フランスの夏のスキーゲレンデはMTB愛好家のパラダイスだった

フランスでは夏場のスキー場もアクティブなサイクリストでにぎわっている。MTB専用コースが縦横無尽に整備され、上りのリフトに自転車を積載して標高を稼ぐこともできる。そこからは一気にダウンヒルだ。電動パワーが使えるeMTBなら上り坂も楽に進める。アルプス北部に位置するアボリアズはMTB好きの若者たちのパラダイスだった。

リフトを使ってダウンヒルバイクを上げてトレイルを楽しむ。スイス国境にも行けるという

総延長はなんと650km。パスポートを持ってスイスまで

アルプスのモルジンヌから20kmほど上ったところにあるスキー場が標高1800m超のアボリアズだ。数年に1回はツール・ド・フランスのゴールにもなるところで、滞在型レジデンスが林立し、フランス人はここに複数日宿泊してさまざまなアクティビティを楽しんでいる。

自転車はリフトの背面部に簡単に搭載できる

冬はもちろんスキーだが、夏場はハイキングやMTBだ。夏の訪問客のために期間限定でゴンドラやリフトが稼働。リフトには数基に1基の間隔で自転車が引っ掛けられるようになっている。脱着はリフト保安員が手慣れた手付きでやってくれる。

アボリアズはツール・ド・フランスでよく登場するスキーリゾートだ

アボリアズは欧州最大のバイクパークで、専用トレイルは総延長650km。下りを楽しむダウンヒルバイク、アップダウンをこなせるエンデューロバイク、電動のeMTBのコースがそれぞれあり、さらにコースの難易度が多様にあるので、上級者から初級者まで遊べるのが特徴だ。トレイルは尾根道のみならず、谷底、森林地帯、牧草地、岩、急流などさまざまなフィールドが楽しめるように設計されている。

レジデンスは想像以上に快適だ。こういったところでのんびりバカンスを楽しみたいなあ

アボリアズのスキー場がバイクパークになるのは2022年の場合、6月17日から9月11日まで。そのうちリフトは7月2日から9月2日まで稼働する。アウトドア系スポーツが好きな人なら、花が咲き乱れるゲレンデでMTBを持ち込もうという発想は、フランス人のライフスタイルの一部で、自然な成り行きだ。

自転車専用トレイルのゲート

MTBトレイルとハイカーが歩くルートは分離されていることに気づいた。MTBトレイルの入り口にはそれを示すゲートがあり、誤ってハイカーが通行しないように配慮されている。両者が交差する場所は網やロープで注意喚起をしているので、接触する可能性はほぼない。

eMTBの最長コースは80km。トレイルは舗装路よりも路面抵抗があって、通常はこんな距離を走破するのは難しいが、電動アシストの恩恵で自分の体力をはるかに超えた冒険も可能になる。観光局が用意した地図によれば30kmほど離れたスイス国境まで行くことができ、「パスポート必携」と明記されている。

稜線を走ってスイス国境を目指す。下りきった先にもスイス方面に上れるリフトがある

MTBトレイルに挑戦するのは若い男性が多かったが、ファンパークと呼ばれる簡単なコースには母親と子供の姿もあった。またライディング教室やレンタルMTBも自転車ショップで行われている。ライド後はキッチン付きのレジデンスで料理をしたり、MTBツアーの追加オーダーとしてバーベキューも申し込める。

楽できるところにはお金をかけるのがフランス流

リフト乗車券は大人1回840円、1日4620円、複数日は割引となり例えば7日で2万860円。MTB搭載料は乗車券と別に大人1回882円、複数回は8回4480円など。すべて1ユーロ140円で計算。

スキーゲレンデにはスラロームコースが作られていた

為替相場によりフランスの物価は全体的に割高に感じるが、一部の裕福な層や十分な休日が取れる人の娯楽とは感じなかった。フランスの若い世代も「楽して楽しめるところにはお金をかける」とばかり積極的にリフト活用していた。

