山本大喜がU23タイムトライアル制覇…チーム発足4年目で初の日本チャンピオン

2018年の個人タイムトライアル日本チャンピオンを決める全日本選手権自転車競技ロードタイムトライアルが6月17日、石川県志賀町で行われた。2選手が出場したキナンサイクリングは、男子アンダー23に出場した山本大喜がトップタイムをマークして優勝。チームに初めての日本チャンピオンジャージをもたらした。

山本大喜が全日本選手権個人タイムトライアルU23制覇 ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

数分おきに選手が個別に出走し、フィニッシュタイムを競う個人タイムトライアル。各々の走力がダイレクトに反映され、それぞれの持つパワー、そしてペース配分が勝敗を分ける種目である。2018年は能登半島のほぼ中央部に位置する志賀町に設けられた1周13.1kmのサーキットコースが舞台となった。

そのコースは、おおよそ南北を往復するルート設計。周回中盤に連続するアップダウンが待ち受け、部分的に急勾配となる区間も存在する。またテクニカルな下りもあり、コース取りやバイクコントロールの技術も必要となる。この日の天候は晴れで、コースコンディションは上々。ひと踏ん張りが必要となる復路で向かい風が吹く。そんな中で行われた、ナショナルチャンピオンを決める年1回の大一番、男女計7カテゴリーで争われ、それぞれの勝者には日の丸があしらわれたナショナルチャンピオンジャージを1年間着用する権利が与えられる。

この大会にはキナンから男子エリートに山本元喜、男子アンダー23に山本大喜が出場。ともにシーズン当初から目標に設定していて、チャンピオンジャージ獲得に向けて準備を進めてきた。男子エリートは3周回・39.3km、男子アンダー23は2周回・26.2kmで争われた。

午前9時40分に競技が開始となった男子アンダー23。2周回・26.2kmに18人が出走した。そのうち山本大は14番目でレーススタート。有力選手がひしめく第2ウェーブに振り分けられ、各選手が2分おきでコースへと繰り出した。落ち着いた入りとなった序盤。1周目の中間計測こそ3番手のタイムだったが、そこからペースに乗せていき、繰り返し訪れるアップダウンも難なくクリア。1周目を終えた時点では、トップと約5秒差の2番手につける。

真価を発揮したのは最終の2周目だった。ライバルが軒並みペースの維持に苦しむ中、山本大はさらに攻めの姿勢を見せる。1周目同様にアップダウンを危なげなく抜けると、フィニッシュへ向けてラストスパート。記録は34分14秒23。1周目のラップタイム17分9秒に対し、2周目は17分4秒と、このカテゴリーの出場選手では唯一ラップタイムを上げてみせた。

この結果、2位に13秒差をつけての優勝。男子アンダー23カテゴリーの頂点に立った。そしてキナンにとっても悲願だった日本チャンピオンジャージの獲得。将来を嘱望される大学生との勝負となった山本大だったが、プロ選手としての責任をしっかりと果たす快勝となった。

●男子エリートの山本元喜は11位

大会の最終種目、男子エリートには山本元喜が出場。3周回・39.3kmで争われた日本頂上決戦に挑んだ。競技は午後0時40分に第1走者がスタート。出走29人中22番目、第2ウェーブの最後に登場した山本元は、前走者から1分後にスタート。中間計測では、通過時点で5番手前後のタイムで走行。2周回目はペースを落ち着かせて、終盤勝負に備える。

そして上位進出をかけた最終の3周目。順位のジャンプアップを目指した山本元だったが、暫定5位でのフィニッシュ。タイムは53分10秒63。スピードの落ち込みをとどめ、ほぼイーブンペースで走り切った。その後に出走した第3ウェーブの選手たちが次々と山本元のタイムを上回ったこともあり、最終順位は11位。優勝をねらって準備を進めてきたが、悔しい結果となった。

