ミシュランを考えたフランスが今度は町の自転車愛を格付け

レストランやホテルを星の数で格付けするミシュランガイドを生んだフランスで、その町がどれだけ自転車にやさしい環境であるかを評価する「ビル・ア・ベロ」が登場した。ツール・ド・フランス主催者が考えた新企画だ。最高格の自転車マーク4つは首都パリとオランダのロッテルダムが獲得。それぞれ町に入ったところに看板が設置された。

星ではなく自転車マーク ©A.S.O.

星の数ではなく自転車の台数で格付け

自転車で走りやすい環境をフランス各地の町がどれだけ提供しているか。新しい格付け制度の「ビル・ア・ベロ」がツール・ド・フランスによって決められた。ビルは町、ベロは自転車という意味のフランス語で、英語訳すればサイクルシティとなる。

フランスではミシュランガイド以外にも、きれいに花を飾り付けた市町村を格付けする「ビル・ド・フルーリー」という制度もあり、フランス政府も後援している。その町に入ったところに設置される町の名前の下に花の数が表示されるもので、最高格は花4つだ。今回はいわばその自転車版。

町の入口に設置されるビル・ド・フルーリーの看板

1903年にツール・ド・フランスが始まってから、少なくとも1回はスタートあるいはゴールを務めた都市に立候補する権利が与えられた。そのためフランス以外にロッテルダムや英国のロンドンも対象となったわけだ。立候補は3月15日に締め切られ、81都市になり、自転車通行に詳しい専門家グループが審査。自転車インフラの整備戦略、サイクリングをサポートするための具体的なアクション(学校での学習、意識向上キャンペーン)、地域の自転車クラブや団体が行う活動状況などが審議された。

大都市と地方自治体というそれぞれの特性が考慮されるので、小さな町でも高評価を得たところもあった。結果は5月3日に発表された。

パリで除幕式のひもを引くアンヌ・イダルゴ市町(右から3人目)とプリュドム(左から2人目) ©A.S.O.

「ビル・ア・ベロはこれまでの格付け制度よりもっとポジティブ思考です。自転車にとってもっといい町を作ろうというモチベーション向上が期待できるからです」と主催組織の担当者。

「例えば人口が300人しかいないルダンビエルもマークつ。潤沢な予算を駆使したインフラ整備だけでなく、町の人たちの自転車愛も評価します」

都市によっては、「もっと自転車にとって魅力的な町にしたい」と今回のエントリーを見送り、1〜2年の整備期間をかけるところもあるという。

マーク4つは大都市が獲得したが、3つは2021年ツール・ド・フランスの開幕地であるブレスト、ニースなど18都市が獲得。2つはサンテティエンヌなど41都市、1つはカルカッソンヌなど20都市だった。

花できれいに飾られた村をツール・ド・フランスの選手たちが通過していく ©A.S.O.

クルマも歩行者も自転車を尊重する社会が下支え

国土が広大なフランスは隣町を訪ねるとき、クルマがなければ自転車を利用する。それだけフランス人にとって自転車は身近な存在だ。クルマが高速走行する主要道には並木や草地をへだてて自転車道が敷かれる。小さいころからこうして自転車を移動手段としてきた人たちが、クルマのハンドルを握る側になったとき、自転車の存在を尊重した運転を心がけてくれるのは自然の成り行きだ。

ツール・ド・フランス最高権威のクリスティアン・プリュドムは、「ツール・ド・フランスのチャンピオンと町の人たちが乗る自転車をイメージとしてリンクさせる。これが大事なことだ」と言う。

「ツール・ド・フランス出場選手が走る道は、毎日のように子供たちや通勤者がペダルをこいでいる同じ場所。ツール・ド・フランスがこれほど身近に感じられるものはない。ボクたちはもっともっと自転車の未来に貢献していきたい」と語っている。

ツール・ド・フランス第7ステージのスタート、ベルゾンの運河沿いにも自転車道 ©Ville de Vierzon

ツール・ド・フランスが今回の「ビル・ア・ベロ」を考えた裏には、立候補の権利を町に与えることで、ツール・ド・フランスの招致をさらに促進させたいというねらいもあるようだ。いずれにしても日本にとってはうらやましいばかり。

ツール・ド・フランスが町の自転車愛を4段階で格付け

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🇫🇷ツール・ド・フランス公式サイト

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