ログリッチェ、ポガチャル…2019年はスロベニア勢台頭

グランツールと呼ばれる三大ステージレースの最後を飾る第74回ブエルタ・ア・エスパーニャが8月24日から9月15日までスペイン全土で開催され、ユンボ・ビスマのプリモシュ・ログリッチェが総合優勝。スロベニア勢としてのグランツールも初制覇だったが、総合3位と新人王も同国のタデイ・ポガチャル(UAEエミレーツ)が獲得した。

先行するポガチャル、それに追従するマイヨロホのログリッチェ ©Photogómez Sport

南米勢のグランツール全制覇を阻止

5月のジロ・デ・イタリアはエクアドル選手、7月のツール・ド・フランスはコロンビア選手。どちらも大会史上初の優勝者国籍だった。迎えたブエルタ・ア・エスパーニャも開幕前はコロンビア選手の総合優勝が濃厚という大方の予測。2018年は英国勢がグランツールを完全制覇したが、今季は南米勢が席捲するのでは言われていた。

その予測通り、初日はコロンビアのミゲルアンヘル・ロペス(アスタナ)が首位に。2日目はコロンビアのナイロ・キンタナ(モビスター)が区間勝利。ロペスは7日目までに3度も首位に躍進し、そして大会9日目の山岳でついにキンタナが首位となった。

総合優勝のログリッチェを中央に左が2位バルベルデ、右が3位と新人賞を獲得したポガチャル ©Photogómez Sport

最初の休息日を過ごした翌日、第10ステージの個人タイムトライアルで圧勝したのがログリッチェだ。5月のジロ・デ・イタリアでは開幕にピークを合わせ、初日の個人タイムトライアルに勝って首位に。ところが23日間の長丁場という戦いで、終盤に調子を落として優勝争いから脱落した。ジロ・デ・イタリアで疲れ果てたログリッチェは、ツール・ド・フランスを回避。ブエルタ・ア・エスパーニャをパスすることも選択肢のひとつだったが、将来に向けて経験値を積むことを選んだ。

現在29歳のログリッチェはもともとスキーのジャンプ選手。ジュニア時代の世界選手権では団体種目で金メダルを獲得している。21歳の時に自転車競技に転向した。ジャンプ選手時代から瞬発力と持久力のバランスに優れていて、集団走行に慣れるとすぐに好成績をマークしていく。2017、2018年とツール・ド・フランスの終盤ステージで各1勝。2018年は総合4位に。ジロ・デ・イタリアでは個人タイムトライアルで2016年に1勝、2019年に2勝した。

タデイ・ポガチャルが第20ステージで2019ブエルタ・ア・エスパーニャ3勝目 ©Photogómez Sport

「今年のジロ・デ・イタリアでは総合優勝を争っていた終盤に失速してしまったが、それ以外は最終週に好成績を挙げている。今回のブエルタ・ア・エスパーニャも最後に調子を上げるつもりで調整した」とログリッチェ。第10ステージの個人タイムトライアルで首位に立つと、鉄壁のアシスト陣の援護もあって最終日までコロンビアやスペイン勢の攻撃をしのいだ。

さらにスロベニア勢はポガチャルが区間3勝と大活躍し、いきなりの総合3位に。第9ステージで初勝利したときは、「最終日の表彰台でログリッチェの隣に立てたらうれしい」と夢を語ったが、それを実現してしまった。

総合1位のログリッチェ(右)と新人賞のポガチャル ©Photogómez Sport

スロベニアの格下チームに所属していた2018年にアマチュア版ツール・ド・フランスと言われるツール・ド・ラブニールで総合優勝したのがポガチャルだ。今季になって現在のトップチームに移籍し、グランツールは初参戦だった。

スロベニアは自転車競技が盛んなイタリア北部に隣接することから、強豪国となる下地はあった。ジロ・デ・イタリアが国境を越えてスロベニアを訪問することもある。最新の世界ランキングは、個人でログリッチェが1位、国別でスロベニアが3つ順位を上げて8位に浮上している。

ブエルタ・ア・エスパーニャを終えて世界ランキング1位になったログリッチェ ©Photogómez Sport

●ブエルタ・ア・エスパーニャのホームページ