ツール・ド・フランスで区間通算14勝を挙げた元自転車選手、ドイツのマルセル・キッテルが2023年11月2日、さいたま市立浦和中学校で教壇に立ち、生徒を前に胸のうちを語った。
この日は世界最大の自転車レースと認識するツール・ド・フランスで大活躍した元選手を迎えるにあたり生徒も先生も緊張気味。それでもおもてなし精神を発揮し、キッテルをスーパースターとして迎えつつ、頭によぎった質問をぶつけるなど貴重な時間を過ごした。
切れ味鋭い生徒たちの質問
キッテル先生の授業後半は質疑応答。以下は生徒たちの質問とそれに応じたキッテル先生のコメント。
●レース前のルーティーンは?
スタート地点へはチームの大型バスに乗って向かうんだけど、その中でいつも決まりごとのようにしっかりと身支度を整える。着用するウエア、背中につけるナンバーカード、アイウエアやシューズなどのアクセサリー。それらをいつものように着用しながらモチベーションを高めていく。
●レースで心がけていることは?
ゴール勝負を任されるスプリンターは勝つことが重要。緊張する役割で色々なことが頭をよぎりがちだけど、シンプルにベストを尽くすだけだと自分自身に言い聞かせている。
●自転車全般のいいところは?
レースだけでなく、いろいろなイベントを楽しむことができるよね。中学生なら自転車を使って学校に行く人もいる。車や電車では得られない自由な環境ができて、放課後に友だちと楽しい時間が過ごせてリフレッシュできるはず。
●プロの自転車レースって大変ですか?
タフな日々が連続するので苦労することもあるけど、得られるものも多い。まずは自分のゴールを設定して、確実にクリアしていく。それの繰り返しでレベルアップしていけると思う。
生徒がとてもいい質問を用意してくれて、あっという間に授業時間が過ぎてしまったと最後にキッテル。
あっというまに全生徒を自転車ファンにしてしまったキッテル
「子供のころからの好きなことに熱中して、それを職業として覚悟を決め、大人になって夢をしっかりと叶えたなんてステキです」と、キッテル先生の授業後に鈴木梨世さん(3年生・15歳)が感想を語ってくれた。
ツール・ド・フランスさいたまの開催地にいる鈴木さんだが、「これまで自転車レースは全く興味がなく、ツール・ド・フランスさいたまも見ていなかったという。
「(キッテル先生は)オーラがあって、話を聞いていただけで関心を持ってしまいました。チームで協力してものごとを成し遂げるということも初めて知りました。私たちもこれから社会に出ていく中で、いろいろな困難があっても仲間と協力していくことの大切さを感じました。大会はテレビで見るのではなく、現地に行って肌で感じてみたいです」
また江村優汰さん(2年生・14歳)も「自分はこれまで夢を持ったことなんてなかったけど、人生の大先輩であるキッテルさんの話を聞いて考えを新たにしました」と証言。
「自分の意志がしっかりと固まっていることに感銘を受けました。キッテルさんが大事なポイントと語っていた楽しむことを意識していきたいです」
江村さんはもともと自転車に興味があったと言うが、「個人競技だと思っていました。話を聞くとチーム競技であり、いろいろな駆け引きが存在する。ツール・ド・フランスも、さいたまクリテリウムも見たことがなかったのですが、11月5日の大会には現地に行ってみたいです。実際にチームがどんな協力をするのか興味があります」
「体も大きいけど心も大きい」と江村さん。現在は勉強と部活動としてのバトミントンに一生懸命で、自転車レースに転向するといった考えはないが、この日の授業が今後の自分自身の進路模索に影響を与えてくれたことを肌で感じているという。
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