナンサイクリングが初の個人総合優勝者を輩出。チームにとってシーズン最大目標の1つであるツアー・オブ・ジャパンで、マルコス・ガルシアが初めて総合優勝を挙げた。リーダージャージを守り抜き、最高の栄誉を勝ち取ってチーム総合でも1位を堅守。個人・チームともに頂点に立ち、力をもって今大会の主役であることを証明した。

ツアー・オブ・ジャパン東京ステージでグリーンジャージのガルシアを援護してゴールを目指すキナンサイクリング ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

大会をとおしてキナンは各選手がそれぞれに役割をまっとうし、個人・チームともに存在感を発揮してきた。大阪・堺で5月20日に開幕して以来、同日の堺国際クリテリウムで中島康晴が3位に入ったのを皮切りに、南信州での第5ステージでトマ・ルバが、富士山ヒルクライムの第6ステージでガルシアがステージ優勝。ルバの勝利以降、チームにグリーンのリーダージャージがもたらされ、翌日にはガルシアへと引き継がれた。加えて、第5ステージ以降チーム総合でも首位に立ち、選手層の厚さも示した。

前日の26日に伊豆で行われた第7ステージは獲得標高が約4000mと山岳ステージに匹敵する難コースで行われたが、アシスト陣の好走もあり終始レースをコントロール。終盤はガルシアが自らライバルの攻撃を封じ、個人総合優勝に王手をかけた。このステージを終えた時点での総合成績では、トップのガルシアだけでなくルバが個人総合3位に続いている。

ファイナルを飾る第8ステージは日比谷シティ前をスタートし1.2kmのニュートラル走行を含むワンウェイルートを経て、大井埠頭のサーキットコースへと入っていく。1周7kmを14周回。レース全体では112.7kmで争われる。コースはオールフラットで、スピード感あふれるダイナミックなレースが展開される。勝負はスプリントに限らず、逃げ切りが決まるケースもあり、あらゆる展開を想定して臨むことが求められる。

キナンはガルシアのリーダージャージをフィニッシュまで運ぶことが絶対的なミッション。残りの5選手がライバルチームの動きを見ながら、ガルシアの個人総合優勝、同時に首位に立つチーム総合での1位に向かって進んでいくことになる。

緊張感の中でスタートが切られたレースは、序盤からキナンにとってねらい通りの展開となる。サーキットコースに入るとともに3選手がアタック。いずれも総合成績に関与していない選手とあり、この動きを容認。キナン勢がメイン集団の統率を図り、それ以上の飛び出しは許さない。序盤はサルバドール・グアルディオラを中心にペーシングを図り、タイム差は約3分とする。

こうして淡々と進行していくが、レース中盤を前にスプリントフィニッシュをねらう数チームがアシストを出し合い、逃げグループとのタイム差を少しずつ埋めていく。キナン勢としては、他チームにコントロールを任せられる好状況へと変化。集団前方で隊列を組みながら、ライバルチームの動きのチェックに終始する。この状況は後半に入っても続いた。約1分30秒差と逃げを射程圏内にとらえつつも、一気にペースアップする流れではなかったこともキナン勢にとっては幸い。総合成績にかかわるような動きは見られず、ガルシアを安全に走らせることに集中しながら、フィニッシュまでの残り距離を減らしていった。

結局、逃げは最終周回に入る直前で吸収。代わってカウンターアタックを仕掛ける選手が出たものの、これも労せず捕まえ、レースは定石通りスプリントにゆだねられることに。キナン勢はガルシアの危険回避を図りながら、メンバーが近くに固まってフィニッシュを目指した。

そして、ついに歓喜のときがやってきた。スプリント勝負が繰り広げられた後方で、キナンメンバーがガルシアの個人総合優勝を喜び合いながらフィニッシュラインを通過。ガルシアも近くにいたメンバーと手を取りながら、王座確定の瞬間を迎えた。

チーム創設4年目、これまで手が届きそうで届かなかった国内最大級のツアータイトルをようやく獲得。終わってみれば、ステージ2勝に、個人・チームともに1位を獲得。個人総合においてはガルシアの優勝に続き、ルバも3位の座を守った。ガルシアにとってステージレースの個人総合優勝は、2017年9月のツール・ド・北海道以来2回目となる。また、チーム総合の表彰ではメインスポンサー「キナン」角口賀敏会長もゲスト登壇。活躍した選手たちとともに会場に集まったファンから大きな祝福を受けた。

