【ツール・ド・フランス第7S】ポガチャルがブルターニュの壁を制しマイヨジョーヌ奪還

第112回ツール・ド・フランスは7月11日、サンマロ〜ミュールドブルターニュ間の197kmで第7ステージが行なわれ、1秒遅れの総合2位につけていたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ・XRG)がチーム ヴィスマ・リースアバイクのヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)をタイム差なしで抑えて優勝。総合1位のマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)は最後に先頭争いから脱落し、ポガチャルが首位のマイヨジョーヌを奪還した。

ポガチャルがミュールドブルターニュを制覇 ©A.S.O / Charly Lopez

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前日の敢闘賞ベン・ヒーリーにマイヨジョーヌのファンデルプールが握手 ©A.S.O.
2025ツール・ド・フランス第7ステージ ©A.S.O.
サンマロの郊外に設定された0km地点を通過し、レース開始の旗が振られる ©A.S.O.
2025ツール・ド・フランス第7ステージ ©A.S.O.
マウロ・シュミットがアタック ©A.S.O.
2025ツール・ド・フランス第7ステージ ©A.S.O.

●ステージ成績
1位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ・XRG)4時間05分39秒
2位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、チーム ヴィスマ・リースアバイク)同タイム
3位 オスカー・オンリー(英国、チーム ピクニック・ポストNL)2秒遅れ

●総合成績
1位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ・XRG)25時間58分04秒
2位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)54秒遅れ
3位 ケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・B&Bホテルズ)1分11秒遅れ

●4賞ジャージ
マイヨジョーヌ(個人総合成績)タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ・XRG)
マイヨベール(ポイント賞)タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ・XRG)
マイヨブラン・アポワルージュ(山岳賞)ティム・ウェレンス(ベルギー、UAEチームエミレーツ・XRG)
□マイヨブラン(新人賞)レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)

2025ツール・ド・フランス第7ステージ ©A.S.O.

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【ツール・ド・フランス旅日記 episode6】進化を続けるフランス高速道路事情

シトロエンC5エアクロス、リッター25kmで巡航中。まだ新車の状態を維持していますが、後部座席の右側が洗濯もの干し場です。満タンで1000km走ります。リッター単価が昨年よりもちょっと安くなったものの軽油で300円近くするので、かれこれ20年ほどガソリンスタンドに行ってません。常にスーパーマッケットです。

シトロエンC5エアクロス、リッター25kmで巡航中

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【ツール・ド・フランス第6S】ヒーリー初V…ファンデルプールが1秒差マイヨジョーヌ奪還
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通信や交通システムの進化を毎年アップデートして対応

毎年フランスに行き続けることで得られるメリットは、通信環境や社会インフラがどう変わったかをアップデートするだけでいいこと。1年前からこう変わったんだなと理解するだけでうまく運びます。進化がめざましいのが有料高速道路で、2年間いかなかったら順応できなくなるんじゃないかなと感じるほどです。

2025ツール・ド・フランス第6ステージ ©A.S.O.

30年前はずらりと料金徴収ブースが並び、若い男女が蛍光黄色のベストを着てお金を受け取っていました。徐々に無人化。日本と同じETCシステム、クレジットカード、現金などの支払い方法によってどこに並ぶかを判断する必要が。

ところで料金所のマシンって結構壊れているんですよ。1台のクレジットカードが通らないと後続のクルマをすべてバックさせて、別の列に並び直すなどそれはもう大変でした。ボクも2、3回あったので、後続車に下がってもらわないと脱出できないので、心を鬼にして下がらせました。

ラグビー場もあるスポーツ施設がこの日の仕事場

かつての料金所にはさりげなくポストがあった!

音声通話でオペレーターと遠隔でやり取りすることも。

「クレジットもお金も受け付けない」とボタンを押してしゃべると、「じゃあポストに現金を入れて」という指示。民家じゃないんだからポストなんてあるわけないだろ…と前方を見ると、なんと跳ね上げ式のポストがありました。

昨年あたりからゲートがまったくない最新システムが導入されました。高速道路のどこかに設置されたカメラでナンバーを読み取るようで、ウェブにアクセスしてどこからどこまで乗りますと打ち込んでカードで支払います。実際には申請よりも短い区間に変更して利用したので、その分の料金が返金されました。

