ツール・ド・フランスファム開幕…コペッキーが優勝しマイヨジョーヌ

ツール・ド・フランスの女性版ステージレース、ツール・ド・フランスファム avec Zwiftが7月23日にクレルモンフェランで開幕し、第1ステージはベルギーチャンピオンのロッテ・コペッキー(SDワークス)が後続に41秒差をつけて優勝。総合成績でも首位に立ち、マイヨジョーヌを獲得した。

ツール・ド・フランスファム avec Zwift ©A.S.O. Thomas Maheux

女子レースはツールマレー峠が天王山

女子レースの第2回ツール・ド・フランスファムは男子レースがパリにゴールする7月23日、フランス中部のクレルモンフェランで開幕した。全8ステージで、猛暑のフランス中南部を走り、最終日前日にピレネーのツールマレー峠で大決戦。そして最終日となる30日は22.6km個人タイムトライアルを行ってフィナーレとなる。総距離は956km。

キャノン・スラム ©A.S.O. Thomas Maheux
世界チャンピオンのファンフルーテン ©A.S.O. Thomas Maheux
ツール・ド・フランスファム avec Zwift ©A.S.O. Thomas Maheux
ロッテ・コペッキー(SDワークス)が第1ステージ優勝 ©A.S.O. Thomas Maheux

●2023ツール・ド・フランスファム・アベックズイフトのコース

7月23日(日) 第1ステージ クレルモンフェラン〜クレルモンフェラン124km
7月24日(月) 第2ステージ クレルモンフェラン〜モリアック 152km
7月25日(火) 第3ステージ コロンジュラルージュ〜モンティニャックラスコー 147.5km
7月26日(水) 第4ステージ カオール〜ロデズ 177.5km
7月27日(木) 第5ステージ オネルシャトー〜アルビ 126.5km
7月28日(金) 第6ステージ アルビ〜ブラニャック 122.5km
7月29日(土) 第7ステージ ランヌムザン〜ツールマレー 90km
7月30日(日) 第8ステージ ポー〜ポー 22.6km(個人タイムトライアル)

2023ツール・ド・フランスファム・アベックZwiftのコース。距離は発表時のもの
ツール・ド・フランスファム avec Zwift ©A.S.O. Thomas Maheux

女子プロロードレースも2023シーズン本格化…その注目選手は

2024パリ五輪の自転車競技は、初めて全種目で男女の参加選手数が同じになる。国際自転車競技連合(UCI)が男女の出場機会を均一にする流れを汲んで決めた。あまりの過酷さゆえに「男のレース」と言われたロードレースでも女子大会はボリューム&魅力アップ。アネミエク・ファンフルーテン(40)=オランダ、モビスター=ら注目選手もいる。

ツール・ド・フランスファム2022。黄色いマイヨジョーヌを着用したファンフルーテンが集団で主導権を掌握 ©A.S.O. Fabien Boukla

アネゴのファンフルーテンをだれがストップをかけるかが焦点

自転車レースはマラソンとは異なり、男女混走という大会はない。巡航速度が高いので空気抵抗という存在が大きく、パワーのある男子選手を風よけにするなど公平性が保たれないからだ。そのため女子レースは単独開催される。4月から欧州で始まる春の伝統レースでは男子に先駆け、競技距離を縮小させるなどして同日開催することも多い。

デンマークチャンピオンジャージー姿のルドビグ。ツール・ド・フランスファム2022 ©A.S.O. Thomas Maheux

そしてシーズンが本格化すると、8〜10日間ほどの日程でステージレースが開催される。6月30日から7月9日までジロ・デ・イタリアドンネ、7月23日から30日までツール・ド・フランスファム。ドンネとファムはどちらも「女性」という意味で、23日間開催の男子レースにはかなわないが、女子最高峰のステージレースとして男子と別日程で行われる。

2022年の両大会で総合優勝したのがファンフルーテンだ。2020東京五輪では、個人ロードでスタート直後から逃げていた先行選手の存在に気づかず、金メダルを確信して両手を挙げてフィニッシュしたが2位。それでも個人タイムトライアルで金メダル獲得。そして秋の世界選手権では3年ぶり2度目の優勝。今季は世界チャンピオンの称号である虹色ジャージー、アルカンシエルを着用する。そして世界ランキングも1位を維持している。

ツール・ド・フランスファム2022 ©A.S.O. Thomas Maheux

ファンフルーテンの強さは上り坂で目撃できる。体重の軽さを生かして飛ぶように激坂を登り、若手選手を追い落としていく。操舵技術には弱点があり、落車骨折などを繰り返した。それでもリハビリを経て頂点に返り咲く精神的なタフさもある。今シーズン序盤は得意としない平坦レースばかりで、優勝はできなかったが、高地トレーニングをこなして4月の伝統レースに臨むという。