今大会のキナンは順位的には目立たなかったステージも含め、予定していたとおりにレースが運び、ねらっていたステージできっちりと結果を残したことが、最高の成果につながったといえる。また、難コースに多くの選手が苦しめられた中、キナンは6人全員が完走。チーム加入1年目の山本大喜と新城雄大も十二分に機能し、ライバルチームに対して数的優位な状況を作り出したことも、勝因の1つとして挙げられそうだ。

チーム登録における上位カテゴリーの、UCIワールドチーム、同プロコンチネンタルチームから強豪も参戦し、いつになくハイレベルな戦いだった2018年のツアー・オブ・ジャパン。キナンにとっては目標達成にとどまらず、今後のビッグレースでの戦い方やチーム力の指標となる価値あるシリーズとなった。力のある選手がそろうチームにあって、今回の結果が出走メンバーだけでなく、メンバー外となった選手たちも含めた全体の底上げにもつながることだろう。

5月に入り、上旬のスリランカTカップに続くUCI公認国際レースでの立て続けの勝利。この波に乗って、たちまちやってくる次の戦いに挑むことになる。5月31日からはツール・ド・熊野が開幕。チーム本拠地である熊野地域での年間最大のチームイベント。2018年は第20回記念大会。ねらうはもちろん個人総合優勝だ。なお、この大会に臨むロースター(出場選手)は一両日中に発表する予定となっている。

ツアー・オブ・ジャパンを制したガルシア(中央)とチーム優勝のキナンサイクリング ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

ツアー・オブ・ジャパン第8ステージ結果(112.7km)
1 マルティン・ラース(エストニア、チームイルミネイト) 2時間23分12秒
2 アンソニー・ジャコッポ(オーストラリア、ベネロング・スイスウェルネスサイクリングチーム) +0秒
3 アイラン・フェルナンデス(スペイン、マトリックスパワータグ)
4 黒枝士揮(愛三工業レーシングチーム)
5 マルコ・カノラ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニ)
6 岡本隼(愛三工業レーシングチーム)
28 中島康晴(KINAN Cycling Team)
29 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team)
31 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team)
34 新城雄大(KINAN Cycling Team)
35 山本大喜(KINAN Cycling Team)
37 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team)

ツアー・オブ・ジャパン個人総合時間
1 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) 19時間57分25秒
2 ヘルマン・ペルシュタイナー(オーストリア、バーレーン・メリダ) +35秒
3 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) +53秒
4 クリス・ハーパー(オーストラリア、ベネロング・スイスウェルネスサイクリングチーム) +1分27秒
5 グレガ・ボーレ(スロベニア、バーレーン・メリダ) +1分40秒
6 サム・クローム(オーストラリア、ベネロング・スイスウェルネスサイクリングチーム) +1分55秒
17 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team) +5分0秒
54 山本大喜(KINAN Cycling Team) +48分11秒
57 中島康晴(KINAN Cycling Team) +52分21秒
65 新城雄大(KINAN Cycling Team) +1時間5分28秒

ポイント賞
1 グレガ・ボーレ(スロベニア、バーレーン・メリダ) 110pts
4 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) 41pts
19 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) 18pts
26 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team) 13pts
46 新城雄大(KINAN Cycling Team) 6pts

山岳賞
1 鈴木譲(宇都宮ブリッツェン) 24pts
4 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) 15pts
17 新城雄大(KINAN Cycling Team) 3pts

チーム総合
1 KINAN Cycling Team 59時間58分13秒

マルコス・ガルシア

マルコス・ガルシアのコメント
最終ステージについては、チームとしてよいプロトンコントロールができたと思う。逃げの3人をよいタイミングで行かせることができ、ねらっていたとおりのレース展開にすることができた。そしてなにより、個人総合優勝を果たせたことがとてもうれしい。(第5ステージでの)トマのステージ優勝に始まり、翌日の富士山では自分が勝つことができた。チームとしてはこれ以上ない出来になった。この勝利はチーム全員の働きがあったからなしえたもの。ライバルチームの動きをしっかりと読んで動いてくれたことにありがとうと言いたい。クイーンステージと考えていた伊豆(第7ステージ)でのみんなの働きは本当に素晴らしく、心から感謝している。

