【ツール・ド・フランス現場雑感】マイヨジョーヌを失う覚悟の奇襲作戦

第109回ツール・ド・フランスは2022年7月7日、バンシュ(ベルギー)〜ロンウィー間の今大会最長距離となる220kmで第6ステージが行われ、UAEエミレーツのタデイ・ポガチャル(スロベニア)が優勝。

マイヨジョーヌのファンアールトがまさかのアタック ©A.S.O. Pauline Ballet

マイヨジョーヌのワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ビスマ)は序盤からかく乱作戦として先行したが、最後に捕まると大きく遅れた。総合成績でポガチャルが首位に立ち、はやくもマイヨジョーヌを着用した。

2022ツール・ド・フランス第6ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet

ポガチャルはベルギーの英雄エディ・メルクスの後継者なのか?

ポガチャルが少人数のゴール勝負を制して今大会初優勝。大会通算7勝目。総合成績でも首位に立ち、大会3連覇に向けて好調ぶりを見せつけた。

2022ツール・ド・フランスがベルギーに足を伸ばしたところで同国の新旧スーパースターが顔を合わせた。左がエディ・メルクス、右がファンアールト ©A.S.O. Pauline Ballet

この日はファンアールトがアタックして単独で先行した。ポガチャルを擁するUAEエミレーツ勢を消耗させ、チームエースのビンゲゴーに有利な状況を作るためだ。ファンアールトは残り10kmで集団に吸収されると大きく後退。マイヨジョーヌを失ってもいい覚悟でかく乱作戦を展開したが、ポガチャルの異次元の強さにはかなわなかった。

2022ツール・ド・フランス第6ステージ ©A.S.O. Charly Lopez
2022ツール・ド・フランス第6ステージ ©A.S.O. Aurélien Vialatte

●4賞ジャージ
マイヨジョーヌ(個人総合成績)タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEエミレーツ)
マイヨベール(ポイント賞)ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ビスマ)
マイヨブラン・アポワルージュ(山岳賞)マグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)
□マイヨブラン(新人賞)タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEエミレーツ)

ユンボ・ビスマの奇襲作戦にも慌てず、チームメートに牽引されるポガチャルが前方をうかがう ©A.S.O. Pauline Ballet

美観地区のホテルはクルマがアクセスできないので疲れる

第4ステージが終わった後のカレー、第5ステージのバランシエンヌ、そしてこの日のメス、ついでに明日のブザンソンと街のど真ん中のホテルを予約してしまいました。鉄道旅行やツアーなら街歩きができて最高なんですが、ツール・ド・フランス取材はクルマがあるのが基本なので、街の真ん中で駐車スペースを探すっていうのが意外と大変なんです。

ユネスコ文化遺産に登録されている巨大人形が練り歩くお祭りで知られるベルギーのバンシュ

とにかく街のど真ん中は駐車場が少ない。あっても有料となり、宿泊費以外にお金がかかります。このためツール・ド・フランス関係者は郊外にあって、広大な無料駐車場を持つホテル群(サントルオテリエ)をよく利用します。こちらの方のデメリットは、場所によっては夕食を食べるところがないということです。

街全体が大振りな石畳の道で、ホントに歩きにくい

この日はかなり大きな都市であるメスの中心部、その名もオテルドサントル(センターホテル)。午後8時までフロントが開いているというので安心しきっていました。

バランシエンヌのホテル。朝食会場の窓辺より

途中のスーパーマーケットを探して併設するガソリンスタンドへ。驚いたのはレギュラーガソリンより軽油のほうが高いことでした。

フランスではルクレールやカルフール、アンテルマルシェ、シュペールUなどの大手スーパーマーケットにはガソリンスタンドがあります。こういったスーパーのガソリンスタンドは市中よりかなりお安く、しかも24時間営業なのでツール・ド・フランス取材時は大助かりです。

2022年は燃料高騰が続き、軽油でも1リッター300円。レギュラーガソリンはそれよりわずかに安いんですが、やはり高いです。自転車で済ませることができたらクルマを使いたくないです。5000kmを移動する必要があるツール・ド・フランス取材では、エコ運転で乗り切っていくしかないです。

欧州は軒並み燃料高に見舞われている

ますますホテルのチェックインが遅くなる

スーパーに入る前にマクドナルドを発見したので、夕食を買い出していこうというアイデアに気づきました。ところがフランスの環状交差点は、日本人としてはグルグル回るので方向感覚を失いやすく、慣れていないとなかなか目的地にたどり着けず。

