丸の内クリテリウムを断行したJCLが2本柱のさらなる戦略

東京駅丸の内中央口と皇居前を結ぶ行幸通りを舞台とした自転車ナイトレース「丸の内クリテリウム」が2月18日夜に開催された。仕掛け人は、自転車ロードレースのプロリーグ、ジャパンサイクルリーグ(JCL)の片山右京チェアマン(59)。自転車活用によって市民のクオリティオブライフ向上に成功した英国ロンドンやフランスのパリに追いつけという、東京都の計画が同イベントに垣間見られた。

東京駅舎を背景に全力疾走するロードレーサー

大使任命式の馬車が通る荘厳な道路が自転車サーキットに

東京五輪・パラリンピックで自転車全競技の運営責任者を務めた片山チェアマンが、レインボーブリッジを封鎖して行われたサイクリング大会「グランドサイクル・トーキョー」の一環として、東京都の後援を受けて実施した。同チェアマンがチーム代表を務めるJCL TEAM UKYOも中東遠征からこのイベントに間に合うように帰国させた。

都心部で初開催されたエキシビションだけに熱心なファンは日没前から沿道に詰めかけた

会場となった行幸通りは普段は閉鎖された都道で、皇室行事や各国大使信任状捧呈式の馬車列が通る時などに使用される。3月5日開催の東京マラソンのゴールでもあって、都の重要なイベント時に舞台となる。片道190mで、この日は行幸通りにステージや選手ピットが設置され、その側道に往復約400mのサーキットを設定。国内チームから選抜されたロードレーサーが60周するエキシビション(模擬レース)が行われた。

JCLの冠スポンサーである三菱地所のお膝元でもある。同社はJCLとともに「全世界から注目される丸の内エリアでの国際レース開催」を目指し、それに向けた第一歩となるイベントがこの日行われたものだ。

サーキットは意外と暗いのでカメラマン泣かせ ©JCL

JCLとしての狙いは世界に飛び出すこと。日本国内リーグという限定された運営団体の殻を破って、国際レースを開催していけるほどの体力強化を目指している。ひとつの手段としては海外で開催されている有名レースとの連携。新たな国際大会を日本で開催することと、いまある日本のレースを国際化することの2本柱を展開していく計画だ。

プロデューサーでありながら会場で解説も務めた片山チェアマン

この日は前日までの寒さが過ぎ去り、日没後も春を思わせるような暖かな空気に恵まれた。ナイトレースは仮設照明と駐車したサポートカーのヘッドライトで照らし出された。出場選手は自転車の前後にライトを、車輪には華やかなイルミネーションライトを装備。それでも昼間のレースとは違って、走行している選手を特定するのは難しいほどの暗さだ。まずは幻想的な雰囲気を楽しむのがいいという印象を受けた。

1周400メートルなのであっという間に選手がやってくる ©JCL

自転車イベントに積極的な東京都の力強いバックアップ

週末のオフィス街でもあり、沿道に詰めかけた観衆はそれほど多くなかったが、買い物や食事のために丸ビルや新丸ビルを訪れた人たちが、これまで見たこともない自転車ナイトレースに足を止める光景も見られた。

優勝はクリテリウムを得意とする宇都宮ブリッツェンの小野寺玲(左) ©JCL

東京都は、環境にやさしく、健康にもよい自転車をさらに身近なものとするため、さまざまな自転車イベントを積極的に開催している。自転車安全利用の促進も常にテーマとなる。模範例は2012年に五輪を開催したことが契機となり、地球温暖化抑制と市民の健康増進に効果をもたらせたロンドン。またパリも五輪開催に先駆けて、市内の自転車通行安全対策を実施し、注目されている。

ツール・ド・フランスならばこの場所はいわば大統領府エリゼ宮もあるパリ・シャンゼリゼに相当する。いつの日かこんな場所で模擬ではないマジレースが開催されることになれば、日本の自転車界も世界に誇れるレベルに到達するのかも。

JCL TEAM UKYOのアフターパーティーも丸の内で行われた ©JCL

石橋アタック、山本と小石がUCIポイント獲得…ツアー・オブ・オマーン

中東を舞台とした5日間のステージレース、ツアー・オブ・オマーンは最終日となる2月15日に第5ステージが行われ、JCL TEAM UKYOの山本大喜が6分07秒遅れの総合32位、小石祐馬が。7分57秒遅れの総合38位でフィニッシュした。

