eSIMのtrifaなら安価で確実に旅先でネット通信できる

2022年のツール・ド・フランス取材では、eSIMのtrifa(トリファ)を使って転戦中だ。trifaは日本の接続サービス会社だが、スマホアプリで利用でき、しかもさまざまな地域・期間プランが安価で用意されている。アプリで完結するので最初のホテルにSIMカードやポケットWiFiを送ってもらうこともない。空港で専用カウンターを探したり、そこで語学力が求められるプランの選択を迫られることもない。

【2023年4月掲載内容を更新】料金が大幅に値下がりしたため。

デンマークでeSIMが大活躍。クルマの中や公園のベンチなどどこでもパソコン通信できる

2022ツール・ド・フランスはデンマークで3日間を過ごし、大会4日目にフランスに向かうので、購入したプランは「ヨーロッパ周遊」、期間は「31日間」で、原稿や画像を毎日パソコンから送稿するので容量の大きい「30GB」を選択した。料金は1万2900円(注)だ。

(注)2023年の料金は8750円

ちなみに2022年に大会主催者が用意したワイヤレス通信を契約すると24日間の全日程で720ユーロ(10万8000円)。まさに今回はコストダウンの成功例だ。

【記事】ここ2、3年は通信環境の進化が加速中

24日間のツール・ド・フランス取材はtrifaで原稿送信した

ちなみにその他のプラン
米国・15日間(3GB)3650円
グアム・15日間(3GB)8700円
フランス・7日間(1GB)720円
アジア周遊・8日間(6GB)2340円
ヨーロッパ周遊・31日間(10GB)4580円

2023年の料金プラン
米国・15日間(3GB)2900円
グアム・15日間(3GB)6900円
フランス・7日間(1GB)570円
アジア周遊・7日間(5GB)8620円
ヨーロッパ周遊・31日間(10GB)3300円

こういった手続き、eSIMのインストール、使用中の残量確認は無償提供されるアプリで行う。購入手続きはいたって簡単なので、公式サイトを参照のこと。

eSIMを購入してインストールする手順

アプリのトップでまずは訪問する国、あるいは複数の場合はエリアを選択

今回はフランスの他にデンマークやスウェーデンに行くので「ヨーロッパ周遊」を選択。2023年は「グローバル」は消滅

1カ月なので「31日間」、連日パソコン通信をするので「30GB」を選択。このプランは2022年夏から追加された。2023年は掲載画像の料金よりも割安に

テザリングが可能なので、Wi-Fiルーターとしてパソコンでインターネット接続することもできる。2023年は掲載画像の料金よりも割安に

注文そのものはクレジットカード情報などを入力してすぐに完了。2023年は掲載画像の料金よりも割安に

やり方がわからないときはLINEでチャット相談

ちょっとだけ手間取ったのは、次のステップであるeSIMのインストールだった。たまのバグで「インストール完了」の知らせが画面表示されないこともあり、その症状が出現した。こんなときはLINEのチャット機能で日本のスタッフとやりとりして解決策を教えてもらえる。これが実にありがたかった。

アプリ不具合からeSIMインストールの完了画面が出ず、完了していないと思いこんで何度もトライ。LINEで相談して解決した

結果としてeSIMは無事にインストールされていて、バグ改善によってこうしたトラブルもなくなってくると思うが、ここで学習したことは海外渡航前にeSIMをインストールしておくことが大切だということ。

そこで、実際に日本にいるときにやっておくべきインストール作業と、海外での最終的なセッティングを紹介。

【出国前】eSIMをインストールしておく

スマホの「設定」を開く
「モバイル通信」を選択
「モバイル通信プランを追加」を選択
QRコードまたは手動のコードを使ってeSIMをダウンロード
「モバイル通信プランを追加」を選択
「モバイル通信」画面に戻ると新しくeSIMが追加されているので、そちらを選択

🔎 どれが今回インストールしたeSIMなのかわからない場合は?

