キナンが和歌山県新宮市でチームビルディングキャンプ

和歌山県と三重県にまたがる熊野地域を拠点とするUCI(国際自転車競技連合)コンチネンタルチーム、KINAN Cycling Teamは発足6年目となる2020年シーズンに向け、チームビルディングキャンプを実施。和歌山県新宮市を拠点に来季の所属選手・スタッフが集まり、レース活動を視野に入れて準備に取り組んだ。

©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

2019年体制をおおむね維持して翌シーズンを戦うチームは、12月17日から21日までの日程でキャンプ地に集結。同15日に正式発表された2020年所属の10選手のうち、山本元喜、椿大志、マルコス・ガルシア、山本大喜、サルバドール・グアルディオラ、トマ・ルバ、中島康晴、新城雄大の8人が参加(トラック兼任の福田真平、荒井佑太は欠席)。スタッフも含め、チーム全体がすでに馴染みのメンバーで構成されているものの、改めて積極的なコミュニケーションを図って結束力を強めていくとともに、レースプログラムの確認、来季使用のバイクやウエアのフィッティング、シーズン用イメージ写真の撮影など、その目的は多岐にわたった。

なかでも、重要な位置づけとなったのが19日に行った「アンチ・ドーピング研修会」。選手・スタッフ全チームメンバーを対象に、日本アンチドーピング機構(JADA)ドーピング検査員による講義に臨み、プロアスリートとしての社会的責任を確認する機会に。

研修会では、アンチ・ドーピング規則や「アスリートの権利」、個々の意識づけでいかにして禁止薬物の服用を防ぐか、といったテーマを中心に進行。メインスポンサー「株式会社キナン」社員であり、サッカー・Jリーグやラグビー・トップリーグなどの国内メジャースポーツのアンチ・ドーピング活動に従事するJADAドーピング検査員・堺繁樹氏によるレクチャーのもと、アンチ・ドーピングの役割と責務を再認識。

アンチ・ドーピング研修会 ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

また、同日夜にはチームミーティングも行われ、加藤康則ゼネラルマネージャーがプロサイクリストとしての心構えやシーズンインへ向けた意識づけを行ったほか、キャンプ期間中盤には株式会社キナン・角口賀敏会長が主催した夕食会が開かれるなど、チームはより一層モチベーションを高めて次なるシーズンを迎える態勢に入った。

そして、肝心のトレーニングも順調に消化。20日には8選手がそろってのロングトレーニングを行い、ツール・ド・熊野(UCIアジアツアー2.2)第1ステージ(赤木川清流)と第2ステージ(熊野山岳)のルートを走行。各選手とも上々の仕上がり具合を見せている。2020年1月15~19日のニュージーランドサイクルクラシック(UCIオセアニアツアー2.2)でシーズン初戦を迎えることも決まっており、心身ともに“レースモード”へとシフトしている。

©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

キャンプを行った新宮市は、株式会社キナンのお膝元。同社スタッフや街の人たちからの期待のまなざしを感じながら、約1週間を過ごした。これをもって、チームの2019年活動は打ち上げ。年明けにはホームタウン活動として小学校での自転車安全教室が予定されているなど、これまで同様にレースにとどまらない幅のあるチーム活動を行っていく。

●キナンのホームページ

キナンの2020シーズンは10人体制でアジア圏をメインに戦う

KINAN Cycling Team(キナンサイクリングチーム)が発足6年目となる2020年シーズンの体制を発表。来季は10選手で戦っていく。2019シーズンをもって2選手が退団したが、メンバーの補充と新規選手の採用は行わず、おおむね現体制を維持して次シーズンへと向かう。

山本元喜(やまもと げんき) ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU 

その背景として、2019年の夏以降のレースで優勝をはじめとして大きな成果が上がっていること、それにともなってメンバー間の連携が強化され、戦術に厚み、さらには幅が広がってきていることが挙げられるという。

また、若手・中堅・ベテラン問わず個々の能力の向上も見られ、個人・チームそれぞれへの相乗効果が期待できるチーム状況にある。

10選手いずれもがどのレースにセレクトされても主力として走れる現況をより高めていくことを、チームとして選択した。2019年は5勝と、過去2年と比べて勝利数が減る結果に終わるが、個の力がアップし、連携強化が期待される2020年は再び勝利数を上げていくシーズンとなることを目指していくという。

