アウェイでも負けずに金を…パリ五輪初陣を飾る柔道角田夏実が意欲

「国際大会の準決勝や決勝は常にフランス勢。地元の応援でいつもより強さを見せるのが怖い。長いようで短い期間しか残っていないけど、できる限りのことをして金メダルを取りたい」 。柔道48kg級で世界選手権3連覇中、アジア競技大会2連覇中、パリ五輪代表の角田夏実が決意を語った。

パリ五輪のマスコット、フリージュと柔道日本代表の角田夏実

日本の金メダル第1号となる可能性も高い

五輪開幕まで290日となった2023年10月11日、東京都のフランス大使公邸でParis2024の国内キックオフともなる記者発表会が行われ、すでに五輪代表に内定している柔道女子48kg級の角田がゲストとして招かれた。

パリ五輪に向けて意欲を見せる、左から角田夏実、車椅子ラグビーの若山英史、松岡修造

パリ五輪の開会式は2024年7月26日、競技日程はサッカーなど開会式前から行われるラグビーとサッカーを除いて27日から8月11日まで。開会式は史上初めてスタジアムではなく、パリ市内を流れるセーヌ川で開催される。

「最軽量のクラスは開会式の翌日、競技初日に試合がありますので軽量や最後の調整などで残念ながら開会式には出場できません」と角田。

フィリップ・セトン駐日フランス大使

ただし柔道競技は1日1階級の長い日程で行われるので、8月3日に最後の種目となる団体混成まで角田は選手村や競技会場に残ることになる。国際大会では3日ほどの強行スケジュールで戦いを余儀なくされるだけに、今回は初日に好成績を修めればパリの魅力を味わう心のゆとりも生じるかもしれない。

フランス大使公邸で2024パリ五輪のキックオフ

目指すは金メダル。そしてこれまでの国際大会での実績からもその最有力候補である。競技初日にメダルが確定する競技はいくつかあり、日中に行われるアウトドア競技などは早い時間に決まるだろうが、シャン・ド・マルスアリーナで同日午前10時から柔道女子48kg級が始まり、午後7時にはメダルが確定する。角田が日本の金メダル第1号になる可能性は高い。

パリ五輪のマスコット、フリージュ

「パリは五輪史上初の男女の格差をなくした大会。100%男女同数。選手だけでなく運営スタッフやボランティア、そしてマラソン一般参加枠も同様です。女子選手の活躍が際立つ五輪になるはずだ」とフィリップ・セトン駐日フランス大使も、この日顔を合わせた角田にエールを送った。

自分が納得できるパリ五輪に…内村航平が日本代表にアドバイス

元体操日本代表で、五輪では個人総合2連覇を含む7つのメダル(金メダル3、銀メダル4)を獲得している内村航平さんが、「2024パリ五輪ではメダルとかいろんなものを期待されるけど、自分の納得できることをやってほしい。五輪代表はただただそれだけに集中すれば結果につながると思う」とエールを送った。

国内寝具メーカーのエアウィーヴが東京大会に引き続いてパリ五輪でオフィシャル寝具サポーターとなり、9月6日に東京のホテルニューオータニで選手村に使われる寝具が公開され、ゲストとして内村さんと、元卓球本代表の石川佳純さんが登場した。

内村さんは国内練習の拠点となるナショナルトレーニングセンターをはじめ、東京五輪の選手村でも同社の「選手の体型に合わせてカスタマイズできる」マットレスを愛用してきた。

元卓球五輪代表の石川佳純と同体操の内村航平

マットレスは表裏で硬さが異なる3つのパーツで構成されている。腰のパーツを硬くすることで腰への負担を軽減したり、肩のパーツを柔らかくすることで寝返りをしやすくしたり、体形に合わせてカスタマイズができるという。

実はコロナ禍の東京五輪では選手村のエアウィーヴスタッフルームへの訪問さえちゅうちょする選手が多く、画期的商品として提案したパッドの組み換えをした選手は1割程度だったという。カバーからいったんマットレスを取り出して前後などを入れ替えるという作業も手間だという意見も多かったという。