順位だけ見れば明暗分かれる格好となった両選手だが、それぞれに可能性と課題を認識するレースでもあった。次戦となる、翌週の同大会ロードレースに向けて調整と修正を図っていくこととなる。山本大にとってはロードタイムトライアルの2冠、山本元にとってはタイムトライアルの雪辱を期してロードに挑む。全日本選手権自転車競技大会ロードレースは22日から24日までの日程で、島根県益田市で開催される。キナンのロースター(出場選手)については近日中に発表を予定している。

全日本選手権自転車競技大会ロードタイムトライアル結果
●男子アンダー23(26.2km)
1 山本大喜(KINAN Cycling Team) 34分14秒23
2 石原悠希(順天堂大学) +13秒12
3 中川拳(早稲田大学) +39秒09
4 松田祥位(EQADS) +52秒14
5 大町健斗(Team Eurasia – IRC TIRE) +55秒50
6 小山貴大(シマノレーシング) +1分20秒03

●男子エリート(39.3km)
1 窪木一茂(TEAM BRIDGESTONE Cycling) 50分23秒92
2 近谷涼(TEAM BRIDGESTONE Cycling) +1分2秒68
3 小石祐馬(チームUKYO) +1分30秒09
4 小野寺玲(宇都宮ブリッツェン) +1分36秒43
5 渡邊翔太郎(愛三工業レーシングチーム) +1分39秒11
6 佐野淳哉(マトリックスパワータグ) +1分42秒81
11 山本元喜(KINAN Cycling Team) +2分46秒71

山本大喜

山本大喜のコメント
今回は自分との戦いだと思い、一定ペースで走ることを心掛けた。レーススケジュールの関係もあり、タイムトライアルに特化したトレーニングは少なめだったが、その中でもできる限りの準備をして本番を迎えられた。調整もうまくいったので、レースではペース配分に注意して、実力を発揮できれば勝てると自信をもって走った。タイムトライアルで勝つことができたが、それ以上に重要視しているのがロード。次のターゲットはアンダー23カテゴリーでのロード日本チャンピオン。しっかりと集中して臨みたい。

山本元喜

山本元喜のコメント
パワーを見ながら走ってはいたものの、中盤から後半にかけて失速してしまったことと、イメージしていた出力に達していなかったことが敗因。思っていたレースとはいかなかった。コースに対応することはできていたと思うが、なによりパワーが足りていなかった。ペース配分も含めて、走り方を見直さないといけない。翌週のロードに向けては、コースを念入りにチェックしながらコンディションと集中力を高めていくことになる。調子は悪くないので、あとはいかに本番にピークを持っていけるかにかかっている。

⚫関連ニュース

20回記念のツール・ド・熊野開幕…キナンが総合Vに向けてスタート

⚫最新ニュースへ

全日本選手権個人タイムトライアルへ向け準備万端…タイトル獲得に山本兄弟が挑戦

2018年の個人タイムトライアル日本チャンピオンを決める、全日本選手権自転車競技大会ロード・タイムトライアルが6月17日、石川県志賀町にて開催される。キナンサイクリングからは山本元喜と大喜の兄弟が参戦。エリートとアンダー23とカテゴリーを分けての出走となるが、それぞれこの種目の日本チャンピオンジャージ獲得を目指して走る。

選手・スタッフは大会2日前の15日に開催地入り。到着早々に選手2人は試走を兼ねたトレーニングへと出発し、コースの雰囲気を確かめた。そのなかで選手たちが念入りにチェックを繰り返したのが「周回中盤のアップダウン区間」。あらかじめ発表されていた高低図だけでは実感できない急坂やテクニカルな下りがあり、2人はともにアップダウンで攻められるよう、いかにレース全体でペースを配分できるかをポイントに掲げる。

そのコースは1周13.1km。おおよそ南北に往復するルートで、レース当日の天候や風向きも結果に反映される可能性が高い。いずれにしても、各選手の走力やテクニックがモノをいうコースといえそうだ。

そして、レース前日の16日もコースに出ての最終調整。各選手ともに約1時間、無理のないペースで走り、バイク上でのポジションの確認や脚の調子を確かめている。

今回は3周回・39.3kmで争われる男子エリートに元喜が、2周回・26.2kmの男子アンダー23に大喜が出場。当日は男子アンダー23が先に行われ、大喜が第2ウェーブからの出走。午前10時31分、最後から5人目としてスタートする。男子エリートの元喜は、第2ウェーブの最終走者として午後1時49分にスタート。カテゴリー全体では最後から9人目での出発となる。

