女子プロロードレースも2023シーズン本格化…その注目選手は

2024パリ五輪の自転車競技は、初めて全種目で男女の参加選手数が同じになる。国際自転車競技連合(UCI)が男女の出場機会を均一にする流れを汲んで決めた。あまりの過酷さゆえに「男のレース」と言われたロードレースでも女子大会はボリューム&魅力アップ。アネミエク・ファンフルーテン(40)=オランダ、モビスター=ら注目選手もいる。

ツール・ド・フランスファム2022。黄色いマイヨジョーヌを着用したファンフルーテンが集団で主導権を掌握 ©A.S.O. Fabien Boukla

アネゴのファンフルーテンをだれがストップをかけるかが焦点

自転車レースはマラソンとは異なり、男女混走という大会はない。巡航速度が高いので空気抵抗という存在が大きく、パワーのある男子選手を風よけにするなど公平性が保たれないからだ。そのため女子レースは単独開催される。4月から欧州で始まる春の伝統レースでは男子に先駆け、競技距離を縮小させるなどして同日開催することも多い。

デンマークチャンピオンジャージー姿のルドビグ。ツール・ド・フランスファム2022 ©A.S.O. Thomas Maheux

そしてシーズンが本格化すると、8〜10日間ほどの日程でステージレースが開催される。6月30日から7月9日までジロ・デ・イタリアドンネ、7月23日から30日までツール・ド・フランスファム。ドンネとファムはどちらも「女性」という意味で、23日間開催の男子レースにはかなわないが、女子最高峰のステージレースとして男子と別日程で行われる。

2022年の両大会で総合優勝したのがファンフルーテンだ。2020東京五輪では、個人ロードでスタート直後から逃げていた先行選手の存在に気づかず、金メダルを確信して両手を挙げてフィニッシュしたが2位。それでも個人タイムトライアルで金メダル獲得。そして秋の世界選手権では3年ぶり2度目の優勝。今季は世界チャンピオンの称号である虹色ジャージー、アルカンシエルを着用する。そして世界ランキングも1位を維持している。

ツール・ド・フランスファム2022 ©A.S.O. Thomas Maheux

ファンフルーテンの強さは上り坂で目撃できる。体重の軽さを生かして飛ぶように激坂を登り、若手選手を追い落としていく。操舵技術には弱点があり、落車骨折などを繰り返した。それでもリハビリを経て頂点に返り咲く精神的なタフさもある。今シーズン序盤は得意としない平坦レースばかりで、優勝はできなかったが、高地トレーニングをこなして4月の伝統レースに臨むという。

デンマークチャンピオンジャージを着用するセシリーウトラップ・ルドビグ(27)=FDJスエズ=も女子ロードの注目選手。笑顔と明るい性格で人気があり、2022年のツール・ド・フランスで区間1勝して総合優勝争いにも加わった。

パリ〜ルーベファム2022 ©A.S.O. Pauline Ballet

ルドビグらキャリア熟成期の選手が最大の目標とするのがツール・ド・フランスだ。男子レース最終日に開幕し、8区間で争われる。最終日前日はピレネー山脈のツールマレー峠にゴールし、最終日は距離22kmの個人タイムトライアル。男子レースでは設定できないような舞台を用意し、ロードレースの醍醐味を見せつけようとしている。

ツール・ド・フランスファム2022第1ステージ ©A.S.O. Thomas Maheux

女子レースは一方で男子よりも格段に選手層が薄い。40歳のファンフルーテンが現在も頂点に君臨しているのがそれを物語る。日本女子はジュニア世界選手権5位の垣田真穂(早稲田大)に期待だが、パリ五輪まではナショナルチームに所属してトラック競技に専念する。国際的女子ロードレースが日本でも報じられるようになった今、全国の逸材がこのスポーツに関心を持ってくれることを願う。

女子ロードの主要レース
4月2日 ツール・デ・フランドル(ベルギー)
4月8日 パリ〜ルーベ(フランス)
4月16日 アムステルゴールドレース(オランダ)
4月23日 リエージュ~バストーニュ~リエージュ(ベルギー)
6月30日〜7月9日 ジロ・デ・イタリアドンネ(イタリア)
7月23日〜30日 ツール・ド・フランスファム(フランス)

