大前翔がKINAN AACA CUP第3戦でスプリント優勝

東海地域のロードレースシリーズ「iRC Tire Presents KINAN AACA CUP」の2021年シーズン第3戦が愛知県新城市で開催。メインレースの1-1カテゴリーは集団スプリントによる勝負となり、大前翔(愛三工業レーシングチーム)が優勝。これまでの2節が中止になっていたこともあり、今季のシリーズ初戦を飾っている。

大前翔がKINAN AACA CUP第3戦優勝 ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

同地域のロードレース普及と強化にとどまらず、近年は全国各地から実力者やステップアップを目指す選手たちが集まる一大イベントとなっているシリーズ戦が、いよいよ幕を開けた。ここまで、2月と3月に予定されていたレースは新型コロナウイルス感染拡大の影響や天候不良により相次いで中止になっており、今節が事実上の初戦に。国内のロードレースシーズンが本格的に開幕した直後というタイミングも相まって、4つのカテゴリーに多くの選手がエントリーした。

特に、メインレースの1-1カテゴリーには、「三菱地所 JCLロードレースツアー」を主戦場とするレバンテフジ静岡、ヴィクトワール広島、VC福岡にホストチームのKINAN Cycling Team、Jプロツアー勢では愛三工業レーシングチームと、各リーグのトップチームが参戦。そこに学連チームや実力派ホビーレーサーが加わるハイレベルの戦いに。

KINAN Cycling Teamからは、山本元喜、花田聖誠、山本大喜、福田真平、トマ・ルバ、中島康晴、新城雄大、畑中勇介の8人がスタートラインへ。序盤から繰り返された攻撃的な展開に応戦する。トップチームの選手たちが主に動かしたレース前半では逃げグループは形成されず。鬼久保ふれあい広場を基点に一部公道も含んだ1.4kmの周回コースが上りと下りの連続であることも関係してか、集団の人数が絞られる一方で先行する選手がなかなか生まれないまま進行した。

均衡が破られたのは、レース半ばすぎ。新城のアタックをきっかけに4人が抜け出すと、集団に対して数秒のリード。これはやがてメイン集団に引き戻されることとなったが、残り9周からはトマがアタック。一時は20秒近い差となり、しばし単独で逃げ続けた。

これを追いたいメイン集団からは、鈴木龍(レバンテフジ静岡)と山本元が飛び出すことに成功。残り5周を前にトマに合流するとそのままパスして、2人逃げに持ち込む。集団のペースも落ちることなく、終盤にかけて緊張感が高まっていった。

勢いはメイン集団が勝り、残り2周を迎えたところで先頭2人をキャッチ。そのまま最終周回へ突入すると、優勝争いはスプリントへ。上り基調の最終局面を制して一番にフィニッシュへとやってきたのは大前。変化の多いコースながら平均時速41kmを記録したハイスピードレースを制している。

そのほか、今節はシリーズ協賛のiRC Tire(井上ゴム工業)のほか、チームサプライヤーでもあるATHLETUNE(株式会社 隼)、FUSION(有限会社 光設備)などがブースを出展。レースに先立って行われたキッズスクールではKINAN Cycling Teamから新城がメイン講師を務めて、ヘルメットのかぶり方やブレーキ確認、バイク上でのバランス感覚を養う「おそのり競争」を実施。レースにとどまらない、各種アクティビティで会場はにぎわった。

同シリーズの次節は5月1日、岐阜県海津市・国営木曽三川公園 長良川サービスセンターを会場に開催される予定。これまで同様、感染症予防に努めるとともに、会場への入場制限を図りながらレースを開催する。

iRC Tire Presents KINAN AACA CUP 2021 第3戦 1-1カテゴリー(51.8km)結果
1 大前翔(愛三工業レーシングチーム) 
2 東優仁(VC福岡) 
3 津石康平(中央大学) 
4 初川弘浩(中京大学) 
5 草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)

●KINAN AACA CUPのホームページ

花田聖誠が三菱地所JCLプロロードレースツアー出場へ

KINAN Cycling Teamに新加入した花田聖誠が、国内プロロードレースチームによる新リーグ「三菱地所JCLプロロードレースツアー」として3月27・28日に栃木県で行われる2連戦に出場する。チーム最年少の22歳。ジュニア時代からアジアやヨーロッパで経験を積み、シーズンインに向け調整スピードも上がっている同選手が意気込みを語った。

花田聖誠 ©Syunsuke FUKUMITSU

花田 聖誠(はなだ きよまさ)/Kiyomasa HANADA
1998年7月31日生 神奈川県出身
●主な戦績
2016年 アジア選手権ロードレース ジュニア 3位
2019年 全日本選手権ロードレース アンダー23 4位
2019年 ジャパンカップ オープンレース 優勝