集落にはいくつかの自転車ショップがあり、レンタルやライディング教室などを行っている

欧州の温暖化は切実…自転車に優しいまちづくりが対策の切り札

欧州では地球温暖化や燃油高騰の打開策として多くの市民がクルマから自転車に乗り換えている。行政も予算を倍増させて自転車に優しい環境づくりを推進している。ツール・ド・フランス取材で訪れてきた町々も、10年前と比べると自転車通行のインフラ整備が格段に充実していることを目撃した。現地より欧州自転車周辺事情をレポート。

カレー市庁舎が見える鉄道沿いに素晴らしい自転車・歩行者専用橋が

欧州全体が自転車に優しいまちづくりのために巨額を出資

ミシュランの格付け制度をまねて、その町がどれほど自転車に優しい環境であるかを評価する「ビル・ア・ベロ」をツール・ド・フランス主催者が2021年から始めた。ビルは町、ベロは自転車という意味のフランス語で、英語訳すればサイクルシティとなる。

3年ぶりに訪れたパリは自転車レーンが倍増。車道と同じ幅のレーンがセーヌ川沿いに伸びる

星ではなく自転車マークで格付けされ、最高格は自転車4台。首都パリとオランダのロッテルダムの2市だ。そして2022年、自転車3台にツール・ド・フランス第4ステージのゴール、カレーが登録された。

パリのレンタルサイクルシステム、ベリブがeバイク化していた
シャンゼリゼの街路樹が熱波によって葉が乾燥して、秋のように落葉していたのはショック

カレーの駅からすぐのところに、運河をまたぐように最新の自転車・歩行者橋が作られていた。橋の上から運河を見下ろせば、その河岸にも幅の広い自転車レーンが伸びている。自転車通勤・通学する人はクルマが走る車道と交差しないで駅まで快適に移動できる。だからぜひ自転車を利用してもらおうというねらいが行政にはある。町の随所に駐輪場を設置することも積極的だ。

欧州連合の欧州地域開発基金とオードフランス地域がこのエリアの再開発として共同出資した金額は186万8897ユーロ(約2億6000万円)というから驚きだ。

デンマークのオデンセの駐輪場にはコンプレッサーが常備。上部は鉄道駅の向こう側まで伸びる自転車専用橋

「カレーは今回のツール・ド・フランス招致をきっかけに、英国との交通の要衝という役割に加え、美しい海水浴場を備えた観光名所として海外にアピールしていきたい」という。自転車インフラへの投資は市民の健康寄与、交通事故防止、環境問題を解決するだけでなく、訪れた観光客が住みやすい魅力的な町としてのイメージを持ってもらえるという戦略だ。

欧州の自転車はスタンドがない。おしゃれな自転車ラックが随所に設置される

2022年のビル・ア・ベロはカレーと、同じ地域にあるアラスだけが登録された。アラスの格付けは自転車2台だが、クルマとの共存を都市整備の中核に掲げている。コミュニティバイクという公共レンタル自転車配置計画に充てられた予算は前年度の10倍。「最高の格付けに昇格できるようにしたい」と意気込んでいる。

デンマークには興味深い自転車がいたるところにある

車道と自転車レーンに段差を設けて物理的に分離

欧州各国の自転車レーンの作りは似ている。フランスではかつて、クルマが90km前後で走行する国道では、サイクリストがその風圧で飛ばされないように緑地帯を隔てた自転車専用道を設置した。これは現在も利用されているが、新たに市街地での自転車レーン整備が急速に進められている。車道と自転車レーンに段差を設けることで、両者を完全に分離させた。さらに歩道も区分けされるので3つのレーンが存在することになる。

クルマ、自転車、歩行者のレーンは段差を作って分離している

電気で動くeバイクの普及も著しい。道路交通法によってアシスト力が制限される日本とは違って、アシスト比率が高いeバイクも多い。乗車するだけで坂道を音もなく進んでいく電動スクーターも多く見かけた。どちらも公共レンタルできるものがたいていの町中に設置されていた。