そのうち遠くまで回され、目標がわからなくなる状態に。それでも今夜はマックをお部屋で食べてくつろごうと決めてしまったので、何回かアタックしてようやく到達。そしてオーダーシステムがちょっと変わっていて、また時間ロス。

メスの美観地区にあるホテルより夕方の道路を見下ろす

かなり時間を費やしてしまってメスに着きましたが、ホテルはクルマが進入できない美観地区。しかたなくかなり手前に駐めていちばん大事な機材バッグとお財布だけ持ってホテルにたどり着いたらすでに8時を過ぎて玄関ドアが閉まっていました。

従業員に電話して玄関コードを教えてもらって、ボクの名前が貼ってあるキーを確保。

序盤戦のツール・ド・フランスで疲れてはいけないんですが、疲れ果てました。でもどんなに疲れていても、飲む前に路駐しているクルマをどこかに停めにいかないと。

メスの美観地区にあるホテルより夜の道路を見下ろす
ポガチャルが第6ステージでマイヨジョーヌを獲得 ©A.S.O. Pauline Ballet

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【ツール・ド・フランス現場雑感】北の地獄は背筋が凍る

第109回ツール・ド・フランスは2022年7月6日、リール〜アランベール間の157kmで第5ステージが行われ、イスラエル・プレミアテックのサイモン・クラーク(オーストラリア)が4選手のゴール勝負をわずかに制して初優勝した。

北の地獄を走る選手たち ©A.S.O. Pauline Ballet

「オフシーズンは契約できず、今のチームが声をかけてくれた。恩返しできてうれしい」とクラーク。「サイクリストになるために欧州に引っ越して20年。今月で36歳になる。ようやく夢を叶えることができた」

2022ツール・ド・フランス第5ステージ ©A.S.O. Charly Lopez

UAEエミレーツのタデイ・ポガチャル(スロベニア)が石畳区間でアタックしたが、マイヨジョーヌのワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ビスマ)に対して13秒しか差をつけられず、ファンアールトが首位を守った。

2022ツール・ド・フランス第5ステージ ©A.S.O. Charly Lopez
7月の北の地獄 ©A.S.O. Pauline Ballet
ワウトファンアールトがトラブルで遅れたビンゲゴーを待ってその集団の先頭を走る ©A.S.O. Pauline Ballet

●4賞ジャージ
マイヨジョーヌ(個人総合成績)ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ビスマ)
マイヨベール(ポイント賞)ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ビスマ)
マイヨブラン・アポワルージュ(山岳賞)マグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)
□マイヨブラン(新人賞)タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEエミレーツ)

マイヨジョーヌを守ったファンアールト ©A.S.O. Pauline Ballet

旧炭鉱の世界遺産アランベールのゾッとするもの

前日のカレーのホテルはなかなか忍耐が必要なほど古いものでしたが、リネンは清潔で、心配していたプー(シラミ)もいなかったです。ランニング中に市庁舎近くでステキな自転車・歩行者専用ブリッジを見つけ、シャワーを浴びた後に改めてスマホを持って撮影しに行きました。

カレー市庁舎が見える鉄道沿いに素晴らしい自転車・歩行者専用橋が

ツール・ド・フランスは、ミシュランのホテルやレストランの格付けと同様に、それぞれの街の自転車フレンドリー度を格付けしています。こちらは星の数ではなくて自転車の数。最高ランクは自転車4台。

カレーは2022年、自転車にやさしい街として自転車3台を獲得しました。

温暖化対策の決め手と打ち出した自転車が快適に走れるように

ボクが目撃したのはカレーの駅からすぐのところ。橋だけでなく、その下にある運河沿いにも自転車通行レーンがしっかり整備されています。

欧州連合の欧州地域開発基金とオードフランス地域がこのエリアの再開発として共同出資した金額は186万8897ユーロだと、橋のたもとに案内板がありました。

3度目の訪問となった韮山…ではなくてアランベールの旧炭鉱跡

ランフェルデュノール…北の地獄とは

この日はパリ〜ルーベのコースで知られる石畳へ。ボクが「フランスの韮山反射炉」と呼んでいるアランベールがゴールです。ここはかつての炭鉱施設。2012年にユネスコ世界遺産に登録されました。