2020年所属10選手の内訳は、日本人ライダー7選手、スペイン人ライダー2選手、フランス人ライダー1選手で、平均年齢は29歳。ロードレースを基本としながらも、トラック競技を主とする荒井佑太、競輪選手の福田真平はそれぞれの専門種目に応じたレース活動にも力を入れていく。荒井と福田は、2019年にスタートした国内ロードチームによるトラックレース対抗戦「バンクリーグ」においても、チームのエースライダーとして走ることになる。

アジアのレースをメインに活動

新シーズンのチーム活動は、これまで同様にUCIアジアツアーを主戦場にレースへと臨んでいく。2018年シーズンに同ツアーのチームランキングで1位を獲得したが、以来、アジアのみならず他の大陸からも招待されることが増え、2020年シーズンも多くの大会での招待・参戦が期待できる状況にある。

また、メインスポンサー「キナン」のお膝元である熊野地域を舞台に開催されるツール・ド・熊野(UCIアジアツアー2.2、2020年5月28~31日)での個人総合優勝者の輩出を最大目標としていく。並行して、国際レース出場を通じた選手強化の継続、イベント開催・参加を通じた熊野地域や自転車界への貢献、自転車安全教室の実施、チームのホストレース「KINAN AACA CUP」の開催・盛り上げなど、多岐にわたる活動に取り組んでいくという。

来季序盤のレーススケジュールは2019年に続いてニュージーランド サイクルクラシック(UCIオセアニアツアー2.2、2020年1月15~19日)でシーズン初戦を迎えることが決まった。

KINAN Cycling Team2019年シーズン所属選手

山本 元喜(やまもと げんき)/Genki YAMAMOTO 国籍:日本
1991年11月19日生まれ、身長163cm・体重62kg、脚質:パンチャー、ルーラー
・2019年主要リザルト
ツール・ド・北海道(UCIアジアツアー2.2) 個人総合5位
ツール・ド・シアク(UCIアジアツアー2.2) 個人総合5位


椿大志(つばき ひろし) ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU 

椿 大志(つばき ひろし)/Hiroshi TSUBAKI 国籍:日本
1991年5月18日生まれ、身長173cm・体重60kg、脚質:パンチャー
・2019年主要リザルト
おおいたいこいの道クリテリウム 2位
おおいたアーバンクラシック(UCIアジアツアー1.2) 5位


マルコス・ガルシア/Marcos GARCIA ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU 

マルコス・ガルシア/Marcos GARCIA 国籍:スペイン
1986年12月4日生まれ、身長169cm・体重55kg、脚質:クライマー
・2019 年主要リザルト
ツアー・オブ・タイランド(UCIアジアツアー2.1) 個人総合2位
ツアー・オブ・ペニンシュラ(UCIアジアツアー2.1) 個人総合優勝(ステージ1勝)


山本大喜(やまもと まさき) ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU 

山本 大喜(やまもと まさき)/Masaki YAMAMOTO 国籍:日本
1996年1月8日、身長171cm・体重68kg、脚質:パンチャー
・2019年主要リザルト
ツール・ド・とちぎ(UCIアジアツアー2.2) 第2ステージ6位
宇都宮クリテリウム(Jプロツアー) 10位


サルバドール・グアルディオラ/Salvador GUARDIOLA ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU 

サルバドール・グアルディオラ/Salvador GUARDIOLA 国籍:スペイン
1989年7月22日生まれ、身長185cm・体重67kg、脚質:オールラウンダー、クライマー
・2019年主要リザルト
ツアー・オブ・タイランド(UCIアジアツアー2.1) 個人総合4位
ツール・ド・シアク(UCIアジアツアー2.2) 個人総合6位


福田真平(ふくだ しんぺい) ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU 

福田 真平(ふくだ しんぺい)/Shimpei FUKUDA 国籍:日本 ※競輪並行
1987年11月22日生まれ、身長167cm・体重70kg、脚質:トラック・競輪
・2019年主要リザルト
競輪1着 24回(2019年12月13日現在)
シマノ鈴鹿ロードレースクラシック 7位


トマ・ルバ/Thomas LEBAS ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU 

トマ・ルバ/Thomas LEBAS 国籍:フランス
1985年12月14日生まれ、身長182cm・体重65kg、脚質:クライマー
・2019年主要リザルト
ツール・ド・インドネシア(UCIアジアツアー2.1) 個人総合優勝(山岳賞獲得)
ツール・ド・熊野(UCIアジアツアー2.2) 第2ステージ優勝