2024パリの選手村に納入されるエアウィーヴのベッド

2024パリ五輪では、カバーはボックスシーツ式を採用し、各パーツにインナーカバーを取り付けたことで、前大会の選手村に提供したファスナー式のベッドマットレスよりもカ バーのつけ外しやパーツの組み替えを簡単した。

「選手思いだなあと感じました。東京で使ってみたけど、それほど大変ではなかったのに」と内村さん。

パリ五輪で日本勢の活躍に期待する石川佳純と内村航平

「朝の目覚めが違います。寝返りもしやすくなって、もともと競技として縦とか横とかに回転することが多いので、体操の夢をよく見るようになりました」

ぐっすりと寝てパリで大暴れしてほしい…石川佳純が日本代表にエール

元卓球日本代表で、五輪女子団体では2012ロンドンと2020東京で銀メダル、2016リオで銅メダルを獲得した石川佳純さんが、「前回の東京五輪とは違ってパリでは時差があるので、その調整に最も重要なのは睡眠。ぐっすりと寝てパリで大暴れしてほしい」とエールを送った。

元卓球五輪代表の石川佳純

朝起きてよし頑張ろう!という気持ちになることが大切

国内寝具メーカーのエアウィーヴが東京大会に引き続いてパリ五輪でオフィシャル寝具サポーターとなり、9月6日に東京のホテルニューオータニで選手村に使われる寝具が公開され、ゲストとして石川さんと、元体操日本代表の内村航平さんが登場した。

元卓球五輪代表の石川佳純と同体操の内村航平

「五輪は注目されるだけに緊張してしまう。そんな勝負の世界から開放され、体のリカバリーをする就寝時間は安心できるベッドを使って、次の試合に向けてコンディションを整えられるのはありがたい」と石川さん。

五輪をはじめとした国際大会に向けての練習拠点となるナショナルトレーニングセンターでも同社のベッドを愛用しているという石川さん。

2024パリの選手村に納入されるエアウィーヴのベッド

「ぐっすりと眠れるので、朝起きてよし頑張ろうという気持ちになれる!」と証言する。

東京大会では選手村など1万8000床を提供したが、パリでも引き続いて1万6000床を用意。サスティナブルな大会を掲げるパリだけに、ベッドのメイン部分となる樹脂製マットレスやカバーは大会後にフランスで100%再利用されることが条件。さらにベッドの骨組みとなるダンボールはフランス現地生産、現地リサイクルという条件を提示され、それに応えた。

「国際オリンピック委員会が発信したYouTubeでもバッハ会長がお墨付きを与えてくれました。社歴16年程度の日本の寝具メーカーが選ばれるには、競技性の異なるために体型がさまざまとなるアスリートに合わせてカスタマイズできる寝具の提案が決め手」と同社の高岡本州会長。

元卓球五輪代表の石川佳純

2024パリを足がかりに世界市場に再挑戦するエアウィーヴ

寝具という世界は消費者に機能性が伝わりにくく、広告などによるイメージ戦略でブランド名を高め、販売アップにつなげていった。日本オリンピック委員会との提携やトップフィギュアスケート選手を起用したCMなどで国内ではメジャーになったエアウィーヴだが、数年前には米国市場への参入に失敗。

パリ五輪で日本勢の活躍に期待する石川佳純と内村航平

この2024パリでの公式サポーターとなることで、再度の世界挑戦ともなる。パリの4年後には2028ロス五輪が控えている。

パリ五輪で日本自転車界の悲願金獲得なるか…本番舞台でトラック世界選手権

2024パリ五輪で日本自転車界悲願の金メダル獲得なるか? トラック世界選手権が10月12日から16日まで、五輪会場となるパリ郊外のサンカンタン・アン・イブリーヌ自転車競技場で開催された。女子ケイリンで佐藤水菜(23=楽天Kドリームス)が、男子スクラッチで窪木一茂(33=ブリヂストンサイクリング)がそれぞれ2位に入った。

女子ケイリンで2年連続2位になった佐藤(左) ©日本自転車競技連盟

最も期待されるケイリン…女子の佐藤が2年連続で2位に

自転車競技は1896年にギリシャのアテネで開催された第1回五輪からの正式種目。日本の自転車選手が初出場したのは1952年のヘルシンキ五輪だが、それからメダル獲得を目指す戦いが始まった。世界選手権では1977年からプロスプリントで中野浩一が10連覇を達成。しかし日本勢として世界チャンピオンの座は獲得できても、五輪金メダルはいまだに手中にしていない。