今回は、利用後72時間以内にネット決済してくださいというシステムに遭遇。実際に走ってみるとかつての有人ブースが取り壊されている最中で、今後はこういったシステムがフランス中に整備されていくのだと思います。

田舎町のスポーツ施設のトイレはなんだか恥ずかしげに利用しちゃいそうだ

フランスを一周していて、唯一フランス人のようにうまく立ち回れないものが高速道路のETC。さすがにこれは作れないので劣等感がありました。だからボクたち外国人旅行者にとっては便利な時代になりました。

町の人がビュフェでもてなしてくれた

料金所で渡したお金をホテルまで返しにやってきた青年

余談ですが15年ほど前、原稿執筆が遅くなってしまい、夜9時過ぎにホテルを目指して高速を走っていて、出口の無人料金所で1台が止まっていました。出口がその1つしかないので待っていたら、前のクルマから不安げな作り笑いを浮かべた青年が出てきて、「クレジットが使えないのでお金を貸してほしい」と。

うわあと思いましたが、どうでもいいのでホテルに入りたかったので必要なお金を手渡して、「あそこのホテルに泊まっているよ」と伝えておきました。およそ30分後、彼は町中のキャッシュディスペンサーで現金をおろしてきて、ホテルのボクを訪ねてきました。フランス人っていいヤツじゃんと確信しました!

今日はノルマンディーからブルターニュ半島へ。およそ300kmあるはずで、途中でモンサンミッシェルも位置しますが、よそ見しません!

早朝ラン後にシャワーでさっぱりして、朝食をいただくと本当においしく感じる

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【ツール・ド・フランス第6S】ヒーリー初V…ファンデルプールが1秒差マイヨジョーヌ奪還

第112回ツール・ド・フランスは7月10日、バユー〜ビアノルマンディー間の201.5kmで第6ステージが行なわれ、EFエデュケーション・イージーポストのベン・ヒーリー(アイルランド)が残り42kmで8人の第1集団から単独で抜け出して初優勝した。アイルランド選手として大会通算15勝目。チームとして12勝目。総合成績では1分28秒遅れの総合6位マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)がヒーリーを含む8人の逃げに加わり、首位タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ・XRG)に1分29秒差をつけてゴールし、マイヨ・ジョーヌを奪還した。

ベン・ヒーリーが独走 ©A.S.O.

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2025ツール・ド・フランス第6ステージ ©A.S.O.
2025ツール・ド・フランス第6ステージ ©A.S.O.
大活躍のケヴィン・ヴォークランの出身地だ ©A.S.O.
2025ツール・ド・フランス第6ステージ ©A.S.O.
アイルランドのベン・ヒーリーと米国のクイン・シモンズ ©A.S.O.
2025ツール・ド・フランス第6ステージ ©A.S.O.
2025ツール・ド・フランス第6ステージ ©A.S.O.
ファンデルプールが8人の第1集団に加わった ©A.S.O.

●ステージ成績
1位 ベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト)4時間24分10秒
2位 クイン・シモンズ(米国、リドル・トレック)2分44秒遅れ
3位 マイケル・ストーラー(オーストラリア)2分51秒遅れ

●総合成績
1位 マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)17時間22分58秒
2位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ・XRG)1秒遅れ
3位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)43秒遅れ

●4賞ジャージ
マイヨジョーヌ(個人総合成績)マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)
マイヨベール(ポイント賞)ジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)
マイヨブラン・アポワルージュ(山岳賞)ティム・ウェレンス(ベルギー、UAEチームエミレーツ・XRG)
□マイヨブラン(新人賞)レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)

バイユーのカテドラルをスタートしたツール・ド・フランス第6ステージ ©A.S.O.

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【ツール・ド・フランス旅日記 episode5】フランス800泊にしてホテル予約失敗

あらまあ。フランスで800泊もしているのに宿泊予約の日付を間違いました。本日行くホテルの予約が明日だったので、明日のホテルが2つに。こんなときは慌ててもいいことがないので、冷静になったつもりでしたが…。

レストラン併設のホテルは夕食を取るところを探さなくて済むので気楽

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【ツール・ド・フランス第5S】エヴェネプール一番時計、ポガチャルが首位に
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ツール・ド・フランス第5ステージのゴールは競馬場の横で、プレスセンターは観覧席だ