環状交差点は接触する可能性のあるポイントだが、それを注意すれば自転車レーンに誘導される

日本の環境を考えるとすべて参考になるとは言えないが、欧州の自転車環境はここ数年で確実に改善されている。道路周辺にゆとりがあること、町と町をつなぐ道路がそもそも少ないという立地条件もあるが、自転車を日常のアイテムとして愛着を持っていることが円滑な環境整備の後押しをしてる。

ミシュランガイド2022はパリではなくコニャックから発表

星の数で店の評価を行うレストランガイド、ミシュランの2022年度フランス版の内容が3月22日、フランス西部の町コニャックのラヴァン・セーヌ劇場(théâtre L’Avant-Scène)で発表される。発表会がパリでなく地方で行われるは初めて。

発表会は3月22日フランス時間16時30から、日本時間24時30分からオンライン配信される。

コニャック(ヌーヴェル・アキテーヌ地方シャラント県)

フランスの最高級品の代表格であり、世界有数のスピリッツの生産地として名を馳せるコニャックの町とそれを含むシャラント県は、2022年3月22日に行われるミシュラン・ガイドブックの発表の場として、フランス料理界におけるこのうえない才能の持ち主が多数集まる。

ヌーヴェル・アキテーヌ地方に属するこの一帯は大西洋まで続くシャラント川の周囲に広がり、四季を通じて訪れる人を温かく迎える。大規模なコニャックメゾンや、自社の畑を持ちブドウ栽培から発酵、蒸留、熟成、瓶詰まで自社生産で行うコニャックメーカーを訪問したり、地元の文化と美食の担い手たちとの出会いを通じて、またとない経験に出会える。

●Michelin Guide Official Site
●2021年版の1つ星~3つ星獲得店

フランス旅行にワクチン証明不要、帰国後の隔離もなしの急展開

フランスでは規制緩和の動きが顕著になった。入国要件がさらに緩和されたことで、世界随一の観光大国フランスは新型コロナウイルス感染症対策を次のフェーズへの移行していく。2022年3月21日には南仏のモンペリエで世界フィギュアスケート選手権が、さらに2023年はラグビーワールドカップ、2024年にはパリ五輪が開催されるだけに今後の展開を注視したい。

2021ツール・ド・フランス第17ステージ ©A.S.O. Aurélien Vialatte

本記事は2022年3月4日取材時のもの。世界情勢によって措置が変更される可能性があるので、詳細は最新の渡航情報を確認のこと。

フランス入国時のPCR検査不要、ホテル隔離もなし

日本→フランス入国
□出発前のPCR検査、抗原検査の陰性証明が2月12日からワクチン接種完了者に限って不要になっていた。
□到着後の検査なし、隔離もなし

フランス滞在中の規制も緩和された

これまでワクチンパスポートが必要となる場所は、長距離の交通機関(TGV、夜行列車、バス、国内線航空便)、レストラン、美術館などだった。申請は政府制定の薬局(パリ・シャルルドゴール空港内にもあり)で36ユーロでできる。

□3月14日からはこれらのワクチンパスポートが不要に。列車内を除いて屋内の施設内でのマスク着用義務も廃止された。

2021ツール・ド・フランス第12ステージ ©A.S.O. Charly Lopez

日本に帰ってきたあとの待機期間がゼロに

フランス→日本帰国
□ワクチン3回接種完了者の場合、これまで帰国後の自主待機期間が10日間だったが、3月1日からは3日間に、そして3月3日からはゼロになった。

□ワクチン3回接種をしていない人は、3日間の自宅などでの待機が求められ、3日目に検査で陰性となれば待機期間が解除される。陰性確認をしない場合は7日間の待機。

「ワクチンパスポートが3月14日からいらなくなることは、まだまだ普通の状態ではないけれど、フランスに入国したらどこにでも行けるようになる」とフランス観光開発機構のフレデリック・マゼンク代表。

「日本に帰国したときも隔離がない。新型コロナウイルス感染症が起こって以来、フランス観光に関してはこれまでで一番いい状態。6月末から旅行が楽しめる時代が復活すると予測しています」

