ツール・ド・フランスを旅すると地球の大きさがだいたいわかる

ツール・ド・フランス取材者日記。この日のゴールはシャロンシュルソーヌ。ツール・ド・フランスの最終決戦がアルプスで終わったあと、最終日のパリに向けて前日にこのあたりまで走れば、翌日の移動が楽という指針の町です。と気がついてフランス全体の地図を見直したら、まだパリからあんまり離れていないことが発覚。これからピレネーやアルプスがあり、ゴールはまったく見えません。

ゴール近くのフェンスに協賛社バナーを配置するスタッフ
トゥルナスのサントルビーユ(中心地)

そして大会も1週間、ちょっとだけぜい肉が気になり始めました。毎日5kmのランだけじゃなくて、やはり骨格筋量を増やして基礎代謝を高く維持しておかないと、体脂肪率が増えますよね。筋トレのプランクやらなきゃ、と思いついてあることに気づきました。

ラプランシュ・デ・ベルフィーユの「プランシュ」って木の板、英語で言うと「プランク」という意味なんですよ。ベルフィーユはかわいい女のコ。どんな地名なんだか。

結構暑くなったので。周囲からせん望のまなざし
日本と違ってフランスのビュフェはどこかに腰を下ろしたりしない

今夜の宿はロジドフランス。邦訳するとフランス旅籠協会で、ツール・ド・フランスの公式スポンサーでもあります。レストランが併設されているのが特色で、これまでの経験では意外とミシュラン掲載店だったりします。

レストラン併設のロジドフランスでのんびりと夕食

シャロンシュルソーヌのロジドフランスは施設こそ古いけど、町の広場に面したところにテラス席があり、ちょうどいい気温のなかで快適に食べられるなあと言う第一印象。1泊60ユーロで、現在は円高なので8000円くらいだからいいかな。これに市税、朝食、ディナーを食べたときは食事&ドリンク代が加わります。

今年はここまでレストランに恵まれず、アンポルテ(テイクアウト)のケバブ屋やマクドナルドなどに買い出しに行くばかりだったので、この日はのんびりしようとロジドフランスのレストランへ。チェックイン時に「朝食はどうする?」「夕食はどうする?」と聞かれるので、そのときにお願いすれば大丈夫です。

川沿いのテラスで音楽バンドの演奏を聴きながらディナーを楽しんでいる

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ブザンソンには顔見知りのネコがいて

ツール・ド・フランス取材者日記。ボージュ山地の国立公園内にあるスキーリゾート、ラプランシュ・デ・ベルフィーユは2012年に初採用されたゴール地点で、2019年で4回目のゴール。なので、このコースの歴史はすべて知っています。

現地のサルドプレスはこんな感じです

かつてはラプランシュという炭鉱があり、その山の上にスキーで滑れる場所を作ったそうです。2012年、2014年、2017年と常に大会前半の最初の山岳として登場し、すべてこのラプランシュ・デ・ベルフィーユの表彰台でマイヨジョーヌを着た選手が総合優勝しています。

2012年の第7ステージでは、ブラッドリー・ウィギンスのアシスト役だったクリストファー・フルームが初優勝。フルームがスパートしたのは残り300mで、それまではいちおう献身的にウィギンスをけん引していたので、ウィギンスが首位に浮上し、マイヨジョーヌを獲得しました。

ラプランシュ・デ・ベルフィーユにゴールした2012年の第7ステージ。ウィギンスのアシストだったフルームが初優勝した

2014年の第10ステージのときはビンチェンツォ・ニーバリが優勝し、マイヨジョーヌを獲得。ウィギンスもニーバリもそのままパリまで首位を死守しています。2017年の第5ステージはファビオ・アルーが優勝。フルームはわずかに遅れたものの、ここでチームメートのゲラント・トーマスからマイヨジョーヌを譲り受けました。その後いったんはアルーに首位を譲りますが、最終的に総合優勝したのはフルームだったんです。

このラプランシュ・デ・ベルフィーユは特定の車両しか乗り入れることができないので、取材陣はコースとはまったく違うところにあって、ゴールまで14km離れたサルドプレスからシャトルバスで取材に向かうことになります。途中に観客用の駐車場もあります。

で、ラプランシュ・デ・ベルフィーユがゴールの日はいつもブザンソンへ。120km離れているんですが、まるで絵ハガキのような景色の中を走っていくんです。1年目は何回もクルマを駐めて写真を撮りましたが、もう美しい景色に飽きてしまって、2回目以降はブザンソンのホテル直行。ブザンソンには顔見知りのネコがいるんです。ところが3度目の2年前は見つけられず。今年も行ってたんですが、いませんでした。さみしいなあ。