トリファを経由してインストールしたeSIMには「副回線」「eSIM」「旅行」「仕事」「モバイルデータ通信」といった名前が振り分けられているはず。また、特定の名前をつけることもできる。

一方、普段使っているSIMの名前は「キャリアの名前」、又は「主回線」といった名前が振り分けられている。
「この回線をオンにする」がONになっていなければONに切り替える
ONにした後、一度前の画面に戻り、再度該当のeSIMを選択する
画面を下にスクロールし「データローミング」をONに切り替える

現地での利用状況確認画面

【現地到着後】eSIMを切り替える

「設定」を開く
「モバイル通信」を選択
「モバイルデータ通信」を選択
今回新たに追加したeSIMにチェックを入れる
2〜3分待つと通信が開通する
もし通信が開通しない場合は端末の再起動を試す

コペンハーゲンの街歩きもGoogle Mapを起動させて目的地を探せる
国境を越えてスウェーデンへ。自動ローミングで(数分は要するが)なにもすることなく接続できる

●eSIMのtrifa(トリファ)のホームページ

2022ツール・ド・フランス出場176選手リスト

UAEエミレーツ(UAE)
1* タデイ・ポガチャル(スロベニア)
2 ジョージ・ベネット(ニュージーランド)
3* ミッケル・ビョーグ(デンマーク)
4 ベガールステイク・ラエンゲン(ノルウェー)
5 ラファウ・マイカ(ポーランド)
6* ブランドン・マクナルティ(米国)
7 マルク・ソレル(スペイン)
8* マルク・ヒルシ(スイス)

©A.S.O. Charly Lopez

ユンボ・ビスマ(オランダ)
11 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア)
12 ティシュ・ベノート(ベルギー)
13 ステフェン・クライスバイク(オランダ)
14 セップ・クス(米国)
15 クリストフ・ラポルト(フランス)
16 ワウト・ファンアールト(ベルギー)
17 ネイサン・ファンホーイドンク(ベルギー)
18 ヨナス・ビンゲゴー(デンマーク)

イネオスグレナディアーズ(英国)
21 ゲラント・トーマス(英国)
22 ダニエル・マルティネス(コロンビア)
23 ジョナタン・カストロビエホ(スペイン)
24 フィリッポ・ガンナ(イタリア)
25* トーマス・ピドコック(英国)
26 ルーク・ロウ(英国)
27 ディラン・ファンバーレ(オランダ)
28 アダム・イェーツ(英国)

AG2Rシトロエン(フランス)
31 ベン・オコーナー(オーストラリア)
32 ジョフレ・ブシャール(フランス)
33 ミカエル・シェレル(フランス)
34 ブノワ・コスヌフロワ(フランス)
35* スタン・デウルフ(ベルギー)
36 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)
37 オリベル・ナーセン(ベルギー)
38 オレリアン・パレパントル(フランス)

ボーラ・ハンスグローエ(ドイツ)
41 アレクサンドル・ウラソフ(ロシア)
42 フェリックス・グロスシャートナー(オーストリア)
43 マルコ・ハラー(オーストリア)
44 レナード・ケムナ(ドイツ)
45 パトリック・コンラッド(オーストリア)
46 ニルス・ポリッツ(ドイツ)
47 マキシミリアン・シャフマン(ドイツ)
48 ダニー・ファンポッペル(オランダ)

クイックステップアルファビニル(ベルギー)
51 ファビオ・ヤコブセン(オランダ)
52 カスパー・アスグリーン(デンマーク)
53* アンドレア・バジオーリ(イタリア)
54 マティア・カッタネオ(イタリア)
55* ミッケル・ホノレ(デンマーク)
56 イブ・ランパールト(ベルギー)
57 ミケル・モルコフ(デンマーク)
58 フロリアン・セネシャル(フランス)

モビスター(スペイン)
61 エンリク・マス(スペイン)
62 イマノル・エルビティ(スペイン)
63 ゴルカ・イサギレ(スペイン)
64* マッテオ・ヨルゲンソン(米国)
65 グレゴール・ミュールベルガー(オーストリア)
66 ネルソン・オリベイラ(ポルトガル)
67 アルベルト・トレス(スペイン)
68 カルロス・ベローナ(スペイン)