女子ケイリン決勝、ドイツのフリードリッヒと残り1周で激しく争った佐藤(左から3人目)がゴール ©日本自転車競技連盟

2020東京五輪以前のメダル獲得数は4個で、すべて短距離男子。日本自転車競技連盟は地元開催の利がある東京で金メダルを取るために海外コーチを招へい。梶原悠未(現Team Yumi)が女子で初めての銀メダルを獲得することになるが、悲願の金メダルには至らなかった。

今回の世界選手権は2年後に迫ったパリ五輪のトラック競技場が舞台。世界新記録が続出した超高速バンクだ。日本勢はその本番走路で佐藤が2年連続の女子ケイリン2位。1回戦は封じ込められて3着だったが、敗者復活戦からしたたかに勝ち上がり、決勝では世界チャンピオンと車輪1つの差で2位に食い込んだ。

ケイリン種目で日本勢が3位以内に入ったのは男女合わせて5年連続だ。

男子チームパシュートは予選通過ラインの8位に0.9秒届かず予選敗退 ©日本自転車競技連盟

来シーズンからはパリ五輪の出場枠を争う戦いが本格化する。日本勢は3人編成で走るチームスプリントで一気に3枠を獲得するのが狙い。代表となった3選手はそのままケイリンとスプリントにエントリーできる。

「2位ではなく頂点へ。表彰台で国歌を流したい」。佐藤は金メダル獲得に意欲を見せた。

小原佑太が男子1kmタイムトライアル予選で日本新記録となる59秒796 をマーク ©日本自転車競技連盟

女子の梶原が低迷するも男子の窪木がスクラッチで気を吐く

中距離種目の男子スクラッチでは窪木が初めて2位になった。佐藤と同様に、競輪選手という職業に就きながら、五輪や世界選手権で実施される種目を目標とした民間チームに所属。連盟の強化指定を受けて2足のわらじを履きこなす。

女子スクラッチ種目でも優勝候補だった梶原(左から2人目)は集団から抜け出すことができず11位 ©日本自転車競技連盟

2020東京五輪の女子オムニアムで銀メダルを獲得した梶原は2020年の世界チャンピオン。この大会で2年ぶりのタイトル獲得を目指したが、前日種目の落車負傷が影響して13位に終わった。

男子スクラッチで2位になった窪木(左) ©日本自転車競技連盟

まずはパリ五輪の出場枠を獲得することから

2024年7月26日から8月11日まで開催されるパリ五輪。自転車トラック種目の出場枠は、2024年4月14日までの主要大会での成績をもとに、選手権者やランキング上位の所属国に与えられる。日本は短距離種目3枠が獲得できるチームスプリント、中距離種目4枠が獲得できるチームパーシュートを集中強化する。日本がこうして手中にした出場枠は、エントリー締め切りとなる7月8日までに五輪代表選手を決めてうめられる。金メダルまでの道は長い。

サンカンタン・アン・イブリーヌのベロドロームナシオナル ©Paris 2024

五輪自転車における日本勢のメダル獲得

日本自転車選手が獲得した五輪メダルは銀2、銅3で、すべてトラック種目。1984年ロサンゼルス大会の個人スプリントで坂本勉が銅、1996年アトランタ大会の1kmタイムトライアルで十文字貴信が銅、2004年アテネ大会のチームスプリントで長塚智広・伏見俊昭・井上昌己の日本チームが銀、2008年北京大会のケイリンで永井清史が銅、2021年東京大会の女子オムニアムで梶原悠未が銀。

2022トラック世界選手権フランス大会の日本ナショナルチーム

2024パリ五輪は史上初めて町中で開会式…選手団はセーヌ川の船で

パリで最後にオリンピックが開催されたのは1924年。それからちょうど100年の時を経て、再びフランスの首都で開催されるオリンピックとパラリンピックが2024年に行われる。盛大な祝賀イベントであり、スポーツの偉大さを示すこの瞬間は、一体感と団結の精神に満ちあふれたものになる。