ツール・ド・フランスでは「アランベール・ポルト・デュ・エノー」という長い名前がゴールの表記になっていますが、ポルト・デュ・エノーはアランベールがあるノール県の共同体のこと。小さな町であるアランベールだけでは大会協力金が支払えないときに、こうして自治体としてその上にある組織に協力金分担をお願いすることがあります。

その結果、ゴール地点の名称に1つの街と1つの共同体が併記される。こういったことはツール・ド・フランスでは結構あることなのです。

このあたりはワイン生産地ではないので地ビール

2010年にアランベールは世界遺産登録前にツール・ド・フランス招致を実現。登録後の2014年に2度目の招致。このときはフルームが石畳手前の舗装路で落車、右手首を骨折してここでマイヨジョーヌを獲得したニーバリが総合優勝しています。

この日はゴールからわずか13kmほど走ってバランシエヌへ。日本ではアルコールを口にするのは2日に1回だけですが、ヨーロッパに来て毎日飲んでいるのでちょっと休肝。ケバブ屋さんで10ユーロの串焼きセットを買って、前日に比べたらかなり快適なお部屋でご飯を済ませました。

肝臓もたまに休まないといけないんですが、お財布も休ませたいというのが正直なところではあります。

これが炭鉱夫の作業服。手前は観光局スタッフ。カフェやミネラルウォーターをサーブしてくれる大会運営の男性も一緒に撮影

7月上旬の気持ちいい季節。町ではテラス席でゆったりと食事をする人たちがたくさんいます。フランスはもうパンデミックは終わったと信じたい気持ちが強いからか、病院やファーマシーに行くとき以外はマスク着用している人はいません。逆にマスクをしているからって、イヤな顔をされることはないんですけどね。

でも第7波の到来は間違いなく、PCR検査機関がていっぱいという情報も。帰国時の陰性証明入手に暗雲が。

どうなる?

ケバブのアンポルテ(テイクアウト)。イスラム教なのでアルコールではなくソフトドリンクが付く。赤ワインは撮影時の演出

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【ツール・ド・フランス現場雑感】翼をさずけたのはカモメだった

第109回ツール・ド・フランスは2022年7月4日、ダンケルク〜カレー間の171.5kmで第4ステージが行われ、マイヨジョーヌのワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ビスマ)が残り11kmから独走して優勝した。

ファンアールトが3ステージ連続でマイヨジョーヌを着用 ©A.S.O. Pauline Ballet

ファンアールトはここまで3ステージ連続で区間2位だったが、「もうスプリントで2位になるのはいやだ」と心に秘めて走っていた。

この日もリーダージャージ防衛に徹してもいいはずだった。しかし攻撃は最大の防御とばかりアタック。「マイヨジョーヌが翼を与えてくれた」と、最後は両手で鳥の羽ばたきを演じながらゴールして大会通算7勝目を挙げた。

2022ツール・ド・フランス第4ステージ ©A.S.O. Charly Lopez

2021年大会では第20ステージと第21ステージで優勝していて、ツール・ド・フランスでは6ステージにわたって1位と2位という記録を継続している。

ファンアールトは個人総合1位のマイヨジョーヌはもちろん、ポイント賞のマイヨベールも守った。

ダンケルクの海岸をスタートする ©A.S.O. Pauline Ballet

●4賞ジャージ
マイヨジョーヌ(個人総合成績)ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ビスマ)
マイヨベール(ポイント賞)ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ビスマ)
マイヨブラン・アポワルージュ(山岳賞)マグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)
□マイヨブラン(新人賞)タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEエミレーツ)

3日連続でアタックしたマグナス・コルト(デンマーク)とアントニー・ペレス(フランス) ©A.S.O. Pauline Ballet

港町カレーは英国との玄関口

パリの北180kmほどのアラスで3年ぶりとなるフランスでの最初の朝を迎えました。昨夜は寒くて暖房を入れました。窓の外ではウサギが盛んに跳ね回っていて、スマホで撮影を試みたんですが、なかなか動きが早くて。