出場両選手とも、シーズン当初から目標にすえてきた今大会。高いモチベーションでレース当日を迎える。そしてキナンとしても2015年のチーム発足以来初となる日本チャンピオンの輩出に向けて、選手・スタッフ総力を挙げて戦う。

全日本選手権自転車競技大会ロード・タイムトライアル
キナンサイクリング所属選手の出走時刻

●男子アンダー23(26.2km、9:40競技開始)
10:31:00 山本大喜

●男子エリート(39.3km、12:40競技開始)
13:49:00 山本元喜

⚫関連ニュース

全日本選手権個人タイムトライアルに山本兄弟が出場…日本チャンピオン獲得を目指す

⚫最新ニュースへ

KINAN AACA CUP第6戦に塚本一樹、中西健児、雨乞竜己、中島康晴、新城雄大

KINAN AACA CUP 2018 第6戦が6月16日に三重県いなべ市の梅林公園にて行われ、ホスト役のキナンサイクリングから塚本一樹、中西健児、雨乞竜己、中島康晴、新城雄大が出場する。KINAN AACA CUPは、東海地区のレースレベル向上と選手のスキルアップを目的に行われているシリーズ戦。

KINAN AACA CUP 2018 第6戦に出場するキナンの5選手

同シリーズはキナンがホスト役を務めるだけでなく、プロ・アマはもとより、年齢・性別を問わず混走する点も大きな特徴として挙げられる。今節は最上級カテゴリーの1-1から1-4までの4クラスのレースを実施。選手ひとり一人の目的やスキルに合わせて参戦することができるように運営されている。

6月16日の第6戦は、ツアー・オブ・ジャパンいなべステージのメイン会場でもある三重県いなべ市・梅林公園内の特設コースで行われる。 1周1.5kmのサーキットコースを設定し、クリテリウムでレースは実施される。とはいえコースはアップダウンの繰り返し。急坂や長く続く上り基調の区間もあり、コースを攻略するにはスピードと登坂力をともに兼ね備えていることが条件となる。

30周回・45kmで争われる1-1カテゴリーには、ホストチームのキナンから塚本らの5人がエントリー。勝負はもとより、翌週に控えた全日本選手権ロードレースへ向けた脚試しとして大きな意味合いを持つ一戦となる。

また、レースのほかにもキナンチームの選手とともにレースコースを走行できる「キッズラン」、ファンサービスなどさまざまな催しも予定している。

⚫関連ニュース

福田真平が逃げ集団のスプリントを制す…KINAN AACA CUP第5戦

⚫最新ニュースへ

全日本選手権個人タイムトライアルに山本兄弟が出場…日本チャンピオン獲得を目指す

日本チャンピオンを決める戦いが6月17日から始まる。全日本選手権個人タイムトライアルが石川県・能登半島の中央部の志賀町で開催され、キナンサイクリングから山本元喜と大喜の兄弟が出場する。

1周13.1kmのサーキットを舞台に、カテゴリーごとに周回数・距離を変動させて国内タイトルを争う。サーキットコースはおおよそ南北に往復するルート。周回中盤にかけてアップダウンがあり、この区間でいかにペースを保てるかが勝負を左右すると考えられる。

元喜は男子エリートに、大喜は男子アンダー23にそれぞれエントリー。エリートはサーキットを3周回する39.3km、アンダー23は2周回する26.2kmで競う。ともにシーズンイン前からこの大会へ照準を定め、準備を進めてきた。チームとしていまだ実現していない日本チャンピオンジャージの獲得に今回はこの2選手がチャレンジする。