ファンデルプールが62年前の祖父に続くミラノ〜サンレモ独走勝利

イタリア語で春という意味の「プリマベーラ」と呼ばれている伝統大会、第114回ミラノ〜サンレモが3月18日に開催され、アルペシン・ドゥクーニンクのマチュー・ファンデルプール(28)=オランダ=が初優勝した。62年前に祖父のレイモン・プリドール(フランス)が勝利した時と同じような独走シーンだった。

ミラノ〜サンレモを初制覇したファンデルプール ©Gian Mattia D’Alberto/LaPresse
レイモン・プリドール氏。2018年撮影、2019年逝去 © A.S.O. Thomas Maheux

最長距離となる300kmは国際ルールの規定を超える

イタリア北部の大都市ミラノから地中海岸のサンレモを目指すレース。距離294kmは国際規定の上限を超えるが、伝統大会として特別に容認されている。しかもミラノのスタート後に非競技区間があって、これを加えると選手は300km超を走る。現在行われている国際大会としてはもちろん最長距離だ。

ミラノ〜サンレモ ©Fabio Ferrari/LaPresse

ミラノを出発したレースは中盤までロンバルディア平原を南下した。144km地点でトルキーノ峠を越え、地中海のリビエラ海岸に突入。この日は東からの風が選手にとってはフォローウインドとなり、メイン集団を加速させた。スタート直後から逃げていた選手を265km地点で吸収して、レースは終盤で振り出しに戻った。

地中海リビエラ海岸を西に進む ©Fabio Ferrari/LaPresse

勝負は残り5.5km地点を頂上とするポッジオ・ディ・サンレモに持ち込まれた。UAEエミレーツのタデイ・ポガチャル(スロベニア)がこの上り坂でアタック。これにファンデルプール、ユンボ・ビスマのワウト・ファンアールト(ベルギー)、イネオスグレナディアーズのフィリッポ・ガンナ(イタリア)が反応。4人の先頭集団が形成された。

ポッジオの上りで仕掛けた(先頭から)ポガチャル、ガンナ、ファンアールト、ファンデルプール ©POOL GETTY/DEWAELE/LaPresse

ファンデルプールが勝負に出たのは頂上手前だ。ここでわずかに2番手以降と差が開いた。危険に満ちた下り坂をクリアすればゴールまでは平坦路だ。

最後の丘で2番手以降にわずかな差をつけたファンデルプール

「下り坂であえてリスクを冒さなかった。もしクラッシュしていたら自分を許すことはできなかったけど、仮に捕まってもゴールスプリントで勝てる」と冷静さを失わなかったファンデルプール。ゴールとなるサンレモのローマ大通りで独走状態に。「特別なレースでの特別な勝利だ」と最後は両手を挙げた。それはまさに祖父のウイニングポーズとそっくりだった。

ポッジオ・ディ・サンレモの頂上でわずかにリードしたファンデルプール ©Fabio Ferrari/LaPresse

1週間前に行われた7日間のステージレース、ティレーノ〜アドリアティコでは活躍を期待されながら、いいところがなかった。

「ティレーノ〜アドリアティコで隠れていたわけではなく、ベストな体調ではなかった。そのレース後にチーム全員と素晴らしいトレーニングの週を過ごしたし、彼らは僕のためにミラノ〜サンレモでいい仕事をしてくれた。チームとして今回の勝利を祝いたい」

残り200mで勝利を確信したファンデルプール ©Gian Mattia D’Alberto/LaPresse

1961年大会で独走優勝した祖父プリドール。1962年から1976年まで14回ツール・ド・フランスに出場して、総合2位3回、3位5回。ポディウムと呼ばれるパリでの表彰台に8回上っているが、総合優勝できなかっただけでなく首位のマイヨジョーヌを獲得したこともない。