ウクライナ戦争で東京〜パリ間の空路迂回なども要チェック

一方で、日本とフランスを12時間の直行便で結んでいるエールフランスは、ロシアとウクライナが戦闘状態に突入したことを受けて、両国の上空を迂回するルートでの運航を余儀なくされた。カザフスタン領空を飛ぶ南回りルートはプラス2時間超、場合によってはブダペストなどでのストップオーバーを余儀なくされることでこれまでよりも飛行時間が長くなる。

世界フィギュアスケート選手権の開催地オクシタニーが日本を歓迎

世界フィギュアスケート選手権が南フランス、オクシタニー地域圏の主要都市モンペリエを舞台として、2022年3月21日から27日まで開催される。会場はシュド・ド・フランス・アリーナ(Sud de France Arena)。北京冬季五輪閉幕からわずか数週間で世界のトップスケーターが再び集結し、男子シングル、女子シングル、ペア、アイスダンスの4種目で争われる。

2022年3月21~27日、世界フィギュアスケート選手権の舞台となるモンペリエのシュ ド・ド・フランス・アリーナ ©Boutonnet Laurent – Région Occitanie

ラグビーやツール・ド・フランスでも有名なエリア

フィギュアスケートの世界チャンピオンを決める世界選手権。2021年は北欧スウェーデンのストックホルムで行われたが、2022年はフランスが会場となった。世界中のフィギュアスケートファンの注目が集まる絶好の機会。開催地モンペリエがあるオクシタニー地域圏でも、スポーツ振興への取り組みや地域の魅力発信の好機ととらえ、日本のファンに向けたメッセージが届けられた。

モンペリエのコメディ広場 ©OT Montpellier

オクシタニー地域圏のキャロル・デルガ議長は、日本のフィギュアスケート選手団の来訪をとりわけ光栄なことと受け止め、次のように述べている。

キャロル・デルガ オクシタニー地域圏議長 ©Philippe Grollier

「2016年の議長就任以来、私は日本との連携強化を、わが地域圏の国際案件の最優先事項の一つと位置づけ、これまで三度の訪日団を組織しました。とくに力を入れた日本との連携分野は、観光はもちろん、経済、文化、教育・研究、さらにはスポーツにも及び、それを着実に進めてきました。そのような中で3月、世界のトップレベルにある日本のフィギュアスケート選手団を、世界選手権という形でオクシタニーにお迎えできることをとても光栄に思います」

カルカッソンヌ付近のブドウ畑でワインテイスティング ©C.DESCHAMPS – CRT Occitanie


世界規模のスポーツイベントであるこの選手権の開催は、オクシタニーがスポーツの分野でいかに活発であるかを示している。オクシタニーは2023年ラグビーワールドカップ開催地域のひとつであり、2023年9月10日と28日に日本戦がスタジアム・ド・トゥールーズ(Stadium de Toulouse)で行われることが決まっている。

オクシタニーはラグビーの強豪地域。トゥールーズの地元クラブ、スタッド・トゥールーザンが国内リーグ優勝を決めて大にぎわい ©Carbonnel François – Région Occitanie

また、世界最高峰の自転車レースであるツール・ド・フランスは、毎年ピレネー山脈の名所がルートに組み込まれることから、レース中継でその風景を目にされた人も多いだろう。

また、オクシタニー地域圏は複合スポーツ施設の整備に大規模な投資を行っていて、世界の第一線で活躍するアスリートらが国際競技の前に、優れた環境で調整を行えるよう設備を整えている。パフォーマンス向上のためのトレーニング地として世界的に知られる、ピレネー山地のフォン・ロムー国立高地トレーニングセンター(Centre National d’Entrainement en Altitude de Font-Romeu)にはフランス国内外から選手が訪れていて、日本の各スポーツ連盟とも連携がある。

