発熱で自宅隔離も開催日未定の全日本を見すえる…山本元喜

新型コロナウイルス感染拡大でレースシーズン中断が続いているが、KINAN Cycling Teamは選手・スタッフとも日々前向きに、シーズン再開の日を待ちながら過ごしている。そんなチームの様子を届けるため、いま世界的に叫ばれている「Stay Home」をキーワードに選手たちへインタビュー。今回は山本元喜。現在の生活、シーズン再開への思い、そして今後の目標を語った。

©Syunsuke FUKUMITSU

-ご家族も含めて元気に過ごせていますか?
実はちょっと微妙でして、自分が4月10日頃に風邪をひいてしまったのです。その時期にどうしても外出せねばならないこともあったので、「もしかしたら新型コロナウイルスに感染してしまったのか?」と不安がよぎりました。ただ、微熱だけで特に咳が出たりといった症状はなかったので、花粉症も併発してのことだったのかなと思っています。週が変わってからはトレーニングも再開できています。

-現在トレーニングはどのように行っていますか?
今年からコーチについてトレーニングを見てもらっていて、いまも可能なメニューには取り組んでいます。自分のブログでもその週行ったトレーニングメニューを公開しています。以前のように自分でトレーニングメニューを組み立てているやり方だと、この時期はそんなにバイクに乗っていなかったと思うのですが、今年に入ってコーチにしっかり見てもらっているので、レースがない中でもきっちりトレーニングができている感覚はあります。

-あらゆる面で自粛が求められている中、1日をどのように過ごしていますか?
オフシーズンに近い生活でしょうか。基本的に、トレーニングをして、休息をとって、次の日を迎えている…みたいな感じですね。外出ができないので、家にいてインターネットをしたり、何かほかのことをしたりという具合ですね。

-こうして聞く限り、モチベーションはしっかり保てている印象ですが
いや、正直モチベーションは下がっていますよ(笑)。いつもトレーニングは妻と行うので、時間をそろえてスタートして、コーチから与えられているメニューを行って…という感じです。まぁ、モチベーションは上がっていないけど、与えられているメニューはしっかりやる、といった流れです。

-自転車に限らず、日々何か楽しみを見つけていますか?
体調を崩してしまったので、念のため自宅では隔離状態にあります。それもあって1人でいることが多いので、インターネット…最近はYouTubeをよく観ていますね。何を観ているかですか…ゲームの実況とかですね。自転車とはまったく関係のないものしか観ていないです。個人的にもYouTubeをしっかりやってみたいと考えているので、その中で自分がどういった番組を観ていたらおもしろいと感じるのかを確認していて、いまは楽しみ半分、情報収集半分といった感じでやっています。

©Syunsuke FUKUMITSU

-「Stay Home」が叫ばれる中で、何か健康を維持する効果的な方法があれば教えてください
やっぱり運動することですね。外出ができない中なので、自転車であればローラーであったり、最近はe-ライドも広がっているのでトライしてみるとよいかもしれません。あとは、家庭内でできる運動に取り組んでほしいですね。

-食生活で気を付けていることは何かありますか?
普段とそれほど変わらないですね。レースがまだまだ先なので、現時点で食生活をどうこうしても個人的にはあまり変わらないかなという感覚です。オフに近い過ごし方をしているので、自由に好きなものを食べてはいますが、太りすぎないようにだけは注意したいと思っています。

-レースに目を向けて、ニュージーランドとオーストラリアで走ったシーズン序盤戦を振り返って、どんな走りができましたか?
(先々を見越して)レース勘を多少でも持っておくことができるのはアドバンテージかなと。これからもレースがない日々が続くと、実際のオフシーズンより期間が空いてしまうので、その勘がリセットされてしまう懸念はありますが、2月までレースを走れていたことでレース再開へのモチベーションの維持がしやすいかなと思いますね。例えば、昨年11月のツール・ド・おきなわが終わって以降、まったくレースを走っていない…となれば半年以上レースができていない状況に陥っていたことになるので、そう考えると多少でもレースを走れていたという感覚が持てているのは、まだよい方なのかなと感じています。