中島康晴(なかじま やすはる) ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU 

中島 康晴(なかじま やすはる)/Yasuharu NAKAJIMA 国籍:日本
1984年12月27日生まれ、身長172cm・体重64kg、脚質:ダウンヒラー
・2019年主要リザルト
ツール・ド・台湾(UCIアジアツアー2.1) ポイント賞
ツール・ド・イスカンダル・ジョホール(UCIアジアツアー2.2) 個人総合9位


新城雄大(あらしろ ゆうだい) ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU 

新城 雄大(あらしろ ゆうだい)/Yudai ARASHIRO 国籍:日本
1995年7月3日生まれ、身長176.5cm・体重65.5kg、脚質:パンチャー、ルーラー
・2019年主要リザルト
ツール・ド・インドネシア(UCIアジアツアー2.1) 第3ステージ3位
全日本選手権タイムトライアル 19位


荒井佑太(あらい ゆうた) ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU 

荒井 佑太(あらい ゆうた)/Yuta ARAI 国籍:日本 ※トラック並行
1995年7月19日生まれ、脚質:スプリンター、トラック・中距離
・2019年主要リザルト
茨城国体トラック競技・スクラッチ 2位
全日本自転車競技選手権大会トラックレース スクラッチ8位


KINAN Cycling Team2020年シーズン スタッフ

ゼネラルマネージャー/General Manager
加藤 康則(かとう やすのり)/Yasunori KATO

監督/Sports Director
石田 哲也(いしだ てつや)/Tetsuya ISHIDA

メディアオフィサー/Media Officer
福光 俊介(ふくみつ しゅんすけ)/Syunsuke FUKUMITSU

アドバイザー/Adviser
鈴木 新史(すずき しんじ)/Shinji SUZUKI  

アカデミーコーチ/Academy Coach
中西 健児(なかにし けんじ)/Kenji NAKANISHI

メカニック/Mechanic
星野 貴大(ほしの たかひろ)/Takahiro HOSHINO

イベントディレクター/Event Director
田中 国大(たなか ともひろ)/Tomohiro TANAKA

●キナンサイクリングのホームページ

中島康晴がKINAN AACA CUP最終戦で優勝…総合優勝も

KINAN Cycling Teamがホストを務める東海地区のサイクルロードレースシリーズ「KINAN AACA CUP」は、11月23日に2019年シリーズの最終戦を実施。最上位クラスの1-1カテゴリーでは、すでにシリーズ総合優勝を確定させていた中島康晴がタイトルに花を添える勝利。紅葉が見ごろとなっていたレース会場を熱く盛り上げる走りを見せた。

中島康晴がKINAN AACA CUP総合優勝 ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

愛知県や三重県をメインとしながら、おおむね月1回ペースで転戦してきたレースシリーズ。10月に予定されていた前節・第10戦は各地で猛威を振るった台風19号の影響を勘案し中止に。実質2カ月ぶりとなるレース開催となった。

今回の開催地は愛知県新城市。鬼久保ふれあい広場を主会場に、周辺の公道もコースに組み込まれる。1周1.4kmと短いサーキットながらアップダウンに富み、平坦区間はほとんどないセッティング。それでもハイスピードでレースが展開される傾向にあり、クリテリウムの装いに。新城市では、2026年のアジア競技大会における自転車競技ロードレース種目の実施に向けて調整に入っていて、同市から川合教正・産業振興部長が会場を訪れて参加選手を激励するなど、自転車熱の高まりを見せるものとなった。

ホストを務めるKINAN Cycling Teamは今節、椿大志、福田真平、中島康晴の3選手が参戦。レースシーンはオフを迎えているこの時期だが、参加選手同様に勝つことを目標にしっかりと調整してスタートラインについた。

 前夜までの降雨も影響もあり、部分的にウェットな路面コンディション。そんな中で始った1-1カテゴリーは、スタート直後から駆け引きに満ちた展開に。チャンスあらばと飛び出す選手をKINANメンバーがチェックに動くなど、アグレッシブさをうかがわせる流れとなった。