コフィディス(フランス)
71 ギヨーム・マルタン(フランス)
72 ピエールリュック・ペリション(フランス)
73 シモン・ゲシュケ(ドイツ)
74 ヨン・イサギレ(スペイン)
75 ビクトル・ラフェ(フランス)
76 アントニー・ペレス(フランス)
77 バンジャマン・トマ(フランス)
78 マキシミリアン・バルシャイド(ドイツ)

バーレーンビクトリアス(バーレーン)
81 ジャック・ヘイグ(オーストラリア)
82 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア)
83 カミル・グラデク(ポーランド)
84 マテイ・モホリッチ(スロベニア)
85 ルイスレオン・サンチェス(スペイン)
86 ディラン・トゥーンス(ベルギー)
87 ヤン・トラトニク(スロベニア)
88* フレッド・ライト(英国)

グルパマFDJ(フランス)
91 ダビド・ゴデュ(フランス)
92 アントワーヌ・デュシェーヌ(カナダ)
93* ケビン・ゲニエッツ(ルクセンブルク)
94 シュテファン・キュング(スイス)
95 オリビエ・ルガック(フランス)
96 バランタン・マデュアス(フランス)
97 ティボー・ピノ(フランス)
98* マイケル・ストーラー(オーストラリア)

アルペシン・ドゥクーニンク(ベルギー)
101 マチュー・ファンデルプール(オランダ)
102 シルバン・ディリエ(スイス)
103 ミヒャエル・ゴグル(オーストリア)
104 アレクサンダー・クリーガー(ドイツ)
105* ヤスパー・フィリプセン(ベルギー)
106 エドワード・プランカールト(ベルギー)
107 クリスティアン・ズバラーリ(イタリア)
108 ギヨーム・ファンケイルスブルク(ベルギー)

DSM(ドイツ)
111 ロマン・バルデ(フランス)
112* アルベルト・ダイネーゼ(イタリア)
113 ジョン・デゲンコルプ(ドイツ)
114* ニルス・エーコフ(オランダ)
115 クリス・ハミルトン(オーストラリア)
116* アンドレアス・レックネスン(ノルウェー)
117 マーティン・トゥスフェルト(オランダ)
118* ケビン・ベルマーク(米国)

アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ(ベルギー)
121 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー)
122 スベンエリック・ビーストルム(ノルウェー)
123 コービー・ホーセンス(ベルギー)
124 ルイス・メインチェス(南アフリカ)
125 アンドレア・パスクアロン(イタリア)
126 アドリアン・プティ(フランス)
127 タコ・ファンデルホールン(オランダ)
128* ゲオルク・ツィマーマン(ドイツ)

アスタナ・カザフスタン(カザフスタン)
131 アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン)
132 アレクサンドル・リアブシェンコ(ベラルーシ)
133 ジョセフロイド・ドンブロウスキー(米国)
134 ファビオ・フェリーネ(イタリア)
135 ドミトリー・グルズジェフ(カザフスタン)
136 ジャンニ・モスコン(イタリア)
137 シモーネ・ベラスコ(イタリア)
138 アンドレイ・ツェイツ(カザフスタン)

EFエデュケーション・イージーポスト(米国)
141 リゴベルト・ウラン(コロンビア)
142 ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル)
143 アルベルト・ベッティオル(イタリア)
144* シュテファン・ビッセガー(スイス)
145 オウェイン・ドゥール(英国)
146 マグナス・コルト(デンマーク)
147 ニールソン・ポーレス(米国)
148* ヨナス・ルッチ(ドイツ)

アルケア・サムシック(フランス)
151 ナイロ・キンタナ(コロンビア)
152 ワレン・バルギル(フランス)
153 マキシム・ブエ(フランス)
154 アモリ・カピオ(ベルギー)
155 ユーゴ・オフステテール(フランス)
156* マティス・ルーベル(フランス)
157 ルーカス・オウシアン(ポーランド)
158 コナー・スウィフト(英国)