コルマール郊外にある2つ星ホテル。味も素っ気もないが気兼ねなく滞在できる

町はずれに大規模ショッピングモールがあって、そこには数軒のホテルとフランスのたいていの飲食チェーン店があるので、困ることはないんですよね。かつては日本人取材陣が集まって、大会期間中にあまり機会はないんですがみんなでごはんを食べたりしました。でも今年、日本人取材陣は半減したので、この日はお一人様レオン(ムール貝屋です)。なんか20年前に戻っちゃた感がある。さみしいなあ。

2019ツール・ド・フランス第6ステージに詰めかけた観衆 ©ASO Pauline BALLET

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コルマールの白ワインが人生の中でも一番身にしみた

ツール・ド・フランス取材者日記。さて、片田舎のゲストハウスで一泊。門扉のカギの使い方をあらかじめ教えてもらっていたので、自分で門を開けてジョギングシューズに履き替えていたら、オーナーのマダムがフランスパンを買い込んで到着しました。自宅は別にあるみたいですね。

ゲストハウスのマダムと同宿したお客さんたち

こういったゲストハウスはオーナーのセンスが問われるんですが、さすがにフランス人なので水回りのタオルの配色とか配置はさすがで、とても快適に過ごせました。一方で不便なのは、やはり人のおうちなので外出に気を遣うこと。トイレやシャワーも同宿者の使っていないときに、って感じで。

料金は朝食がついて40ユーロ(5000円)。2人で泊まれば多分半額になります。世界中から旅行者がやってくるとのこと。ネット社会になって、こんな観光産業がうまく回っていくようになったんでしょうね。

ロレーヌ地方の丘陵地

たまにはこんなアットホームな宿もありです。でも滞在中常にフランス語会話教室なので、疲れをいやすどころかグッタリします。楽しいんですけどね。やはり勝手知ったるチェーン系ホテルをベースにして、3週間に2回ほどでいいかな。

コルマール ©Office du Tourisme Colmar
アルザス地方のワインボトルは肩がなくてスラッとしている

この日はロレーヌ地方からアルザス地方のコルマールへ。ヨーロッパ随一のキュートな町並みが人気の観光地です。少なくとも3度は訪問していますが、美しい町並みでのんびりした記憶はなく、郊外の広い直線道路がゴール地点で、その先にある劇場がいつものボクのシゴト場。

そしてコルマールは財政が裕福なので、いつも白ワインを1本おみやげに持たせてくれます。ついでに昼食の際にグラスで2杯ほどコルマール産の白ワインをいただきましたが、これまで飲んだすべてのワインよりもおいしかったです。

焼却しても有害ガスが出ない木製容器。そしてワイングラスは必ずガラス製

ツール・ド・フランスのゴールの町は地元特産物でもてなしてくれるんですが、ワインに限ってはボルドーとかブルゴーニュとか一部を除いて地元産でなく別のところから仕入れたものを用意する町もあるんですよね。でもアルザスはキリッと冷えた白ワインです。誇りがあるんでしょうね。 開幕地ベルギーはビール。フランスに入ってまずはシャンパーニュ。そしてアルザス・ロレーヌ地方の白ワイン。赤ワインの出番は後半です。ツール・ド・フランス取材陣は各地のお酒を確かめながら仕事を続けるハメになるので、想像以上に大変です。

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ゲストハウスは要注意…夕食の買い出しに走る

ツール・ド・フランス取材者日記。舞台はシャンパーニュ地方からロレーヌ地方へ。ゴールのナンシーは小高い丘陵地から一気に駆け下りたところ、川沿いにあって、鉄鋼業で栄えた町らしく夏色に輝いていました。2014年にゴールとなったときは、サルドプレスがロレーヌ大学の図書館だったんですが、今回は味も素っ気もないところでした。

晩ご飯を買いにいきます。フランスにはコンビニなんて便利なものありませんし…

もうひとつ、こんなことを書いてはなんなんですが、大会関係者へのおもてなしとしての「ビュフェ」、簡易昼食が質素ですね。たいていはその土地の特産物やワインなどを用意して待ち構えているんですが、ちょっとしたつまみとコーヒーでした。それでも前回はなにも用意されていなかったので、空腹をとりあえずまぎらわせてからシゴトしようという身にはありがたいです。