ピレネー山脈、セルダーニュ地域にあるフォン・ロムー国立高地トレーニングセンタ ー ©Boutonnet Laurent – Région Occitanie

フランス流に第3ハーフを楽しんでほしいとデルガ議長

デルガ議長はさらに次のように続けている。

「オクシタニー地域圏は2022年世界フィギュアスケート選手権をシュド・ド・フランス・アリーナで開催するため力を尽くしてきた。この大会は地域の魅力を発信し、大規模スポーツイベントの運営手腕をお見せする絶好の機会です。わがオクシタニー地方では、スポーツは(初心者からトップアスリートにいたるまで)ひとつのカルチャーと見なされ、地域全体にそれが行きわたっています。

モンペリエの中心、コメディ広場 ©C.DESCHAMPS – CRT Occitanie

スポーツにはチーム精神や自己の限界突破という意義がありますが、さらには連帯や仲間との楽しいひと時、集いといった意義もあります。オクシタニーはフランスでも屈指のラグビー強豪地域ですが、それはまさしくこのスポーツで言う『第3ハーフ』の習慣です。第3ハーフとは試合後に敵味方なく杯を交わすことですが、オクシタニーならではの歓待や友愛の精神に触れ、地元が誇る美酒、偉大なシェフたちによる南仏の郷土料理が楽しめる機会でもあります。

古代ローマ時代の水道橋ポン・デュ・ガー©Aurélio RODRIGUEZ – Site de Pont du Gardル 

ぜひ旅行者の方にもこの精神を楽しまれ、さらには旅の中で多彩なメイドイン・オクシタニーの製品に触れていただければ幸いです。わが地方の特産品にはライヨール(Laguiole)のナイフ、マルト・トロザーヌ(Martres-Tolosane)の陶器、アンデューズ(Anduze)の植木鉢、16世紀にニーム(Nîmes)で生まれたデニム地のジーンズなどがありますから」


地域圏副議長(スポーツ担当)カメル・シブリからのメッセージ。

カメル・シブリ オクシタニー地域圏副議長(スポーツ担当) ©Boutonnet L. – Darnaud A. – Région Occitanie

「世界フィギュアスケート選手権の開催は、日本のみなさんに、わがオクシタニー地方がいかにスポーツに情熱を注いでいるのか、また、日本との間で日々関係を深めていることを知って頂く貴重な機会となります。日本選手団をモンペリエ、そしてオクシタニー地域圏へお迎えするのを大変光栄に感じていることをお伝えします」

南ヨーロッパの中心に位置するオクシタニー地域圏はフランス第2の面積(72.724 km²)を有する。人口600万人の土地は、2つの山脈、220キロにわたる地中海の海岸線があるように、その風景と気候は多様性に富む。

ライヨールのナイフはオクシタニーの特産品 ©Thebault Patrice – Région Occitanie

ピレネー、芸術、スポーツなど随所に活気があふれる

オクシタニーはすでに日本で知られる名所も数多く、カルカッソンヌ、ポン・デュ・ガール、サン・シル・ラポピー、アルビ、ルルド、ピレネー山脈のような観光地のほか、トゥールーズ、モンペリエ、ペルピニャンといった活気ある都市、トゥールーズ・ロートレック、ピエール・スーラージュなどオクシタニー出身画家の大型美術館がある。

世界フィギュアスケート選手権開催地となるモンペリエは、オクシタニー地域圏の中でもダイナミックで魅力あふれる都市。西欧で最初の医大が設立された都市であり、若い学生が多く、藤本荘介氏の設計によるレジデンシャルタワー「L’Arbre Blanc(ラルブル・ブラン、白い木を意味する)」をはじめ大胆な現代建築がある。

カルカッソンヌ付近のブドウ畑でワインテイスティング ©C.DESCHAMPS – CRT Occitanie

また、モンペリエはエクストリームスポーツの祭典FISE ワールドシリーズの発祥地であり、当大会は日本での知名度も高い。さらに、2010年よりブレイクダンスの世界大会であるバトル・オブ・ザ・イヤー(BOTY)がモンペリエで開催されている。オリンピック東京大会より話題となっているブレイキンは日本選手が頻繁に表彰台に上る競技で、2024年パリ大会から新種目に採用されることから注目を集める。