-UCI通達により7月に入ってからのレースシーズン再開に向けた動きが出てきました。これからはどこを目標に据えて取り組んでいきますか?
全日本選手権は狙いたいと思っているので、開催日が決まったらそこに向けてしっかり照準を合わせていきたいですね。あと、今年は三重県の一員としてかごしま国体(ロードレースは10月11日実施予定)を目指すことにもなっています。現状で確実に目指していくレースとしては、全日本と国体になってくるかなと考えています。

聞き手:KINAN Cycling Teamメディアオフィサー 福光俊介
インタビュー実施日:2020年4月17日

小山智也がKINAN AACA CUP第3戦で大集団スプリントを制す

KINAN Cycling Teamがホストを務める東海地区のロードレースシリーズ「KINAN AACA CUP」2020年シーズンの第3戦が、3月1日に岐阜県海津市・木曽三川公園長良川サービスセンターで行われた。メインの1-1カテゴリーは、たびたびアタックが発生するも、最後は集団でのスプリントに。好位置から加速した小山智也(Hincapie LEOMO P/b BMC)がシーズン初勝利。シリーズリーダーの椿大志(KINAN Cycling Team)は2位となり、その座をキープしている。

KINAN AACA CUP 2020第3戦で大集団のスプリント勝負を小山智也が制す ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

毎月1回のペースで東海地区の各地を転戦するシリーズ戦は、第1戦以来となる長良川沿いの平坦コース。今回は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、参加選手・関係者全員が対策したうえで会場入りすることを義務付けての開催となった。そんな中でも、国内シーンの本格的シーズンインを目前に各カテゴリーに多数のライダーが参戦。メインの1-1カテゴリーには、今季のJプロツアーを走るレバンテフジ静岡やシマノレーシングからもエントリー。総勢80人を超える選手がスタートラインへ。これら選手たちを迎え撃つKINAN Cycling Teamは、シリーズリーダージャージで出走の椿のほか、山本元喜、山本大喜、トマ・ルバ、新城雄大、荒井佑太の6選手が出場した。

5.1kmの周回コースを20周するレースは、リアルスタート直後から椿ら3選手が先行したこともあり、序盤から活性化。このリードは4周目で封じられるが、それ以降も数人単位のパックができては集団へと引き戻される流れの繰り返し。出入りの激しい展開は中盤まで続くこととなった。

そんなムードが一変したのは9周目後半。トマを含む3人が抜け出すと、次々と追走が発生。10周目を終える頃には10人がレースをリードすることに。ときおりメンバーを入れ替えながらも、先頭グループが主導権を握って後半戦へと進んだ。

レースを先行した10人は小山、寺田吉騎(UCIH)、水野貴行(稲城FIETSクラスアクト)、小島渓円(Team Nason)、石原悠希(Hincapie LEOMO P/b BMC)、阿曽圭佑(あそクリニック)に加え、山本元、山本大、トマ、新城のKINAN勢。メイン集団に対して最大で50秒ほどのリードを確保したまま、15周を終える。

しかし、残り周回が少なくなったところでメイン集団の追撃ムードが高まる。先頭グループの協調体制が崩れてきたこともあり、周回を経るたびにその差は10~20秒単位で一気に縮まっていく。そして、残り2周となったところでメイン集団が先頭を走った選手たちをキャッチ。土壇場でレースはふりだしへと戻った。

一団のまま迎えた最終周回。散発するアタックはいずれも決まらず。決定打が出ないまま、勝負はスプリントへとゆだねられることになった。混戦のまま突入した最後の直線、先頭で加速したのは小山。これを椿が追う形となるが、一歩及ばず。レースを通じ終始攻め続けた小山がシリーズ初勝利を挙げた。

この日は各カテゴリーのレースのほか、会場内では中西健児アカデミーコーチによるキッズスクールが行われ、KINAN Cycling Teamの選手たちも講師役として参加。バイクコントロールの向上を目的に、スラロームに挑戦。締めには2チームに分かれてのリレー勝負を行ってスキルアップを図った。また、FUSION(光設備)さまがブース出展。1-2カテゴリーの優勝者には、スマートフォンのタッチパネル強化の「ハドラスコーティング」のサービスが副賞として贈られた。