-KINAN Cycling Teamの一員になって、加入前と加入後とで印象の変化はありますか?
入団する前から、選手間の適度な距離感やレースでの組み立てなどの巧さは強く感じていました。競技を楽しんでいる印象がありましたが、実際にチームに入ってみてそれが確信に変わりましたし、競技内外でみんなに頼ることができるあたりも心強いです。アドバイスしてもらうことも多くて、日々勉強をしています。

-アドバイスしてもらったことの中で、最も印象に残っているものを教えていただけますか
ジュニアやアンダー23の頃も経験したのですが、張り切りすぎるあまりコンディションのコントロールができていないところを指摘してもらったことですね。モチベーションが高まっていく中で、ついつい負荷をかけすぎていたところがありました。

トレーニングストレススコア(トレーニングにより身体にかかった負荷量を数値化したもの)とトレーニングストレスバランス(疲労の溜まり具合を数値化したもの)という指標があるのですが、パワーメーターを使いながらのトレーニングでそれらを確認していく必要性を教えてもらったりもしました。その時期にあった効率的なトレーニング方法を知る良いきっかけになっています。

花田聖誠 ©Syunsuke FUKUMITSU

-改めて、KINAN Cycling Teamをプロデビューの場に選んだきっかけや思いを教えてください
一緒にレースを走っていて、勝つための動きをしっかりしているのがKINAN Cycling Teamだと感じていました。昨年のJプロツアーでは3勝しましたが、そのいずれもがレースの組み立てを行ったうえで、きっちりと勝っている。そうなると自然と他チームのマークも厳しくなりますが、自分としてはそうした環境下で走ってみたいという思いが強くなっていきました。

国内で一番強いチームはKINAN Cycling Teamだと今も思っていますし、その強さを目の当たりにしているので、プロになるならこのチームでと考えていました。

-そんな「日本で一番強いチーム」に入ることが決まった時の気持ちを振り返ってみてください
契約書にサインした時は、正直緊張と不安でいっぱいでした。自分が「一番強い」と思っているチームに入ることで、うれしさと同時に、本当にチームに貢献できるのかという不安も生まれました。なので、すぐに気持ちを切り替えてトレーニングに集中することを心掛けました。チームに認めてもらえる選手になれるよう取り組んできたつもりです。

-チームを応援してくださる方々に向けて、ご自身の脚質やレーサーとしてのタイプを説明いただけますか
粘り強さとパンチ力が武器だと思っています。一発のアタックで集団から抜け出す力と小集団のスプリントにも自信があります。山岳よりは、丘のような短い距離の上りが含まれたコースの方が力を発揮できると思います。短い上りでアタックして勝負を決める。これまで勝ったレースはすべてそんな特徴のあるコースでした。

-この先、どんなレースで結果を残していきたいですか?
チームの勝利が最優先ではありますが、チャンスがあれば自分でも勝ちを狙っていきたいです。今年からツアー・オブ・ジャパンには相模原のステージが加わりますが、地元からも近いですし、中学時代からトレーニングで走ってきたコースでもあるので、いつかはこのステージで勝ちたいですね。あとは、ツール・ド・熊野の山岳ステージも目標にしたいです。

チームには元日本チャンピオンが2人(山本元喜、畑中勇介)いて、(新城)雄大さんもエリート1年目で全日本3位に入っているので、自分はそれ以上の結果を出せるようになりたいです。

花田聖誠

-これから長くなるであろうプロ選手としてのキャリア。どんなライダーでありたいか野望をお聞かせください
将来的にはヨーロッパのチームで走りたいので、KINAN Cycling Teamでの活動からステップアップできれば良いなと思っています。国内のチームから世界へと上り詰めた中根英登さん(EFエデュケーションNIPPO)のように、トップチームで必要とされる選手になりたいです。

-プロ選手として、ファンとの交流やメディア出演なども少しずつ経験していますね。実際に取り組んでみてどんな感想を抱きましたか?
チームや自分自身を知ってもらうために、メディア出演は積極的に臨んでいきたいと考えています。これからはブログやSNSの投稿も増やしていって、スポンサー・サプライヤー企業の方々やファンのみなさんに喜んでもらえるようになりたいです。そのためには、実力をアップさせて発信力を高めていかねばならないと思っています。

-さあ、いよいよ「三菱地所 JCLプロロードレースツアー」が幕を開けます。オープニングは栃木県での2連戦。出走メンバー入りが決まりましたが、本番ではどんなレースをしたいですか?
チームの戦力として機能することが最重要だと思っています。チームが勝利を収めるためには、自分がミスをするわけにはいかない。そのくらいの気持ちをもって臨みます。