五輪選手団がセーヌ川を船に乗ってエッフェル塔を目指す ©Paris 2024 / Florian Hulleu

2024年7月26日に行われる壮大な開会式では、世界中の人々の注目がパリに向けられ、オリンピック精神の価値を誇らしげにアピールする瞬間となる。この野心的なプロジェクトは、何百人もの関係者が集まって協力した結果であり、パリ市民、イル・ド・フランス地方の住民、そして観光客に喜びをもたらす。

BMXなどのアーバンスポーツが開会式の演出を彩る ©Paris 2024 / Florian Hulleu

2024年の開会式は大会の歴史に残るものとなるはずだ。史上初めて、もはや一つのスタジアム内に集まるものでなく、首都のど真ん中で行われる。選手たちは壮大な船団に乗りセーヌ河岸を通り、セーヌ河の象徴的な橋の下をくぐり抜けていく。

シテ島やオルセー美術館も五輪開会式の舞台となる ©Paris 2024 / Florian Hulleu – A.G. Photographe

パリ大会をセーヌ川で開催するという選択は大胆なものだが、じつは長期的な戦略の一部に位置付けられた。この計画は、2016年にパリ河岸が歩行者天国になったのを受け、これからもパリ市民や地域住民がセーヌ河との親しみを取り戻し、水辺でスポーツをしたり、周囲の景色を眺めながら散歩をしたりする機会を増やそうとする考えの延長線上にある。2024年のパリオリンピック・パラリンピックでは、セーヌ川で泳げるようになるように、物語の新たな章が開かれる瞬間となる。

2024パリ五輪は前代未聞の開会式となりそうだ ©Paris 2024 / Florian Hulleu

「2024年のパリ大会開会式は、その画期的な演出で、まさに魔法のようなものになることでしょう。誰にでも開かれた、人々のための式典となります。フランスにとって最高の姿を世界中の人々に見せる機会でもあります。世界中の人々が招かれる、他ではあり得ないパーティになりそうです!」とトニー・エスタンゲ(パリ2024組織委員会会長)。

トロカデロがメイン会場に ©Paris 2024 / Florian Hulleu

2024年のオリンピック・パラリンピック大会は、花の都パリやその文化遺産、そして都市の斬新さ、イノベーション、サステイナブルな新しい交通手段などすべてをアピールする機会となるが、ほかにもマルセイユがセイリング、タヒチがサーフィン競技の会場となるように、パリ以外のフランスの都市や海外領土にある観光資源の豊かさをアピールする最良の機会にもなる。

各国選手団が船に乗って行進する ©Paris 2024 / Florian Hulleu
2024パリ五輪の開会式マップ ©Paris 2024 / Florian Hulleu

パリ五輪が金銀記念ユーロ通貨…国土をまねて六角形に

2024年パリ五輪の記念ユーロ通貨がモネ・ド・パリ(パリ造幣局)から9月22日に発表された。世界初の六角形をしたもので、250ユーロ金貨(販売価格は税込み260ユーロ)と10ユーロ銀貨(同14ユーロ)を発売する。また2ユーロ貨幣(同20ユーロ)の発売も明らかになった。

パリ2024記念2ユーロ通貨

2024パリ五輪・パラリンピックの開催は、パリ造幣局がこれまで以上に美しく革新的な製品を提供するために自らを刷新し続ける機会と位置づけられた。そのためフランスの領土に敬意を表して六角形のコインを打ち出した。100年前に開催されたパリ五輪とは異なる新たな時代を印象づける意図もある。

コインの表面は、陸上競技で全力疾走するマリアンヌ。マリアンヌ(Marianne)はフランスという国を象徴する女性像で、自由の女神として国民に愛されている存在。スポーツの練習に場所の誇りを与えます。陸上競技の400mトラックとパリのシンボルであるエッフェル塔が描かれている。

裏側はユーロ金額の刻印を除けば金と銀は共通デザイン。フランスが発行する通貨に必ず刻まれる「自由、平等、博愛」の文字がある。

パリ2024記念10ユーロ通貨

金と銀は発表と同日に販売開始。2ユーロ通貨は間もなく発売を始めるという。

●パリ造幣局の詳細ページ