新型コロナウイルスの感染拡大を受けて自転車競技界でも大きな影響が生じている。2020東京五輪が延期になったこともあり、2021年はすでに日程が発表されているツール・ド・フランスなどのメジャーレースも調整する検討に入った。さらには2020シーズン前半に開催できなかったジロ・デ・イタリアやモニュメントと呼ばれる伝統レースを終盤戦に組み込んでいく作業が行われる。
国際自転車競技連合(UCI)が2020年3月18日、4月末までのすべての登録競技者クラスのロードレースを開催しないことを発表した。シーズン前半の主要大会が相次いで延期となる緊急事態で、ジロ・デ・イタリアなどの三大大会、ミラノ〜サンレモやパリ〜ルーベなどのモニュメントを最優先として後半戦に組み込んでいくという。
「他のメジャースポーツイベントの日程を考慮しながら、新たな日程を考えていきたい」とUCI。大会の重複、1チームあたりの参加選手数増もあり得るとした。
自転車競技界に影響が生じ始めたのは2月末のUAEツアーから。出場チームのスタッフが感染したことが発覚し、レース中止。UAEエミレーツに所属しているフェルナンド・ガビリア(コロンビア)も感染した。3月8日には8日間の日程でフランスのパリ〜ニースが開幕したが、感染拡大を受けて2日目からスタートとゴールに観客を入れない運営で継続。事態はさらに悪化し、最終日となる15日のレースを急きょ打ち切った。
最も深刻なイタリアでは、3月21日のミラノ〜サンレモ、5月9日から31日まで開催予定だったジロ・デ・イタリアが相次いで延期された。ベルギーの伝統レース、第二次世界大戦でも中止されなかったツール・デ・フランドル、「北の地獄」と呼ばれる石畳の悪路を走ることで知られるパリ〜ルーベも延期となった。日本では3月20日から22日に開催予定だったツール・ド・とちぎ、5月のツアー・オブ・ジャパンも中止になった。
UCIは大会が中止になることで国際ランキングに不公正が生じないように、期間中のランキング制度も凍結させた。東京五輪・パラ五輪の予選大会はすべて白紙にした。五輪・パラの国別出場枠の配分は、すでにロード、トラック、パラサイクリング・トラックは終了しているが、マウンテンバイク、BMXレース、BMXフリースタイル、パラサイクリング・ロードは現在も進行中。今後は国際オリンピック委員会(IOC)と国際パラリンピック委員会(IPC)と話し合って参加枠配分を調整するようだ。
UCIは東京五輪の延期を「最善の策だ」と歓迎し、「2020年シーズンの再開を視野に入れ、新しい日程を確立することを優先していく」という。
「選手や関係者の健康とスポーツの公平性を尊重しながら、選手のトレーニングとレース復帰を可能にする道筋をつけていく。UCIはパートナーとともに団結して前進し、決定事項を間もなく発表したい」
プロが自室から室内トレーナーを使ってのサイクリングを呼びかけ
3月21日に開催される予定だったミラノ〜サンレモは延期になったが、主催者RCSスポルトが意地を見せた。開催されるはずだった同時刻に、実際のコースと同じ負荷がバーチャルで再現されるアプリを提供。スマホやパソコン画面に映し出されるコースの起伏に連動して、室内トレーナーのペダルの重さが変わるシステムで、世界中のサイクリストがオンラインで一緒に汗を流した。
また、自宅などで室内練習するプロ選手らもSNSで一般サイクリストに呼びかけ、ネット上に集まって一緒に走る練習会を実施している。「困難な状況だけど、再び楽しく走れる日のために練習しよう」とメッセージを発信し続けている。
●新型コロナウイルスに影響を受けた自転車ロードレース
2月23日〜29日 UAEツアー(選手感染、2区間打ち切り)
3月8日〜15日 パリ〜ニース(無観客、1区間打ち切り)
3月21日 ミラノ〜サンレモ(延期)
4月5日 ツール・デ・フランドル(延期)
4月12日 パリ〜ルーベ(延期)
4月26日 リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ(延期)
5月9日〜31日 ジロ・デ・イタリア(延期)
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