マルコス・ガルシアがツアー・オブ・ペニンシュラ優勝に王手

マレーシアのステージレース「ツアー・オブ・ペニンシュラ(Tour of Peninsular、UCIアジアツアー2.1)」は大会4日目の10月18日、アジア屈指の超級山岳キャメロンハイランドの頂上フィニッシュが設定さた第4ステージが行われ、KINAN Cycling Teamのマルコス・ガルシアとトマ・ルバがワン・ツーフィニッシュ。椿大志と新城雄大からのホットラインも完全に機能し、同国が誇る名峰をチーム全体で征服した。

マルコス・ガルシアが名峰キャメロンハイランドで優勝 ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

大会は後半戦へと突入。ここまでの3ステージはいずれも平坦コースだったが、いよいよ大会の最難関ステージを迎える。

89.5kmとショートステージながら、スタート直後から上り基調となり、中盤から本格的に山岳区間へ。78km地点で1級山岳リングレットを越えると、向かうは超級山岳のキャメロンハイランドへ。標高1440mの頂上にフィニッシュラインが敷かれるが、その手前5kmは細かな変化があり、まさに選手たちの脚を試す難度の高い舞台。今大会の総合争いの形勢を明確にする最も重要な1日となる。

KINAN Cycling Teamはここまで3ステージをクリアし、このステージで勝負をかける。マルコス、トマ、サルバドール・グアルディオラのクライマーたちを中心に、椿大志、山本大喜、新城雄大の登坂力とスピードを備える選手たちがレースを構築していく。上位進出が至上命題となる。

その狙い通り、KINAN勢がスタート直後から攻撃的な走りを展開する。まずマルコスと椿が加わった逃げ狙いの動きに、新城とトマが追随。上りと下りを繰り返す間に先行する選手たちとメイン集団とのタイム差は広がっていき、やがて約20人の先頭グループとして固まる。KINAN勢はそのまま4選手がレースをリードする形になった。

先頭グループは主要チームの多くが選手を送り込んだこともあり、順調に貯金を増やしていく。4人を送り込んだことでレースの主導権を握ったKINAN勢は、個人総合で上位が見える位置を走るマルコスを軸に、トマ、椿、新城がペースメイク。これが奏功し、距離を追うごとに先行メンバーの人数を減らしていく。

こうした流れから、62km地点に設置されたこの日2つ目の中間スプリントポイントでマルコスが上位通過を狙って加速。新城のリードアウトも利き、マルコスを2位通過させることに成功。ボーナスタイム2秒を獲得した。

レースが残り25kmを切ると、いよいよ本格的に山岳区間へと入っていく。依然KINAN勢のペースメイクが続き、椿の牽引で次々とライバルを振り落としていく。椿が役目を終えると、満を持してトマがコントロールへ。さらに人数が絞られていき、1級山岳リングレットを通過する頃には、先頭にはトマとマルコスを含む4人となっていた。

いよいよ、残すは頂上にフィニッシュが敷かれるキャメロンハイランド。上りを迎えると4人の形成に変化が見られ、ここまでトマのペーシングで脚を残していたマルコスがついに動き出す。他選手の厳しいチェックもありながら、残り6kmで一気のスピードアップ。完全に独走態勢に持ち込むと、追う選手たちとの差はあっという間に広がっていく。マルコスの後ろでは、トマが他選手の抑えに回り追撃の芽を摘み取っていく。

終始レースを掌握したKINAN勢。勝負を託されたマルコスは最後までスピードを緩めることなく、単独でフィニッシュへ。キャメロンハイランド頂上に集まった多くの観衆からの祝福を受けながら勝利の瞬間を迎えた。

マルコスの歓喜から50秒後、大車輪の働きを見せたトマがこちらも単独でフィニッシュラインへ。他選手を振り切り、2位を確保しワン・ツーフィニッシュを達成した。さらに50秒遅れて3位争い、メイン集団でレースを進めた選手たちの多くは、マルコスから3分以上のタイム差でレースを終えることとなった。

KINAN勢は6選手がいずれもこのステージを完了。メイン集団でレースを進めたサルバドールが14位とまとめ、アシストとして機能した山本、椿、新城も走り終えている。

これらの結果から、総合成績で大きな変動が発生。このステージを制したマルコスが狙い通りにリーダージャージを確保。個人総合首位に立ち、残る1ステージへと進むことに。2位との総合タイム差は3分2秒としている。あわせて、山岳ポイントも大量に稼いだことから山岳賞のレッドジャージも手にしている。さらに個人総合では、トマが7位、サルバドールが12位に浮上。チーム内ステージ上位3選手のタイム合算で競うチーム総合でも首位となり、最重要ステージで個人・チームそれぞれの強さを発揮した。

大会は最終日へ。最後を飾る第5ステージは、クアラリピスからセティアワンサまでの151.4km。レース前半に4級、後半に2級とそれぞれカテゴリー山岳が控えるほかはおおむね平坦。この2カ所の山岳ポイントがレースに変化をもたらすかが見ものとなる。KINAN Cycling Teamはマルコスのリーダージャージキープを最優先に、タイトルを賭けた運命の1日を迎えることとなる。このステージで見せた連携面をさらに機能させることが求められる。

マルコス・ガルシアのコメント
「早い段階で4人が先頭グループに入ることができたのが一番の勝因。そして、みんなが素晴らしい働きをしてくれたことで勝利を手にできた。みんなの働きに心から感謝している」

トマ・ルバのコメント
「力のあるチームが序盤から競り合う展開だったが、しばらくして私を含む4人が先頭に立つことができた。それからは全力で働くことを意識した。
個人的にはよいコンディションでこの大会を迎えられた。ピーク時と比較すると少し落ちてはいるものの、好感触で走ることができている。それだけに、今日の結果とマルコスの勝利はとてもうれしい。
最後の1日については、もちろん改めてタイム差や他チームの動向を確認する必要があるが、われわれは強いチームで今大会に臨んでいる。椿やサルバといった経験豊富なライダーに加え、(山本)大喜と(新城)雄大は昨年のツアー・オブ・ジャパンでマルコスのリーダージャージを守る素晴らしい経験がある。その点では心強いし、最後まで戦い抜くつもりだ」