カレーはこのツール・ド・フランス招致を契機に、プラージュ(海水浴場)を観光の目玉として打ち出していく

今朝は濃霧。麦畑に囲まれた街道筋のホテルをランニングで出発すると、迷子になりそうでした。でもGPSを起動しているので、「出発点に戻る」コマンドで帰れますよね。

iPhone 13 Proのズームレンズで英国のドーバーを撮影してみた

それにしても快適なホテルで、使ってはいないけどトレーニングルームとサウナも。そして見るだけでも鳥肌が立ちそうなプールも。朝食で久しぶりのフランスパンと2種類のバター(ドゥミセル=減塩とドゥー=無塩)を楽しみ、チェックアウトして北へ。

逃げた選手との差をメイン集団に伝えるスタッフは女性だ ©A.S.O. Pauline Ballet

ゴールのカレーに直接入り、この土地のものをビュッフェでいただきました。このあたりはワイン生産地ではないので、ベルギー産のビールが用意されていました。

ホテルはゴール地点からわずか1.5kmほどの町中。それほど治安がいいところではなく、ホテルも古くて質素。前日の清潔なホテルと比較すると、もちろん値段は半分ほどですが、あまり調子に乗るなよということだなと、肝に銘じて過ごすことに。

広告キャラバン隊がやってきた ©A.S.O. Aurélien Vialatte

カレーの街は何度か来ていて土地勘もあったので、港に向かって歩いていき、魚介類が売り物のレストランへ。ウインドブレーカーを着込んできましたが、潮の香りがするテラス席では寒すぎるので店内を選択。おいしくいただきました。

つくづく感じたのは、ファンアールトに翼を授けたのは間違いなくカモメですね。翌日の朝、カレーの港をランニングしていて確信しました。

ムール貝は最初の1つはフォークを使ってもいいが、その殻をピンセット代わりにしてガンガン口に運ぶ。フランス人でも観光客はそれを知らない人がいて、そんなんじゃ1時間かかるし
3ステージ連続で2位だったファンアールトがついにステージ勝利 ©A.S.O. Pauline Ballet

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山と峠にインスパイアされた酒「ヤマザケ ヤビツ峠」はサイクリストなら放っておけない

神奈川県秦野市に蔵を構え創業154年を迎える金井酒造店は、2022年7月4日より丹沢登山などで人気の山と峠の名前を冠する日本酒として「ヤマザケ 塔ノ岳」「ヤマザケ ヤビツ峠」300mlを販売。

金井酒造店の山と峠にインスパイアされたお酒、「ヤマザケ 塔ノ岳」「ヤマザケ ヤビツ峠」

自然環境との共存共栄を大切にし、丹沢をはじめとする登山・アウトドアレジャーなどの観光振興を応援している商品だ。

アウトドアレジャー×丹沢テロワール

「ヤマザケ 塔ノ岳」「ヤマザケ ヤビツ峠」は、登山、グランピング、ソロキャンプ、バーベキューなどのアウトドアレジャー、 および、テロワールとしての丹沢の恵みよりインスパイアされた日本酒。 

奈川県秦野市唯一の蔵元「金井酒造店」

憧れと親しみをこめたラベルの瓶に自慢の日本酒を瓶に詰めた。豊かな自然に想いを馳せながら、日本屈指の名水である丹沢山系から流れる豊かな伏流水からつくられる日本酒。アウトドアレジャーのお供として、親しい人への贈り物やお土産としていい。 

テロワール:もともとは「土地」を意味するフランス語terre。土壌・気候・地形・技術がもたらすその土地特有の性格や影響をあらわす言葉で、人間の制御だけではない、自然の要素について表現している。

●金井酒造店のホームページ

【ツール・ド・フランス現場雑感】夏祭りと残念な銃撃事件

第109回ツール・ド・フランスは2022年7月3日、デンマークのバイレ〜セナボー間182kmで第3ステージが行われ、バイクエクスチェンジ・ジェイコのディラン・フルーネウェーヘン(オランダ)が大集団のゴールスプリント勝負を制し、3年ぶり5回目の優勝を挙げた。

デンマークでのラインレースはゴールまでみんなで行こうよという選手の意思共有を感じた ©A.S.O. Pauline Ballet

フルーネウェーヘンが大怪我を乗り越えて勝利

フルーネウェーヘンはスプリンターとして活躍したが、落車による重い障害を背負ってしまい精神的不調が続き、今季から同チームに。

「チャンスを与えてくれたチームに恩返ししたかった。最後の勝負は緊張したが、これでようやく迷いが吹っ切れる」とフルーネウェーヘン。

2022ツール・ド・フランス第3ステージ ©A.S.O. Charly Lopez

マイヨジョーヌのワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ビスマ)は3ステージ連続で区間2位。ボーナスタイム6秒を獲得。総合2位のランパールト(クイックステップアルファビニル)との差を1秒から7秒に広げた。総合1位ととともに、ポイント賞でも1位をキープしている。