しばらくは出入りの多い状況が続いたが、その均衡が破られたのは7周目。ルイス・オロチス(TEAM VIVACE)と河村敦人(大福屋)とともに中島が抜け出すことに成功。3人はメイン集団に対して着々とリードを広げていき、やがて30秒ほどのタイム差となる。メイン集団でも追撃狙いの動きが見られたがいずれも決まらず、先頭の3選手が優勢となっていった。

快調に飛ばす3人だったが、残り3周回となったところで中島がアタック。上りで差を広げて、下りでさらに勢いに乗せてライバル2人を引き離しにかかる。しかし、続く周回でルイスが猛追。河村を置き去りにして、やがて中島に合流。2選手による優勝争いが濃厚な情勢となって最終周回の鐘を聞いた。

1対1の勝負になれば、やはり中島に一日の長があった。変化の多いコースにあって先頭をキープして最終局面へ。最後は上りスプリントにゆだねられたが、フィニッシュ前のスピードに勝る中島が先頭を譲ることなくトップでフィニッシュラインを通過した。

驚異的な追い上げを見せたルイスが2位、積極的な走りで2回の周回賞を獲得した河村が3位に入線。後方では、終盤にメイン集団からのアタックを成功させた椿が単独でフィニッシュへとやってきて4位を押さえた。

優勝した中島は、今節に臨む時点ですでにシリーズ総合優勝を決めていたが、さらにポイントを伸ばしてタイトルを確定。表彰式では、多くの優勝賞品を多くのファンと分け合うビッグなサービスで会場を盛り上げてみせた。

KINAN AACA CUP恒例となったキッズスクール ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

大好評キッズスクールや充実のイベントブースも

KINAN AACA CUP恒例となったキッズスクールは、中西健児アカデミーコーチの音頭のもと、椿、福田、中島の3選手が講師に加わっての豪華プログラムに。今回はコーナリングをテーマに、正しいライン取りと体重移動を意識する内容とした。その後に控えたキッズレースに生かせるよう、中西コーチや3選手が熱心にアドバイス。その甲斐あってか、キッズレースではプロ選手たちも顔負けの激戦が繰り広げられた。

また、会場ではチームのオフィシャルサプライヤーでもあるYONEX、ATHLETUNEのほか、バイクパーツやスマートフォンのガラスコーティング加工を行う光設備、BUCHO COFFEEによる飲食コーナーなどのブースが出展。参加者を中心に多くの人たちでにぎわった。

今節で2019年シリーズの締めくくりとなったKINAN AACA CUP。年間表彰については、12月15日に愛知県名古屋市で行われるKINAN Cycling Teamのシーズンエンドパーティー内で行われる運びとなっている。

●キナンAACAカップのホームページ

神々が宿る那智山の頂へ…熊野古道ヒルクライム開催

紀伊半島南部の和歌山県那智勝浦町で11月3日、晩秋恒例の「熊野古道ヒルクライム」が開催された。約300人のサイクリストが、神々が宿るとされる那智山を激走。今回もゲストライダーとしてKINAN Cycling Teamから5選手が参加。走りはもちろん、トークショーや抽選会、表彰式といったステージイベントにも臨み、イベントを盛り上げた。

熊野路を駆けるサイクリングイベント ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

300人が激坂含む2つのコースへとアタック

熊野古道ヒルクライムはユネスコの世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産に含まれる熊野路を駆けるサイクリングイベント。各種スポーツイベントを企画・運営する「NPO法人スポーツプロデュース熊野」が主催し、今回で14回目を迎えた。回を重ねるごとに人気の仲間利を見せ、2019年は北は北海道、南は九州地方からの参加があり、地元和歌山県や近隣府県にとどまらず各地から健脚自慢が集った。

約300人のサイクリストは、主会場でもある同町の海水浴場「ブルービーチ那智」を出発し、5.4km先の大門坂駐車場までパレード走行。いったん息を整えたら、いよいよリアルスタート。そこからは、神仏習合による数々の伝承が残される那智の山道を駆けあがっていく。スキルや脚力、好みによってコース選択ができるよう設定されており、Aコースは標高931mの大雲取の山頂を目指す30.9km、Bコースは妙法山阿弥陀寺へと向かう14.6km。途中、勾配が20%に達しようかという激坂区間が複数待ち受けるほか、長くテクニカルなダウンヒルも控え、サイクリストたちにとっては力が試されるポイントに。参加者たちは己の限界に挑戦すべく、勇んでコースへと繰り出した。