ツアー・オブ・オマーン第5ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet

ツアー・オブ・オマーン第5ステージ。山脈の麓をスタートし、標高500m前後をアップダウンを繰り返す152.5km。ゴールまでの5.7kmは10%超えのクライムが続くレイアウト。JCL TEAM UKYOは第4ステージを終えてトップから2分4秒遅れの総合29位に山本。

ツアー・オブ・オマーン第5ステージ ©A.S.O. Thomas Maheux

最終日となるこの日、最後の山での走りが総合成績に大きな影響を与えることもあり、終盤 に至るまでの山本のポジションを守ることを最優先に考えた作戦でスタートに並んだ。

レースはスタートして間もなく、石橋学を含めた7名のエスケープが形成された。一気に2分のタイムギャップが開く。これはこのグループに総合を脅かす順位の選手がいないこと、コース後半に2度のスプリント賞が設置されていることもあり、僅差で総合優勝を争うリーダーチームとしては逃げを前半に容認して後半勝負に持ち込みたい思惑によるものだ。

石橋学がツアー・オブ・オマーン第5ステージでアタック ©A.S.O. Pauline Ballet

こうして3分以上の差がつかないように続いたコントロールは終盤まで続くことになる。石橋を送り込んでいるJCL TEAM UKYOはこれで有利な状況となる。プロトン内で終盤に備え、補給やいいポジションをキープして山本をフォローした。

残り20km、エスケープグループは人数を減らし5名となるが、石橋も粘る。いよいよレースは終盤、コースは山岳へと進路を変え、6kmで600m登るヒルクライムに入った。麓で1分を切っていた差は途端に縮み、レースは振出しに戻った。

ツアー・オブ・オマーン第5ステージでリーダージャージを着るマッテオ・ヨルゲンソン ©A.S.O. Thomas Maheux

そして、総合上位のエース級の選手たちがレースの最前線に現れる。一気に14名に絞られたグループからも、さらに4名がスパートしたことで崩壊。ハイペースの厳しい登りにバラバラになり、各々の力が登りのポジションとなる。山本、小石も30位~40位のポジションで必死にペダルを踏み続ける。

そして、勝負は総合トップのモビスターのマッテオ・ヨルゲンソンと総合3位のマウリ・ファンセベナント(スーダル・クイックステップ)の一騎打ちに。10%強の登坂を駆け抜けトップでゴールに現れたのはファンセベナント。ゴールのボーナスタイムであわや逆転という展開だったが、ヨルゲンソンがゼロ秒差で後ろに付き切り、1秒差という僅差で総合リーダーの座を守った。

ツアー・オブ・オマーン第5ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet

第3ステージ同様、続々とゴールに辿り着いた選手たちがバタバタと倒れていくなかに小石が現れた。順位はトップから3分43秒差の37位、そして山本もゴール、苦しみに空を仰ぎ力を出しつくした様子だった。

しばらくしてアシストを終えたメンバーたちに続き、この日130km以上逃げ続けた石橋もゴール。UCI 2-PROクラスのステージレースで全員完走を果たした。小石の好走の結果、総合40位以内に加算されるUCIポイントを2名が獲得し、JCL TEAM UKYOの今回の一つの目標を達成する結果となった。

ツアー・オブ・オマーン第5ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet

全5ステージ 830kmのレースは1秒差で総合優勝が決まる熾烈な戦いとなった。サウジツアー、ツアー・オブ・オマーンを経験し確実に成長を遂げた選手たち。これから本格化するレースシーズンに大きな刺激を与えてくれた中東遠征となった。

ジェオフリー・ブシャール。ツアー・オブ・オマーン第5ステージ ©A.S.O. Thomas Maheux

「1戦1戦チームらしくなってきました。今日もみんなが守ってくれて、 最後もいい位置で山に入れました。日に日によくなる自分のコンディションに大きな期待を賭けて挑みましたが少し順位を落としてしまいました。小石が近くにいてくれたのは心強かったです。この力を次の レースにぶつけていきたいです」(山本)

小石祐馬。ツアー・オブ・オマーン第5ステージ ©JCL TEAM UKYO

「サウジツアーの不調から徐々に調子も上げてこれました。この経験を来年のこのレースに向けてまた準備し、いい結果を目指していきたいです」(小石)