ゴールに到着して一段落してから、この日予約したホテルを再確認してみると、どうやらゲストハウスのようで午後9時以降はチェックインできないとのこと。ナンシーからの距離は30kmほどの至近ですが、ゴール後の大渋滞に巻き込まれるとちょっと焦るタイムリミット。

GPSデバイスは海外でも頼もしく活躍してくれる

万一のために、抜け出しやすいところに駐車位置を変更。最初に駐めた場所はチームバスの脇を通る必要があり、ゴール後に選手に群がる観客が殺到して、まったく動けないなんて事態がよくあるんです。

ただしこの日は大集団によるゴールスプリント勝負で、選手らはほとんどがタイム差なしでゴールしたので、ボクが東京中日スポーツの原稿を書き終わるころにはチームバスはすべてホテルに向かって移動していました。

山岳賞のスポンサー、Eルクレールはスーパーマーケット。少額の買い物をしたらTシャツとカスケットをプレゼントしてもらえた

で、ゲストハウスには午後7時過ぎには到着。事前にグーグルマップで、この町には飲食店はおろか、売店もないことが分かっていましたが、とりあえずお部屋の確保が最優先。ひととおり家の中を案内してもらいました。合計6部屋で、バスとトイレは共同。部屋の中にはベッドとイスしかありませんが、庭に出るとソファがあったり、バスルームのタオルがとてもいいセンスをしてたりで、日本の民宿とは正反対のイメージです。

夏色のナンシーへ。前のクルマは教習車。こっちは教官のオフィス前の路上に教習車が置いてあるので、生徒はいきなり路上運転

「夕食はナンシーまで行くの? ここで食べるの?」と聞かれ、「えー、ここで作ってくれるんですか?」といったんはゲストハウスにお世話になるつもりだったんですが、メニューのメインがフリットで(そういえばさっきからじゃがいもの皮をむきながら設備の説明してました)、そして疲れているときに1時間以上もテーブルを共にする人とフランス語会話教室をするのも疲れそうなので、外に買いに行くことに。

ナンシーまで行かなくても、グーグルで14km先にマクドナルドがあるのを突きとめて、買いに走りました。この日の朝、スーパーでビールを買っておいてよかったわ。

2019ツール・ド・フランス第4ステージはランス大聖堂をスタート ©ASO Pauline-BALLET

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ラストは世界で一番リッチなアベニュー・ド・シャンパーニュ

ツール・ド・フランス取材者日記。フランスで開催されていた女子ワールドカップサッカーも決勝戦が終了し、開幕からベルギーを訪問していたツール・ド・フランスもいよいよ大会3日目にフランスに戻ることになります。スタート地点はベルギーのバンシュ。10km走れば国境で、シャンパーニュ地方を目指して一気に南下しました。

ツール・ド・フランスさいたまの千羽鶴贈呈式がスタート地点のビラージュで行われた

ブリュッセル郊外のカンパニールホテルに3連泊したボクは、この日まずはスタート地点のバンシュを目指して 80kmほどの通勤。この日のランニングは短めに切り上げるために少しペースを上げて、身支度して急ぎます。

スタートのビラージュではツール・ド・フランスさいたまの一行が訪れ、日本のファンが選手の安全と大会の成功を祈願して折ってくれた千羽鶴の贈呈式があるんです。それには遅れちゃいけないと逆算してホテルを出たつもりですが、意外と時間がかかってしまいました。

案の定、やってはいけない「キャラバン隊の出発」にひっかかります。スタート地点は町の中心地に設定されることが多く、そこに数百台の広告キャラバン隊が隊列を作って走るので、40分ほどのこの時間は最優先されるべきチーム関係車両も停車させられます。つまり全車両が動けないんです。

バンシュは大きな人形をかぶって練り歩く祭りが有名な町らしい

このバンシュは歴史あふれる城郭都市で、中世に敷き詰められたはずの石畳をゴツゴツ言わせながらクルマを走らせます。渋滞に耐え、路面の突き上げを我慢して、駐車できる場所まで進みます。早起きした関係車両はすでにいいところに駐めているので、ボクの車両はかなり離れたところに。