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日本各地をめぐり熱戦を繰り広げているツアー・オブ・ジャパン。大会は終盤戦へと突入し、5月26日は静岡県伊豆市で第7ステージが行われた。日本サイクルスポーツセンターを主会場とする120.8kmのレースは、今大会の総合争いの行方を決定づけるのにふさわしいレースが展開された。マルコス・ガルシアを個人総合のトップに送り出しているキナンサイクリングは、終始リーダーチームとしてのプロトン(メイン集団)での役割を果たし、ガルシアのリーダージャージを堅守。アシスト陣の好走もあり、鉄壁のレースコントロールを見せた。

ツアー・オブ・ジャパン伊豆ステージで首位を守ったマルコス・ガルシア ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

前日、富士山須走口五合目を目指したヒルクライムの第6ステージで、キナンはガルシアが3度目の挑戦で悲願のステージ優勝。残り約7kmで飛び出し、後続を寄せ付けない圧倒的な登坂力を見せつけた。その走りで個人総合でも首位に浮上。第5ステージの逃げ切り勝利でグリーンのリーダージャージに袖を通したトマ・ルバから、その座を引き継いだ。ルバは個人総合3位、両者のケアをしながらも自身のリザルトも安定しているサルバドール・グアルディオラが同6位につけ、チーム総合でも他チームに5分以上の差をつけてトップに立っている。

また、富士山ステージでは序盤に中島康晴、山本大喜、新城雄大の3選手が絶妙なペーシングを見せ、本格的な上りまでに逃げていた選手たちを吸収。クライマーたちによる力勝負に持ち込むお膳立てを演じた。

続く第7ステージは、日本サイクルスポーツセンター内のサーキットコースがメインとなる通称「伊豆ステージ」。2018年から修善寺駅前を出発してのパレード走行が行われ、その後ワンウェイルートを経て、1周12.2kmのサーキットへと入る。周回数は9回。テクニカルなコーナーやアップダウンが連続する難コースは、山岳ステージに匹敵するレベル。総合争いにおける最終決戦の舞台となり、有力チームが捨て身の攻撃に出ることが通例。2018年もサバイバルレースが予想される。キナンとしては、何よりもガルシアのリーダージャージを守り抜くことが最大のミッションとなる。

正式スタートと同時に激しいアタック合戦となったレース序盤。ときに10人以上が数秒先行する場面もあったが、早々にレースのコントロールを担ったキナン勢がしっかりと対処。個人総合で上位をゆく選手や、大人数の逃げは許さず、アタックする選手の動きを見定める。その間、個人総合で35秒差の2位につけるヘルマン・ペルシュタイナー(オーストリア、バーレーン・メリダ)のアタックがあるも、これはガルシア自らがチェック。ライバルの動きは決して許さない姿勢をチーム全体で示す。

プロトンを統率するキナン勢が逃げを容認したのが2周目の終盤。6人がレースをリードすることとなるが、その中で個人総合で上位につける選手はガルシアから2分53秒差。キナン勢は逃げグループを先行させて、有力選手がひしめくメイン集団の動きを落ち着かせることに努める。

逃げグループとメイン集団との構図が決まってからは、ルバやグアルディオラに加えて、中島、新城、山本らもペーシングを行い、前とのタイム差を約3分で推移させる。レース後半に入り、その差を少しずつ縮めて調整していくが、無理に追い上げることはせず、ライバルの動きを見ながら進んでいく。

7周目に入って逃げグループが崩れて、先頭をいくのは3人となる。一時メイン集団とのタイム差が再び3分となるが、ここは慌てずキナン勢のコントロールで安全圏へと戻していく。距離を追うごとにアシストを減らしていくが、終盤からは満を持してグアルディオラとルバが集団牽引を本格化。ライバルにとってはそう簡単には攻撃ができない状況を作り出していった。

そしてレースはいよいよ最終周回へと突入。逃げる3人とメイン集団との差は1分45秒。先頭の3選手はガルシアとの総合タイム差に開きがあることから、キナン勢としては逃げ切りを容認する構え。それ以上に、わずかな可能性に懸けて攻撃を繰り返すペルシュタイナーへのチェックが最優先となる。ここからはガルシアが自ら反応し、アタックを阻止していく。

逃げの3人はそのままステージ優勝争いへ。それから1分18秒後、メイン集団が最後の直線へとやってきた。わずかな上り基調の最終局面は、ガルシアにとっては問題なし。ペルシュタイナーら総合上位陣と同集団でフィニッシュラインを通過。リーダージャージのキープが確定。総合タイム差を縮められることなく、難関ステージを乗り切った。