シリーズ第4戦は、3月28日に今回と同じ会場で行われる予定。エントリーは9日から開始される。

●キナンAACAカップのホームページ

EQADSの津田悠義が優勝…KINAN AACA CUP第2戦

KINAN Cycling Teamがホストを務める東海地区のロードレースシリーズ、KINAN AACA CUPは2月9日、愛知県新城市・新城総合公園内特設コースで第2戦を開催し、最上位の1-1クラスでEQADSの津田悠義が優勝した。KINAN Cycling Teamからは2人が出場し、周回賞を獲得するなど序盤から攻めの走りを見せた山本大喜が2位に入った。

KINAN AACA CUP第2戦はEQADSの津田悠義が勝利 ©︎KINAN Cycling Team / Midori SHIMIZU

この日は今季一番ともいわれる冷え込み。そんな中でも新城総合公園内の特設コースでは数カテゴリーで熱戦が展開。新城市といえば2026年のアジア競技大会で自転車ロードレース種目が実施されることで調整が進められていて、それに関連して同市の穂積亮次市長もレースを視察。出場選手たちを激励した。

メインカテゴリーの1-1クラスには、ホストを務めるKINAN Cycling Teamから山本大と荒井佑太が出場。1周3.1kmのコースを30周する90kmで競われるレースは、アップダウンやヘアピンカーブなど休みどころのない難易度の高いレイアウト。特に周回残り1kmからのつづら折りの急な坂道がポイントとなることが予想された。

その通り、スタート直後から厳しい上りを利用して山本大が人数を絞るべくペースを上げていく。山本大はそのまま1回目の周回賞を獲得し、その後も攻撃を続けていく。

レースの3分の1を消化しようかという頃に、先頭集団で落車が発生。至近距離にいた山本大はこれを避けられずに転倒してしまう。幸い大事には至らず、レギュレーションに基づいてニュートラル措置によって次の周回で元の集団に復帰を果たす。しかし、その間に集団からアタックがかかり、先頭2人とそれを追うメイン集団という構図での合流となった。

この状況がしばらく続いたが、落車によるペースダウンで人数を増やしたメイン集団が粘り強く前を追ったことに加え、先頭で牽制が生まれたこともあり、集団は再度まとまり1つへ。それ以降は力勝負の様相に変化し、前方は徐々に人数を減らしていく。

アタックやペースアップによるふるい落としは続き、最終周回を迎える頃には先頭は山本大を含む5人に。スプリント勝負が予想される展開に、沿道の観客も増え、期待が高まった。

そして最終局面。先頭でホームストレートに現れたのは3人。長い直線でのスプリント勝負に歓声が湧き起こる中、手を挙げて先着したのは津田。再三レースを動かした山本大は2位だった。

キッズスクールも併催

レースのほか、会場では中西健児アカデミーコーチによるキッズスクールも併催。バイクテクニックの向上を目的にゲーム感覚で行われたのは、保護者とスタッフが作った「人の輪」の中をいかに長く周り続けられるかというもの。その輪は時間の経過とともにどんどんと小さくなり、難易度が増していく。参加キッズと中西アカデミーコーチの激しい争いが繰り広げられる最中、レースを終えたばかりの荒井が緊急参戦。さすがのバランス感覚を見せ、参加キッズからは悔しいとの声が、そして保護者からは驚きの声が上がっていた。
さらに、スクールのまとめとして、前後へ重心を移動してバランスを取ることの重要さ、ゲーム感覚で楽しみながら培われた技術が実際のレースでも役立つことを荒井が話してお開き。続いて行われたキッズカテゴリーのビンディングペダルの部・フラットペダルの部でも山本大と荒井がサポートライダーとして走行した。
次戦のシリーズ第3戦は、3月1日に岐阜県海津市・木曽三川公園長良川サービスセンターで開催されることが決まっている。なお、エントリー受付は2月13日から始まる。(Text: 清水翠、Edit: 福光俊介)
KINAN AACA CUP 2020 第2戦 1-1カテゴリー結果
1 津田悠義(EQADS)
2 山本大喜(KINAN Cycling Team)
3 小嶋渓円(Team Nason)
4 塩澤魁(SPADE・ACA)
5 岩田聖矢