全日本選手権自転車競技大会 ロードタイムトライアル

男子エリート個人タイムトライアル 13.1km×3周回 39.3km
男子アンダー23個人タイムトライアル 13.1km×2周回 26.2km

⚫関連ニュース

20回記念のツール・ド・熊野開幕…キナンが総合Vに向けてスタート

⚫最新ニュースへ

雨乞竜己が区間5位と手応えつかむ好スプリント…ツール・ド・コリア最終ステージ

キナンサイクリングが参戦しているツール・ド・コリアは6月3日、韓国の首都ソウル市街を駆ける最終ステージが争われ、雨乞竜己が集団スプリントで5位に入る活躍を見せた。惜しくも表彰台を逃したが、今後に向けての課題と確かな手応えをつかんだ。また、ジャイ・クロフォードはトップと同タイムでフィニッシュし、個人総合20位でUCIポイント3点を獲得した。

ツール・ド・コリア第5ステージ ©︎KINAN Cycling Team / Naoi HIRASAWA

1988年ソウル五輪のために作られたオリンピック公園をレース会場、スタート・フィニッシュ地点とする65.0kmのレース。40kmほどのラインレースの後に、1周5kmのオリンピック公園外周を約5周する平坦なコースレイアウト。スプリントはフィニッシュの4周前と2周前に設定された。会場にさまざまなブースが出展されることもあり、大会で最も多くの観客が集まる注目のステージだ。

キナンの最終日の目標は、雨乞がスプリントでステージ上位をねらうことと、総合20位のクロフォードがスプリントポイントでボーナスタイムを獲得し総合順位を上げること。中西にはそのアシストとして動くことが求められた。レース開始が近づくと、クロフォードが早めにスタート地点に現れ、隊列の前方に位置取り。ボーナスタイム獲得への強い意思を感じさせた。レースがスタートすると、雨乞は集団後方で温存し、クロフォードと中西はアタックに備えた。

アタックがかかるも逃げが決まらない展開が続いたが、残り29kmでクロフォードがアタック。短い上りを利用して集団から飛び出し、追ってきた数人の選手とペースアップを図った。しかし、この動きは集団に飲み込まれ、続いて中西も逃げに入ろうと試みたがこれも不発に終わった。逃げが決まらないまま集団は周回コースに突入。2度のスプリントポイントでクロフォードが上位に入ることはできず、キナン勢は雨乞のスプリントへと気持ちを切り替えた。

集団後方に控えていた雨乞は、残り2周をきると徐々に前方へとポジションを上げていった。こうした集団内での動きは雨乞の得意とするところ。途中で中西のアシストを受け脚を休めながら、最後は10番手あたりで最終コーナーを回った。

好感触でスプリントに臨み数名を抜き去りながらフィニッシュラインに迫ったが、優勝争いにはわずかに届かず5位。優勝はチームUKYOのレイモンド・クレダー(オランダ)だった。雨乞は最高の成績は残せなかったものの、落ち着いたレース運びから脚を残した状態でスプリントに参加し、勝負できたことで大きな手応えをつかむレースとなった。

クロフォードも集団内で危なげなくフィニッシュし、ジャンプアップこそならなかったが個人総合20位を守り抜いた。前日逃げた疲れが残るなかアシストに奮闘した中西は、トップと同タイムの59位となった。

キナンにとっては第1、2ステージと落車リタイアが続いたが、中西が第4ステージで逃げに乗り、厳しい山岳を乗り越えた雨乞が最終ステージで上位進出。クロフォードがUCIポイントを獲得と、3選手それぞれが役割を果たし、成果を残した大会となった。(Text:平澤尚威)

ツール・ド・コリア第5ステージ結果(65.0km)
1 レイモンド・クレダー(オランダ、チームUKYO) 1時間21分5秒
2 ミヒケル・レイム(エストニア、イスラエル サイクリングアカデミー) +0秒
3 セオ・ジュンヨン(韓国、KSPO ビアンキ アジアプロサイクリング)
4 ルーカス・セバスティアン・アエド(アルゼンチン、ユナイテッドヘルスケア プロフェッショナルサイクリングチーム) 
5 雨乞竜己(KINAN Cycling Team) 
6 ルカ・パチオーニ(イタリア、ウィリエール トリエスティーナ・セッレイタリア) 
36 ジャイ・クロフォード(オーストラリア、KINAN Cycling Team) 
59 中西健児(KINAN Cycling Team) 

