欧州でも日本でも女子ロード独自の魅力が注目されつつある

クラシックと呼ばれる春の伝統的ワンデーレースが相次いで女子レースを併催している。7月には女子版ツール・ド・フランスとも言える第1回ツール・ド・フランスファム・アベックZwiftが8日間の日程で開催される。その魅力が認知され、世界各国で国際放送される時代に。今回は国内外で増えつつある女子ロードレースを紹介。

女子版ツール・ド・フランス復活は女子選手の悲願だった。写真は2016年のワンデーレース © A.S.O. Pauline Ballet

男子にはない華やかさが女子ロードにはある

これまでの女子レースはどうしてもメインイベントである男子の前座のような扱いだった。男子に先行してレースがあるため、取材陣は女子レースの現場に居合わせることが難しい。しかし実際には女子レースには華やかさがある。それに気づいたスポンサーが女子レースを応援するようになると、主催者も男子とは別日程の単独レースとして開催することを考案した。

2021年から始まったパリ〜ルーベ、そして2022年に初開催される女子版ツール・ド・フランスには、室内バーチャルアプリのZwiftが出資して、単発レース化。日本のJ SPORTSなど世界各国で女子レースが中継されるまでになった。

第1回ツール・ド・フランスファム・アベックZwift開催100日前に笑顔を見せるマリオン・ルス ©A.S.O. Clara Langlois Lablatiniere

初開催となる女子版ツール・ド・フランスは7月24日から31日までの8日間。女子レースの初日が男子のツール・ド・フランス最終日で、どちらも舞台はパリだが、コースは独自のものだ。

「女子選手が待ち続けていたツール・ド・フランス開催は歴史的な意義がある」と大会ディレクターのマリオン・ルス。

同氏は女子プロ選手として走りながらツール・ド・フランスの表彰台でアテンド係を担当。引退後は解説者としてのキレのある発言が注目され、女子レースの最高権威として抜てきされた。私生活では男子世界チャンピオンのジュリアン・アラフィリップのパートナーで、2人の間に子供もいる。

過酷なスポーツだが、メイクやネイルは当たり前 ©A.S.O. Thomas Maheux

これまでツール・ド・フランスに女子レースがなかったわけではない。1984年から1989年まで女子部門が男子集団に先行して走るツール・ド・フランスフェミナンがあった。男子よりも短い日程、短い距離ながら同じコースを使って3時間ほど前を走った。しかし開催は6年で終わった。運営が大変なわりに注目が得られなかったからだという。

廃止後もツール・ド・フランスを主催するA.S.O.は女子レースを開催していたが、「ツール・ド・フランス」の名称は使わなかった。その大会も2009年に終了。2014年からツール・ド・フランスの特定区間に限定して、ラクルスbyル・ツール・ド・フランスが始まったが、複数の日程で開催するステージレースではなく、ワンデーレースだった。

7月に行われる新たな大会は男子の前座とはならない単独の8日間ステージレースだ。「男子と同じ黄色いリーダージャージー、マイヨジョーヌを8日後に手にした女性が真のチャンピオン。だれが一番強いのか、世界中の人たちがわかるのがこの大会の魅力なのです」(ルス)

2022パリ〜ルーベファム ©A.S.O. Pauline Ballet

日本ではQリーグでだれが一番強いのか可視化

日本では女子とジュニア男女の年間シリーズ戦としてQリーグ・Nリーグがある。Q(クイーン)は女子選手、N(ニューエイジ)は中学生男女が参加できるロードレースだ。ポイント首位選手にはリーダージャージーが与えられ、だれが一番強いのかを可視化できるようにした。

Qリーグのチャンピオンジャージーは紫色。2021-22シーズンはサイタマサイクルプロジェクトの廣瀬博子(2番目)が獲得した ©Takashi Saito

「女子そしてジュニアの活躍は今後の自転車普及には必須」と同運営事務局の須藤むつみさん。「広報とイベント企画は課題もあるので、さらに女子選手らを応援してもらえるように積極的に活動していきたい」

初戦の「春のしもふさクリテリウム」が千葉県成田市・下総運動公園で5月8日に開催された。2023年3月までのシーズンに10戦前後の大会を開催していく。

Nリーグ女子の2021-22リーダーは岡本彩那(ブラウブリッツエン) ©Takashi Saito