トゥールーズ…これほどまで魅力的な町だとは

ツール・ド・フランス取材者日記

観光大国フランスがサイクルツーリズム環境整備を拡充

世界有数の観光大国フランス。国内総生産の7.5%、人口6600万人のうち200万人が観光産業に従事しているが、コロナ禍で最も深刻な影響を受けた業種でもある。フランス国家は観光業を復興させる決め手は「自転車」であるとした。

国土のいたるところに世界遺産があるフランス。最寄りの駅や宿泊施設からは、サイクリングで行こうというのが、今回の復興策の目玉だ。

アフターコロナに向けて再スタートしたフランスの観光事業者だが、フランス国家は現在の社会の諸問題を認識させる機会とも捉え、これまでにない戦略を創成している。

とりわけ持続可能性や責任といった問題に配慮することは、ますます人気の高まる観光目的地としてのフランスを、まさにこうした問題に取り組む観光地として位置づけることにつながるチャンスだとしている。

カルカッソンヌの旧市街

具体的には、環境負荷の低い交通手段を優先することを中心とする観光インフラの整備を挙げている。距離の短い国内航空路線を2022年3月までに廃止し、鉄道に切り替える。

最寄り駅から観光ポイントまでは二酸化炭素排出量がほとんどない自転車利用をうながす。そのための整備はすでに国を挙げて行ってきたが、今後はさらに加速化させるという。

長距離サイクリングルートの整備もさらに進めていく。古城が点在するフランス中部のロワール川周辺には、総延長900kmのサイクリングコースがあるが、今後はさらに延伸。

簡単にレンタルできる自転車を置き、サイクリストフレンドリーなホテルや飲食店、商業施設などがサポート。これらをアプリで連携して、海外からの旅行者が旅のツールとして自転車を気軽に利用できるようにする。

一般意見の「列車持ち込み」もすぐに採用、実現へ

フランスの観光事業者はヨーロッパ・外務省の支援を受けて、「フランスにおける責任ある観光」について、一般市民からの意見を募った。

持続可能な交通手段の開発と運用について、「普通自転車、電動自転車、カーゴバイク、荷台付き自転車などあらゆる種類の自転車を簡単に列車に持ち込めるようにする」というサンドリーヌさんからの意見を採用。早急にそれを実現するようなルール整備を行っていくという。

ツール・ド・フランスの最終日はパリ!

そして首都パリ。2026年までに自転車にやさしいまちづくりを目指し、巨額のインフラ投資を行うと発表。自転車専用レーンの追加、駐輪場の拡充などを掲げる。

アンヌ・イダルゴ市長はこれまでもパリ市内で自動車を使わない日の導入、ツール・ド・フランス主催者と協同したサイクリングシティ格付け制度などの企画をリードした。

パリ五輪は一般サイクリストが参加できる初の大会になる

第33回オリンピック競技大会はフランスのパリで2024年7月26日から8月11日まで開催される。パリで夏季五輪が開催されるのは3回目、前回から100年ぶりの大会となるが、マラソンと自転車ロードレースでは五輪史上で初めて一般参加が可能となる。

マラソン、競歩、トライアスロン、マラソンスイミング、自転車ロードレースの会場となるイエナ橋 ©Paris 2024

地域社会とのつながりを取り戻し、より多くの人たちと大会を共有するという精神のもと、マラソンと自転車ロードレースに一般参加が導入される。一般ランナーやサイクリストがメダルレースと同じ日、同じコース上でオリンピアンが激闘するコースを体験できるというもの。

その企画力と実行力。さすが自転車をこよなく愛するフランスだと脱帽するしかない。日本においても自転車を利用した新たな観光スタイルは各地の観光担当者が注目するもので、フランスのサイクルツーリズム施策は日本でも興味深くその推移が見守られそうだ。

●フランス観光開発機構のホームページ