と、思っていたら、車両スタッフが、「このクルマはちっちゃいからそこに駐めていいよ」と。神の声かと思いました。

おかげでなんとか千羽鶴の贈呈式に間に合い、それでも長居はできないのでさいたま市の関係者にごあいさつして、フランスのエペルネへ。

国際映像を担当するフランステレビジョンのカメラクルー

シャンパーニュ地方の町としては第4ステージのスタート、ランスのほうが大きいんですが、エペルネには有名なシャンパン醸造所がいくつもあって、その意味であなどってはいけない町です。第3ステージの残り1.5kmはアベニュー・ド・シャンパーニュ。黒い鉄格子に金色のブランド名がはめ込まれた敷地が連なる、世界有数のリッチな通りです。市庁舎を過ぎて最初にあるのがモエエシャンドン社。同社の最高級ブランド、ドンペリニョンはシャンパンを最初に作ったという修道士の名前からつけられたそうです。

世界で最もリッチなアベニュー・ド・シャンパーニュ。右手にあるのがモエエシャンドン社だ

この日のホテルは格安のプルミエクラス。全然ファーストクラスじゃなりません。同じ「ルーブルグループ」のカンパニールホテルが隣にあることが多く、夕食はここに回ることに。ビュフェがついてメインが選べる定食に、グラスビールとグラスワインで3500円くらい。今年は円高で救われているけど、やはりお金はかかるなあ。

サルドプレスではまずシャンパーニュ
第3ステージはベルギーのビンチェをスタート ©ASO Pauline-BALLET

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せっかくのベルギーなのでビールの多様性と自転車競技の人気に迫る

ツール・ド・フランス取材者日記はブリュッセル2日目。2010年にオランダのロッテルダムをスタートしたときは大会2日目にベルギーのブリュッセルへ。町の中心にあるイビスホテルに泊まりましたが、周囲は移民の人たちが拠点とするエリアで、あまり治安がよくなく、ホテルの人からも「クルマは地下駐車場へ」とのご案内。駐車料金もバカにならない額なので、今回は郊外のホテルを選択したというわけです。

ビラージュの「この町のワインコーナー」がビールでした。さすがベルギー

2018年10月末にコース発表されて、すぐに予約したのがこのカンパニールホテル。フランスの大手ホテルチェーン「ルーブル」のブランドで、部屋はまずまずでバスタブがあることも多く、そしてなによりもレストランが併設されているので、週に1回はカンパニールに宿泊して、どこかに食べに出かけることなくくつろぐようにしています。

ところが、このブリュッセル郊外にあるホテルは、レストラン設備はあるのにディナーはやっていないんです。観光としては不便なこともあり、不人気なんですね。いやあ、まいった。1泊5000円と、カンパニールにしては破格の安さだなと思って予約したんですが。

ということでこの日も、ビール飲み屋はあるけどレストランがない街中に繰りだして、ケバブ屋さんを探すことに。

1日にして有名選手になったテウニッセンがマイヨジョーヌ姿に
ウサギちゃんはネコより撮るのが難しいことが分かりました

こういうときの頼みはケバブ屋。中東出身の経営者なので信仰する宗教の慣例として週末も営業しています。おいしい肉料理にポテトを添えてテイクアウトできたんですが、イスラム教なのでお店にお酒が置いていない。しかたなく別の売店でベルギービールを購入。この日の夕食は部屋飲みで1000円で済ませました。

スタート地点に設営される関係者の社交場は、「村」という意味のビラージュと呼ばれます。ここには協賛メーカーのブースが並び、地元特産物がふるまわれています。「この町のワインコーナー」もあってクルマを運転しない関係者だったらいくらでも飲めるんですが、ブリュッセルではワインではなくベルギービールでした。緯度が高く、ブドウが収穫できないからベルギーは多様性のあるビール文化が成熟したんですよね。

7月7日はスペインのサンフィルミン祭りなので、スペイン選手やスタッフがそろいのバンダナを首に巻いて登場します

ブリュッセルの交通機関はすべて無料に

ベルギーは自転車競技も盛んなので、開催地が力を入れるのは当然。開幕から2日間をホストしたブリュッセルは公共交通機関がすべて無料に。市が全額を負担しているということでした。 この日の第2ステージは大会唯一のチームタイムトライアル。国際自転車競技連合のコミッセールがタイムトライアルバイクを車検していきます。

タイムトライアルバイクの車検

チームメカニックが列をなして待っているので、テキパキとタイムトライアルバイクをチェックしてくれるんですが、検車済みのシールとか貼らないでそのままメカに返すんですね。メカはチームピットまで戻るんですが、出走までまだ2時間あります。いいんだろうか、こんなやり方で。

自転車は一度に2台しか運べないので、各チームは4人が車検場まで持ち込むことに

3日目はフランス国境の町がスタートとなり、いよいよフランスに入国。今夜はベルギービールを楽しみます。

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