KINAN AACA CUP 2020 ポイントランキング(第2戦終了時)
1 津田悠義(EQADS) 512pts
1 椿大志(KINAN Cycling Team) 512pts
3 小嶋渓円(Team Nason) 384pts
4 山本大喜(KINAN Cycling Team) 256pts
5 山本元喜(KINAN Cycling Team) 256pts
山本大喜
山本大喜のコメント
「前半から前へ前へと考えて走った。1周目から上りで踏んで、動いて、集団を小さくしていった。ところどころ逃げはあったが基本的に前で展開できたのは良かった。ニュートラル復帰後も協調したり集団を利用したりして前に追いつくことができていた。
終盤は、勝った津田選手を逃がさないようアタックに反応した。結果は2位だったが、そこまでの展開は、でき得る限りのことを最大限できたと思う」
荒井佑太
荒井佑太のコメント
「AACAは長良川(平坦)での開催が多いが、今回は起伏に富んだ新城の素晴らしいコース。それぞれ違った良さのあるコースで開催されることに感謝している。 レースは厳しい展開になって、ついていくのがやっとだった。(山本)大喜も負けてKINANにとっては少し残念な結果になったが、AACAが盛り上がることで自分たちも力をもらえる。それを糧にしてがんばっていきたい」

●キナンサイクリングのホームページ

椿大志がスプリントを制して初戦を飾る…KINAN AACA CUP

KINAN Cycling Teamがホストを務める東海地区のロードレースシリーズ「KINAN AACA CUP」の2020年シーズンが1月25日に開幕。第1戦は主会場である岐阜県海津市・木曽三川公園長良川サービスセンターで実施。最上級カテゴリーである1-1クラスでは、ホストライダーの1人である椿大志が3選手によるスプリント勝負を制して優勝した。

椿大志が3選手でのスプリントを制してKINAN AACA CUP初戦を飾る ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

年を追うごとにロードレースシーンにおけるバリューと位置づけが高まっている本シリーズ。2020年もおおよそ毎月1回のペースで東海地区の各地を転戦する。シーズンの始まりは、メイン会場でもある長良川沿いの平坦コース。この時期は北からの強い風がレースを動かす要素となっていたが、今回はめずらしくほぼ無風のコンディション。太陽こそ顔をのぞかせたり隠れたりの繰り返しだったが、恵まれた天候の中で各カテゴリーのレースが行われた。

最上級カテゴリーの1-1クラスには、ホストのKINAN Cycling Teamから山本元喜、椿、山本大喜、トマ・ルバ、中島康晴、新城雄大の6選手が出場。この日ばかりはチーム戦術を排除し、選手がそれぞれに勝ちを意識しながらスタートラインへ。5.1kmのコースを20周回するレースに、約50選手とともに挑んだ。

逃げや果敢なアタックが毎回の見どころとなるこのシリーズだが、シーズン初戦の今節もそんな魅力に違わないレース展開に。ニュートラル区間を経てリアルスタートが切られると、次々とアタックが発生。一度は5人が先行しかけたが、2周目に先頭が新城と寺田吉騎(ビバーチェ掛川磐田北)の2人に入れ替わる。そのまま後ろを引き離して、逃げの態勢へと入っていった。

その後も追走狙いのアタックが出ては集団へと引き戻される状況が繰り返され、2人逃げが続いたが、4周目に山本元、犬伏輝斗(Teamスクアドラ)、小山智也の3人が抜け出しに成功。そのまま前の2人を追う態勢に入ると、6周目には合流。しかし、メイン集団も活性化し、一時は先頭と1分近くあったタイム差があっという間に縮小。さらに8周目の後半には集団から4人が飛び出し、それまでの逃げメンバーから入れ替わってレースを先行。

中盤を迎えても状勢はめまぐるしく変化する。集団から2~3人単位のパックがいくつも形成され、次々と前を行く選手たちに合流していく。10周を完了する時点で、先頭グループは8人となった。

さらに人数を増やして9人が先を急ぐ流れとなるが、メイン集団も諦めない。力のある9人の猛追が実り、13周目を終えると同時に先頭グループに合流。トップには総勢18人が集う格好となる。

残り周回数や各集団の勢いを見るに、この日の優勝争いは先頭グループから出ることは濃厚に。人数を絞り込むべくアタックが散発するが、いずれも決まらず。ホストのKINAN勢では山本元、椿、山本大、中島が残り、15周目には山本元と山本大が2人で抜け出しを図るが、協調体制が整わず再び集団へと引き戻されてしまった。