キナン勢も参戦 ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

山本大喜が“那智山の神”の座を防衛

ゲストとして招かれたKINAN Cycling Teamは、山本元喜、椿大志、大久保陣、山本大喜の4選手が大雲取へ、新城雄大と加藤康則ゼネラルマネージャーが妙法山阿弥陀寺を目指すコースへと出発。また、“山の神”として数多くのヒルクライムを制する森本誠(GOKISO)、テレビ番組出演でアイドル級の人気を誇る筧五郎(56サイクル)も同様にゲスト参加し、大雲取へと挑んだ。

距離が長く、難易度も高い大雲取の頂へ、ゲストライダーによるトップ争いが展開された。序盤は一般参加の実力者も加わっての先頭パックが形成されたが、山本元によるハイスピードのペースメイクによって徐々に人数が絞り込まれていく。やがて先頭に残ったのは山本大と森本。最速の登坂勝負は2018年の再現となった。

山本大喜が“那智山の神”の座を防衛 ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

熾烈な争いは、普段のトレーニングコースとしても大雲取を走る山本大が後半に入って、地の利を生かして森本を突き放すことに成功。下りを得意とする森本は、その後のダウンヒル区間で山本大を猛追したが、最終盤の激坂区間で再び山本大がアタック。

自身が2018年マークした56分55秒のコースレコードには及ばなかったものの、山本大が実質2連覇となる大雲取頂上制覇。スポーツプロデュース熊野・角口賀敏理事長の激を背に受け、ガッツポーズでフィニッシュラインを通過。少し置いて森本も頂上へとやってきた。

その後は、続々とサイクリストが頂上へ到達。フィニッシュが近づくと歯を食いしばって懸命にペダルを踏む姿が光った。そして頂上へと到達、晴れて“ヒルクライマー”となった瞬間だ。

レベルアップを誓って来年のスタートラインを目指す参加者の姿も

お昼からはブルービーチ那智へと戻って、特産品の振る舞いやステージイベントが展開。その目玉として、ゲストライダーたちによるトークショーが催された。那智山登坂の完走や、今後の目標などが主なテーマとなったトークだが、那智山2連覇を果たした山本大は、2018年「自分が“山の神”」と宣言し会場を驚かせたが、改めてその座を守り続けていることを強調し胸を張った。

300人のサイクリストが神々が宿る那智山の頂へ ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

一方、元祖“山の神”森本は2018年の「山の民」宣言で笑いを呼んだが、「もはや完全に“山の民”ですね…」とトーンダウン。3年連続での2位フィニッシュをユーモラスに表現してみせた。

そのほかステージでは、選手たちがプレゼンターを務めた表彰式や抽選会も行われ、大きな賑わいの中でイベントは閉幕。参加者からは、「KINANメンバーのペースにトライしたがあっという間に遅れてしまった」「何度でもチャレンジしたいコース。また1年鍛えて戻ってきたい」などの感想が聞かれ、1日を通して満足できた様子。

また、イベントの成功にあたっては、主催のスポーツプロデュース熊野や地元関係者による事前の準備によるところが大きかったことも押さえておきたい。10月に起きた台風19号発生時には、コースとなる道路がふさがるほどの枝木の落下に見舞われ、その清掃作業に追われたほか、今回の開催直前までアスファルト上に生えた苔を除去するなど、多くの人たちの尽力あって迎えたヒルクライム開催であった。

スポーツプロデュース熊野主催イベントは次回、11月24日の「紀南シーサイドヴェロフェスタ」が行われる。今回同様にKINAN Cycling Teamの選手たちもゲスト参加を予定しており、ライドとグルメが融合した楽しみ満載の1日を盛り上げることになっている。

●熊野古道ヒルクライムのホームページ

熊野古道ヒルクライム前日にキナン選手らが安全祈願

2019年の開催で14回目を迎える熊野古道ヒルクライムを前に、イベント関係者やゲスト参加するKINAN Cycling Teamの選手らが催しの成功と安全、参加者の活躍を祈願。荘厳な熊野路を駆ける秋の風物詩を直前に、開催ムードが高まっている。

11月3日に行われるこのイベントは、ユネスコの世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産に含まれる熊野路を走り、神々が宿る那智山の頂上に挑むのが大きな魅力のヒルクライム。深い自然と森林の中をゆく晩秋のライドに魅せられたサイクリストたちが全国各地から集まってくる。

