『シマノ 世界を制した自転車パーツ』を光文社が電子書籍化

光文社の『シマノ 世界を制した自転車パーツ〜堺の町工場が世界標準となるまで〜』が電書版として19年ぶりに新発売されました。紙の本は2003年初版発行で、現在は図書館などに所蔵されていますが、ものづくりに命を燃やした人たちを今の自転車好きにも知ってほしいという思いがあり、電書化を実現しました。

光文社の『シマノ 世界を制した自転車パーツ〜堺の町工場が世界標準となるまで〜』

2003年、奇跡といってもいい刊行だった

2003年のシマノ本を忠実に電書化したので、文章は当時のままです。そのためアームストロングがツール・ド・フランス5連覇中ですが、それはそれとして当時の開発者たちの自転車パーツづくりにかけた情熱や、世界を制したシマノの評価が変わるものではないので、そのままデジタル進化しました。

当時のシマノは「チームシマノ」という名のもとに、開発だけにスポットライトが当たる取材依頼は難しく、シマノ本は奇跡といってもいい発売だったとご尽力いただいた方々には感謝しています。往時の方々が実名で登場し、いただいた言葉を文字に落とし込んでいます。自転車好きだけでなく、ものづくりをする方々にぜひ読んでほしいと願っています。

興味のある方はお気に入りの電書サイトで「シマノ、光文社」と検索のほど。1408円。(著者:山口和幸)

シマノ 世界を制した自転車パーツ〜堺の町工場が「世界標準」となるまで〜【電子書籍】[ 山口和幸 ]

価格:1,408円
(2022/3/18 09:08時点)
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キャノンデールがシマノ新型Di2搭載ハイエンドモデル発売

待望のフルモデルチェンジを遂げたシマノのロードコンポーネント、デュラエースとアルテグラを搭載した4モデルをキャノンデール・ジャパンが発売する。

SuperSix EVO HM Disc – Dura-Ace Di2

新しいグラフィックとカラーを纏ったエアロバイク「システムシックス」と軽量オールラウンドバイク「スーパーシックス EVO」にセミワイヤレス方式を採用したDi2電動シフトを搭載。握りやすい形状に見直されたレバー部は電動ケーブルを廃してコックピット周辺をクリーンに保つ。これにより細かな12速コンポーネントがライダーに快適なライドを提供。

品名カラーサイズ価格(税込)
SuperSix EVO Hi-MOD Disc Dura-Ace Di2GMG44,48, 51, 54, 56126万5000円
SuperSix EVO Hi-MOD Disc Ultegra Di2DTE44, 48, 51, 54, 5688万円
SuperSix EVO Carbon Disc Ultegra Di2MRC44, 48, 51, 54, 5673万7000円
SystemSix Hi-MOD Dura-Ace Di2MRC44, 51, 54126万5000円

SuperSix EVO Hi-MOD Disc Dura-Ace Di2

深い輝きが特徴のガンメタルグリーンを纏った新型デュラエース搭載マシン。キャノンデールのエアロパー ツKNØTをステム、シートポスト、ホイールに採用。レーシングバイクでありながら高い快適性を実現。ギヤは前52/36T、後ろ11-30T。キャノンデールレーシングバイクのフラッグシップモデル。

SuperSix EVO Hi-MOD Disc Ultegra Di2

SuperSix EVO Crb Disc – Ultegra Di2

セミワイヤレス方式を採用した新型アルテグラ搭載したハイモッドフレームモデル。レーシングバイクでありながら、高い快適性能を誇り、幅広いライダーのニーズに応えるモデル。快適性をさらに高めるセーブカーボンシステムバー装備。ギヤは前52/36T、後ろ11-30T。カラーは太陽光の下で輝きを放つディープティール。

SuperSix EVO Carbon Disc Ultegra Di2

SuperSix EVO HM Disc – Ultegra Di2

セミワイヤレス方式を採用した新型アルテグラ搭載したモデル。爆発的なスピードを支えるレーシーなジオメトリーと剛性。マイクロサスペンション効果と太いタイヤ(最大30mm)も装着できるクリアランスにより、魔法の絨毯のような乗り心地をもたらす。

SystemSix Hi-MOD Dura-Ace Di2

SystemSix HM – Dura-Ace Di2

新型デュラエース搭載のエアロバイク「システムシックス」ハイモッド仕様。エアロパーツKNØTのホイール(64mm)、ハンドル、ステム、シートポスト採用。「誰よりも速く駆け抜けたい」そう願うすべてのライダーに向けたレーシングバイク。