そんな流れの中、決定的な場面が17周目にやってきた。山本元のアタックに小嶋渓円(Team Nason)が反応。さらに椿が合流。後ろが牽制状態となったこともあり、3人が一気に差を開いていく。そのまま逃げ切りに向けて先を急いだ。

残る周回を経て、3人のまま最終周回の鐘を聞く。後続とは十分なタイム差を得て、優勝かけた駆け引きへと移る。残り数kmからは山本元が再三アタックを試みるが、いずれも厳しいチェックにあい決まらない。フィニッシュに向けお見合いになるかと思われた矢先、完全にマークをかいくぐった椿がアタック。最後のコーナーも難なく抜けると、あとはフィニッシュラインに向けてスプリント。追いすがる小島選手と山本元を振り切ってシリーズ初戦を制した。

出場した選手たちにとっては、実質シーズンインだったものの積極性が光る好レースとなった。また、椿らKINAN勢にとってはニュージーランドでのシーズン初戦を終えて、好調のままこのレースに参戦。ホストとしての役目も果たす結果を残した。

各カテゴリーのレースのほか、会場内では中西健児アカデミーコーチによるキッズスクールが行われ、KINAN Cycling Teamの選手たちも講師役として参加。今回はバイク上でのバランス感覚を養うことを目的に、キッズたちは地面に置いたボトルをキャッチする課題にチャレンジ。初体験の子供たちには難易度が高かったものの、最後には2組に分けてのボトルキャッチリレーができるまでに。また、チーム活動を支えるATHLETUNE、MINOURA、NORTHWAVE、FUSION(有限会社光設備)がブース出展。イベントの盛り上げに賛助した。

シリーズ第2戦は、2月9日に愛知県新城市・新城総合公園内特設コースで開催されることが決定。現在参加者募集中。また、5月下旬のツール・ド・熊野に出場予定のAACA選抜チームのトライアウトも実施中。23歳未満の有望株のセレクトを目的としており、この第2戦も選考の対象となる。

KINAN AACA CUP 2020 第1戦 1-1カテゴリー結果
1 椿大志(KINAN Cycling Team)
2 小嶋渓円(Team Nason)
3 山本元喜(KINAN Cycling Team)
4 小山智也
5 水野貴行(FIETSGROEN)

●キナンサイクリングチームのホームページ

中島康晴がニュージーランド・サイクルクラシック最終日10位

KINAN Cycling Teamが出場したニュージーランドサイクルクラシック(UCIオセアニアツアー2.2)は1月19日に行われた第5ステージをもって閉幕。最終日は120kmで争われ、集団スプリントに挑んだ中島康晴が10位でフィニッシュ。6人全員が完走を果たし、個人総合ではトマ・ルバがUCIポイント圏内の8位に。開幕以降チャレンジを繰り返してきたチームは、収穫と課題を明確にして次の戦いにつなげていくことを誓った。

中島康晴がニュージーランド・サイクルクラシック最終日10位  ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

15日にレースがスタートした大会は、上りフィニッシュや平坦ステージなどが設けられ、総合的な力が試される戦いとなった。そんな中でKINAN Cycling Teamは、最難関の第4ステージでトマ・ルバを4位に送り込んだ。

そして迎えた最終日。大会の拠点であったマスタートンを基点とする10kmの周回コースを12回めぐる120km。カテゴリー山岳が設定されない、おおむねフラットのコースとあって、スピードレースとなることが予想された。実際、レースはその通りに展開していくことになる。

スタート直後のアタックに乗じたのは椿大志。5人が先行するが、その中にリーダージャージのライリー・フィールド選手(オーストラリア、チームブリッジレーン)ら実力者が加わったこともあり、メイン集団も簡単には容認しない。リードを奪おうと先を急ぐも、椿らはいずれも集団へと引き戻されてしまう。

その直後からはスプリント狙いのチームが中心となって集団を統率するが、5周目を迎えて1人の飛び出しを容認。タイム差は2分以内にとどめつつ、追撃のタイミングを図る。KINAN勢も集団に待機し、6人が固まって次の展開に備えた。

しばし逃げと集団との構図が変わらなかったが、逃げる選手の背中を視界に捉えたところで、集団から1人がブリッジ。一時的に2選手が先行する格好となったが、次の周回ではメイン集団が完全に飲み込み、プロトンはスプリント勝負に向けて状況を整えていった。