ガルシアらのグループからわずかに遅れたルバだったが、こちらも個人総合3位をは変わらず。総合表彰台に2人が王手をかけることとなった。加えてチーム総合でも首位を保っている。

そのほか、キナン勢はグアルディオラ、山本、新城、中島の順でフィニッシュへ。グアルディオラは総合順位を落とすこととなったが、自身の成績を犠牲にしても大切なリーダージャージへの執念を見せて、チームに貢献。前日に続き、キナンの角口賀敏会長夫妻、角口友紀・同社長夫人家族が駆け付けた中でパーフェクトなレースを選手たちが演じた。

20日に始まった大会は、華やかなレースを続けながら東へと進んできた。そして28日、ついに最終目的地の東京へと到達する。最後となる第8ステージは、日比谷シティ前をスタートし1.2kmのニュートラル走行を含むワンウェイルートを経て、大井埠頭のサーキットコースへと入っていく。1周7kmを14周回。レース全体では112.7kmで争われる。コースはオールフラットで、スピード感あふれるダイナミックなレースが展開される。セオリーではスプリント勝負だが、これまで何度か逃げ切りが決まったケースもあり、選手たちの思惑が行き交うステージとなりそう。

キナンとしては、ガルシアのリーダージャージをフィニッシュラインまで運ぶことが最大のミッション。レース中のトラブルやアクシデントを避け、いかにセーフティーに走り切るかがポイントになる。悲願のツアー・オブ・ジャパン制覇に向けて、より集中してレースへと臨む。

ツアー・オブ・ジャパン第7ステージ結果(120.8km)
1 グレガ・ボレ(スロベニア、バーレーン・メリダ) 3時間29分53秒
2 クリス・ハーパー(オーストラリア、ベネロング・スイスウェルネスサイクリングチーム) +0秒
3 フェリックス・アレハンドロ・バロン(コロンビア、チームイルミネイト)
4 ベンジャミン・ベリー(カナダ、イスラエルサイクリングアカデミー) +1分18秒
5 ベンジャミ・プラデス(スペイン、チームUKYO)
6 中根英登(NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニ)
11 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team)
18 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) +1分25秒
23 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team) +4分11秒
47 山本大喜(KINAN Cycling Team) +15分37秒
63 新城雄大(KINAN Cycling Team) +22分22秒
64 中島康晴(KINAN Cycling Team)

個人総合時間
1 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) 17時間34分13秒
2 ヘルマン・ペルシュタイナー(オーストリア、バーレーン・メリダ) +35秒
3 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) +53秒
4 クリス・ハーパー(オーストラリア、ベネロング・スイスウェルネスサイクリングチーム) +1分27秒
5 グレガ・ボーレ(スロベニア、バーレーン・メリダ) +1分40秒
6 サム・クローム(オーストラリア、ベネロング・スイスウェルネスサイクリングチーム) +1分55秒
17 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team) +5分0秒
54 山本大喜(KINAN Cycling Team) +48分11秒
58 中島康晴(KINAN Cycling Team) +52分21秒
66 新城雄大(KINAN Cycling Team) +1時間5分28秒

ポイント賞
1 グレガ・ボレ(スロベニア、バーレーン・メリダ) 107pts
4 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) 41pts
17 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) 18pts
22 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team) 13pts
37 新城雄大(KINAN Cycling Team) 6pts

山岳賞
1 鈴木譲(宇都宮ブリッツェン) 24pts
4 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) 15pts
17 新城雄大(KINAN Cycling Team) 3pts

チーム総合
1 KINAN Cycling Team 52時間48分37秒

マルコス・ガルシア

マルコス・ガルシアのコメント
序盤からハイペースのレースになったが、途中からチームとして集団を落ち着かせて逃げとのタイム差を調整していった。3選手の逃げ切りはまったく問題がなく、チームのプラン通りにレースを進められたことがより重要だと考えている。昨年ステージ優勝を挙げた伊豆だけれど、今年はまったく違った状況でこの日を迎えたから、ステージ優勝は特に考えず、リーダージャージのキープを最優先に臨んだ。チーム、そして私を信じてくれているキナンの角口賀敏会長には心から感謝を伝えたい。今日はチームメートが最初から最後まで働いてくれて、私としては楽にレースを終えることができたと感じている。

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