●キャノンデールのホームページ

9200系デュラエースがついに登場…完成車は軽自動車並み価格に

自転車用パーツで最高級と言えば、大阪府堺市にある部品メーカー、シマノが製造するデュラエースだ。2021年9月1日に同社はその最新モデルとして9200系を発表。即日のうちにジャイアント、ピナレロ、トレック、ブリヂストンサイクルなど世界の大手メーカーが同パーツ搭載の完成車をリリースした。前2段、後ろ12段の電子制御変速、制動力の高いディスクブレーキ。完成車価格は150万円前後となった。

新型DURA-ACE Di2

最新モデル発表と同時に各メーカーが搭載車を発売へ

9200デュラエースは変速とブレーキシステムのみの展開だが、合計45万円以上する。後ろ変速機の単品価格は8万8704円だ。乗れる状態にするにはフレームや車輪、ハンドル、サドルなどの部品をそろえる必要があり、自転車1台としては軒並み120万円を超える。

ジャイアント・TCR ADVANCED SL0 DISC DA
DOGMA F12 DuraAce Di2 Disc

9月下旬に発売されるブリヂストンサイクルのアンカーRP9は、完成車価格で121万円。ちなみにシマノが同日発表した第2グレードのパーツ群、アルテグラを搭載したモデルを選択すれば66万円。細かな部分を考慮しなければ、この金額が最高級パーツと第2グレードの差の指標ともなる。

トレック・ドマーネ デュラエース

世界最大級の自転車メーカー、ジャイアントもデュラエース搭載のTCRアドバンスドSL0ディスクを発売。価格は137万5000円。イネオス・グレナディアーズチームが乗るピナレロはドグマFデュラエースDi2 12Sを181万5000円で発売した。もはや軽自動車が購入できる価格だ。

アンカーRP9・レーシングブラック

デュラエースはなにがいいのか? 賞金のかかったプロレースでは、わずかな性能差が勝負を分けることもあり、選手が使いたがるのは理解できる。実際に、発表前の本場レースでは刻印を隠したプロトタイプを使う選手もいた。そんな高性能パーツを一般の人たちにも使いこなせるのか?

今回の9200デュラエースに限らず、高級パーツの魅力はストレスを感じることなく走れることだ。握力の弱い女性でもブレーキレバーを軽く引くだけで確実に制動する。上り坂で苦しいときも、指先でワンクリックすれば瞬時に変速してくれる。だから初級者こそデュラエースが重宝するとも言える。精巧な作りなので、整備さえ怠らなければ10年は初期性能を大きく落とさないというメリットもある。

こういった点を総合するとお買い得感が少しある。ただしシマノ製品はある程度のグレードのモデルなら基本性能は十分なので、コストを考えれば廉価グレードを選択するのも間違いではない。F1レースでは世界の最高峰で戦うマシンを一般愛好家が手にするチャンスはないが、デュラエースはお金さえ出せば自分のものにできる。高いけど。

新型ULTEGRA Di2

楽になったらもう元には戻らない…手元変速の開発

変速機を動かすレバーは、かつては下側フレームに取り付けられていて、金属製のワイヤでつながれた変速機を動かしていた。変速するためにはハンドルから手を離す必要があった。これでは快適ではないと考えたのがシマノだ。まず変速レバーをインデックス化して、ワンクリックするごとにギアが1段ずつ動作するようにした。さらにギア側の歯先それぞれに切削加工をしてチェーンが瞬時に動くようにした。そしてついに、走行中にたいてい握っているブレーキレバーに変速レバーを組み込んでしまった。手を離さないで変速できるようにしたのだ。

1990年、7700デュラエースに世界初としてこのシステムが導入された。あっという間に世界標準となり、他メーカーも追従。次第にこのシステムは最下級グレードまで採用されるほどスタンダードなものになった。デュラエースはその後、モデルチェンジのたびに4ケタの品番を大きくし、十代目が9200系となる。

最新デュラエース搭載のブリヂストンアンカーRP9は121万円

ブリヂストンサイクルは、スポーツバイクブランド「ANCHOR(アンカー)」が展開する、高みを目指し挑戦し続ける競技者向けのプロダクトライン「レーシングライン」 より、新型ロードバイク「ANCHOR RP9」を、9月下旬から発売。

レーシングブラック

RP9は、自転車競技トラック日本代表に供給し使用されたトラックバイクの開発で磨きをかけたブリヂストン 独自の解析技術「PROFORMAT(プロフォーマット)」を用いて開発された新型ロードバイク。