個人総合時間
1 セルゲイ・トヴェトコフ(ルーマニア、ユナイテッドヘルスケア プロフェッショナルサイクリングチーム) 18時間59分37秒
2 ステパン・アスタフィエフ(カザフスタン、ヴィノ・アスタナ モータース) +28秒
3 マッテオ・ブザート(イタリア、ウィリエール トリエスティーナ・セッレイタリア) +37秒
4 アルテム・オヴェチキン(ロシア、トレンガヌ サイクリングチーム) +43秒
5 レイモンド・クレダー(オランダ、チームUKYO) +1分41秒
6 ベン・ペリー(カナダ、イスラエル サイクリングアカデミー) +1分42秒
20 ジャイ・クロフォード(オーストラリア、KINAN Cycling Team) +2分0秒
47 中西健児(KINAN Cycling Team) +19分54秒
87 雨乞竜己(KINAN Cycling Team) +1時間2分52秒

ポイント賞
1 レイモンド・クレダー(オランダ、チームUKYO) 63pts
22 雨乞竜己(KINAN Cycling Team) 11pts
32 ジャイ・クロフォード(オーストラリア、KINAN Cycling Team) 3pts

山岳賞
1 クォン・スンヨン(韓国、KSPO ビアンキ アジアプロサイクリング) 20pts
20 中西健児(KINAN Cycling Team) 1pts

チーム総合
1 ユナイテッドヘルスケア プロフェッショナルサイクリングチーム 57時間3分5秒
16 KINAN Cycling Team +1時間20分32秒

ジャイ・クロフォード

ジャイ・クロフォードのコメント
今日の雨乞のリザルトはとてもよかった。彼はとてもいいスプリンターだ。いい結果を残せば自信を得て、もっといいスプリントができるようになる。今日は雨乞にとってのファーストステップ。大会中、落車などがあったが、今日のレースはチームにとってとてもポジティブだ。総合ジャンプアップのため何度かアタックしようと思ったが、毎回他のチームが追ってきたので難しかった。今日は“スーパーファスト”なステージだった。次のレースでは勝ちたいので見ていてほしい。総合20位はものすごいリザルトというわけではないし、もっといい成績残したかったが、いまのコンディションに戻れたことをうれしく思う。退院してから短い時間しかトレーニングできず、パワーが落ちていたが、すぐにカムバックできたから。

中西健児

中西健児のコメント
今日走ってみたら、昨日の逃げの疲れが残っているのを感じた。ジャイさんの逃げにつなげられるように、カウンターのアタックに付いていってみたが、その一発で終わってしまった。ただ、雨乞さんが上がろうとしたところで風よけになれた。そういうアシストは今まであまりやったことがなかったので、違うことができたのはよかったと思う。今大会は去年よりコースが厳しくなり、総合系の選手が増えて難しいレースだったが、自分の感触としては前よりもよく走れた。今回の経験を次のレースに活かせればと思う。ハイレベルななかでレースできてよかった。

雨乞竜己

雨乞竜己のコメント
去年出場してどんなレースかわかっているので、終盤までは集団後方にいて残り7kmくらいから上がっていった。脚を使わずに前に行けて、(中西)健児が風を浴びそうなところで来てくれて、数秒から十数秒だったが風よけになってくれて助かった。そこからは集団の中を縫っていった。最後まで脚を使わなかったのは初めてで、自信をもって臨めたので、スプリントはいい感触だった。ただ、勝つにはもっと力が必要だった。今大会は去年より厳しいコースで、第1ステージは逃げ切りが決まってしまったので、大集団のスプリントになる時は必ず絡んでいかなければという戒めになった。スプリントは少なかったのでできることは限られていたが、それぞれができることはやったと思う。ジャイさんがリーダーシップをとってくれて、レースでも精神的にも助けになった。