ローマ通りを独走したファンデルプール ©Tano Pecoraro/LaPresse

祖父プリドールと同じ勝利に「優勝を誇りに思う」

ツール・ド・フランス最多の5勝を挙げたジャック・アンクティル(フランス)と時代を同じくしてしまったという不運があり、同選手が引退すると同じく最多勝を挙げる怪物エディ・メルクス(ベルギー)が立ちはだかった。新聞では「万年2位」と書かれたが、フランスでは一番人気があった。

優勝のファンデルプールを中央に、左が2位ガンナ、右が3位ファンアールト ©Gian Mattia D’Alberto/LaPresse
ツール・ド・フランスではレイモン・プリドール人気は今も衰えない ©A.S.O. Pauline Ballet

そんな祖父が幼児期からレース会場に連れてきたのがファンデルプール。2021ツール・ド・フランスでは6日間にわたってマイヨジョーヌを着用し、そしてこの日プリマベーラを制して肩を並べた。

「勝つのは最も難しいレース。祖父の優勝から62年経った今、ここで優勝したことを誇りに思う」

イタリアに春の到来を告げるミラノ〜サンレモ ©Fabio Ferrari/LaPresse

休日に走りたいけどできない要素は盗難不安、コース知らない、輪行できない

休日に生活圏を離れて遠方にお出かけ気分で行うサイクリング(ホリデーライド)の実施状況や阻害要因調査を1都3県のサイクリストを対象に実施したところ、ホリデーライドする際にサイクリストはいくつもの悩み(障壁)を感じていて、それが地域へのサイクリング周遊(サイクルツーリズム)の機会損失になっていることが明らかになった。

全国各地でサイクルツーリズム事業を展開する一般社団法人ルーツ・スポーツ・ジャパンがインターネット調査により実施。回答サンプル数は829。ホリデーライド実施時にサイクリストが感じる悩みを解消するための新サービスを開発中で、「ホリデーライドの実施状況フォーム」に入力し、自身の悩みに合致する人には、夏ごろにリリース予定である新サービスの「先行優先利用」を案内する。

調査結果1…ホリデーライドの実施頻度は理想から遠い

ホリデーライドの現状の実施頻度は、「ほぼ毎週」が 22.7%、「月に1回以上」が 15.2%であ る一方、理想の実施頻度は、「ほぼ毎週実施したい」が 46.2%、「月に 1回以上」が 20.6%。多くの人がもっと頻繁にホリデーライドを楽しみたいと考えている。

調査結果2…ホリデーライドを阻む悩みは、不安と手間

ホリデーライドを実施しようと思っても実現できない理由として、「自転車の盗難」「土地勘 のない場所での走りやすいコース設定ができない」「遠出するのに電車輪行ができない」という悩み(障壁)が挙げられた。

<悩み>
1位:自転車の盗難:41.8%
2位:土地勘のない場所での走りやすいコース設定ができない:35.5%
3位:遠出するのに電車輪行ができない:31.8%

これらの悩み(障壁)が解決されることで、地域へのサイクリング周遊の機会が増えると考え られる。ルーツ・スポーツ・ジャパンは、この問題を解決するために全力をあげ、サイクリス トが抱える悩みを解消するための新サービスを開発中だという。

下記のサービス利用希望アンケートに回答すると、優先案内により一足先に新サービスを体験できる機会が届けられる。 次の休み、どこ走りに行こう?に悩む、サイクリストからの回答を待っているという。

<サービス利用希望アンケート概要>
方法:オンラインアンケート
回答期間:2023年4月4日~2023年4月14日 ※予定

●アンケートのホームページ

最速はバリスタ、最軽量はヴェロシス…トレックのヘルメット新発売

トレック・ジャパンがレースに適した史上最速のBallista(バリスタ)と史上最軽量のVelocis(ヴェロシス)という2つのヘルメットを発売した。

ともに、ラインナップとして初めてMips Airを搭載し、通気性と軽量性を高めている。また、360°BOAダイヤルフィットシステムにより、より多くのサイクリストの頭部にフィットするようになった。