オートクレーブ工法

これまでチームブリヂストンサイクリングの走りを支え、国内レースで数々の勝利を挙げてきたRS9とRS9sをさらに進化させるために、空力・重量・剛性を高次元でバランスさせ、平地巡航・登坂・アタック などあらゆる環境の入り乱れるステージレースを1台で勝てるバイクを目指した。

左右非対称チェーンステー

完成車にはシマノの新型コンポーネントを搭載したDURA-ACEモデルとULTEGRAモデルの2モデルをラインナップ。RP9の価格はDURA-ACEモデルが121万円、ULTEGRAモデルが66万円、フレームセットは49万5000円。

空力・重量・剛性のバランスに優れるカムテール形状のシートチューブと専用シートポスト

カラーはレーススタイルの2色展開で、レーシングブラックと、自転車競技トラック日本代表に供給し使用されたトラックバイクのデザインを踏襲したレーシングカラーを設定した。

レーシングカラーは、自転車競技という「戦」に挑戦する日本代表選手を「侍」ととらえ、「夜明けの侍」というコンセプトでデザインされたもので、「夜明けの太陽」を表現した赤と黒のグラデーションと、「刀」を表現した白銀色で構成。その塗装は上尾工場の職人が一本ずつていねいに手作業で仕上げていく。

特注のレーシングカラーはプラス16万5000円

スペシャルカラーは16万5千円(税込)のアップチャージで選択が可能。

●アンカーのスペシャルホームページ

シマノが欧州レースでニュートラルアシスタンスを開始

2021年3月、創業100周年を迎えた世界屈指の自転車部品メーカー、シマノがグランツールと呼ばれる三大ステージレースで技術サポートを担うことになった。ツール・ド・フランスでは地元メーカーが常にその業務をこなしてきたが、ついに日本企業がこれに変わった。欧州自転車界の景色が一変するほどの衝撃的ニュースだが、シマノに与えられたその任務とは?

2021パリ〜ニースのニュートラルアシスタンスはシマノ ©A.S.O. Fabien Boukla

ツール・ド・フランスの景色が変わるほどの衝撃ニュース

シマノに与えられた任務はニュートラルアシスタンスサービスと呼ばれるもの。チームの分け隔てなく公平に機材故障に対処する車両を走らせる。ツール・ド・フランスではこれまでフランスのマヴィック社がこれを務めていた。車両は黄色で、フランス語でそれを意味する「ボワチュールジョーヌ」と呼ばれて親しまれてきた。その黄色が今季からシマノの企業色である青色に変わるのだ。

ジロ・デ・イタリアが3月5日にシマノとのコラボを発表 ©LaPresse

1973年のパリ〜ニースでマヴィックは初めて黄色いニュートラルアシスタンスカーを走らせた。すぐにその存在は知れ渡り、沿道にいるファンは黄色い車を見ればマビックだとだれもが分かった。選手たちの後ろを伴走する車両隊列の中で、一番目立つのがボワチュールジョーヌだった。

マヴィック社はシマノのようにあらゆる自転車部品を開発・販売する規模ではなく、かつては変速機やクランク周辺部など、現在も車輪やアパレルなどに特化して製造する。企業規模としては小さいが、主催者とともに大会を育んできた実績と貢献度は計り知れない。ツール・ド・フランスにとってマヴィックは協賛企業ではなく、協力企業という特別の立ち位置でもあった。

旧車、旧ロゴのマヴィックカーのミニチュア

ニュートラルアシスタンスサービスに従事するスタッフの出番はラジオツールと呼ばれる車載無線で指示されて始まる。

「ボワチュールジョーヌ、先頭集団で○○チームの選手がパンク!」

指示が入るや、「あのチームの後輪はカンパニョーロの11段変速だ」などと判断し、現場に急行するや適合する車輪を選択して交換する。

ジロ・デ・イタリアやストラーデビアンケのニュートラルアシスタンスもシマノ ©LaPresse

ボワチュールジョーヌの屋根の上には交換用の自転車本体も積載されているが、車輪の交換はひんぱんにあるものの、ボワチュールジョーヌが自転車を交換することはほとんどない。使用するペダルの形状がチームによってバラバラで、これに選手の体格によってフレームサイズの違いが加わるからだ。1秒を惜しんで前を走る集団に追いつきたい選手を前にして、ペダルを交換しているヒマはない。こういった場合はチームカーの到着を待つのがほとんど。