⚫関連ニュース

中西健児が100km逃げで存在をアピール…ツール・ド・コリア第4ステージ

⚫最新ニュースへ

トマ・ルバが意地の逃げで区間2位…ツール・ド・熊野最終ステージ

第20回ツール・ド・熊野は6月3日、第3ステージをもって閉幕。4日間にわたる世界遺産・熊野路での戦いに終止符が打たれた。この大会にシーズン最大目標として挑んだキナンサイクリングは、個人総合でサルバドール・グアルディオラの5位がチーム最上位。長年の悲願である、個人総合優勝は次回へ持ち越しとなった。最終の第3ステージでトマ・ルバが前日の遅れの雪辱を期してアタック。勝利こそ逃したものの、意地を見せてステージ2位で大会を締めくくった。

ツール・ド・熊野第3ステージを走るトマ・ルバ ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

前日の第2ステージでキナンはグアルディオラがステージ5位。個人総合でも5位につけ、最終日を迎えることとなった。熊野の山々をめぐった戦いは、前々日の第1ステージがコース内トンネルでのフェンス倒壊によるレースキャンセルも関係してか、例年以上にサバイバルなものになった。

最終ステージを迎える段階で、個人総合でチーム最上位のグアルディオラは総合タイム差45秒。8位に続くマルコス・ガルシアは57秒差。個人総合上位9人が1分以内にひしめく大接戦だが、キナンとしてはグアルディオラとガルシアを軸にレースを組み立てていくことになる。

最終の第3ステージは、クジラを目玉とする観光振興で知られる太地半島をめぐる1周10.5kmのサーキット。これまで採用されてきた対面通行区間が廃止され、わずかな距離ながら国道42号線を通過する新ルートでのレースとなった。それでもコースの注目ポイントは変わらず、太地港からの上りや、テクニカルなコーナーが待ち受けるダウンヒルなど、細かい変化に富んだルート設定。全10周回、104.3km(パレード区間は含まず)のレースは、有力チームが真っ向からぶつかり合うレースとなることが予想された。

その通り、スタート直後からアタックの応酬。力のある選手たちが自ら動くような状況となるが、1周目の終盤にガルシアが抜け出す。すぐに2人逃げとなり、メイン集団に対し徐々にその差を広げていく。しかし、両者のスピードが合わなかったこともあり、いったん集団へと戻り、新たな展開を模索することとなる。プロトン(大集団)は再びアタックの応酬が始まった。

3周目に、上りを利用して数人が次々とアタック。ガルシアが再び前方に入り、9人の逃げグループを形成する。さらに4周目にルバがアタック。これに続いた選手たちが追走態勢となり、逃げグループに合流。最大で20人を超える先頭集団となる。次の周回では、1名のアタックに反応しルバが加わり、集団との差を広げていく。

6周目にこれら状況が一変。個人総合首位でこの日を迎えた入部正太朗(シマノレーシング)が後退。これを見たチームUKYOのアシスト陣がペースを上げ、ルバたちをキャッチ。再び20人以上がレースを先行する状況へと変わった。この間、中島康晴やガルシアが前方をうかがう動きを見せたが、逃げを決めるまでには至らない。

出入りが激しいレースの均衡を破ったのはルバのアタックだった。前日の第2ステージでチェーントラブルがあり、最終的に15分以上遅れてフィニッシュ。総合争いに関係していないことから、集団がルバの動きを容認。その後、追走を試みた佐野淳哉(マトリックスパワータグ)がルバに追いつき、2人がフィニッシュに向けて先を急ぐことになった。

ルバと佐野はともにステージ優勝にフォーカスし、協調体制を組んで後続とのリードを保つ。最終周回に入る時点で、追走とは約30秒、さらに約30秒離れてメイン集団が続いた。

ハイペースを維持したルバらはそのままトップをキープ。その流れでステージ優勝をかけたマッチアップへ。フィニッシュまで残り1kmを切るとルバが前に出て、佐野が背後につく。そして残り200m、佐野が加速すると、ルバも懸命に追ったが届かず、ステージ2位で終えた。あと一歩、本拠地・熊野地域のファンの前での勝利に届かなかったルバだったが、前日の悔しさをこのレースにぶつける意地を見せた。