山本大喜。ツアー・オブ・オマーン第5ステージ ©JCL TEAM UKYO

「石橋の逃げはチームに有利な状況を作ってくれました。僕らコン チネンタルチームの戦い方をしっかりと大会に表現できたと思います。 厳しいレースの中で小石と山本がUCIポイントを獲得したことは大きな価値があると思っています」(清水裕輔監督)

ツアー・オブ・オマーンを戦ったJCL TEAM UKYO ©JCL TEAM UKYO

山本大喜が総合29位に浮上…ツアー・オブ・オマーン第4ステージ

中東を舞台とした5日間のステージレース、ツアー・オブ・オマーンは2月14日に第4ステージが行われ、JCL TEAM UKYOの山本大喜が1分29秒遅れの36位でゴール。総合成績で34位から29位に浮上した。

ツアー・オブ・オマーン第4ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet

ツアー・オブ・オマーン第4ステージ、スタート地点は首都マスカットから120km離れた標高 500mの街。この日はレース最長の205kmのステージ、70kmを過ぎた地点からマスカットに向けて下り基調になるレイアウトだ。しかし、ラスト15kmからは海から再びそびえ立つ山中に入っていく上、終盤に山岳賞やスプリント賞が集中しているため長距離で体力を奪われた終盤にハードな展開が待ち受けた。

山本大喜。ツアー・オブ・オマーン第4ステージ ©JCL TEAM UKYO

そしてこの日はスプリント賞やゴール勝負で得られるボーナスタイムでも総合順位の逆転が可能な接戦により、レース展開がワールドツアーチームの出方で大きく変わってしまうことが懸念された。JCL TEAM UKYOは石橋学を先手に攻撃に出ることで展開を落ち着かせ、終盤の展開に山本と小石祐馬を温存する作戦でスタートに並んだ。

清水裕輔監督がツアー・オブ・オマーン第4ステージのスタート前に指示を伝える ©JCL TEAM UKYO

午前10時15分、レースはスタートから動き出した。これまでと違うのは、プロトンを飛び出していく選手が総合上位圏外のワールドツアーチームのメンバーであるということ。この展開によりチェックするプロトンのスピードは高速化、最初の2時間を47km近いアベレージで進行していく。

ツアー・オブ・オマーン第4ステージ ©A.S.O. Thomas Maheux

石橋、武山晃輔、岡篤志もアタックにチャレンジするが、ワールドツアーチームの追撃に飲み込まれてしまう。しかし状況が一転。最初のスプリントポイントを前に強烈なスピードでウノXのフレドリックが飛び出した。敢闘賞の総合成績で2位につけているフレドリックはプロトンの追撃を凌駕し走り続けた。

この展開に3名が加わると、100km地点を過ぎてようやく3分差のエスケープグループを構成。すでに下り基調となったコースにコフィディスやモビスターの牽引するプロトンは、エスケープグループと距離を読みながら終盤の戦いに備えた。

ツアー・オブ・オマーン第4ステージ ©JCL TEAM UKYO

JCL TEAM UKYOは補給をこまめに取り、山本と小石の風よけとなりながら終盤に備えた。スタートして4時間弱、先行との差は1分半。ゴールまで15kmの地点からの登り で一気にペースが上がった。ここで山本と小石、ベンジャミ・プラデスはメンバーのアシストを受けて前方で登りに入る。一気に絞られていくプロトン、逃げていた選手をキャッ チすると展開は激化。

ツアー・オブ・オマーン第4ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet

この展開に食らいつく山本も少し離れては下りで追いつくなどピークの状態だったが、なんとか耐え抜いてゴールスプリント目前にトップグループの中に入り込む。そして、一気に横に広がったスプリント合戦を制したのはUAEエミレーツのディエゴ・ウリッシ、本命の実力を見事に発揮した。

山本は36位でゴール。53秒遅れて小石、プラデスと続き、JCL TEAM UKYOはこのロングステージを全員が走り切った。第4ステージを終えて山本は総合成績を34位から29位にアップ、ターゲット通りの走りができた。

ツアー・オブ・オマーン第4ステージのJCL TEAM UKYO ©JCL TEAM UKYO

翌日は最終ステージで、さらに激しい総合争いにどこまで順位を上げていけるかが大きな目標 となる。

「今日は前半から作戦通りメンバーが攻撃をかけましたが、展開が厳しく作戦通りにはいきませんでした」と山本。

ツアー・オブ・オマーン第4ステージ ©JCL TEAM UKYO

「しかし終盤の展開に向けてみんなが風よけになってくれたり、ボトルを運んでくれたり、前方へエスコートしてくれたりと僕らを優位に運んでくれました。登りではトップについていくのがギリギリの状態でしたが、下りでバイクが伸びてくれて最後はメイングループでゴールできました。体調もいいので明日も全力で頑張ります」