デンマークチャンピオンジャージを着用するセシリーウトラップ・ルドビグ(27)=FDJスエズ=も女子ロードの注目選手。笑顔と明るい性格で人気があり、2022年のツール・ド・フランスで区間1勝して総合優勝争いにも加わった。

パリ〜ルーベファム2022 ©A.S.O. Pauline Ballet

ルドビグらキャリア熟成期の選手が最大の目標とするのがツール・ド・フランスだ。男子レース最終日に開幕し、8区間で争われる。最終日前日はピレネー山脈のツールマレー峠にゴールし、最終日は距離22kmの個人タイムトライアル。男子レースでは設定できないような舞台を用意し、ロードレースの醍醐味を見せつけようとしている。

ツール・ド・フランスファム2022第1ステージ ©A.S.O. Thomas Maheux

女子レースは一方で男子よりも格段に選手層が薄い。40歳のファンフルーテンが現在も頂点に君臨しているのがそれを物語る。日本女子はジュニア世界選手権5位の垣田真穂(早稲田大)に期待だが、パリ五輪まではナショナルチームに所属してトラック競技に専念する。国際的女子ロードレースが日本でも報じられるようになった今、全国の逸材がこのスポーツに関心を持ってくれることを願う。

女子ロードの主要レース
4月2日 ツール・デ・フランドル(ベルギー)
4月8日 パリ〜ルーベ(フランス)
4月16日 アムステルゴールドレース(オランダ)
4月23日 リエージュ~バストーニュ~リエージュ(ベルギー)
6月30日〜7月9日 ジロ・デ・イタリアドンネ(イタリア)
7月23日〜30日 ツール・ド・フランスファム(フランス)

ファンフルーテンが第1回ツール・ド・フランスファムで初代女王に


モビスターのアネミエク・ファンフルーテン(オランダ)が7月24日から7月30日まで開催された8日間の女子ステージレース、第1回ツール・ド・フランスファムで総合優勝した。2020東京五輪で金・銀メダルを獲得した39歳は、山岳が舞台となる最後の2ステージで連勝。最終日前日に獲得したマイヨジョーヌを最後まで守った。

第1回ツール・ド・フランスファムの総合優勝はファンフルーテン ©A.S.O. Thomas Maheux

ツール・ド・フランスファムはツール・ド・フランスの女子部門として33年ぶりに開催されたステージレース。今回は男子とは別日程、独自コースで開催され、女子選手の華やかさと近年レベルアップを続ける力強い走りで盛り上がりを見せた。

マイヨジョーヌのファンフルーテン、山岳賞のデミ・ボレリングらが集団をリード ©A.S.O. Thomas Maheux

「最終日のゴール、ラ。シュペールプランシュ・デ・ベルフィーユで黄色のジャージを着ることは、大会前に偵察を行ったときから私が望んでいたこと。私が考えることができた最高のもの結果になった」とファンフルーテン。

最終ステージはKMゼロ前のニュートラル区間で1回、さらに途中で2回メカトラで自転車を交換したファンフルーテン ©A.S.O. Thomas Maheux

「すべての観客が応援してくれた。大会2日目と3日目に体調を崩した後、このジャージを着てここにいるなんて信じられないほど大変だった」

モビスターのアネミエク・ファンフルーテン ©A.S.O. Fabien Boukla

スプリントのある平坦ステージを含めバランスが取れた大会だったと評価した。大会中盤には起伏があるコースが控え、最後の2日間は山岳が舞台。通常の他のステージレースよりもはるかに困難だったという。

ツール・ド・フランスファム ©A.S.O. Fabien Boukla
最後の激坂、ラ・シュペールプランシュ・デ・ベルフィーユを上るファンフルーテン ©A.S.O. Fabien Boukla
独走するファンフルーテンを追うカタリナ・ニーウィアドナら ©A.S.O. Fabien Boukla

「ツール・ド・フランスというものを感じた。第1回大会として最適な方法だったと思う。今後数年間はこの興奮が継続していくはず」(ファンフルーテン)

マイヨジョーヌのファンフルーテン ©A.S.O. Fabien Boukla
総合優勝のファンフルーテンを中央に、左が2位デミ・ボレリング、右が3位カタリナ・ニーウィアドナ ©A.S.O. Thomas Maheux

ファンフルーテンがツール・ド・フランスファムで逆転王手

女子版ツール・ド・フランスの第1回ツール・ド・フランスファムは7月30日に第7ステージが行われ、モビスターのアネミエク・ファンフルーテン(オランダ)が後続選手に3分26秒差をつけて独走。1分28秒遅れの総合8位から一気に首位に出て、マイヨジョーヌを獲得。