総合上位陣を含むメイン集団はルバたちから約20秒差でフィニッシュへ。グアルディオラとガルシアはこの中でステージを終了。さらに中島と新城雄大もレースを終えており、チームは5選手が完走。山本元喜はこのステージ途中でバイクを降りている。これらの結果を受けて、個人総合時間賞ではグアルディオラが5位をキープ。ガルシアも8位で続き、トップ10に2人を送り込んだ。また、山岳賞ではガルシアが2位、チーム総合はルバの逃げ切りによってタイム差を縮めたものの、トップまでは届かず2位だった。

第20回の記念大会として行われた2018年のツール・ド・熊野。キナンは個人総合優勝者の輩出を至上命題として臨んだがかなわず、その夢は2019年へとつなぐこととなった。厳しいメンバー先行の末に出走した選手たちは、一様にレース結果とその内容に悔しがる姿を見せたが、その思いを糧に1年後の再チャレンジを目指していくことになる。

大会はインターネットによるライブ配信がこれまで以上に精度アップしたことや、現地ではレース終了後恒例の「餅投げ」といったイベントで選手とのふれあいを楽しめるなど、ツール・ド・熊野ならではの魅力が詰まった4日間だった。また、熱い応援はもとより、主催の「SPORTS PRODUCE 熊野」をはじめ、地元の人々による運営や大会成功に向けた尽力も、選手・スタッフを盛り立てる原動力となった。

チームはツアー・オブ・ジャパン、そしてツール・ド・熊野とビッグレースを立て続け手に戦ってきたが、すぐに次の目標に向かって進む。そしてその先に2019年のツール・ド・熊野があることを強く意識しながら、レース活動に力を注いでいくことになる。

ツール・ド・熊野 第3ステージ結果(104.3km)
1 佐野淳哉(マトリックスパワータグ) 2時間35分39秒
2 トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム) +2秒
3 チェン・キンロ(香港、HKSIプロサイクリングチーム) +12秒
4 ライアン・キャバナ(オーストラリア、セントジョージコンチネンタル) +24秒
5 黒枝士揮(愛三工業レーシングチーム)
6 窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング)
15 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team) +26秒
16 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team)
17 中島康晴(KINAN Cycling Team) +2分30秒
30 新城雄大(KINAN Cycling Team) +5分33秒
DNF 山本元喜(KINAN Cycling Team)

個人総合時間賞
1 マーク・デマール(オランダ、チームUKYO) 5時間22分47秒
2 ベンジャミン・ダイボール(オーストラリア、セントジョージコンチネンタル) +18秒
3 ベンジャミ・プラデス(スペイン、チームUKYO) +35秒
4 鈴木譲(宇都宮ブリッツェン)
5 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、キナンサイクリングチーム) +38秒
6 マーカス・カリー(オーストラリア、セントジョージコンチネンタル) +39秒
8 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) +50秒
16 中島康晴(KINAN Cycling Team) +5分59秒
23 新城雄大(KINAN Cycling Team) +10分59秒
29 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) +15分2秒

ポイント賞
1 マーク・デマール(オランダ、チームUKYO) 29pts
4 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) 23pts
13 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team) 13pts
16 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) 8pts

山岳賞
1 マーク・デマール(オランダ、チームUKYO) 24pts
2 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) 12pts
6 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team) 3pts
7 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) 1pts

チーム総合
1 セントジョージコンチネンタル 8時間24分51秒
2 KINAN Cycling Team +15秒

トマ・ルバ

トマ・ルバのコメント
力の限りを尽くした。本当は最終周回に佐野(淳哉)選手を引き離したかったのだけれど、それができなかった。スプリントでは彼の方が力があるし、この結果は仕方がない。その前日は悔しいレースになったが、もう一度トライすることができ、チームとしてよい走りができたと思う。先週(ツアー・オブ・ジャパン)と違って、今回は苦戦を強いられたが、これもレースとして受け入れるしかない。来年こそは勝ってみせるよ!

⚫関連ニュース

ツール・ド・熊野は山岳決戦…グアルディオラが45秒差で最終日へ

⚫最新ニュースへ