終始ハイペースで進んだレースにあって、勝負どころを見据えて集団内でのポジショニングを図ったKINAN勢。最終周回を前に前方へと上がっていき、中島でのスプリントに賭けた。

そしてステージ優勝は大集団でのスピード決戦に。アシスト陣の援護を受けた中島は好位置から加速。トップまではあと少し及ばず、10位でフィニッシュラインを通過。以降、残る5人も次々とレースを完了させた。

15日から始まった大会は、全5ステージを終えた。KINAN Cycling Teamは、この日メイン集団で走り切ったトマが個人総合順位を変えることなく、8位を確定。UCIポイント(3点)圏内でのフィニッシュとした。

シーズン初戦を終え、先々に向けた収穫と課題が明確になり、選手たちはそれぞれにレースやトレーニングの方向性も定まった様子。次戦は2月5~9日のヘラルド・サン・ツアー(UCIオセアニアツアー2.1)が予定されるが、これからはチーム内でのセレクションも含め、レースを高いレベルで戦えるだけのコンディションづくりに取り組んでいくことになる。

ニュージーランドサイクルクラシック2020 第5ステージ(120km)結果
1 ディラン・ケネット(ニュージーランド、セントジョージコンチネンタル) 2時間41分9秒
2 イェンセン・プロウライト(オーストラリア、チームブリッジレーン) +0秒
3 コルビン・ストロング(ニュージーランド、ニュージーランドナショナルチーム)
4 トーマス・ボルトン(オーストラリア、オリバーズリアルフードサイクリング) 
5 大前翔(愛三工業レーシングチーム) 
6 岡本隼(愛三工業レーシングチーム) 
10 中島康晴(KINAN Cycling Team) 
31 山本大喜(KINAN Cycling Team) 
34 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team)
57 新城雄大(KINAN Cycling Team) +9秒
63 山本元喜(KINAN Cycling Team) +1分8秒
64 椿大志(KINAN Cycling Team) 

個人総合
1 ライリー・フィールド(オーストラリア、チームブリッジレーン) 15時間18分8秒
2 アーロン・ゲート(ニュージーランド、ブラックスポークプロサイクリングアカデミー) +25秒
3 コルビン・ストロング(ニュージーランド、ニュージーランドナショナルチーム) +41秒
4 ヘイデン・マコーミック(ニュージーランド、ブラックスポークプロサイクリングアカデミー) +48秒
5 キース・デュベステイン(ニュージーランド、チームブリッジレーン) +49秒
6 コナー・ブラウン(ニュージーランド、ニュージーランドナショナルチーム) +51秒
8 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) +55秒
15 山本大喜(KINAN Cycling Team) +1分59秒
42 新城雄大(KINAN Cycling Team) +4分37秒
62 椿大志(KINAN Cycling Team) +11分6秒
65 山本元喜(KINAN Cycling Team) +12分47秒
75 中島康晴(KINAN Cycling Team) +25分0秒

ポイント賞
1 ディラン・ケネット(ニュージーランド、セントジョージコンチネンタル) 37pts
14 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) 4pts
22 山本元喜(KINAN Cycling Team) 1pts

山岳賞
1 フィン・フィッシャー=ブラック(ニュージーランド、ニュージーランドナショナルチーム) 16pts
10 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) 4pts
12 山本元喜(KINAN Cycling Team) 4pts

チーム総合
1 ブラックスポークプロサイクリングアカデミー 45時間56分48秒
7 KINAN Cycling Team +4分58秒

山本大喜

山本大喜のコメント

「昨年のこの大会ではトマに頼りきりだったが、今年はみんなが逃げにチャレンジしたり、中島さんのスプリント、自分の総合と、どれもベストな結果ではなかったがあらゆる挑戦ができたことは大きな収穫。個人的には総合を狙う意識で臨みながら、最終的にトマに託す形になってしまったことが反省点。

シーズンが本格化するにつれてアシストに回ることも出てきて、自分が総合を狙える立場になることは減るかもしれないが、数少ないチャンスを生かせるようになりたい。マークをかいくぐって逃げ切ったり、それをきっかけに総合成績も狙ったり、スマートに戦って勝負できる機会を増やしたい。

