自然の猛威を前にしてツール・ド・フランスも打ち切りの衝撃

ツール・ド・フランス取材者日記。これまでの記録を塗り替えるほどの猛暑に襲われている欧州ですが、雪やみぞれも襲いかかってきます。第19ステージはレース開催中に突如の雹がアルプスの岩肌を覆い尽くし、なだれが発生してコースを寸断。選手がその場所にさしかかる直前にレースが打ち切られました。

絶景のベンチ。右手が先鋒テレグラフだとシャンブルドットのご主人が教えてくれた

場所は欧州最高峰のイズラン峠。ここはツール・ド・フランスが通過する山岳の中でも随一を誇る標高の高さがあり、ここがコースに設定されたときは最高地点となります。今回もボーナスタイムとは別に「アンリ・デグランジュ記念賞」が設定され、トップでここを通過した選手に贈られました。

朝食は料理も、食べ終わったあとの皿洗いも自分で
オフィシャルグッズの売り子さん。「あと3日よ。全部売っちゃいましょう!」
こんな景色を見ながらプチデジュネ(朝ごはん)をいただけるのがアルプス

それにしてもこの日痛感したのは、アルプスは大自然のまっただ中にあるということ。屹立した岩山に無理やり道を作ったような構造。足がすくむような断崖絶壁をクルマや自転車が通行する。半径10km以上人里がなく、万一の場合も助けが求められないような大草原にクルマを駐めてキャンプします。

猛暑と隣り合わせで雹が大量に降る。レースは打ち切りとなり、直前のイズラン峠を通過したタイムが総合成績に反映されることになり、コロンビアのエガン・ベルナルがここで首位に立つことになるのです。

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あの傘がほしいと思うほど日差しが強い

さらには翌日の最後の山岳区間、第20ステージも激しい雨予測で土砂崩落の恐れがあることから大幅に短縮される予定であることが、この日のうちに発表されるのです。

日本ではちょっと考えられないような環境の中で、人々はバカンスを過ごし、そしてツール・ド・フランスがそのど真ん中を駆け抜けていく。単なるスポーツというものではなくて、大自然へのあくなき挑戦であることをまざまざと見せつけられた思いがしました。

全日程に帯同する医療チーム。真ん中の女性がチーフドクターで、オープンカーに乗りながら選手を治療する

さて、気を取り直してフランス取材旅行のお話し。前日に宿泊したシャンブルドット。朝食は生卵などが用意してあって、自らが好みの調理方法で作って、パンやヨーグルトをテラス席に持ち出して気持ちよく食べました。多少は例年より気温が高めで、朝のジョギングで汗が出るほど。標高は1200m。息も上がるはずです。走っていると地元の人が必ずボンジュールと言ってくれるのがうれしいです。

そしてアルプス3連泊の最後のホテルは山の中腹にあるスキーリゾートの山小屋風ホテル。お部屋も清潔で気持ちよく、そしてなによりも窓を開けると爽やかな空気が流れ込んできます。

モンブランのブランシュビールをアペリティフにしてメニューを眺める

最高だったのは夕食。チェックイン時に「レストランで夕食を食べたい」と伝えておいたので、1人席ですが窓際で一番奥の、とてもリラックスできるテーブルを予約しておいてくれました。

こんなにゆったりできるのは最後なので、30ユーロほどのムニュを選択。「アントレ(前菜)とプラ(メイン)」あるいは「プラとデゼール(デザート)」が選択できます。

アルプスで食べる一皿目はアンドレのサラダ。マグロの漬け、アボガド、スイカ、ライスなどが入ってるんですが、絶品。アペリティフのモンブランブランシュはいすでに飲んじゃったので、赤ワインで。そしてプラは牛肉で骨格筋量を増やすためにチョイス。

ソン(マグロ)とアボガドなどのサラダ。ムニュ(定食)は前菜のリストにあるものならなんでも選べるので、一番高いものに

雨がしとしと降っていましたが、窓を開けると湿度を感じることはなく気持ちいい。ツール・ド・フランスもいよいよ大詰めですね。

最後のアルプスに身を置いて思い返すこと。初取材の1989年。コロンビアのルッチョ・エレラが国民からマイヨジョーヌを期待されるもかなわず、ラルプデュエズの夕食後に気分を落ち着かせるために散歩していました。もしかしてマイヨジョーヌがついに南米に。 あれから30年。イノー時代は知らないんですが、一時代は目撃できたと自負しています。

1人だけど落ち着いたテーブルで外の景色を楽しみながら晩さん

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