焦っていないつもりでも次第にドツボにはまっていく

この2日間がそれほど遠くないエリアで走るのは幸いでした。今日泊まるつもりだったホテルはもうキャンセル・返金不可なので明日に回すことに。明日のホテルをキャンセル。新たに今日のホテルを探して予約したんですが、10人ドミトリーの女性部屋でした。すでに返金不可なので男性部屋への変更を依頼。もちろん男性は満床だったので、変更はできませんでしたが、近年こうしたジェンダーな事象はセンシティブなので「変更をお願いしたのにそれが用意できなかった」という感じで、ありがたいことにお金が返ってきましたよ。

米国などの国旗を掲げた駅前ホテル

移動や食事にかかるお金はもう仕方ない支出で、ケアレスミスで想定外の支出を余儀なくされることを回避していかないと。ということでフランス入り6日目にして初めてレストランへ。

この日のホテルを探していたとき、「こっちのオーベルジュ(旅籠)のほうがよかったなあ」という建物がすぐ近くにありました。ホテルに到着したときに「明日の朝食はここで用意できないので、道路を曲がって左のところ」と案内されたんですが、まさかのオーベルジュでした。小さな町なのでw

フランス滞在6日目にしてようやくレストランで食事。テラス席は肌寒いのでウインドブレーカーを取りに部屋に戻った

熱波の去ったフランスは毎日爽快な夏が続く

フランスは連日最高気温20度ほど。朝のランニング時には耳が痛くならないようにニット帽がほしいくらいです。この町はノルマンディー上陸作戦のビーチに近く、いまなお星条旗を掲げる家が多いです。ミリタリーな壁画や軍用品を売るお店も。朝からパン屋さんだけがオープンしていて、おいしそうなにおいがします。

宿泊した駅前ホテルに代わって朝食を用意してくれたオーベルジュ

質素だけどどこかおしゃれな民家をながめながらランニングしていると、フランスの人って日々を楽しそうに、そしてできるかぎり快適に生活しているなあと確認できます。地上に生きているって感じですね。

2025ツール・ド・フランス第5ステージ ©A.S.O.

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【ツール・ド・フランス第5S】エヴェネプール一番時計、ポガチャルが首位に

第112回ツール・ド・フランスは7月9日、カンを発着とする距離33kmの個人タイムトライアルが第5ステージとして行なわれ、この種目の世界チャンピオン、スーダル・クイックステップのレムコ・エヴェネプール(ベルギー)がトップタイム。16秒遅れで2位に入ったUAEチームエミレーツ・XRGのタデイ・ポガチャル(スロベニア)が、アルペシン・ドゥクーニンクのマチュー・ファンデルプール(オランダ)を首位から引きずり落としてマイヨジョーヌを獲得した。

アルカンシエル、金色のヘルメットを着用したエヴェネプール ©A.S.O.

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首位と同タイムの2位ポガチャルが個人タイムトライアルで逆転 ©A.S.O.

ポガチャルが3つのリーダージャージを獲得

2025ツール・ド・フランスは大会5日目、カン周辺で行われた33kmの個人タイムトライアルでパリ五輪2冠のエヴェネプールとポガチャルがハイペースで走った。エヴェネプールは2024年のタイムトライアルでツール・ド・フランス初優勝したが、この日で2勝目。現世界チャンピオンとしてツール・ド・フランス複数大会で個人タイムトライアルを制覇した3人目の選手となった。

16秒差をつけられたポガチャルは、総合成績ではエヴェネプールに42秒差をつけ、レースの新たな総合リーダーとしてマイヨジョーヌを獲得した。同選手はポイント賞と山岳賞でも首位に。3つのジャージを手にすることになった。

2025ツール・ド・フランス第5ステージ ©A.S.O.

ノルマンディー出身のケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・B&Bホテルズ)は、地元での力強いパフォーマンスで59秒遅れの総合3位に食い込んだ。ステージ13位でフィニッシュして1分13秒差をつけられたヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、チーム ヴィスマ・リースアバイク)はトップ3から陥落。一方、ファンデルプールは、マイヨジョーヌを手にした3日間を終えて1分28秒遅れの6位に後退した。

ファンデルプールはマイヨジョーヌを失う。2025ツール・ド・フランス第5ステージ ©A.S.O.
タイムトライアルの世界チャンピオン、 エヴェネプールがトップタイムで優勝 ©A.S.O.