ロットスーダル(ベルギー)
161 カレブ・ユアン(オーストラリア)
162 フレデリック・フリソン(ベルギー)
163 フィリップ・ジルベール(ベルギー)
164 レイナット・ジャンス(南アフリカ)
165* アンドレアス・クロン(デンマーク)
166* ブレント・ファンムール(ベルギー)
167* フロリアン・フェルメールス(ベルギー)
168 ティム・ウェレンス(ベルギー)

トレック・セガフレード(米国)
171 マッズ・ピーダスン(デンマーク)
172 ジュリオ・チッコーネ(イタリア)
173 トニー・ガロパン(フランス)
174 アレックス・キルシュ(ルクセンブルク)
175 バウケ・モレマ(オランダ)
176* クイン・シモンズ(米国)
177 トムス・スクインシュ(ラトビア)
178 ヤスパー・ストゥイベン(ベルギー)

トタルエネルジー(フランス)
181 ペテル・サガン(スロバキア)
182 エドバルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー)
183 マチェイ・ボドナル(ポーランド)
184* マチュー・ビュルゴドー(フランス)
185 ピエール・ラトゥール(フランス)
186 ダニエル・オス(イタリア)
187 アントニー・テュルジス(フランス)
188 アレクシー・ビエルモ(フランス)

イスラエル・プレミアテック(イスラエル)
191 クリストファー・フルーム(英国)
192 ギヨーム・ボワバン(カナダ)
193 サイモン・クラーク(オーストラリア)
194 ヤコブ・フルサン(デンマーク)
195 ガイ・ニーブ(イスラエル)
196 ユーゴ・ウル(カナダ)
197 クリスツ・ニーランズ(ラトビア)
198 マイケル・ウッズ(カナダ)

バイクエクスチェンジ・ジェイコ(オーストラリア)
201 マイケル・マシューズ(オーストラリア)
202 ジャック・バウアー(オーストラリア)
203 ルーク・ダーブリッジ(オーストラリア)
204 ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ)
205 アムントグレンダール・ヤンセン(ノルウェー)
206 クリストファー・ユールイェンセン(デンマーク)
207 ルカ・メズゲッツ(スロベニア)
208 ニック・シュルツ(オーストラリア)

B&BホテルズKTM(フランス)
211 フランク・ボナムール(フランス)
212 シリル・バルト(フランス)
213 アレクシー・グジャール(フランス)
214 ジェレミー・ルクロック(フランス)
215 シリル・ルモワンヌ(フランス)
216* ルーカ・モッツァート(イタリア)
217 ピエール・ロラン(フランス)
218 セバスティアン・シェーンベルガー(オーストリア)

数字の後の * は新人賞対象選手

ラファが女子ツール・ド・フランスのためのスペシャルジャージ制作

ラファとパレススケートボードがツール・ド・フランスファムの開催に備えて、EFエデュケーションTIBCO-SVBとEFエデュケーション・イージーポストの特別なチームジャージを作った。

フランスを巡る壮大な旅はパリで終わらない。メンズのプロトンだけでなく、2022年はウィメンズのプロトンが世界最大のロードレースのスタートラインにつく。ツール・ド・フランスが終わると、もう1つのツール・ド・フランスが始まる。

メンズ ラファ + パレス EFエデュケーション・イージーポスト プロチーム エアロ ジャージ

これはロードレースにとってもファンにとっても、そしてもちろんライダーにとっても革新的な出来事だ。この夏を盛り上げるツール・ド・フォースに注目しよう。

ウィメンズ ラファ + パレス EFエデュケーションTIBCO・SVB プロチーム トレーニング ジャージ
メンズ ラファ + パレス EFエデュケーション・イージーポスト プロチーム トレーニング ジャージ

ツール・ド・フォースを祝福するために、再びラファはパレススケートボードとパートナーシップを締結。EFエデュケーションTIBCO-SVBとEFエデュケーション・イージーポストのために、目をひく限定版スイッチアウトキットを製作した。