前日であるこの日は、熊野三山の1つである「熊野那智大社」に赴き、熊野の神々にイベントの成功と安全、参加サイクリストの健闘を祈願。加藤康則ゼネラルマネージャーを筆頭に祈祷にも臨んだ。

迎える熊野古道ヒルクライムには、KINAN Cycling Teamから山本元喜、椿大志、大久保陣、山本大喜、新城雄大の5選手がゲスト参加。加藤GMも参加者の1人として那智山に挑む。スキルや脚力などに応じた2コースが用意され、Aコースは標高931mの大雲取の山頂を目指す30.7km、Bコースは妙法山阿弥陀寺を目指す14.6km。両コース合わせて約300人のサイクリストの参加が見込まれている。

●熊野古道ヒルクライムのホームページ

自由気ままなロングライド“いなヴェロ”にキナン選手参加

自転車の街としておなじみの三重県いなべ市全域を舞台として、サイクリストが主役のビッグイベント「DENSO Presents いなべヴェロフェスタ2019 with KINAN Cycling Team(いなヴェロ)」が10月27日に開催された。イベント名の通り、KINAN Cycling Teamが2019年もゲスト参戦。市内各地での走行はもちろん、エイドステーションからのラジオ出演、ファンサービスと、選手たちは大忙しの1日を過ごした。

いなべヴェロフェスタ2019 ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

毎年5月のツアー・オブ・ジャパン(TOJ)では、KINAN Cycling Teamのホームステージとして選手たちを後押しするいなべ市。レース開催にとどまらず、今回のようなライドイベント、学校での自転車安全教室の実施など、年間を通してサイクリングを軸とした街おこしに力を入れる。なかでもこの「いなヴェロ」は街の全域を活用し、市内の人気スポットや特産品を販売するショップなども参画する一大イベント。

それだけにサイクリストに向けたホスピタリティも充実。「みんなに優しいロングライド」をコンセプトとし、走行距離やコース、通過するポイントに制限を設けず、参加者自身でルートセッティングできる“ライダーファースト”が特徴。参加ライダーたちを待ち受けるチェックポイントを15カ所設定し、そのうち5つは“いなべの食”を堪能できるエイドステーションを兼ねる。

加えて、世界的な自動車部品メーカー「デンソー」の大安製作所が“スペシャルポイント”となり、同県北勢地域のグルメイベント「美し国みえグルメフェア」「キッズヴェロフェスタ」と併催。そのほかにも、チェックポイント独自の「味のおもてなし」や、サイクリストの多くが知るところとなった三岐鉄道三岐線のサイクルトレインが西藤原駅から乗車可能であるなど、午後3時のフィニッシュタイムまで無限にいなべのよさを満喫できるロングライドとなった。

そんな“走って”“食べて”“楽しんで”の1日に2019年もKINAN Cycling Teamの選手たちがゲスト参加。山本元喜、椿大志、大久保陣、山本大喜、雨乞竜己、新城雄大の6選手が参加者とともにスタートラインから街のいたるところへと出発。この日ばかりはレースではなかなか見られないリラックスムード。みんなとともにエイドで補給をしたり、記念撮影に応じるなど、いつも以上にファンサービスにも力を入れた。

このイベントでは、「キナンdeスタンプラリー」と称して、選手たちを見つけてスタンプをゲットすると抽選でIRCタイヤ(1万3000円相当)が当たる特別企画も実施。参加者は一様にサイクリングを楽しみつつ、KINANメンバーの“探索”にも熱が入っていたよう。

また、この日はパーソナリティー役に徹した中島康晴を筆頭に、選手たちが地元ラジオ局「いなべFM」にもたびたび出演。コースに繰り出したメンバーによるチェックポイントからのレポートのほか、中島による参加者へのインタビューなど、その臨場感をリスナーへダイレクトに伝えることにも努めた。

約800人の参加者に恵まれた“いなヴェロ”。「KINANの選手たちに会えると聞いて参加を決めた」「有名店の味を確かめたくて」といった声や、「TOJのコースを体験できることをモチベーションに」など、参加動機はさまざま。それも、「自由気ままなロングライド」だからこそ。今年から市の中心部に地位する「北西市民会館」が主会場となったことで、走行ルートや立ち寄るチェックポイントのセレクトに幅が生まれたことも、イベントの成功の大きな要因となった。

●いなべヴェロフェスタ2019のホームページ