バイキングに扮したリゴベルト・ウラン ©A.S.O. Charly Lopez

●4賞ジャージ
マイヨジョーヌ(個人総合成績)ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ビスマ)
マイヨベール(ポイント賞)ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ビスマ)
マイヨブラン・アポワルージュ(山岳賞)マグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)
□マイヨブラン(新人賞)タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEエミレーツ)

2022ツール・ド・フランス第3ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet

2日前にツール・ド・フランスの舞台となった町で銃撃テロ

デンマークでの3日間は、ツール・ド・フランスの歴史上でも眼を見張るような盛り上がりを見せました。沿道には想像以上大観衆が詰めかけ、タデイ・ポガチャルも「もうとにかくファンの声援はスゴい!」とコメントしているほどです。

マグナス・コルト(デンマーク)が独走してさらに山岳ポイントを積み上げた ©A.S.O. Charly Lopez

現地運営を委託されたデンマーク側はコースから離れたところに圧倒的多数の駐車場を用意。ファンはそこから徒歩などでコース上に向かうことになりました。簡易トイレなどのホスピタリティも用意周到で、デンマークの人たちは「3日間のフェスティバル」という楽しさを口にして盛り上がったのは言うまでもありません。

まさに夢のような3日間だったに違いありません。ところが…。

デンマークの3日間は大盛りあがり ©A.S.O. Pauline Ballet

この第3ステージが行われていた3日に、コペンハーゲンの商業施設で銃撃事件があり、犠牲者も発生しました。ツール・ド・フランス関係者はそこから300km近く離れた本土にいたので影響はありませんでした。ボクはその翌日にコペンハーゲンに着き、東京中日スポーツから事件を知らせる連絡があったのでちょっとお気楽すぎた取材者日記を書き直す必要がありました。

集合住宅みんなでツール・ド・フランスを歓迎
自転車が市民の生活には欠かせない。童話作家アンデルセンの生まれたオデンセで
オデンセの駐輪場にはコンプレッサーが常備。上部は鉄道駅の向こう側まで伸びる自転車専用橋
オデンセ郊外のレストラン付きモーテルで初めての本格料理

大会4日目はフランスまでの移動。そして3年ぶりのフランスへ

そして、通常より1日増の24日間で開催されているツール・ド・フランスは大会4日目にデンマークからフランス北部に大移動することになります。

アラス郊外のモーテルへ。クルマ移動のボクたちは荷物を部屋に運ぶのが楽で、このタイプが大好き

コペンハーゲンからパリに戻ったボクは、いよいよ3年ぶりにフランスの大地を踏みしめることに。目頭が熱くなるほど感慨深い思いでした。

この日はパリとカレーの中間にあるアラスへ。

清潔で快適な部屋からは麦畑と草むらのウサギも見える

これまで、
「ボクのツール・ド・フランスはマルセイユから始まった」
とか
「ボクのツール・ド・フランスはルーアンから始まった」
とか大ウソをついてきましたが、このアラスこそが人生を変えた街なんです。

そしてデンマーク帰りはフランスのレストランが激安に感じるという罠に

中学の頃から英国かぶれで、ラグビーなんかやったりして。高校の選択教科で英語を習得しようと参加した授業の題材が「フランス革命の指導者たち」。それを機会にフランスに傾倒し、恐怖政治を断行したロベスピエールがボクの英雄になりました。

フランス全土を駆けずり回っているボクにとって、フランスらしい景色といえばこんな感じだ

そのロベスピエールの出身地がアラス。フランスにはこれからはもうそんなにくる機会も少ないので、訪れておきたかったんです。部屋の窓を開けると草原のにおい、鳥の声、ウサギの姿。ツール・ド・フランスはこれから3週間をかけてフランスを一周することになります。

日差しは強いが朝夕は暖房をつけるほど冷え込んだ

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【ツール・ド・フランス現場雑感】1年遅れのお祭りがデンマークにやってきた

第109回ツール・ド・フランスは2022年7月2日、デンマークのロスキレ〜ニュボー間202.5kmで第2ステージが行われ、クイックステップアルファビニルのファビオ・ヤコブセン(オランダ)がゴール勝負を制して初優勝した。

