神々が宿る那智山の頂へ…熊野古道ヒルクライム開催

紀伊半島南部の和歌山県那智勝浦町で11月3日、晩秋恒例の「熊野古道ヒルクライム」が開催された。約300人のサイクリストが、神々が宿るとされる那智山を激走。今回もゲストライダーとしてKINAN Cycling Teamから5選手が参加。走りはもちろん、トークショーや抽選会、表彰式といったステージイベントにも臨み、イベントを盛り上げた。

熊野路を駆けるサイクリングイベント ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

300人が激坂含む2つのコースへとアタック

熊野古道ヒルクライムはユネスコの世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産に含まれる熊野路を駆けるサイクリングイベント。各種スポーツイベントを企画・運営する「NPO法人スポーツプロデュース熊野」が主催し、今回で14回目を迎えた。回を重ねるごとに人気の仲間利を見せ、2019年は北は北海道、南は九州地方からの参加があり、地元和歌山県や近隣府県にとどまらず各地から健脚自慢が集った。

約300人のサイクリストは、主会場でもある同町の海水浴場「ブルービーチ那智」を出発し、5.4km先の大門坂駐車場までパレード走行。いったん息を整えたら、いよいよリアルスタート。そこからは、神仏習合による数々の伝承が残される那智の山道を駆けあがっていく。スキルや脚力、好みによってコース選択ができるよう設定されており、Aコースは標高931mの大雲取の山頂を目指す30.9km、Bコースは妙法山阿弥陀寺へと向かう14.6km。途中、勾配が20%に達しようかという激坂区間が複数待ち受けるほか、長くテクニカルなダウンヒルも控え、サイクリストたちにとっては力が試されるポイントに。参加者たちは己の限界に挑戦すべく、勇んでコースへと繰り出した。

キナン勢も参戦 ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

山本大喜が“那智山の神”の座を防衛

ゲストとして招かれたKINAN Cycling Teamは、山本元喜、椿大志、大久保陣、山本大喜の4選手が大雲取へ、新城雄大と加藤康則ゼネラルマネージャーが妙法山阿弥陀寺を目指すコースへと出発。また、“山の神”として数多くのヒルクライムを制する森本誠(GOKISO)、テレビ番組出演でアイドル級の人気を誇る筧五郎(56サイクル)も同様にゲスト参加し、大雲取へと挑んだ。

距離が長く、難易度も高い大雲取の頂へ、ゲストライダーによるトップ争いが展開された。序盤は一般参加の実力者も加わっての先頭パックが形成されたが、山本元によるハイスピードのペースメイクによって徐々に人数が絞り込まれていく。やがて先頭に残ったのは山本大と森本。最速の登坂勝負は2018年の再現となった。

山本大喜が“那智山の神”の座を防衛 ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

熾烈な争いは、普段のトレーニングコースとしても大雲取を走る山本大が後半に入って、地の利を生かして森本を突き放すことに成功。下りを得意とする森本は、その後のダウンヒル区間で山本大を猛追したが、最終盤の激坂区間で再び山本大がアタック。

自身が2018年マークした56分55秒のコースレコードには及ばなかったものの、山本大が実質2連覇となる大雲取頂上制覇。スポーツプロデュース熊野・角口賀敏理事長の激を背に受け、ガッツポーズでフィニッシュラインを通過。少し置いて森本も頂上へとやってきた。

その後は、続々とサイクリストが頂上へ到達。フィニッシュが近づくと歯を食いしばって懸命にペダルを踏む姿が光った。そして頂上へと到達、晴れて“ヒルクライマー”となった瞬間だ。

レベルアップを誓って来年のスタートラインを目指す参加者の姿も

お昼からはブルービーチ那智へと戻って、特産品の振る舞いやステージイベントが展開。その目玉として、ゲストライダーたちによるトークショーが催された。那智山登坂の完走や、今後の目標などが主なテーマとなったトークだが、那智山2連覇を果たした山本大は、2018年「自分が“山の神”」と宣言し会場を驚かせたが、改めてその座を守り続けていることを強調し胸を張った。

300人のサイクリストが神々が宿る那智山の頂へ ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

一方、元祖“山の神”森本は2018年の「山の民」宣言で笑いを呼んだが、「もはや完全に“山の民”ですね…」とトーンダウン。3年連続での2位フィニッシュをユーモラスに表現してみせた。

そのほかステージでは、選手たちがプレゼンターを務めた表彰式や抽選会も行われ、大きな賑わいの中でイベントは閉幕。参加者からは、「KINANメンバーのペースにトライしたがあっという間に遅れてしまった」「何度でもチャレンジしたいコース。また1年鍛えて戻ってきたい」などの感想が聞かれ、1日を通して満足できた様子。

また、イベントの成功にあたっては、主催のスポーツプロデュース熊野や地元関係者による事前の準備によるところが大きかったことも押さえておきたい。10月に起きた台風19号発生時には、コースとなる道路がふさがるほどの枝木の落下に見舞われ、その清掃作業に追われたほか、今回の開催直前までアスファルト上に生えた苔を除去するなど、多くの人たちの尽力あって迎えたヒルクライム開催であった。

スポーツプロデュース熊野主催イベントは次回、11月24日の「紀南シーサイドヴェロフェスタ」が行われる。今回同様にKINAN Cycling Teamの選手たちもゲスト参加を予定しており、ライドとグルメが融合した楽しみ満載の1日を盛り上げることになっている。

●熊野古道ヒルクライムのホームページ