ミッフィーとアトムの立ち位置にコロナ禍対応違いが

ほぼ同学年のミッフィーちゃんと鉄腕アトムの共通点は、どちらにもその姿があしらわれた信号機があるということだ。ミッフィーちゃんはオランダのとある町の繁華街に。一方のアトムは交通公園のなか。なにか昨今のコロナ禍における海外と日本の感染防止対策の施政にも通じるところがあるような。

ミッフィーの信号機はまぎれもなくオフィシャル

世界でひとつしかないミッフィーの信号機があるのは、オランダ第4の都市ユトレヒトだ。3万人の学生が生活する学園都市なのだが、ミッフィーを生んだ絵本作家ディック・ブルーナ(1927-2017)の出身地でもある。

2015年のツール・ド・フランスがこのユトレヒト開幕だったので、レースが始まる前に世界で一番有名なこのウサギの信号機を探してみることにした。

ボクのシゴト場であるサルドプレスは中央駅の裏手にあるユトレヒト会議場に置かれていた。取材活動の合間に駅構内を突っ切って駅向こうにある繁華街に足を伸ばすと、バイエンコルフ・デパート前の歩行者信号がミッフィーのシルエットになっていた。道行く人はあたりまえの緑か赤の歩行者信号機で、望遠レンズを手にして撮影している観光客は間違いなくボクしかいなかった。

当時のオランダ政府観光局からもらった資料では、ミッフィーの信号機はくたびれた旧式だったが、訪れたときは省エネタイプのLED式に取り替えられていた。せっかくなので撮影した画像を「差し替えてください」と観光局に提供しておいた。

世界でひとつしかないミッフィーちゃんの歩行者信号。©Mercis bv

市民の愛着あってこそ信号機になっても違和感なく

ウサギはこのあたりでは親しみやすい動物のようで、ディック・ブルーナがウサギの絵本を発行したのもうなずける。日本では地域ネコがそこにいるように、ウサギの姿があちこちで目撃できるのだ。

開幕前日の朝、滞在ホテルの近くをのんびり走っていると野ウサギがピョンピョンと跳ねている姿に出くわした。でもこれがクセモノで、草むらを走っているとウサギが掘った穴に足を突っ込んで何度もねんざしそうになった。

2015年はミッフィー誕生60周年でもあって、世界最大の自転車レースを招致したという。だからミッフィーは堂々たる2015ツール・ド・フランス公式キャラなのである。

ちなみに日本ではかつて「うさこちゃん」と命名されたというが、オランダでは「小さなウサギ」という意味のナインチェ(nijntje)と言うらしい。

WACHTは「止まれ」というオランダ語。©Mercis bv

未来の子アトムは楽しみながら学習するイメージに起用される

じつは日本にも国民的アイドルキャラクターが歩行者用の信号機になっている場所がある。手塚治虫(1928-1989)の「鉄腕アトム」だ。神奈川県藤沢市の辻堂海浜公園内の交通公園にある。つまりこちらのほうは公道に信号機として設置することはできず、子供たちが遊びながら交通ルールを学ぶ敷地内に設置されている。

親世代は知っている鉄腕アトムだが、いまの子にはあまり認知されていないようだ(2021年4月27日取材)

神奈川県が藤沢市などを「さがみロボット産業特区」とした際に、イメージキャラクターとして鉄腕アトムを起用して、話題づくりのために歩行者用信号機を設置したのだが、この話には笑えないエピソードがある。

神奈川県の記者会見では、設置場所などの詳細資料を用意しつつ、「場所はあえて公表せず、ゲーム感覚で楽しみながら探してほしい」と報道陣に依頼した。ほとんどの新聞社はその意向を汲んだのだが、朝日新聞だけは見出しと本文でその場所を明かしてしまったという。

押しボタンを押すとすぐに緑の鉄腕アトムが出現する

ミッフィーとアトムはほぼ同学年

1963年にテレビアニメとなり大人気を博したアトム、一方ミッフィーは耳をぴょんと立った現在の姿になったのが1963年。翌年に日本で初めて絵本が発売されたのだから、同学年とも言える。

しかしながら、歩行者用信号機の立ち位置に海外と日本の差がかいま見られる。それはまさしくコロナ禍での防疫対策に似ているところがあるような気さえする。

全土ロックダウン、自宅から規定距離以上の外出は罰金刑という厳しい措置を取る欧州各国。それに対する日本は既存の法律や条令をふまえた上での善後策。力で封じ込まないけど、飲食店や公共施設は営業時間制限や閉鎖。

●辻堂海浜公園のホームページ

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