第7ステージでモビスターのアネミエク・ファンフルーテンがマイヨジョーヌを獲得 ©A.S.O. Thomas Maheux

全8ステージで開催される大会は7月31日が最終日。ファンフルーテンが得意とする山岳ステージが残されていて、初優勝に王手をかけた。

キャニオン・スラムのニーウィアドナ、FDJスエズのルドビクが上りを攻める ©A.S.O. Thomas Maheux

ファンフルーテンは2020東京五輪で個人タイムトライアルの金メダリスト。個人ロードではスタート直後から逃げていた選手の存在を把握できず、2位集団の先頭でゴールした際に金メダルを確信してガッツポーズ。結果は銀メダルだった。

39歳というベテランながら上りでは他の女子選手の追随を許さぬほどの実力があり、2022年の女子版ジロ・デ・イタリアでも総合優勝している。

ツール・ド・フランスファムはレースも熱いが、気候も暑い。スタート前に冷却ベストを着用する  ©A.S.O. Fabien Boukla

「平坦なオランダの出身であることを考えると、これは私のキャリアの中で最大の勝利の1つ」とマイヨジョーヌを獲得したファンフルーテン。

じつは開幕直後に病気となり、大会2日目にはリタイアを考えたという。

「自宅に帰る荷造りをしているとき、スーツケースの中にマイヨジョーヌが入っていないことに気づいた。その黄色いジャージを獲得できるなんて奇跡に近かった」

キャニオン・スラムのエース、カタリナ・ニーウィアドナ(ポーランド) ©A.S.O. Thomas Maheux

39歳のファンフルーテンだが、毎年フィットネスレベルを向上させてきた。この日は実力者のデミ・ボレリングと2人で集団を抜け出したが、途中で単独に。

「彼女が先頭交代をしてこなかったし、最後の登りの前に25kmの谷があったのでそこで勝負しようとも思った。でも優勝はソロでゴールに飛び込むほうがいい」とアタック。そのまま逃げ切った。

「この大会は私の期待を超えている。すべての村で歓迎され、大会が生き生きとしているのを感じることができている」

世界チャンピオンのエリーザ・バルサモらが出走サインステージから出撃 ©A.S.O. Fabien Boukla 

ツール・ド・フランスファム…男子とは全く異なる魅力的で熱き戦い

女子版ツール・ド・フランスの第1回ツール・ド・フランスファムが2022年7月24日にフランスの首都パリで開幕。首位選手にマイヨジョーヌが与えられるステージレースとしてはじつに33年ぶりの開催。31日まで全8ステージで争われる。

FDJスエズ・フチュロスコープのセシリーウトラップ・ルドビクが第3ステージで初優勝 ©A.S.O. Fabien Boukla 

大会名のFemmesは「女性」という意味のフランス語。1984年から1989年まで女子部門として「ツール・ド・フランスフェミナン」が男子集団に先行して走っていた時代がある。男子よりも短い日程、短い距離ながら同じコースを使って3時間ほど前を走った。

女子レースは男子のツール・ド・フランス最終日、7月24日に同じパリで開幕 ©A.S.O. Fabien Boukla
ウルスカ・ジガートのボーイフレンド、男子のトップ選手タデイ・ポガチャルが応援にやってきた ©A.S.O. Fabien Boukla 

ツール・ド・フランスファムは、開幕日こそ男子レースの最終日としてゴールするパリだが、全8ステージのレースコースは独自のものだ。

第2ステージで優勝し総合成績でマイヨジョーヌを獲得したマリアンヌ・フォス(ユンボ・ビスマ) ©A.S.O. Fabien Boukla 
世界チャンピオンのエリーザ・バルサモらが出走サインステージから出撃 ©A.S.O. Fabien Boukla 

パリのエッフェル塔前をスタートし、シャンゼリゼの周回コースで行われた第1ステージでは、スプリンターのロレーナ・ウィーブス(オランダ、DSM)が優勝。続く第2ステージでは平坦区間に強いユンボ・ビスマのマリアンヌ・フォス(オランダ)がゴール勝負を制してマイヨジョーヌを奪取。

ツール・ド・フランスファムはレースも熱いが、気候も暑い。スタート前に冷却ベストを着用する  ©A.S.O. Fabien Boukla

大ベテランのフォスは第6ステージまで首位をキープしているが、最後の2ステージはドイツ国境にも近いボージュ山脈へ。山岳スペシャリストの出番となり、総合成績は大きく変わるはずだ。 最終日は逆転優勝の可能性があるラ・シュペールプランシュ・デ・ベルフィーユにゴールする。近年の大会でも総合優勝に大きく関わってきたラ・プランシュデベルフィーユが「スーパー=シュペール」の形容詞をつけた新コースで登場する。

