【Column】ボクのツール・ド・フランスはルーアンから始まった

自転車専門誌のサイクルスポーツが「別冊付録 ツール・ド・フランス 」を初めて発行したのが1989年。今中大介が日本人プロとして初出場を果たす1996年まで1冊まるごと担当してきた。翌年からはフリー記者として全日程を追いかけるようになるのだが、その開幕地がルーアンだった。

1997年のツール・ド・フランス初日。この日から単独取材活動が始まった。© 仲沢隆

今でこそ日本選手が当たり前のように参加するようになったが、20年前はこの世界最高峰の自転車レースに日本選手の姿があることさえまったく想像できなかった。ツール・ド・フランスの厳しさを現場にいて肌で感じているだけに、表彰台に日本選手が乗るということさえイメージできなかった。それほどツール・ド・フランスは、はるかなる存在だった。

開幕を迎えるルーアンの町に立ったときは、クルマを一人で運転しながら全日程を追いかけていけるのだろうかと不安でいっぱいだった。サルドプレスの一番隅に席を取ると、隣に座った記者が声をかけてきた。

「日本選手は出ているのか?」
「いないのになんでいるんだ?」

そう言われるのは当然だったけど、くやしさは飲み込んだ。いつかは日本選手が表彰台に立ってくれると信じて、毎年自費でフランス一周の旅をするしかなかった。

2012年、第4ステージのルーアンでボクが溜飲を下げるときが到来する。新城幸也が4km地点でアタックし、ゴールを目指して逃げに逃げて最終的に捕まったのだが、敢闘賞を獲得。日本選手が表彰台に上る歴史的な日となったのである。

で、表彰式。カメラマンは舞台の正面に陣取れるが、ボクのIDは記者なので表彰台の裏側しか入れない。それでも着替えを済ませた受賞者はコンタクトエリアでテレビ局、地元ラジオ、そして活字メディアの順にインタビューを受ける。ボクは大会のアテンド係に「アラシロの話が聞きたい」と伝え、活字メディアの場所で彼を待っていたのだが、テレビやラジオの取材が終わったとたんに、「さあ、敢闘賞の表彰だ」と連れていかれた。つまり話もなにもできかった。

2012ツール・ド・フランス、ルーアンで敢闘賞を獲得した新城幸也

かくして日本勢初の表彰台。カメラマンや日本の視聴者のみなさんはしっかりと晴れの舞台を見たことだろうが、ボクは舞台裏で司会者ダニエル・マンジャスのコールと大観衆の声援しか聞こえなかった。

しばらくして新城はわれわれ取材陣が待ち構えているところに来てくれたのでしっかりと話を聞くこともできた。そのときのボクは気持ちが高揚していて、しかもすぐに新聞社に原稿を送らなければならなかったので仕事に集中。すでに日本の朝刊の締め切りは過ぎていたので、翌々日になってしまったが日本のスポーツ新聞として初めて一面トップで自転車記事を掲載した。

夜遅くルーアン郊外のホテルに入って奇跡的に開いていたレストランで食事をして、ようやく部屋で落ち着くことができた。別にボクは選手じゃないので、くやしかったことやツラかったことなどないんだけれど、いろいろなことが脳裏をよぎった。よく覚えていないけど泣いたかも。

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フルームが自転車最優秀選手のベロドール獲得…バロンドールの姉妹賞

英国のクリストファー・フルーム(32=スカイ)が2017年の自転車最優秀選手として「ベロドール」を受賞した。2013、2015年に続く3度目のタイトルだが、今回は7月のツール・ド・フランスと秋のブエルタ・ア・エスパーニャを史上初めて連覇。勝利への執念と安定感が際立った。

ベロドール賞を獲得したフルーム

同賞はフランスの自転車専門誌「ベロマガジン」が企画した賞で、サッカー専門誌「フットボール」が選考するバロンドールの姉妹賞。どちらも発行元はツール・ド・フランスを主催するメディアカンパニーのASO。