それだけでなく、両チームの装いが全面的に一新。一般販売予定のキャノンデールスーパーシックスEVOのフレームセットや、POCのヘルメット、クロックスがパレスとのコラボレーションにより誕生した特別なデザインをまとって登場する。

キャノンデールスーパーシックスEVOも同じデザインに

チームのパートナーであるWHOOPやワフーも加わり、それぞれスイッチアウトキットから着想を得たデザインの製品を発売予定。

●ラファの詳細ページ

ツール・ド・フランスさいたまにカベンディッシュが参戦

英国チャンピオンのマーク・カベンディッシュ(クイックステップ・アルファビニル)が2022年11月6日にさいたま新都心駅周辺で開催されるツール・ド・フランスさいたまクリテリウムに参戦することが発表された。

カベンディッシュのいつものサムアップ ©A.S.O. Charly Lopez

カベンディッシュはツール・ド・フランスで区間通算最多タイとなる34勝、ポイント賞を2度獲得している。さいたまは3大会ぶり2回目の出場。2017 年には初出場のさいたまクリテリウムで優勝を果たしている。

2017ツール・ド・フランスさいたまで日本のファンと交流するマーク・カベンディッシュ ©Yuzuru SUNADA

その他の出場選手は、決定次第発表されるという。

●ツール・ド・フランスさいたまのホームページ

現在最も自転車に詳しい直木賞作家、熊谷達也『明日へのペダル』

直木賞作家・熊谷達也の『明日へのペダル』がNHK出版から6月28日に発売された。定価:1870円(税込)。四六判。336ページ。

いつもの明日は必ずやってくるとは限らない、ある日突然分断されることも。新型コロナ禍で息苦しい時代に、自転車を通して前向きに生きようとする人々の明日へと向かう営みを描く。自ら愛車を駆り入賞も果たす小説家が、ロードバイク愛を込めて描く感動の物語。

『明日へのペダル』のあらすじ

本間優一は多少のさざ波はあっても大過なく仙台で会社員生活を送ってきた。50代半ばに差し掛かり、健康上の理由からロードバイク(本格的なスポーツ用自転車)に乗るようになる。部下の唯の指導を受けて、優一のロードバイク技術はめきめき向上していく。

思えば本気になって趣味に打ち込むことは、いままでに経験のないことだった。おりしも新型コロナウイルスのパンデミックが仙台にも広がり経済にも影響を及ぼすように。そんな息苦しい状況にあっても、自転車を通して、優一たちは新しい扉を開いてゆく。 

熊谷達也 (クマガイ・タツヤ)
1958年、宮城県仙台市生まれ。東京電機大学理工学部数理学科卒。97年、『ウエンカムイの爪』で第十回小説すばる新人賞を受賞し、作家デビュー。2000年、『漂泊の牙』で第十九回新田次郎文学賞、04年、『邂逅の森』で第十七回山本周五郎賞、第百三十一回直木賞のダブル受賞を果たす。

近著に『潮の音、空の青、海の詩』(NHK出版)、『エスケープトレイン』(光文社)、『無刑人芦東山』(潮出版)ほか

明日へのペダル [ 熊谷 達也 ]

価格:1,870円
(2022/6/28 12:03時点)
感想(0件)

ここに来れば、だれでも自転車に乗りたくなる…シマノ自転車博物館

ここに来れば、だれでも自転車に乗りたくなる。シマノ自転車博物館が2022年3月、大阪府堺市にオープンした。同市の大仙公園内に1992年に開館した自転車博物館サイクルセンターを新築移転し、改称したもの。展示面積は3.5倍になり、その歴史を知るばかりでなく、自転車の知識を学び、魅力を再確認する場として欠かせない存在となった。