聞き手:KINAN Cycling Teamメディアオフィサー 福光俊介
インタビュー実施日:2021年3月15日

●キナンサイクリングのホームページ

KINAN Cycling Teamがポッドキャストページを開設

KINAN Cycling Teamがインターネット上で音声を公開する「ポッドキャスト」で選手やスタッフの声を配信していく企画を開始した。

現在は毎週金曜日にチームサプライヤーである、いなべエフエム(86.1MHz)夕方の情報番組「イブニングいなBee」で選手・スタッフが週替わりでレギュラー出演をしている。当初はスタジオ出演から始まったが、新型コロナウイルスの感染拡大が急速に進行してからはスタジオとチームとオンラインでつなぎ、リアルタイムのやり取りをラジオ電波に乗せつつ、後日その様子をチームのYouTubeチャンネルでアーカイブ配信をしてきた。

今後は、2021年のレースシーズン開幕が間近に迫っていることや、開幕以降は各地でのレース、さらにはイベント活動の本格化も見込み、同番組のレギュラー出演を当面は電話でつなぐ形をとり、放送終了数日後に出演部分をポッドキャストで配信していくことになった。

それにともない、オーディオストリーミングプラットフォーム「Sportify」にKINAN Cycling Teamのポッドキャストページを開設。好きな時に、好きなだけ選手・スタッフの声を聴くことができるようになった。

いなべエフエム出演分については、選手・スタッフの近況やリスナーからの質問に答える様子を聴くことができるが、今後は独自の音声配信も積極的に展開し、チームとしての発信機会を増やしていきたいという。

●KINAN Cycling Teamのホームページ

中島康晴がキナンサイクリングのキャプテン就任

中島康晴が2021年シーズンよりKINAN Cycling Teamのキャプテンに就任した。

中島康晴 ©︎KINAN Cycling Team

中島は2017年シーズンにチームへ加入して以来、卓越したレーススキルにとどまらず、レース・イベント時のファンサービス、競技内外でのメディア対応など、あらゆる場面において「チームのスポークスパーソン」の役割を率先して務め、チームに貢献してきた。15年にわたるプロ生活で培ったものだけではなく、中島の人間性も存分に発揮してこそのものであると、チームは認識しているという。

2021年からは、スポンサー・サプライヤー企業関係者、熱い応援をしてくれるファンとの交流、さらにはチーム活動を取り上げるメディアへの対応など、プロスポーツ選手としてのあるべき姿・立ち居振る舞いのよき手本として、所属選手だけではなくスポーツ界全体の代表となるべくチームキャプテンとしてシーズンを通して活動する。

チーム内においては選手とスタッフとの橋渡し役としての期待も込められている。22歳から36歳まで幅広い年代の選手がそろい、それぞれに経験や実績が異なる中で、選手の意見集約やチームの意向をくんでの取り組みなど、KINAN Cycling Team全体がよりよい形で活動を行っていくための「御意見番」としての役目も担う。

サイクルスポーツ界にとどまらず、世界全体が先行き不透明な状況に陥っているが、KINAN Cycling Teamは新キャプテンを擁立し、これまで以上に前向きに活動に取り組んでいくという。チーム活動のみならず、中島のリーダーシップにも期待。

中島康晴のキャプテン就任コメント

中島康晴 ©︎KINAN Cycling Team

「KINAN Cycling Teamは国際的に活躍するチームであり、そのキャプテンという肩書きの重さを感じています。素晴らしいチームメイトに囲まれ、多くのサポートいただけるみなさまにに支えられて、いまの自分がおります。多くの困難が待ち受ける世界情勢ではありますが、その中で多くの希望の灯りをともし、スポーツ業界から盛り上げていけるようチーム一丸となって努力いたします。
また、その輪はみなさまとともにあります。一緒に大きくしたくなる熱い走りとチーム作りを目指してまいりますので、今後とも応援をよろしくお願いいたします」

●キナンサイクリングのホームページ

畑中勇介と花田聖誠がキナンサイクリングに移籍へ

畑中勇介がチームUKYOからKINAN Cycling Teamに移籍する。22歳の花田聖誠も加わり、2021シーズンは12選手で戦っていく。チームとしてシーズン当初からの新加入選手は2年ぶりとなる。