助手席にはステージごとにスポンサーなどのVIPが乗る。世界各国の得意先やメディアなどの名前が予約リストに掲載されている。競技のうえでなくてはならない存在なのかもしれないが、同時進行で社交が展開されている。このあたりに、自転車レースは伝統に裏打ちされた文化であることがうかがえる。

1990年代にようやく欧州市場でその存在が認められた後発メーカーのシマノは、いきなり世界最高峰のツール・ド・フランスでマビックを追い落とそうとはしなかった。まずは国際統括団体のUCI(国際自転車競技連合)が主催する世界選手権でニュートラルアシスタンスを始めた。

ブエルタ・ア・エスパーニャでシマノは大会協賛も ©PHOTOGOMEZSPORT2020

レースの勝敗に影響を与えかねないほどの高性能な機材を次々と開発していくシマノにとっては、競技規則を定めるUCIと蜜月関係を築きたいという戦略もあった。次に三大大会のジロ・デ・イタリア、さらにブエルタ・ア・エスパーニャでサポート業務を受注した。そして100周年の2021年、いよいよツール・ド・フランスへ。出場選手の過半数がシマノ部品を使うのだから、それは自然の成り行きだった。

ジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスの姉妹レースもすべてシマノが業務を担う。3月7日、ツール・ド・フランス傘下のパリ〜ニースが開幕し、青色のニュートラルアシスタンスカーが初めてフランスを走った。

●シマノ100周年の特設サイト

アデュー、ボワチュールジョーヌ…マヴィックがシマノにエール

2021ツール・ド・フランスから、チームの分け隔てなく公平な立場でメカニックサポートをこなすニュートラルアシスタントが日本のシマノになる。これまでツール・ド・フランスの象徴的な役割を担ってきたフランスのマヴィック社は、さみしさをわずかににじませながらもシマノにエールを送った。

2019パリ〜ツール ©A.S.O. / Bruno BADE

1973年のパリ〜ニースで、自転車の車輪を主に製造していたマヴィック社は初めてその象徴的な黄色いニュートラルアシスタンスカー、ボワチュールジョーヌを走らせた。チームや所属選手の国籍、順位や成績に関係なく、集団を中立的にサポートしていく。その役割は世界中のサイクリングイベントの礎となった。

ツール・ド・フランスの沿道で黄色い車がやってくれば、それはマヴィックだとだれもが分かった。フランス国民のみならず、世界中の自転車ファンから愛され続けてきたボワチュールジョーヌ。2021年からツール・ド・フランスをはじめとするASO主催イベントでは大阪府堺市の自転車パーツメーカー、シマノに変わる。ニュートラルカーは黄色から青色に変わることになる。

ボワチュールジョーヌに同乗取材

ツール・ド・フランスで選手たちの後ろを伴走する車両隊列の中で、一番目立つのが黄色いボワチュールジョーヌだ。これまでも何度かステージのスタートからゴールまで同乗させてもらったことがあるが、直近では2014年の最終日、パリ・シャンゼリゼで乗車する機会を得て、彼らの仕事ぶりをチェックすることができた。

2019フレーシュワロンヌ女子レース ©A.S.O. / Thomas MAHEUX

2020年までのツール・ド・フランスでは、出場22チームは2台のサポートカーが選手団の近い位置で追従することが許されていて、パンクなどの機材故障に対応している。こうしたチーム所属のサポートカーとは別に、黄色いボディのサポートカーを帯同させるのは国際規定で定められている。これがチームの分け隔てなく公平に機材故障に対応するという任務を持ったニュートラルアシスタンスカーだ。

フランスのマヴィック社はシマノのようにあらゆるパーツを開発・販売する規模ではなく、かつては変速機やクランク周辺部など、現在も車輪やアパレルなどに特化して製造する。企業規模としては小さいが、ASOとともに大会を育んできた実績と貢献度は計り知れない。これまでツール・ド・フランスにとってマヴィックは協賛企業ではなく、協力企業という特別の立ち位置でもあった。

フランス語で「黄色いクルマ」という意味の「ボワチュールジョーヌ」はいつの間にか沿道の人気者に。オートバイ型の「モトジョーヌ」もマヴィックが走らせているもので、その役割と人気ぶりは同じだ。