12月15日付けの東京中日スポーツでも自転車最優秀選手賞のベロドールの歴史やフルームのコメントなどを紹介している。

ツール・ド・フランスの1区間を走るエタップ・デュ・ツール…日本からの挑戦者募集開始

世界中の著名人やプロ選手を含む実力派サイクリストがツール・ド・フランスの1ステージに挑む人気イベント「エタップ・デュ・ツール」。日本からの参加者を現地に送り込む公式ツアーが国際興業から発売され、その参加者募集が始まった。大会は2018年7月8日。ツアーは同6日から14日までの日程。

2018年の舞台はジョワイヨ・デザルプ(アルプスの宝石)と呼ばれるアヌシーから、まさに「ここがリゾート地」と断言したくなるほどの美しい町ル・グランボルナンにゴールする。国際興業では参戦ツアーを催行する日本で唯一の旅行会社としてこれまで21回参戦ツアーを実施。チャレンジ後はホンモノのツール・ド・フランスを現地で観戦する。

エタップ・デュ・ツールはツール・ド・フランスの1区間を走る1万5000人参加の一般大会で、27回目の開催となる。7月8日に開催される第27回エタップ・デュ・ツールは、同17日に開催されるツール・ド・フランス第10ステージとまったく同じものが採用された。43km地点を頂点とする標高1477mのラクロワフリ峠、距離6kmながら平均勾配11.2%の難度があるプラトーデグリエールの坂、ロンム峠を走り、最後に標高1618mのコロンビエール峠が待ち構える。大会最初の山岳ステージで、マイヨジョーヌの行方も左右する注目の1日。アヌシーとル・グランボルナンは2013年の第100回大会にも訪問した町で、長い夏休みをのんびり過ごすバカンスの象徴でもあるエリア。

●国際興業のエタップ・デュ・ツール参戦&ツール・ド・フランス観戦ツアー
http://www2.kokusaikogyo.co.jp/travel/letapedutour/



死ぬまでに泊まってみたいホテル…天文台で満天の星空を見る

ツール・ド・フランスの難所、標高2115mのツールマレー峠を眼下にするホテルに泊まった。130年の歴史を誇るピック・デュ・ミディ天文台で、針のような稜線のピークに建造された石造りの研究施設だ。標高はなんと2877m。

ツールマレーのベースキャンプとなるラ・モンジーの集落からテレキャビン(ロープウェイ)を2つ乗り継いでいく。ツール・ド・フランス期間中だったので、下手なところに駐車しておくとレッカー移動されそうで、オフィス・デュ・ツーリズムを訪ねて確認。「天文台の宿泊予約をしてあるのなら直接行けばいい」とこのとなので、まずはテレキャビン乗り場へ。

「ニュイ・オ・ソメ=頂上の夜」という窓口があったので、ベルを押して名前を告げるとネックストラップとIDカードを渡され、たどたどしい日本語で「楽しんできてください」と言われた。かなりゾクゾクするテレキャビンで到着すると、同乗したオペレーターが「泊まるんだね」とそのまま施設管理スタッフに引き継いでくれて、磁気カードを渡される。すべてのドアが電磁ロックなので、真夜中でもそのカギで開けられるところは歩き回ってもいいみたいだ。

太陽を観察する研究用のテレスコープ

部屋はかつての天文学者が使用していた質素なものだというが、内装は新品で取り付けられたきれいな洗面器の蛇口をひねるとお湯が出る。オイルヒーターで室温を20度に調整しているようで快適。トイレとシャワーは共同だが、これもピカピカだった。

午後6時半に宿泊者が集まって、天文研究員に施設を案内してもらった。ゾロゾロと付いていくと晩餐会場に到着。「ルパ」と言っていたので夕食というよりも晩餐だ。単独参加はボクだけだったが、かなり気にかけてくれて、テーブルも足もとまでガラス張りで断崖絶壁がストーンと見下ろせる特等席だった。地元鴨肉やフォアグラ、牛や豚肉を地元の伝統的な味付けをしたものが出てきて、テーブルにハーフボトルも。

