ツール・ド・フランスは毎日が締め切り。それなりに達成感はある

ツール・ド・フランス取材者日記。フランス中南部の中央山塊を縦走します。このあたりはとても過ごしやすい小さな宿泊施設が多いんですが、観光地として日本の人はほとんど足を運んだことがないエリア。スーパーマーケットもガソリンスタンドも少ないので、たまに余裕がなくなると不安になりがちです。

石畳の道は走りにくい。ねんざする前にさっさとやめました

標高は軽く1000mを超えるエリアなのでとても過ごしやすく、ネット予約サイトなどで郊外の宿泊施設を見つけて、レンタカーで旅をしてみるのもオススメだと思います。

で、前日にお世話になった滞在型レジデンス。朝はこの町をランニングしに出かけたんですが、大ぶりな石畳の道は走りづらく、ねんざをしたら笑い話にもならないので、いったん部屋に戻ってスマホを取りに行き、ゆっくりと走りながら田舎町を撮影。この日は革命記念日で、広場の朝市もパン屋さんもなんとなくうれしそうでした。

エコール・ジャンヌダルク(ジャンヌダルク小学校)は祭日なので休校です
大会期間中いつも一度だけマッサージオイルや洗剤などをもらえるのがありがたい

そしてレジデンスではチェックアウトの時も「電話してね」と約束したので、母屋からマダムを電話で呼び出してお別れ。

ゴールのブリウドは、いったん市街地に近づいてからおよそ25kmのループを走って、今度はブリウドのど真ん中にゴール。こういったコースの場合、憲兵隊にきちんと事情を説明して、直接ゴール方面に行かせてもらえないと、無駄に25kmを走ることになります。ツール・ド・フランスのコースは逆戻りできないんです。

フランス革命記念日でもブランジュリエ(パン屋さん)は朝早くからやっています

ただし今年はこれまでの経験を生かして無駄がないというか、憲兵隊にゴールまでのショートカットを聞いて、あっという間にサルドプレスへ。これは疲労が低減できます。これまでの集大成として過去の蓄積が生かせていると思いました。

フランスでは県によって死亡事故現場にそれと分かる目印が…

そして原稿を出したあとは、この日の宿に向かって再び田舎道を30分ほど。この日は郊外型のホテルなので、すぐに見つかり、しかもレストランも併設されているので午後8時にはテラス席へ。まだ明るいですが、ちょっと冷え込んできたのでしっかりと着込み、テラス席に一番乗り。ボクのシゴトは1日完結型なので、それなりにプレッシャーはあるんですが、開放感にあふれて夕食を楽しむことができるのです。

2019ツール・ド・フランス第8ステージ ©ASO Pauline BALLET

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フランスのこの心地よさを日本の人にも体感してほしい

ツール・ド・フランス取材者日記。この日はリヨンをかすめてサンテティエンヌへ。サルドプレスは松井大輔選手が所属していたサッカーチーム「ASサンテティエンヌ」のスタジアムです。かつて加藤ローサ夫人とのプライベートライフを取材させてもらったことがあります。W杯南ア大会の思い出は「駒野がPK外したこと」と笑いながら言っていたのが印象に乗ります。

毎日、ゴールの町の子どもたちが関連施設を見学に訪れる

そしてこの日の宿は40kmほど南下した町にあるようです。いつもサルドプレスの駐車場にクルマを駐めてから、ホテルの予約リストを取り出してその場所を確認することにしています。宿までどれくらい時間がかかるのか、レースコースがこの町に突入する動線を考慮して、この町をどう抜けたらいいかなどをシミュレーションします。

同時に宿の人が何時までいるのかをチェックします。そしてこの日改めて予約表を確認してみると、「滞在型レジデンスなのでフロントデスクありません。宿泊者は24時間前までに電話で到着時間を伝えてね」なんて不吉な文章が…。数時間前にようやく確認したボクが悪いので、見なかったことにしました。

心細い山中を走ってきたので、こんな町が出現するとは思わなかった

でもちょっとドキドキするので、原稿をあらかた片付けてからレジデンスに向かうことに。大都市サンテティエンヌを離れると、こんなとこに宿あるんかなと不安になるような山道が延々と続きます。ここは楽観的に考えなければとハンドルだけに集中していると、ようやく小さな町に。