ディエゴ・ウリッシがツアー・オブ・オマーン第4ステージで優勝 ©A.S.O. Thomas Maheux

「今日もみんなよくやってくれました。前半100kmが全くスピードが緩まないという展開でしたが、レース中にコミュニケーションをとれた連携で山本の総合順位を上げることにも貢献しました。レースだからこそチームが成長できる、どんどんいい状態になっています。明日も頑 張ります」と清水裕輔監督。

モビスターのマッテオ・ヨルゲンソンが首位を死守 ©A.S.O. Thomas Maheux

山本大喜がワールドツアーの上り勝負に食らいつく…ツアー・オブ・オマーン3S

ツール・ド・フランスを主催するASOが運営する中東のステージレース、ツアー・オブ・オマーンは2月13日に過酷な山岳がラストに待ち構える第3ステージが行われ、JCL TEAM UKYOの山本大喜が1分29秒遅れの34位になった。

ツアー・オブ・オマーン第3ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet

灼熱の暑さと最後に待ち構えるヒルクライム

ツアー・オブ・オマーン第3ステージ。コースはマスカット郊外の山脈の裾野をなぞっていく レイアウト。スタートから45kmが緩やかな登り。その後下り基調を経て、93km地点のスプリントポイントを通過すると緩やかな上りとなるが、146km付近からはじまるラスト5kmは、ゴールに向けて一気に15%近くまで登り勾配が跳ねあがるプロファイル。

ファクターバイクをJCL TEAM UKYOは駆使する ©JCL TEAM UKYO

終盤の高いクライム能力が問われるコースで、総合上位が絞られる展開が予想された。この日は総合25位までの選手が総合トップの選手から15秒の僅差にいることもあり、総合リーダーを抱えるコフィディ スが終盤の登りまでコントロールすることが予想された。

ツアー・オブ・オマーン第3ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet

JCL TEAM UKYOは総合成績に望みのある小石祐馬と山本を最終展開で前方へリードすることに徹するため、逃げをうたないで勝負を待つ戦略を選びスタートラインに並んだ。

ツアー・オブ・オマーン第3ステージ ©A.S.O. Thomas Maheux

この日スタートしてすぐに飛び出したのは5名の選手。この中で前日までの総合成績が最も高い選手はBINGOAL WBのジョアン・ミーンの1分24秒遅れ。そして、情報を得たリーダーチームのコフィディスは逃げを容認。ボーナスタイムのかかったスプリントポイントも93km地点と遠いことから、先行と3分のタイムギャップを保ちながらレースは淡々と進行していった。

ツアー・オブ・オマーン第3ステージ ©A.S.O. Thomas Maheux

そして、この日選手を苦しめたのは30度を越える気温。JCL TEAM UKYOも他チーム同様、補給所や車での給水とは別に先回りして選手に水分補給のフォローに向かうなど忙しくなる。レースも100kmを超えるとエスケープグループから2名がドロップし、3名でラスト6kmのスプリントポイントを通過。追走するプロトンは射程圏内に彼らを捉え、いよいよ最後の登りでの勝負が近づいてきた。

ツアー・オブ・オマーン第3ステージは過酷なルートをたどった ©A.S.O. Thomas Maheux

この動きに対応するため、JCL TEAM UKYOはレイモン・クレダーと武山晃輔が総合成績に可能性がある山本や小石、クライミングに優れたベンジャミ・プラデスをフォローし、集団前方のポジションをキープ。

ツアー・オブ・オマーンに参戦するJCL TEAM UKYO ©JCL TEAM UKYO

登りに入ると一気にグループは絞られ40名ほどのトップグループとなる。ラスト2kmになると更に勾配はきつくなったが、ここで上位20名のポジションに山本が残る健闘をみせる。

マッテオ・ヨルゲンソン(米国)が上りのゴールで抜け出した ©A.S.O. Pauline Ballet

山本の奮闘はラスト1kmまで続いたが、モビスターのマッテオ・ヨルゲンソンの強烈なアタックにトップグループは崩壊。彼はその勢いを崩さないままトップでゴールした総合リーダーであったヘースス・エラダがゴールで倒れこむほどの激闘で、多くの選手が苦悶の表情でレースを終えると、間もなく山本が現れた。