今シーズンの目標は、ツール・ド・熊野。(和歌山県)新宮市に住んでいて、みんなが応援してくれている。地元レースで期待に応えられるよう走って、総合優勝したい」

キナンのトマ・ルバが頂上ゴールの最難関ステージ4位

UCIオセアニアツアー「ニュージーランド・サイクルクラシック」は1月18日に第4ステージが行われた。この日は頂上フィニッシュが待ち受ける最難関ステージ。KINAN Cycling Teamはメイン集団で上りきったトマ・ルバが4位でフィニッシュ。個人総合では8位と上げて、翌日に控える最終の第5ステージに進むこととなった。

ニュージーランド・サイクル クラシック第4ステージ4位のトマ・ルバ(右) ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

前日の第3ステージでは、チームとしてメイン集団のペーシングを担い、14人と大人数の先頭グループを追走。最後は中島康晴のスプリントに持ち込んで6位で終えた。個人総合では3ステージを終えて、山本大喜がチーム最上位の個人総合24位につける。同じく29位のトマ・ルバとともに上位陣が見えるポジションをキープ。毎ステージ、スピード域の高いレースが続いており、シーズン初戦の選手たちは速さに対応しながら、上位進出を狙ってトライを繰り返している。

第4ステージは、今回最長のレース距離175.6km。まず、大会の拠点都市であるマスタートンを基点とする51kmのコースを3周回。途中、登坂距離6.5km、平均勾配4.8%のテ・ワラウ・ヒルの上りをこなすことになる。1周目と2周目の通過には山岳ポイントが設けられる。

タフな周回を終えると、いよいよ今大会のハイライトでもあるアドミラル・ヒルへ。頂上に敷かれるフィニッシュラインへは、登坂距離4.1km、平均勾配6.2%。特筆すべきは、フィニッシュ前1.5kmでいったん緩斜面となるも、最後の数百メートルで再度急坂を駆け上がる点。総合争いにおいて遅れることは許されない、KINAN勢にとっても最終局面の攻略こそが上位進出のカギとなる。

そんなレースは、この日もリアルスタートからアタックと吸収の連続。山本元喜や中島康晴らがチェックに出つつ、大人数の飛び出しには山本大喜も加わって、優位な展開へ持ち込もうと試みる。しばらくは決め手に欠ける状態が続いたが、スタートから1時間ほど経とうかというところで、上りを利用して6人が抜け出すことに成功。その後もメイン集団から追走を狙う動きが見られたが、結局1周目を終えようかというところで集団が落ち着き、前の6人を先行させる流れになった。

先頭の6選手とメイン集団とのタイムギャップは、最大で約9分。集団は総合で上位にメンバーを送り込んでいるチームを中心にペーシングを開始。序盤は積極的に攻めたKINAN勢も集団に待機し、情勢を整えることに集中した。

その後もしばし逃げと集団との構図は続いたが、3周目に入っていよいよ追撃ムードが高まりを見せる。みるみる間に逃げていた選手たちを射程圏内にとらえると、先頭でも上りで力の差が見え始め、1人、また1人と遅れていく。この周回を終える頃には、その差は数十秒にまで迫った。

タイミングを同じくして、メイン集団から前方めがけてアタックが散発。ブリッジに成功した選手が加わると、逃げグループは再び勢いを取り戻す。集団も活性化するが、前とのタイム差は再び1分台に。KINAN勢も最後の山岳に向け、集団内でのポジションを上げて重要な局面に備えた。

 いよいよ勝負のアドミラル・ヒルへ。ここからは登坂力勝負。有力選手のアタックに山本大らが反応するがリードを奪うまでには至らない。それでも集団は距離を追うごとに人数が絞られていく。

一方、先頭では終盤にメイン集団からのブリッジに成功したライリー・フィールド選手(オーストラリア、チーム ブリッジレーン)が、山岳で独走態勢を固める。後ろにはメイン集団も続いていたが、勢いは完全にフィールド選手が上回っていた。最後まで後続の追撃を許すことなく、1人でアドミラル・ヒルの頂上へと到達。

フィールド選手のフィニッシュから53秒。メイン集団は10人ほどになって最終局面へとやってきた。KINAN勢ではトマがこの中で粘り、最後の上りスプリントでステージ4位を確保。その後次々と他のメンバーもフィニッシュラインを通過した。