2022ツール・ド・フランス第2ステージ ©A.S.O. Charly Lopez

マイヨジョーヌはワウト・ファンアールトに移る

前日に5秒遅れの総合2位につけたワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ビスマ)が区間2位になり、ボーナスタイム6秒を獲得。初日に首位となったクイックステップアルファビニルのイブ・ランパールト(ベルギー)をわずか1秒上回って、初めてのマイヨジョーヌを獲得した。

港に面した原っぱがツール・ド・フランス第2ステージのスタート地となった

3連覇を狙うタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEエミレーツ)は残り3kmを切ったところで発生した落車で遅れたが、救済措置により区間1位と同じゴールタイムとなり、ことなきを得た。

●4賞ジャージ
マイヨジョーヌ(個人総合成績)ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ビスマ)
マイヨベール(ポイント賞)ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ビスマ)
マイヨブラン・アポワルージュ(山岳賞)マグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)
□マイヨブラン(新人賞)タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEエミレーツ)

ツール・ド・フランス第2ステージはデンマークの大観衆が沿道に詰めかけた ©A.S.O. Pauline Ballet
この日は平坦コース。気温20度半ばの過ごしやすい天気に恵まれた ©A.S.O. Pauline Ballet

物価高のコペンハーゲンでまさかの駐禁1万円

コペンハーゲンは首都とは思えないほど空気がきれいで、運河ではスイムやカヌーをする人もいるほどです。運河には天空のボードウォークがテーマパークのコースターのように作られていて、市民はその上を歩いたりジョギングしたりしてリラックスタイムを過ごしていました。

マイヨジョーヌのランパールトも好位置をキープ ©A.S.O. Pauline Ballet

2日目の朝もも気持ちよくラン練習したくてたまらないですが、ガーミン先生がレストを指示するのでやめておきました。2連泊のホテルには朝食をつけていなかったので、この日は駅近くのカフェで済まそうと、ホテルを出たらちょっと心に引っかかるものを見てしまいました。

ホテル前に駐車したクルマのワイパーに細長い紙がはさまれていたんですよ。これは経験上どう見ても駐車違反の通知です。でもデンマーク語がわかりません。周囲のクルマを見回してみると、デンマーク登録車両はみなこんな紙ははさまれていないのですが、オランダ登録車に同じような紙が。

かつてのバイキングの面影を感じさせる船もツール・ド・フランスを歓迎

もうこの時点で駐車違反をしたのだと断定。カフェに行くような余裕は全くなくなり、部屋に戻ってポケトークアプリで写真を撮って翻訳してみたら、違反金を払えと。どうやらホテル前の駐車スペースは公共パーキングで、地元の人たちはきちんと支払っているんでしょうね。

ほったらかしにしてしまうとめんどくさくなるし、レンタカー会社経由で増額された違反金がクレジットカードから引き落とされるはずなので、ネットですぐに支払いました。1万円の出費でした。

逃げた2人のデンマーク選手、マグナス・コルト(左)が山岳賞、スベンエリック・ビーストルムが敢闘賞 ©A.S.O. Charly Lopez
カベンディッシュを外したチームはファビオ・ヤコブセンをスプリントのエースとして起用。その結果にいきなり報いた ©A.S.O. Pauline Ballet

ツール・ド・フランス誘致の夢を実現したデンマーク

そんなコペンハーゲンでしたが、首都としてはとても落ち着いていて、いい街だという印象は変わりません。自転車利用者は歩道で必ず押し歩きすることに感激しました。それはもちろんルールなんですが、こっちの歩道はそうするために作ってあるのか部分的に石畳で自転車走行には向きません。ランニングしていると足を捻挫しそうなのでよくわかりました。

ワウト・ファンアールトが1秒差でマイヨジョーヌ ©A.S.O. Pauline Ballet
沿道は大観衆が大はしゃぎだが、その雰囲気をちょっと離れたところで味わう年配女性の姿も

この日は第2ステージのゴールの隣町オデンセへ。同国第3の町で、童話作家アンデルセンの生まれたところ。初めての外食に繰り出しましたが、コースを頼むとどのお店も9000円はするので、うちひしがれました。若者が多いメキシカンのテラスでビール(500mlしかありません)とトルティーヤ。3000円です。

今年のテーマは、質素に。

興味深い自転車がいたるところにある

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