マッテオ・ヨルゲンソンがツアー・オブ・オマーン第3ステージ優勝 ©A.S.O. Thomas Maheux

その差はトップから1分29秒差の34位。力を尽くした山本は、手ごたえを感じたこの戦いに表情は明るいものだった。さらにプラデスと小石が大きく遅れずにフィニッシュしたことでチームの総合成績は18チーム中11位とアップし、実りのあるステージとなった。

山本はツアー・オブ・オマーン第3ステージで1分29秒遅れの34位 ©JCL TEAM UKYO

「自分の全ての力を出した結果なので納得しています。今の自分の力、そして未来の成長へ向き合える手ごたえを得ました。これからどんどん先にいきます」と山本。

ツアー・オブ・オマーン第3ステージ ©JCL TEAM UKYO
モビスターのマッテオ・ヨルゲンソンが首位に ©A.S.O. Pauline Ballet
ツアー・オブ・オマーン第3ステージ ©JCL TEAM UKYO

武山晃輔が第1集団でレース展開…ツアー・オブ・オマーン2S

ツール・ド・フランスを主催するASOが運営するする中東のステージレース、ツアー・オブ・オマーンが2月12日に第2ステージが行われ。日本のJCL TEAM UKYOが参戦。小石祐馬が24秒遅れの38位、山本大喜が25秒遅れの41位になった。

ツアー・オブ・オマーン第2ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet

ツアー・オブ・オマーン第2ステージ。前日のスプリントステージから舞台を変えて、この日は 短いながら急勾配の登りがあるレイアウト。特に前半と後半に設置された山岳ポイントとス プリント賞の配置が近いことから、総合でも全体にタイム差の少ない状況に激しい展開も予 想された。

ツアー・オブ・オマーン第2ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet

JCL TEAM UKYOは5人以上のエスケープにはジョイントし、総合上位を目指す山本、このステージで活躍できるベンジャミ・プラデス、マスカットクラシックでハイレベルな攻防に対応した小石を最終局面で前に送り込む戦略でレースに挑んだ。

レースはスタートして間もなく4名がエスケープが発生、しかし長く続かずに登りで吸収され ると、今度は単発で飛び出していく選手が続く。この動きを静観したプロトンの様子からタイミングを察した武山晃輔が追走で飛び出した。10分ほどの追走の後、武山は前方と合流した。

武山がツアー・オブ・オマーン第2ステージで第1集団に加わった ©JCL TEAM UKYO

プロトンと3分差、6名となったメンバーの中には敢闘賞のジャージを着用す るトレンガヌのジェロエンを含んでいて、このメンバー構成を確認したプロトンは3分のリードを保つコントロールを開始。JCL TEAM UKYOとしても武山が先行グループ に乗ったことで、チームメイトの脚を温存できる好展開となった。

ツアー・オブ・オマーン第2ステージ ©A.S.O. Thomas Maheux

このエスケープがゴールまで残り40km付近に差しかかると、いよいよプロトンは吸収に向け 追撃を開始。ボーナスタイムを稼いだ先頭グループが疲労したところへ勝負を賭けた展開を持ち込むことで、彼らを総合成績に絡ませないという流れを作り出した。

ハイスピードの展開で、アスタナカザクスタンとUAEエミレーツのトレインが先頭付近で目立つ中、残り10kmでレースを振出しに戻したプロトンは一気に活性化、8%勾配が4km続く頂上ゴールへ向けペースが上がった。JCL TEAM UKYOもこの勝負に加わるフォーメーションを組んだが、ここでプラデスがメカトラブルに陥る。

ヘスス・エラダが第2ステージ優勝 ©A.S.O. Thomas Maheux

すでにレースがゴールへ向け激しい展開で進行していることから小石、山本がトップグループに残ることを優先。

急勾配の上りをトップで駆け上がってきたのはコフィディスのヘスス・エラダ。そして、30名の選手たちが一気にゴールへなだれ込んだ24秒後に小石、25秒後に山本が現れた。ツアー・オブ・オマーン第2ステージは誰もが総合タイムを狙うステージだった。

ツアー・オブ・オマーン第2ステージで小石と山本が上位でゴール ©JCL TEAM UKYO

エスケープに乗るというミッションを遂行した武山をはじめ、ワールドクラスの選手たちが勝負を賭けた登りを20数秒差でゴールした2人の実力は今後のレースへの大きな期待が生まれるものだった。