エアロ性能を徹底的に追求したバリスタ

新たなBallistaは、その見た目どおり、エアロ性能を徹底的に追求したヘルメット。エアトリップと名付けられた溝が、後方への空気をヘルメット表面に沿わせて流すことで、エアロ性能を高めている。また、頂点の大きなNACAダクトが通気性を高め、空気の流れを最小限に抑えている。

Trek Ballista Mips(Black)

Trek Ballista Mips ロードヘルメット
価格:34,900円(税込)
重量:275g (Mサイズ)
サイズ:M, L
カラー:White, Purple Flip, White/Nautical Navy, Black
フィット:ユニバーサル

カーボン素材で軽量性を高めたヴェロシス

新たなVelocisは、トレックが誇るOCLVカーボンを素材の一部へ採用し、軽量性を高めた。また、通気性が前作より約40%向上し、レース中は頭部の熱を放出し、高いライドパフォーマンスを維持する。

Trek Velocis Mips(Black)

Trek Velocis Mips ロードヘルメット
価格:39,900円(税込)
重量:260g (Mサイズ)
サイズ:M, L
カラー:Crystal White, Dark Aquatic, Black, Crystal White/Nautical Navy, Viper Red/Cobra Blood
フィット:ユニバーサル

●トレックのホームページ

パリ〜ルーベにDSMがタイヤ空気圧可変機材投入…市販価格58万円

チームDSMが4月5日、「北の地獄」と呼ばれる石畳の悪路を走ることで知られるパリ〜ルーベ(フランス、4月9日)でオンバイク・タイヤ空気圧管理システム「スコープアトモス」を使用することを発表した。

タイヤ空気圧を走行中に変えることができるスコープアトモス

このシステムはスコープサイクリングが開発し、DSMがテストして実戦使用に至った。選手はハンドルバーのリモートボタンを使用して、バイクに乗りながらタイヤの空気圧を増減できる。

システムの主な動作原理は、エアリザーバーと、ホイールのハブの周りに固定されたメカニカルバルブに基づくリリースシステム。エアリザーバーはチューブレスタイヤの内側に取​​り付けられている。ハンドルバーのボタンを押すと、ワイヤレス信号がシステムに送信され、センターハブのリリースバルブが開き、タイヤの空気を抜いたり膨らませたりする。

スコープアトモスはセット価格で58万円

石畳のセクションや突然の雨の際にメリットが発揮できるという。システムを起動して最適なグリップと転がり抵抗を実現することにより、選手はより自信を持ってバイクを操作できるようになり、パフォーマンスと安全性が向上する。

システムにモーターやコンプレッサーが関与していないことが画期的なことだ。

スコープサイクリングのホームページでsはすでに一般販売されていて、価格はセットで3998ユーロ(約58万円)。

●スコープサイクリングのホームページ

岩田康裕マイスターの輪行講座が京都サンエムズで初開催

ワールドサイクルで開催している輪行講座が初の京都で開催されることになり、その募集が始まった。開催日は5月20日。

輪行マイスター岩田康裕の輪行講座は2013年5月に始まり、2023年で10年目。のべ530人以上が直接縦型輪行方法を学んだ。5年前にけんたさんのYoutubeチャンネルに公開した「輪行マイスターに聞く、完璧な輪行のやり方」という動画は、147万回再生を超える超人気ぶり。

10周年を記念して、2023年3月に新築したばかりの京都のサンエムズ新社屋で、輪行講座を開催することになった。場所は、京都駅から徒歩約12分ととても近く、ショールームとして造られたスペースを利用。

大阪での輪行講座との違いは、自転車は参加者の持ち込みとなる。輪行袋などは用意される。3名までの少人数講座で、2時間みっちりかけて、輪行の手順はもちろん、ルールやマナー、歴史などを学ぶ。

期日:5月20日
時間:午前10時~12時、午後1時半~3時半
場所:京都市下京区新町通六条下る艮町874番3 サンエムズ株式会社

午前の部と午後の部、各3名の参加者を募集。参加費用は一人3500円(税込)。

●ワールドサイクルの詳細ページ