ツール・ド・フランス取材者日記。「クリマティゼ=冷房付き」という看板を掲げているにもかかわらず、エアコンから風しか出ない南仏ニームのホテルを脱出。この日ははモンバントゥーの南麓を通ってのんびりとした一般道をメインに250kmの移動。
思い出すのは2003年の猛暑です。朝夕が冷えて過ごしやすいフランスは冷房の普及率が低いんですが、そんな環境に熱波が襲来。あの年は体力のない高齢者など1万5000人が死亡したと言われています。その一方でワインとしては当たり年のようでした。
2003ツール・ド・フランスは暑さが弱点であるランス・アームストロングが唯一苦戦した年です。逆に寒さに弱いヤン・ウルリッヒがこの年とばかり肉薄。最終日前日の個人タイムトライアルで逆転の可能性があったんですが、朝起きたら冷たい雨が降っていて…。ランス、どこまで悪運強いのかと思いました。
年齢を重ねるほど経験値が高まるためか楽しく取材できてきたと思っていましたが、今回はツラいです。体力は年々向上しているはずなのに、精神的に疲労困ぱい。ホテルの荷物忘れによる320kmの移動。3日間におよぶ視察団のアテンド。多少の要因はあるかも知れませんが、熱波による高温が激しい疲労感を誘発しているようです。
年齢的にも。30年前の初取材時は900人の記者の中でボクが一番の駆け出しでした。時を経て現在、ボクよりも年齢が高く、経験がある記者は両手ほどの数になっています。フランス社会は60歳の定年を迎えるとキッパリと仕事を辞める人が多いんです。さすがに60代でこの仕事は厳しすぎることもあるでしょう。
言い換えるとボクもあと4年で終わり方を考えなくちゃ、などと運転しながら弱音のひとつも言いたくなります。ただしアルプスに逃げ込めば快適すぎて、やめるなんて誰が言ったのさと考え直す気もしていましたが…。
ゴールはアルプスとプロバンスのちょうど中間、ガップです。いつものサルドプレスに到着するとホッとします。エアコンをかけてクルマを運転しているのにどれだけ水を飲んだかな、というくらい水分を必要とする1日。自転車選手はホントに大変でしょうね。サルドプレスは必要以上にエアコンが効いているのでいったんクルマに戻って長袖と長ズボンに着替えてきました。
ガップはホテル数が少なく、いつもかなり遠いところまで泊まりに行きます。そしてアルプスとイタリアとプロバンスと地中海の十字路となる盆地で、いつもゴール後は大渋滞します。そのためそそくさと退出。それでもちょっと渋滞に捕まりましたが、あとから出た取材陣は思いっきり巻き込まれていました。
今夜のお宿は山の中にあるキャンプ場のモーターホームです。「プールもあるから入っていいわよ」だって。いずれにしてもバカンス家族の中にビジネスマンがひとり浮いています。悪い予感がしたので夕食と朝食は買い込んできましたが、花火を買うのを忘れました。
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