2018ツール・ド・フランスで崖下に転落したフィリップ・ジルベールを救助 ©A.S.O. /Pauline Ballet

ボワチュールジョーヌは運転手のほかに後部座席に敏腕メカニックが乗車し、いつでもトラブルに対応できるように待ち構えている。クルマの屋根には交換用の車輪と自転車がズラリと搭載されているのだが、チームによって使用するパーツメーカーが異なるので、全チームの使用機材の互換性を頭の中にたたき込んで、瞬時に対応できるようにしている。いわばプロ中のプロである。

コンコルド広場に停車したボワチュールジョーヌ

その出番はいつも突然やってくる

彼らの出番はラジオツールと呼ばれる車載無線で指示される。

「ボワチュールジョーヌ、先頭集団で○○チームの選手がパンク!」

指示が入るや、「あのチームの後輪はカンパニョーロの11段変速だ」などと判断し、現場に急行するや適合する車輪を選択して交換する。

車輪の交換はひんぱんにあるが、ボワチュールジョーヌが自転車を交換することはほとんどない。使用するペダルの形状がチームによってバラバラで、これに選手の体格によってフレームサイズの違いが加わるからだ。1秒を惜しんで前を走る集団に追いつきたい選手を前にして、ペダルを交換しているなんてヒマはない。こういった場合はチームカーの到着を待つのがほとんど。

大観衆が沿道を埋め尽くしたシャンゼリゼ通りを先頭で走る

助手席にはステージごとにスポンサーなどのVIPが乗る。世界各国の営業面でのキーパーソンやメディアなどの名前が予約リストに掲載されている。競技のうえでなくてはならない存在なのかもしれないが、同時進行で社交が展開されている。このあたりが伝統に裏打ちされた文化であることがうかがえる。

ニュートラルカーとチームカーの役割

自転車レースでは選手がアタックして先頭集団とメイン集団に分かれた場合、一定のタイム差が開くと審判がサポートカーに無線で先頭集団の後ろに位置するように指示を送る。先頭集団が所属するチームのサポートカーが後ろに着くことを認められるのはタイム差が2〜3分になってから。2分以内は各チームのサポートカーではなくマヴィックのニュートラルアシスタンスカーがつなぎ役として先頭集団の後ろに着く。タイム差が1分を切ると、2つの集団が合流する可能性が高くなったと判断して、すべてのサポートカーが元の位置に戻される。

また選手後方で隊列を組む関係車両の中でも目印となっている。隊列はディレクターカー、医療車に続いて、出場22チームの第1サポートカーが前日の成績順に並び、ボワチュールジョーヌをはさんで第1サポートカーが同様に並ぶ。レース途中はメカトラブルや選手へのボトル渡し、アタックした選手への追従が認められるなどで混とんとした状態となるが、一段落し手元の位置に戻る場合はこのボワチュールジョーヌが目印になるのだ。

ボワチュールジョーヌの助手席より

ボワチュールジョーヌに乗ってシャンゼリゼの特設サーキットを体験した。世界で最も華やかだと言われるこの大通りだが、細身のタイヤをはいたロードバイクで走ることをまず想定していないと思った。鏡面のようなアスファルトではなく、石畳なのだ。しかもエトワール凱旋門に向かってゆるやかに上っている。選手たちはここを時速50kmで突っ走るのだから信じられない。

選手と同じ景色を体感

ゴールはフランス革命で断頭台が置かれたコンコルド広場からシャンゼリゼの直線路に突入する。このときのスピードは時速70kmにもなるはずだが、コーナーがかなりタイトで視覚的に針の穴に突入するような感じだ。最速の走行ラインは1本しかない。それを手に入れるためにアシスト陣を使って高速列車を走らせる。華やかさだけではない、大変なフィナーレだ。

選手たちがゴールしたら、真夏のフランスを駆け抜けた23日間の夏祭りも終わり。黄色うウエアに身を包んだマヴィックのメカニックたちがコンコルド広場の片隅で仕事を終えた充実感に満ちた面持ちでたたずんでいたのが心に残った。

ボワチュールジョーヌのフロントガラス越しに。シャンゼリゼに凱旋した選手のタイミングをはかってフランス空軍が戦隊飛行でフィナーレを演出

最後のコメントは「ボンシャンス、シマノ」

マヴィックが48年にもおよぶツール・ド・フランスでのメカニックサポートを終えた。ASOとの契約は途絶えたものの、スポーツとサービスへの情熱、そして勝利を求めて考えは変わらないという。マヴィックはすべてのサイクリストのためにこれからもこの世界の真ん中で存在していくとコメント。

そして最後に「ボンシャンス=幸運を! シマノ」と結んでいる。

●マヴィックのホームページ