ここからが宝探しゲームの始まりです。滞在型レジデンスなのでホテルの看板のような目印はありません。町の人に聞いても、そんな個人所有のアパートが貸部屋経営をしているなんて知らないので、直感と嗅覚を働かせて発見。フツーのアパートでしたね。

鋼鉄の門が閉まっていましたが、小さな押し戸を開けると中庭に入れたので、ようやくここで電話してみるとボクのコールの呼び出し音が建物の中から聞こえ、ほどなくしてオーナーのマダムに歓迎を受けることに。あー、よかった。

ホテルのように看板があるわけでなく、普通のアパートなのであらゆる手段で場所を特定する
滞在型レジデンス。ダイニングルームのほかにベッドルームとシャワー室がある

宿泊料は70ユーロと高めですが、2人で泊まればほぼ半額です。キッチンつきで自炊が前提なので、今夜のごはんはどうしたものかと思案しましたが、ケバブのキッチンカーが教会の前に。冷蔵庫があるのでビールを冷やしてから、買い出しに向かいました。

さすがにこのレジデンス、とても快適でした。こっちでよく見るフランスのライフスタイルをまねして、大きな窓を開放して夜9時になっても明るい大地の雰囲気を楽しみながら夕ごはん。ボクが訪問する夏だけかも知れませんが、乾いた外気を肌で感じながら家族と団らんを過ごすのは(ボクは1人ですが)人生の幸福を感じずにはいられません。郊外なら芝生付きの一軒家が2000万円で買えます。外観は中世のままなんですが内装はきれいにリフォームするので快適です。

一般的なフランスの快適生活を再現してこの日はのんびりくつろぐ

ツール・ド・フランス取材も終わりが見えつつある歳になってボクの考え方も変わってきました。これまで山岳ステージをひとつ見ればいいじゃんと勧めていたんですが、中央部のステージこそすべての要素が詰まっているんですね。そしてこの心地よさを日本のみなさんにも体感してほしいです。

サンテティエンヌのサルドプレスは元サッカー日本代表の松井大輔が所属していたASサンテティエンヌの本拠地

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ツール・ド・フランスを旅すると地球の大きさがだいたいわかる

ツール・ド・フランス取材者日記。この日のゴールはシャロンシュルソーヌ。ツール・ド・フランスの最終決戦がアルプスで終わったあと、最終日のパリに向けて前日にこのあたりまで走れば、翌日の移動が楽という指針の町です。と気がついてフランス全体の地図を見直したら、まだパリからあんまり離れていないことが発覚。これからピレネーやアルプスがあり、ゴールはまったく見えません。

ゴール近くのフェンスに協賛社バナーを配置するスタッフ
トゥルナスのサントルビーユ(中心地)

そして大会も1週間、ちょっとだけぜい肉が気になり始めました。毎日5kmのランだけじゃなくて、やはり骨格筋量を増やして基礎代謝を高く維持しておかないと、体脂肪率が増えますよね。筋トレのプランクやらなきゃ、と思いついてあることに気づきました。

ラプランシュ・デ・ベルフィーユの「プランシュ」って木の板、英語で言うと「プランク」という意味なんですよ。ベルフィーユはかわいい女のコ。どんな地名なんだか。

結構暑くなったので。周囲からせん望のまなざし
日本と違ってフランスのビュフェはどこかに腰を下ろしたりしない

今夜の宿はロジドフランス。邦訳するとフランス旅籠協会で、ツール・ド・フランスの公式スポンサーでもあります。レストランが併設されているのが特色で、これまでの経験では意外とミシュラン掲載店だったりします。

レストラン併設のロジドフランスでのんびりと夕食

シャロンシュルソーヌのロジドフランスは施設こそ古いけど、町の広場に面したところにテラス席があり、ちょうどいい気温のなかで快適に食べられるなあと言う第一印象。1泊60ユーロで、現在は円高なので8000円くらいだからいいかな。これに市税、朝食、ディナーを食べたときは食事&ドリンク代が加わります。

今年はここまでレストランに恵まれず、アンポルテ(テイクアウト)のケバブ屋やマクドナルドなどに買い出しに行くばかりだったので、この日はのんびりしようとロジドフランスのレストランへ。チェックイン時に「朝食はどうする?」「夕食はどうする?」と聞かれるので、そのときにお願いすれば大丈夫です。

川沿いのテラスで音楽バンドの演奏を聴きながらディナーを楽しんでいる

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ブザンソンには顔見知りのネコがいて

ツール・ド・フランス取材者日記。ボージュ山地の国立公園内にあるスキーリゾート、ラプランシュ・デ・ベルフィーユは2012年に初採用されたゴール地点で、2019年で4回目のゴール。なので、このコースの歴史はすべて知っています。