チームUKYOから加わる畑中。これまでのキャリアではヨーロッパ、アジア、そして日本と、あらゆるシーンで実績を積んできた。大人数でのスプリントもよし、起伏に富んだタフなレイアウトもよし、コースや展開に合わせたスマートな走りで数々の勝利を挙げてきた。なんといっても、2017年の全日本選手権ロードレースでの優勝はここまでのキャリアのハイライト。アジア最高峰のワンデーレース、ジャパンカップ サイクルロードレースでは2010年に3位、翌2011年にも5位と、世界のトップライダーとも対等に渡り合ってきた日本人ライダー有数の経験を、若手からベテランまでそろうチームへと落とし込んでいく。

「KINAN Cycling Teamの一員としてジャパンサイクルリーグやUCI国際レースで新たな挑戦ができることを今とても楽しみにしています」と畑中。
「今までの経験を生かしつつ、勢いのあるこのチームのメンバーとともに一丸となって勝利を目指したいと思います。応援よろしくお願いいたします」

畑中勇介 ©Satoru KATO

来季はネオプロ(プロ1年目)の選手も採用する。22歳の花田は、ジュニア時代から各年代の国内トップを走ってきた若き力。ジュニア時代には、2016年1月に東京・大島で開催されたアジア選手権ロードレースで銅メダルを獲得。アンダー23カテゴリー昇格後の2019年には、若手の登竜門となっているジャパンカップ オープンレースで優勝を飾るなど、着実な成長曲線を描いてきた。今季までは若手育成チーム「チームユーラシア・IRC Tire」の一員としてベルギーを拠点に活動。ジュニア時代から得意としてきた上りとスピードを生かした走りは、KINAN Cycling Team加入を機により磨きをかけていくことになる。

「KINAN Cycling Teamへの加入が決まり、大変うれしく思います」と花田。
「ここからが新たなスタートになるので、現状に満足せず日々強くなることを意識し、チームの勝利に貢献できるよう最善を尽くします。応援よろしくお願いします」

花田聖誠 ©KINAN Cycling Team/Syunsuke FUKUMITSU

2020年シーズンからの継続は10選手

新加入選手を加えた全12選手の内訳は、日本人ライダー9人、スペイン人ライダー2人、フランス人ライダー1人で、平均年齢は29歳。前述の通り、若手有望株から実績十分のベテランまでがそろい、これまでの経験をビッグレースへの結果に結び付けていく。

山本元喜 ©KINAN Cycling Team/Syunsuke FUKUMITSU

また、より多彩なメンバーでのチーム編成が進んでいることもあり、引き続き選手の専門種目や特性に応じてロード、トラックの2部門によるパート分けも継続。チームとしてはロードレースに重きを置きつつ、トラック競技・中距離種目を専門とする荒井佑太、同・短距離種目を専門とする田中克尚と福田真平へのサポートも惜しまず取り組んでいく。

田中克尚 ©KINAN Cycling Team/Syunsuke FUKUMITSU

2020年シーズンは、新型コロナウイルス感染拡大による未曽有の状況により、レース活動が大幅に制限されたにもかかわらず、チームはロード・トラック合わせて4勝を挙げた。2021シーズンも感染拡大状況や、それにともなう国内外の情勢に則しながら、可能な範囲で日本、そして本来の主戦場であるアジアでのレースへ臨む。

具体的には、メインスポンサー「キナン」のお膝元である熊野地域を舞台に開催されるツール・ド・熊野(UCIアジアツアー2.2)での個人総合優勝者の輩出を最大目標としていく。ここまで幾度となく“熊野征服”に挑んできたが、いまだそれが実現に至らず。「2021年こそは!」との思いで、長年の悲願に挑戦する。

マルコス・ガルシア ©KINAN Cycling Team/Syunsuke FUKUMITSU

2021年シーズンに発足することが発表された新リーグ「ジャパンサイクルリーグ(JCL)」への参戦が決まり、チームとしても勝利を目指すとともに、リーグ、そして自転車界全体の発展につながるよう尽力していきたいという。並行して、国際レース出場を通じた選手の強化、国内ロードレースチームによるトラックレース対抗戦「バンクリーグ」への参戦、イベント開催・参加を通じた熊野地域や自転車界への貢献、自転車安全教室の実施、ホストレースである「KINAN AACA CUP」の開催など、多岐にわたって活動をしていく。

サルバドール・グアルディオラ ©KINAN Cycling Team/Syunsuke FUKUMITSU
福田真平 ©KINAN Cycling Team/Syunsuke FUKUMITSU
新城雄大 ©KINAN Cycling Team/Syunsuke FUKUMITSU
荒井佑太 ©KINAN Cycling Team/Syunsuke FUKUMITSU
トマ・ルバ ©KINAN Cycling Team/Syunsuke FUKUMITSU
中島康晴 ©KINAN Cycling Team/Syunsuke FUKUMITSU
山本大喜 ©KINAN Cycling Team/Syunsuke FUKUMITSU

