【ツール・ド・フランス現場雑感】美食のブルゴーニュから恐竜のジュラへ

写真判定でモホリッチが涙のステージ優勝

第110回ツール・ド・フランスは7月21日、モワラン・アンモンターニュ〜ポリニー間の173kmで第19ステージが行われ、バーレーンビクトリアスのマテイ・モホリッチ(スロベニア)が写真判定にもつれ込む僅差でスーダル・クイックステップのカスパー・アスグリーン(デンマーク)を制した。

モホリッチがアラフィリップと抱き合う ©A.S.O. Charly Lopez

モホリッチは2021年の2勝に続く3勝目。アスグリーンは前日に続く勝利を逃した。

総合成績では首位ヨナス・ビンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ビスマ)がその座を難なく守った。

2023ツール・ド・フランス第19ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet
アレクセイ・ルツェンコがアタック ©A.S.O. Pauline Ballet
涙ぐむモホリッチ ©A.S.O. Charly Lopez
ポガチャルが新人賞ジャージを獲得 ©A.S.O. Pauline Ballet

●4賞ジャージ
マイヨジョーヌ(個人総合成績)ヨナス・ビンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ビスマ)
マイヨベール(ポイント賞)ヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)
マイヨブラン・アポワルージュ(山岳賞)ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック)
□マイヨブラン(新人賞)タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEエミレーツ)

2023ツール・ド・フランス第19ステージ ©A.S.O. Charly Lopez

朝のランニングは滞在地の素顔を知るのにちょうどいい

第19ステージの朝は前日のゴール、ブールカンブレスから北に20kmほど、モントルベルアンブレスという小さな町で迎えました。夜遅くまでにぎわっていたバーの2階にある部屋でしたが、深夜には酔客も散会したこと、部屋そのものが気持ちよかったことも幸いして、前日に感じた疲れも消えました。

ブーランジュリーはパン屋、パティスリーはケーキ屋、フロマジュリーはチーズ屋さん

いつもの午前6時の目覚まし時計で起きて、水分補給をしてから朝のランニング練習に。街道筋は走りにくいのでホテルの裏から郊外に出る道を見つけて走っていくと、シュマンと呼ばれる未舗装の小径を発見。1台だけMTBとすれ違いましたが、それ以外の人の姿はなく、用水路沿いの道を気分よく走ることができました。

この小径はサッカーとラグビー場がそれぞれ3面ずつあるグラウンドを取り囲むように伸びていくんですが、これだけプレーがのびのびできるんだからフランスは強くなるはずです。朝からスプリンクラーが稼働していて、グラウンドの芝(というより草)を養生していました。

バーとは異なるフロアに朝食会場があって、これが意外と落ち着いて過ごすことができた

フランス各地の草地のことで一つ気づいたのは、家庭の庭やグラウンドはもちろん道路沿いの草地まで定期的に草刈りしているんですね。自治体が乗用芝刈り機を駆動させてきれいにしているみたいです。無造作に伸び放題というのが少ないなあとフランスに来て感じるようになりました。

ジュラ産の白の発泡ワイン

レースは美食のブルゴーニュからジュラへ。ジュラ紀やジュラシックパークの語源で、大昔は恐竜がいっぱいいたはずです。 翌日は一気に200km以上も北上してボージュ山系で最後の山岳ステージとなりますが、ホテルが予約できなかったのでさきほど迂回路で通過したはずのロンスルソニエへ逆戻り。

ホテル予約サイトの「10泊すると1泊無料」の条件を使って、ちょっといいホテルに宿泊しました。カジノが併設されていて、その隣りにあるレストランのテラスで食事。服装規定があるとネットに出ていたので、裏起毛のジャケットを着ていったのですが、他のお客さんは短パンなど。でもテラス席は裏起毛のジャケットを着込んでボクにはちょどいい感じでした。

心地よい外気の中でのディナーはフランスならではのもの

ツール・ド・フランス取材も最終日前日のスタートまでと、そして最終日パリまでの370km移動を残すのみとなりました。プレスセンターの取材陣も、大勢がビンゲゴーの圧勝で収束していることもあり、もう最後のまとめに入っています。

駆け出しのころは最年少でした。当時は名物記者がいて、電話をかけて口述筆記させているクロード・シュドルとか、タイプライター記者とかユニークな年長者がたくさんいて、それはもうプレスセンターになくてはならない存在でした。

2023ツール・ド・フランス第19ステージ ©A.S.O. Charly Lopez

欧州は世襲的なところがあるので、そのうちに息子たちが役割を引き継ぐようになり、ボクの知るベテラン勢は1年ごとに姿が見えなくなっていき、いまはもう誰も残っていません。年寄はボクだけになってしまった感があります。

パリに入ってしまうとそんな感傷は怒涛の喧騒で消しさられてしまうので、郊外にいるうちに過去の記憶を思い返しておきました。

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