現地のサルドプレスはこんな感じです

かつてはラプランシュという炭鉱があり、その山の上にスキーで滑れる場所を作ったそうです。2012年、2014年、2017年と常に大会前半の最初の山岳として登場し、すべてこのラプランシュ・デ・ベルフィーユの表彰台でマイヨジョーヌを着た選手が総合優勝しています。

2012年の第7ステージでは、ブラッドリー・ウィギンスのアシスト役だったクリストファー・フルームが初優勝。フルームがスパートしたのは残り300mで、それまではいちおう献身的にウィギンスをけん引していたので、ウィギンスが首位に浮上し、マイヨジョーヌを獲得しました。

ラプランシュ・デ・ベルフィーユにゴールした2012年の第7ステージ。ウィギンスのアシストだったフルームが初優勝した

2014年の第10ステージのときはビンチェンツォ・ニーバリが優勝し、マイヨジョーヌを獲得。ウィギンスもニーバリもそのままパリまで首位を死守しています。2017年の第5ステージはファビオ・アルーが優勝。フルームはわずかに遅れたものの、ここでチームメートのゲラント・トーマスからマイヨジョーヌを譲り受けました。その後いったんはアルーに首位を譲りますが、最終的に総合優勝したのはフルームだったんです。

このラプランシュ・デ・ベルフィーユは特定の車両しか乗り入れることができないので、取材陣はコースとはまったく違うところにあって、ゴールまで14km離れたサルドプレスからシャトルバスで取材に向かうことになります。途中に観客用の駐車場もあります。

で、ラプランシュ・デ・ベルフィーユがゴールの日はいつもブザンソンへ。120km離れているんですが、まるで絵ハガキのような景色の中を走っていくんです。1年目は何回もクルマを駐めて写真を撮りましたが、もう美しい景色に飽きてしまって、2回目以降はブザンソンのホテル直行。ブザンソンには顔見知りのネコがいるんです。ところが3度目の2年前は見つけられず。今年も行ってたんですが、いませんでした。さみしいなあ。

コルマール郊外にある2つ星ホテル。味も素っ気もないが気兼ねなく滞在できる

町はずれに大規模ショッピングモールがあって、そこには数軒のホテルとフランスのたいていの飲食チェーン店があるので、困ることはないんですよね。かつては日本人取材陣が集まって、大会期間中にあまり機会はないんですがみんなでごはんを食べたりしました。でも今年、日本人取材陣は半減したので、この日はお一人様レオン(ムール貝屋です)。なんか20年前に戻っちゃた感がある。さみしいなあ。

2019ツール・ド・フランス第6ステージに詰めかけた観衆 ©ASO Pauline BALLET

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コルマールの白ワインが人生の中でも一番身にしみた

ツール・ド・フランス取材者日記。さて、片田舎のゲストハウスで一泊。門扉のカギの使い方をあらかじめ教えてもらっていたので、自分で門を開けてジョギングシューズに履き替えていたら、オーナーのマダムがフランスパンを買い込んで到着しました。自宅は別にあるみたいですね。

ゲストハウスのマダムと同宿したお客さんたち

こういったゲストハウスはオーナーのセンスが問われるんですが、さすがにフランス人なので水回りのタオルの配色とか配置はさすがで、とても快適に過ごせました。一方で不便なのは、やはり人のおうちなので外出に気を遣うこと。トイレやシャワーも同宿者の使っていないときに、って感じで。

料金は朝食がついて40ユーロ(5000円)。2人で泊まれば多分半額になります。世界中から旅行者がやってくるとのこと。ネット社会になって、こんな観光産業がうまく回っていくようになったんでしょうね。

ロレーヌ地方の丘陵地

たまにはこんなアットホームな宿もありです。でも滞在中常にフランス語会話教室なので、疲れをいやすどころかグッタリします。楽しいんですけどね。やはり勝手知ったるチェーン系ホテルをベースにして、3週間に2回ほどでいいかな。

コルマール ©Office du Tourisme Colmar
アルザス地方のワインボトルは肩がなくてスラッとしている

この日はロレーヌ地方からアルザス地方のコルマールへ。ヨーロッパ随一のキュートな町並みが人気の観光地です。少なくとも3度は訪問していますが、美しい町並みでのんびりした記憶はなく、郊外の広い直線道路がゴール地点で、その先にある劇場がいつものボクのシゴト場。