●ステージ成績
1位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)36分42秒
2位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ・XRG)16秒遅れ
3位 エドアルド・アッフィニ(イタリア、チーム ヴィスマ・リースアバイク)33秒遅れ

●総合成績
1位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ・XRG)17時間22分58秒
2位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)42秒遅れ
3位 ケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・B&Bホテルズ)59秒遅れ

●4賞ジャージ
マイヨジョーヌ(個人総合成績)タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ・XRG)
マイヨベール(ポイント賞)タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ・XRG)
マイヨブラン・アポワルージュ(山岳賞)タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ・XRG)
□マイヨブラン(新人賞)レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)

ポガチャルが2025ツール・ド・フランス第5ステージで首位に ©A.S.O.

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【ツール・ド・フランス旅日記 episode4】28年をかけてルーアンに戻ってきました

自転車専門誌のサイクルスポーツが「別冊付録 ツール・ド・フランス 」を初めて発行したのが1989年。今中大介が日本人プロとして初出場を果たす1996年まで1冊まるごと担当してきました。翌年からは個人として全日程を追いかけるようになりますが、その開幕地がルーアンでした。

1997年、ツール・ド・フランス初取材の初日 ©仲沢隆

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日本選手がいないのになんでいるんだ?

今でこそ日本選手が当たり前のように参加するようになったものの、28年前はこの世界最高峰の自転車レースに日本選手の姿があることを想像できませんでした。ツール・ド・フランスの厳しさを現場にいて肌で感じているだけに、表彰台に日本選手が乗るというイメージができなかった。それほどツール・ド・フランスは、はるかなる存在でした。

2012年のルーアン

開幕を迎えるルーアンの町に立ったときは、クルマを一人で運転しながら全日程を追いかけていけるのだろうかと不安でいっぱい。サルドプレスの一番隅に席を取ると、隣に座った記者が声をかけてきたのを覚えています。

「日本選手は出ているのか?」

「いないのになんでいるんだ?」

そう言われるのは当然だったけど、くやしさは飲み込むしかない。いつかは日本選手が表彰台に立ってくれると信じて、毎年自費でフランス一周の旅をするしかありませんでした。

新城幸也の敢闘賞登壇はMCの声しか聞けなかった

2012年、第4ステージのルーアンでボクたち日本人取材陣が溜飲を下げるときが到来。新城幸也が4km地点でアタックし、ゴールを目指して逃げに逃げて最終的に捕まるのですが、敢闘賞を獲得。日本選手が表彰台に上る歴史的な日となったのです。

2012年にルーアンで敢闘賞を獲得した新城幸也

で、表彰式。カメラマンは舞台の正面に陣取れますが、ボクは記者なので表彰台の裏側しか入れない。それでも受賞者はコンタクトエリアでテレビ局、地元ラジオ、そして活字メディアの順にインタビューを受けるという流れ。ボクは大会のアテンド係に「アラシロの話が聞きたい」と伝え、活字メディアの場所で彼を待っていたものの、テレビやラジオの取材が終わったとたんに、「敢闘賞の表彰の時間だ」と連れていかれました。つまり話もなにもできかった。

かくして日本勢初の表彰台。カメラマンや日本の視聴者のみなさんはしっかりと晴れの舞台を見たはずですが、ボクは舞台裏で司会者ダニエル・マンジャスのコールと大観衆の声援しか聞こえませんでした。

東京中日スポーツの表面に自転車記事が掲載された

2日後に日本のスポーツ新聞で初めてのトップ記事

もちろん新城はわれわれ取材陣が待ち構えているところに来てくれたのでしっかりと話を聞くこともできました。そのときのボクは気持ちが高揚していて、しかもすぐに新聞社に原稿を送らなければならなかったので仕事に集中。すでに日本の朝刊の締め切りは過ぎていたので、翌々日になってしまいましたが日本のスポーツ新聞として初めて一面トップで自転車記事を掲載。

ルーアンのプレスセンターはよくありがちな総合スポーツセンターに仮設された

夜遅くルーアン郊外のホテルに入って奇跡的に開いていたレストランで食事をして、ようやく部屋で落ち着く。別にボクは選手じゃないので、くやしかったことやツラかったことなどないんだけれど、いろいろなことが脳裏をよぎりました。

セーヌ川が流れるルーアン
世界チャンピオンのポガチャルが2025ツール・ド・フランス第4ステージのルーアンで優勝 ©A.S.O.

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