●キナンサイクリングのホームページ

川崎嘉久がKINAN AACA CUP 2020最終戦で優勝

KINAN Cycling Teamがホストを務める東海地区のロードレースシリーズ「KINAN AACA CUP」の2020年シーズン最終戦が、11月28日に愛知県新城市・鬼久保ふれあい広場を主会場に開催。メインクラスの1-1カテゴリーは、終盤に逃げる選手を捕まえた集団によるスプリント勝負に。最後は川崎嘉久(Nerebani)が制し、レース中3度の周回賞と合わせてタイトルを複数獲得した。

KINAN AACA CUP 2020最終戦は川崎嘉久が優勝 ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

新型コロナウイルス感染拡大にともない、開催の中止・延期が続いた今季の同シリーズ。出場選手や関係者、観客の感染リスクを避けながら、おおよそ月1回のペースでレースを開催。今節は2020年シーズンの最終戦として、愛知県新城市での実施となった。

鬼久保ふれあい広場を基点とする1周1.4kmのコースは、アップダウンとコーナーが連続するテクニカルなレイアウト。選手たちのライドテクニックやダウンヒルスピードなど、観る者にとっては魅力満載。また、紅葉の時期とあって赤や黄色に色づいたコース周囲の景色もイベントに彩りを添える。

そんなシーズンの締めとなる一戦には、KINAN Cycling Teamから椿大志、山本大喜、中島康晴の3人がホストライダーとして参戦。キッズレースでの伴走や会場に訪れたファンへの対応と並行しながら、レース本番へと臨んだ。

リアルスタートからアタックが散発した序盤だが、変化に富むコースでは簡単には決定打が生まれない。激しい出入りが続いたまま周回数を重ねていく。

そんな状勢が変化を見せたのは、15周を過ぎようかというタイミング。椿ら数人が集団から抜け出すと、山本も合流。そのまま5人が逃げる展開となる。前を行く選手たちはその後もペースを緩めず進むと、先頭はトム・ボシスと山本の2人に。20周目には山本がボシスを引き離して独走態勢へと持ち込んだ。

1人先行する山本をのぞき、一時的に逃げていた選手たちはいずれもメイン集団へと戻る。その集団はペースの上下が起きたこともあり、山本との差は30秒まで開く。集団では代わる代わる牽引役がスピードアップを図るが、先頭とのタイム差に大きな変化はないままレースは後半へと入っていく。

快調に飛ばし続ける山本だが、30周を過ぎてメイン集団もいよいよ追撃ムードが本格化。周回を重ねるごとにその差は縮まり、タイムギャップは9秒に。これを受けて山本が再度ペースを上げて差を拡大するなど、戦況は一進一退を繰り返した。

そんな流れに大きな局面が訪れたのは残り3周。早川朋宏(Aisan Supporters)、上野颯斗(京都産業大学)、そして椿を加えた3人が集団から飛び出し追走を開始。これでレース全体が活性化すると、次の周回でついに山本をキャッチ。メンバーの入れ替わりを経てパックとなった5人ほどが、集団に対してわずかにリードした状態で最終周回の鐘を聞いた。

この直後に集団が前をゆく選手たちに合流すると、そのまま最終局面に向けたポジション争いへ。フィニッシュ直前の短い上りを前に、位置取りをかけた攻防が激化。前方で上りに入れば有利になるとあり、選手たちがひしめき合う。

迎えた最後の上り。ここへ一番に飛び込んだのは川崎。他の追随を許さないパワーとスプリントを発揮し、トップでフィニッシュラインを通過。このレースでは再三のアタックで、途中に設けられた周回賞4回のうち3回を獲得。さらには優勝と、タイトルを総取りする活躍を見せた。

また、長時間の独走で魅せた山本のシリーズ年間総合1位も確定。今節の上位フィニッシュはならなかったものの、第7戦と第8戦で連勝するなど、随所で持ち味を発揮し総合タイトル獲得につなげている。

そのほか、この日はキャリア最終レースを迎えた椿の引退セレモニーが開かれるなど、シーズンの締めくくりらしい催しも。チーム活動も今年残りわずかとあって、椿をお目当てに会場へと赴いたファンも多かった様子。それに応えようと椿も長時間ファン対応に努めた。

例年と比較してもよりアクティブに、そして勝利を賭けた激しいレースが繰り返されたKINAN AACA CUP。2021年シーズンもレースシーンの活性化を目指してあらゆる趣向で開催していく見通しとなっている。

●キナンのホームページ