そしてコルマールは財政が裕福なので、いつも白ワインを1本おみやげに持たせてくれます。ついでに昼食の際にグラスで2杯ほどコルマール産の白ワインをいただきましたが、これまで飲んだすべてのワインよりもおいしかったです。

焼却しても有害ガスが出ない木製容器。そしてワイングラスは必ずガラス製

ツール・ド・フランスのゴールの町は地元特産物でもてなしてくれるんですが、ワインに限ってはボルドーとかブルゴーニュとか一部を除いて地元産でなく別のところから仕入れたものを用意する町もあるんですよね。でもアルザスはキリッと冷えた白ワインです。誇りがあるんでしょうね。 開幕地ベルギーはビール。フランスに入ってまずはシャンパーニュ。そしてアルザス・ロレーヌ地方の白ワイン。赤ワインの出番は後半です。ツール・ド・フランス取材陣は各地のお酒を確かめながら仕事を続けるハメになるので、想像以上に大変です。

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ゲストハウスは要注意…夕食の買い出しに走る

ツール・ド・フランス取材者日記。舞台はシャンパーニュ地方からロレーヌ地方へ。ゴールのナンシーは小高い丘陵地から一気に駆け下りたところ、川沿いにあって、鉄鋼業で栄えた町らしく夏色に輝いていました。2014年にゴールとなったときは、サルドプレスがロレーヌ大学の図書館だったんですが、今回は味も素っ気もないところでした。

晩ご飯を買いにいきます。フランスにはコンビニなんて便利なものありませんし…

もうひとつ、こんなことを書いてはなんなんですが、大会関係者へのおもてなしとしての「ビュフェ」、簡易昼食が質素ですね。たいていはその土地の特産物やワインなどを用意して待ち構えているんですが、ちょっとしたつまみとコーヒーでした。それでも前回はなにも用意されていなかったので、空腹をとりあえずまぎらわせてからシゴトしようという身にはありがたいです。

ゴールに到着して一段落してから、この日予約したホテルを再確認してみると、どうやらゲストハウスのようで午後9時以降はチェックインできないとのこと。ナンシーからの距離は30kmほどの至近ですが、ゴール後の大渋滞に巻き込まれるとちょっと焦るタイムリミット。

GPSデバイスは海外でも頼もしく活躍してくれる

万一のために、抜け出しやすいところに駐車位置を変更。最初に駐めた場所はチームバスの脇を通る必要があり、ゴール後に選手に群がる観客が殺到して、まったく動けないなんて事態がよくあるんです。

ただしこの日は大集団によるゴールスプリント勝負で、選手らはほとんどがタイム差なしでゴールしたので、ボクが東京中日スポーツの原稿を書き終わるころにはチームバスはすべてホテルに向かって移動していました。

山岳賞のスポンサー、Eルクレールはスーパーマーケット。少額の買い物をしたらTシャツとカスケットをプレゼントしてもらえた

で、ゲストハウスには午後7時過ぎには到着。事前にグーグルマップで、この町には飲食店はおろか、売店もないことが分かっていましたが、とりあえずお部屋の確保が最優先。ひととおり家の中を案内してもらいました。合計6部屋で、バスとトイレは共同。部屋の中にはベッドとイスしかありませんが、庭に出るとソファがあったり、バスルームのタオルがとてもいいセンスをしてたりで、日本の民宿とは正反対のイメージです。

夏色のナンシーへ。前のクルマは教習車。こっちは教官のオフィス前の路上に教習車が置いてあるので、生徒はいきなり路上運転

「夕食はナンシーまで行くの? ここで食べるの?」と聞かれ、「えー、ここで作ってくれるんですか?」といったんはゲストハウスにお世話になるつもりだったんですが、メニューのメインがフリットで(そういえばさっきからじゃがいもの皮をむきながら設備の説明してました)、そして疲れているときに1時間以上もテーブルを共にする人とフランス語会話教室をするのも疲れそうなので、外に買いに行くことに。

ナンシーまで行かなくても、グーグルで14km先にマクドナルドがあるのを突きとめて、買いに走りました。この日の朝、スーパーでビールを買っておいてよかったわ。

2019ツール・ド・フランス第4ステージはランス大聖堂をスタート ©ASO Pauline-BALLET

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