キャニオン・スラムのエース、カタリナ・ニーウィアドナ(ポーランド) ©A.S.O. Thomas Maheux

欧州でも日本でも女子ロード独自の魅力が注目されつつある

クラシックと呼ばれる春の伝統的ワンデーレースが相次いで女子レースを併催している。7月には女子版ツール・ド・フランスとも言える第1回ツール・ド・フランスファム・アベックZwiftが8日間の日程で開催される。その魅力が認知され、世界各国で国際放送される時代に。今回は国内外で増えつつある女子ロードレースを紹介。

女子版ツール・ド・フランス復活は女子選手の悲願だった。写真は2016年のワンデーレース © A.S.O. Pauline Ballet

男子にはない華やかさが女子ロードにはある

これまでの女子レースはどうしてもメインイベントである男子の前座のような扱いだった。男子に先行してレースがあるため、取材陣は女子レースの現場に居合わせることが難しい。しかし実際には女子レースには華やかさがある。それに気づいたスポンサーが女子レースを応援するようになると、主催者も男子とは別日程の単独レースとして開催することを考案した。

2021年から始まったパリ〜ルーベ、そして2022年に初開催される女子版ツール・ド・フランスには、室内バーチャルアプリのZwiftが出資して、単発レース化。日本のJ SPORTSなど世界各国で女子レースが中継されるまでになった。

第1回ツール・ド・フランスファム・アベックZwift開催100日前に笑顔を見せるマリオン・ルス ©A.S.O. Clara Langlois Lablatiniere

初開催となる女子版ツール・ド・フランスは7月24日から31日までの8日間。女子レースの初日が男子のツール・ド・フランス最終日で、どちらも舞台はパリだが、コースは独自のものだ。

「女子選手が待ち続けていたツール・ド・フランス開催は歴史的な意義がある」と大会ディレクターのマリオン・ルス。

同氏は女子プロ選手として走りながらツール・ド・フランスの表彰台でアテンド係を担当。引退後は解説者としてのキレのある発言が注目され、女子レースの最高権威として抜てきされた。私生活では男子世界チャンピオンのジュリアン・アラフィリップのパートナーで、2人の間に子供もいる。

過酷なスポーツだが、メイクやネイルは当たり前 ©A.S.O. Thomas Maheux

これまでツール・ド・フランスに女子レースがなかったわけではない。1984年から1989年まで女子部門が男子集団に先行して走るツール・ド・フランスフェミナンがあった。男子よりも短い日程、短い距離ながら同じコースを使って3時間ほど前を走った。しかし開催は6年で終わった。運営が大変なわりに注目が得られなかったからだという。

廃止後もツール・ド・フランスを主催するA.S.O.は女子レースを開催していたが、「ツール・ド・フランス」の名称は使わなかった。その大会も2009年に終了。2014年からツール・ド・フランスの特定区間に限定して、ラクルスbyル・ツール・ド・フランスが始まったが、複数の日程で開催するステージレースではなく、ワンデーレースだった。

7月に行われる新たな大会は男子の前座とはならない単独の8日間ステージレースだ。「男子と同じ黄色いリーダージャージー、マイヨジョーヌを8日後に手にした女性が真のチャンピオン。だれが一番強いのか、世界中の人たちがわかるのがこの大会の魅力なのです」(ルス)

2022パリ〜ルーベファム ©A.S.O. Pauline Ballet

日本ではQリーグでだれが一番強いのか可視化

日本では女子とジュニア男女の年間シリーズ戦としてQリーグ・Nリーグがある。Q(クイーン)は女子選手、N(ニューエイジ)は中学生男女が参加できるロードレースだ。ポイント首位選手にはリーダージャージーが与えられ、だれが一番強いのかを可視化できるようにした。

Qリーグのチャンピオンジャージーは紫色。2021-22シーズンはサイタマサイクルプロジェクトの廣瀬博子(2番目)が獲得した ©Takashi Saito

「女子そしてジュニアの活躍は今後の自転車普及には必須」と同運営事務局の須藤むつみさん。「広報とイベント企画は課題もあるので、さらに女子選手らを応援してもらえるように積極的に活動していきたい」

初戦の「春のしもふさクリテリウム」が千葉県成田市・下総運動公園で5月8日に開催された。2023年3月までのシーズンに10戦前後の大会を開催していく。

Nリーグ女子の2021-22リーダーは岡本彩那(ブラウブリッツエン) ©Takashi Saito