映像で語られている自転車に照明が当たり、映像と展示が連動する演出がされている

手元変速システムを開発した神保正彦さんが案内してくれた

世界有数の自転車パーツメーカー、シマノが創業時から拠点とする堺市。だから国内外の自転車を集めた施設があっても不思議ではない。公益財団法人シマノ・サイクル開発センターが運営する新博物館を案内してくれたのは同館の神保正彦参与。記者が書いた「シマノ〜世界を制した自転車パーツ〜堺の町工場が世界標準となるまで」(光文社刊)では、変速とブレーキレバーが一体となった世界初のシステムを開発した担当者として登場。現在は世界中のメーカーが追従し、初級者向けのロードバイクさえ採用しているのだから、このシステムは事実上の世界標準といえる。

自転車のこれからの可能性を紹介したゾーンに立つ神保正彦さん

「ここに来れば、だれでも自転車に乗りたくなる。そんな存在でありたいです」と神保さん。従来型の博物館にありがちな、多くの展示物が並ぶばかりのフロアにはせず、デジタル解説システムを活用した最適な情報提供を心がけたという。

1階には無料ゾーンもあり、古墳を作るための鉄器に始まり、鉄砲や刃物といった金属加工の町であった堺が、自転車の町となっていく変遷を伝えている。自転車好きなら堺にはシマノがあることを知っているが、一般の人にも自転車の町であることを知ってもらいたいという狙いがある。

堺の伝統文化を知ることができるエリアは無料で入場できる

チケットを購入してその先に進むと、まず自転車の歴史をまとめた映像を視聴する。その変遷を大まかにつかんでおけば、その先に用意されたもっと深い部分の話が理解できるという仕掛けだ。自転車を発明した人たちの夢、暮らしを豊かにする多様な自転車を紹介したコーナーがあり、「どうして自転車は倒れないの?」といった子どもたちの素朴な疑問に答えた映像もある。

2階のCゾーン

これからの体験型博物館は「シテ」と呼ばれる

世界遺産の宝庫フランスでは、従来型のミュージアムから「シテ=都市」と呼ばれる体験型博物館に移行しつつある。所蔵品を鑑賞するだけでなく、体験することで自らの想像域を広げ、さらなる魅力に気づく。ボルドーにはワインのシテがあり、ローヌ地方にはチョコレートのシテがある。自転車博物館も日本ではまだ希少な「シテ」であり、自転車の魅力を体験する場となるはずだ。

最新技術を体験。後ろのギアを変えると、それに連動してその他パーツが適正化。簡単に言うと乗り手はレバーを動かすだけで、パーツ群がそれぞれ挙動してストレスのない走りを実現させる

ツール・ド・フランスの現場で信頼される最高級パーツの商品企画などを担当してきた神保さんだが、体調を害した時期もあった。それがスピードを競った走り方から方向転換するきっかけともなった。自転車を動かすのは結局人間であり、その楽しみ方は人の数だけある。旅行や食などと自転車を結びつけることで、自転車の魅力がさらに増す。世界各国の自転車文化を目撃してきた神保さんが手がけた博物館だけに、自転車がある快適ライフスタイルをだれもが頭の中に描けるようになる。

山口和幸著「シマノ」もマルチメディアライブラリーに所蔵されていた。電書版は発売中

自転車ファンも、そうでない人も、大人も子どもたちも訪れると楽しい博物館である。

シマノ自転車博物館に行ってみよう

アクセスは南海電鉄高野線「堺東駅」から徒歩約5分。敷地内にはスタンドを持たないスポーツバイク用ラックが多数あり、サイクリング途中でも気軽に立ち入ることができる。自転車パーツの変遷やメディア・ライブラリーも充実。期間限定の特別展として2023年3月20日まで「自転車の旅・様々なかたち」と題した展覧を開催中。国内外で長期の自転車旅を行った3組の足跡を紹介している。

地上5階建ての施設は日没後にライトアップされる

一般500円、高校生・大学生200円、中学生以下・65歳以上無料。団体割引あり。
●シマノ自転車博物館のホームページ

シマノ 世界を制した自転車パーツ〜堺の町工場が「世界標準」となるまで〜【電子書籍】[ 山口和幸 ]

価格:1,408円
(2022/6/28 06:37時点)
感想(0件)