ディナーテーブル。足もとはガラス張りで断崖絶壁が眼下に確認できる

最後のデザートともに1/4サイズのシャンパンボトルが出てきたので、これを持ってテラスに出て楽しむんだなと思った。研究員が「午後9時10分に集合」と言っていたので、ちょうど夕日が沈むところだった。あたりは一気に暗くなり、もちろん真冬の格好をしていたけれど冷え込んできたが、天体ドームの中に案内されて観測用の望遠鏡で土星を見せてくれた。

朝起きれば雄大なピレネーが一望できる。ツールマレー峠が小さく見える

宿泊者数は27人限定だが、予約すればだれでも泊まれる。さすが世界随一の観光大国。日本ではあり得ないスケールのおもてなし。フランスという国の底力を感じた。

テラスで思い思いに時を過ごす

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キッテルを擁するカチューシャ・アルペシンが新チーム態勢発表

ワールドツアー参戦10年目となるスイスのカチューシャ・アルペシンがスイスのマジョルカ島で2018シーズンのチームプレゼンテーションを開催。チームは16カ国・26選手で編成。マルセル・キッテル(ドイツ)らが来期の抱負を語った。

「困難なシーズンを経て2017年は大きなステップアップを遂げることができた」とキッテル。
「ツール・ド・フランスで区間5勝をして、再び世界の頂点で戦えるようになった誇りを感じた。次のステップは新しいチームメートとともにどんな成績を残すかだ。スプリントのけん引にかけてカチューシャ・アルペシンは素晴らしい動きを見せてくれる。この場にいて居心地のよさを感じる」

チームにはタイムトライアルの元世界チャンピオン、トニー・マルティン(ドイツ)、2018ツール・ド・フランスでエースを務める予定のイルヌール・ザカリン(ロシア)らが所属する。

2018ツール・ド・フランス…伝統のラルプデュエズ、石畳も待ち構える

2018年ツール・ド・フランスのコースが10月17日、フランスのパリ国際会議場で発表された。第105回大会は7月4日にフランス中西部のバンデ県とペイドラロワール地方で開幕する。4年ぶりに前半がアルプス。中盤に中央山塊が待ち構え、後半がピレネーとなる。全23日間、総距離3329km。賞金総額3億2000万円。

「とても難しいツール・ド・フランスだ」
2017年の大会で3年連続4度目の総合優勝を果たした英国のクリストファー・フルーム(スカイ)はコースの全容が発表されるとフランステレビジョンの取材にこう語った。2018年は大会最多タイとなる5勝目をねらう。主催者はそれを阻止するかのように、フルームの得意な要素をつぶしていったコース設計とも取れる。

「北西部のブルターニュ半島を走るのは初めてだけど、常に風が強いので警戒している。開幕から8〜9日間も山岳がないので、マイヨジョーヌをここでボクが獲得するのは至難の業だ。一歩間違えればツール・ド・フランスのタイトルを序盤で失うことになる」

初優勝した翌年の2014年、フルームは北フランスの石畳の悪路で落車して骨折危険。その悪夢を再現させるかのように、第9ステージは北フランスに向かい、アラス〜ルーベ間には石畳が波状的に出現する。
「ボクは石畳のコースも好きなのでいい結果になるかも知れないが、非常にリスキーだ。メカトラブルに気をつけたい」
さらにピレネーには距離65kmという短いステージが設定された。「なにが起こるか分からない。だれもがここに集中し、アグレッシブな戦いになるだろう」とフルーム。

最大のライバルとして5月のジロ・デ・イタリアで初優勝したオランダのトム・デュムラン(サンウェブ)の名が挙げられる。第4ステージにチームタイムトライアルが設定されたが、サンウェブはその種目の世界チャンピオン。そして大柄でガッシリとしたデュムランは風と石畳に強い。フランス期待のロマン・バルデ(AG2Rラモンディアル)は、「最終週に獲得標高が5000mもある山岳ステージが待ち構えている。得意の上りで一気に首位をねらっていきたい」と自信を見せた。