この結果、このステージを終えた時点での個人総合順位でトマが8位に浮上。トップとのタイム差は55秒とし、チーム最上位となっている。

大会はいよいよ最終日へ。19日に行う第5ステージは、マスタートン市内にセッティングされる“メガ・サーキット”での平坦勝負。10kmのコースを12周回、120kmでクライマックスを迎える。KINAN Cycling Teamは中島でのスプリントを狙って組織力で勝負していく構え。また、UCIポイント圏内に入ったトマの個人総合順位も意識しながら、最後のステージに臨むことになる。

ニュージーランドサイクルクラシック2020 第4ステージ(175.6km)結果
1 ライリー・フィールド(オーストラリア、チーム ブリッジレーン) 4時間31分3秒
2 キース・デュベステイン(ニュージーランド、チーム ブリッジレーン) +53秒
3 アーロン・ゲート(ニュージーランド、ブラックスポークプロサイクリングアカデミー)
4 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) 
5 コルビン・ストロング(ニュージーランド、ニュージーランドナショナルチーム) 
6 ヘイデン・マコーミック(ニュージーランド、ブラックスポークプロサイクリングアカデミー) +55秒
16 山本大喜(KINAN Cycling Team) +1分57秒
47 新城雄大(KINAN Cycling Team) +4分18秒
61 椿大志(KINAN Cycling Team) +8分17秒
67 山本元喜(KINAN Cycling Team) +11分30秒
78 中島康晴(KINAN Cycling Team) +24分8秒

個人総合
1 ライリー・フィールド(オーストラリア、チーム ブリッジレーン) 12時間36分59秒
2 アーロン・ゲート(ニュージーランド、ブラックスポークプロサイクリングアカデミー) +26秒
3 コルビン・ストロング(ニュージーランド、ニュージーランドナショナルチーム)+45秒
4 ヘイデン・マコーミック(ニュージーランド、ブラックスポークプロサイクリングアカデミー) +48秒
5 キース・デュベステイン(ニュージーランド、チーム ブリッジレーン) +49秒
6 コナー・ブラウン(ニュージーランド、ニュージーランドナショナルチーム) +51秒
8 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) +55秒
17 山本大喜(KINAN Cycling Team) +1分59秒
43 新城雄大(KINAN Cycling Team) +4分28秒
63 椿大志(KINAN Cycling Team) +9分58秒
65 山本元喜(KINAN Cycling Team) +11分39秒
78 中島康晴(KINAN Cycling Team) +25分0秒

ポイント賞
1 イェンセン・プロウライト(オーストラリア、チーム ブリッジレーン) 24pts
13 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) 4pts
19 山本元喜(KINAN Cycling Team) 1pts

山岳賞
1 フィン・フィッシャー=ブラック(ニュージーランド、ニュージーランドナショナルチーム) 16pts
10 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) 4pts
12 山本元喜(KINAN Cycling Team) 4pts

チーム総合
1 ブラックスポークプロサイクリングアカデミー 37時間53分21秒
7 KINAN Cycling Team +4分58秒

トマ・ルバ

トマ・ルバのコメント

「今日のプランは(山本)大喜で総合を狙うことで、自分はセカンドオプションだった。個人的には12月に落車して、1週間トレーニングができなかったことが影響していて調子はまったく良くないし、痛みも残っている。そうした中でも、チームワークで良い流れを作って、大喜と狙いをシェアしながら戦うことができた。結果的に大喜がアタックを試みた後に遅れてしまったので、自分のリザルトにシフトして最後の上りに挑むことになった。(ステージ4位という結果については)コンディションを考えると悪くないし、これからもっと上げていけると思う。シーズン最初のレースでトップ5に入れてよかったし、これもチームワークのおかげだ。

12月にトレーニング中の落車でダメージを負ってしまったけど、チームマッサーの森川さん、安見さんが最善を尽くしてくれて、少しずつながら回復している。リカバリーとトレーニングのバランスをとりながら完治させたい。

2020年シーズンは2つの大きなターゲットを自らに課している。まずはツアー・オブ・ジャパンとツール・ド・熊野で結果を残すこと。これらに向けてトレーニングを積んでいく。2つ目は、チームの日本人選手を育成すること。国内外、レースの大小問わずみんなとともに走って、多くのことを伝えていきたい。昨年から意識して取り組んでいるつもりだけど、今年はさらにリーダーシップを出していけたらと思っている」