ヘスス・エラダが第2ステージで首位に立った ©A.S.O. Thomas Maheux

ツール・ド・フランス傘下のツアー・オブ・オマーンでJCL右京はチーム2位発進

ツール・ド・フランスを主催するASOが晩冬に中東で開催するステージレース、ツアー・オブ・オマーンが2月11日に開幕。日本登録のUCIチーム、JCL TEAM UKYOがサウジツアーマスカットクラシックに引き続いて参戦する。大会は15日までの全5区間。

JCL TEAM UKYOが参戦したツアー・オブ・オマーン第1ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet

第1ステージはアルハズム城をスタートして下り基調にマスカット国際空港にゴールする147.5kmで行われた。途中、60kmと101km地点にスプリントポイント、92km地点に山岳ポイントが設けられ、ボーナスタイムや敢闘賞を狙った攻撃も予想された。JCL TEAM UKYOは前日のマスカットクラシックでの選手の疲労を考慮し、山本大喜の総合上位獲得、そしてこの第1ステージをスプリンターのレイモン・クレダーで勝負する作戦でスタートした。

ツアー・オブ・オマーン第1ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet

レースはスタート直後から3名の逃げが発生。トレンガヌのジェロイェン、ブルゴスBHのロドリゴ、オマーンナショナルチームのサイドのリードは最大で2分40秒まで開いた。プロトンがこの逃げを容認して距離を保っているため、JCL TEAM UKYOは後半に備えて待機。

ツアー・オブ・オマーン第1ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet

60km地点のスプリントポイントに向けて、アスタナとスーダル・クイックステップの牽引で一時差が縮まるが、各チームの思惑がズレたことで再びタイム差が戻る。92kmの山岳ポイントでプロトンとのギャップが40秒まで詰まるとトレンガヌのジェロイェンが独走に持ち込んだ。

ツアー・オブ・オマーン第1ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet

力強く踏み続ける走りで山岳をトップで抜けると、独走で再びタイム差を広げ始める。ここでプロトンはジェロイェンを吸収することで集団が活性化する展開を考慮し、終盤で吸収しスプリント勝負に持ち込む流れを組むことを選んだ。そして、いよいよレースがゴールへ近づくと各チームの熾烈なポジション争いが始まる。

ツアー・オブ・オマーン第1ステージ ©A.S.O. Thomas Maheux

ハイスピードの展開で、アスタナとUAEエミレーツのトレインが先頭付近で目立つ中、JCL TEAM UKYOも武山晃輔と石橋学でクレダーをいいポジションへエスコート。独走していたジェロイェンを吸収したプロトンは残り3km、海からの横風にプロトンは内陸に寄りながらトップスピードに。

ツアー・オブ・オマーン第1ステージ ©JCL TEAM UKYO

クレダーの前にはベンジャミ・プラデス、最終コーナー手前を岡篤志がアプローチするものの、ハイスピード下であちこちで接触、ブレーキングが起こり流れが混沌となる。

ツアー・オブ・オマーン第1ステージ ©JCL TEAM UKYO

あっという間にポジションを奪われる熾烈な展開に、クレダーが意を決して単騎でラスト500mの直線をトップ戦線に割って入ろうと試みた。しかし、徐々にスピードが届かなくなっていくクレダーをみて、瞬時に判断したプラデスと岡が個々にスプリントラインに車輪を差し込みゴールへもつれ込んだ。

ツアー・オブ・オマーン第1ステージ ©A.S.O. Thomas Maheux

結果、勝負を制したのはSoudal-QUICK STEPのティム・メルリール。JCL TEAM UKYOはプラデスが12位、岡が17位、クレダーが20位でフィニッシュ。チームとしては上位20名に3名を送り込む結果となったが、クレダーの勝負を叶えられなかったこともあり、レースを走り終えた選手たちは一様に悔しい表情。レースを終えて入念に修正点を話し合い、第2ステージへ希望を繋ぐ。

ツアー・オブ・オマーンに参戦したアスタナのマーク・カベンディッシュ ©A.S.O. Thomas Maheux
ツアー・オブ・オマーン第1ステージ ©A.S.O. Thomas Maheux
ツアー・オブ・オマーン第1ステージ ©A.S.O. Thomas Maheux
ティム・メルリールがツアー・オブ・オマーン第1ステージを制した ©A.S.O. Pauline Ballet