ロードレース競技の全日本選手権は、大会2日目となる6月25日に男子アンダー23(23歳未満)のロードレースを実施。KINAN Racing Teamからただ1人出場の仮屋和駿が、フィニッシュ前3kmからのアタックで独走に持ち込み、この年代ナンバーワンを証明する鮮やかな勝利。チームに日本チャンピオンジャージをもたらした。
前日の個人タイムトライアル種目に続き、この日からはロードレース種目が開始。その皮切りとなったのが、アンダー23カテゴリーのレースだった。18歳から22歳までの選手が対象で、若手選手にとってはトップライダーへの登竜門。このカテゴリーでの活躍からプロ選手として大成した選手は数知らず。また、勝てば日の丸をあしらったナショナルチャンピオンジャージの着用が許可され、国内外各所のレースで一目置かれる存在となる。
そんな年間最大のレースの1つに、KINAN Racing Teamからはチーム最年少の仮屋がエントリー。いつもとは違い、チームメートがいない中での戦いとなるが、落ち着いたレース運びが求められた。
広島県三原市・広島県中央森林公園のサイクリングコース12.3kmを10周回する123kmで争われたレースには、119選手が出走。2周目で4人の逃げグループが形成されたが、仮屋はここに加わらず、有力選手が待機するメイン集団でレースを進める。この形成が5周目まで続く。
変化が見えたのは6周目。逃げていた4選手がメイン集団へと戻り、新たに6人がリードを開始。優勝候補と目された選手も含まれたが、ここでも仮屋は状況を静観。やがて先頭は2選手が抜け出す形になり、メイン集団に対し最大で1分10秒ほどの差とした。
こうした流れから、8周目で大きな局面がやってくる。メイン集団から断続的にアタックがかかり、抜け出した6人が先頭2人を追走する態勢をつくる。これに仮屋が加わって、前の2人との差を一気に縮めていく。この周回を追える時点で、その差は30秒。そして、9周回目の前半で先頭へ合流した。
後続に50秒近いタイム差を得た仮屋たちの先頭グループは、最終周回の鐘を聴く頃には7人に絞り込まれ、そのまま優勝争いへと移っていく構え。逃げ切りにかけて協調体制を保った先頭メンバーは、残り1周となってもメイン集団に対してタイム差をキープし、徐々に勝ち逃げとなることが濃厚に。あとは、誰がアタックを決めるのか、またはスプリント勝負となるのかが焦点となった。
先頭グループ内では再三強力なアタックがかかるが、これらを冷静に対処し続けた仮屋は仕掛けどころを探る。そして残り3km、最も勾配が厳しくなる上り区間で満を持してアタックすると、それまで一緒に逃げてきた選手たちを振り切ることに成功。しばし5秒ほどの差で追走メンバーが続いたが、フィニッシュへ近づくにつれてその差は拡大傾向に。単独で最後の直線へとやってきた。
この長い直線もトップで駆けた仮屋は、残り100mで勝利を確信。最後の最後はきっちり、「KINAN」アピールを忘れることなくフィニッシュラインへ。狙って獲ったアンダー23カテゴリーの頂点だ。
KINAN Racing Teamにとって、日本タイトルの獲得は2018年の山本元喜(エリートロードレース)、山本大喜(アンダー23個人タイムトライアル)以来。通算3枚目となる日本チャンピオンジャージに。今季チーム加入の仮屋にとっては、KINANメンバーとしての初勝利が日本タイトル。前日の個人タイムトライアルでは7位に終わり、リベンジを賭けて臨んだロードレースで結果を残した。
これにより、仮屋はアンダー23カテゴリーにおいて1年間の日本チャンピオンジャージの着用資格を獲得(2001年3月生まれにより、2023年シーズンいっぱいは同カテゴリーの対象)。当面は、在学する日本大学での活動と並行しながら、年代トップとして走っていく。
仮屋和駿のコメント
「終わったばかりで全然実感が湧いていない。最後の展開は冷静にイメージできていて、勝ちパターンに持ち込むことができた。我慢を続けて、ここぞという場面でアタックした。
最終周回でメイン集団と1分ほどの差だったので、逃げ切るのは難しいかなとも思ったが、終盤の上りに入ってもタイム差が変わっていないと知って逃げ切れると感じた。先頭グループは協調体制がとれていたので、一緒にいるメンバーで勝負できると思った。
独走には自信があったので、周りの動きを見ながら、絶対に行けるというところで勝負に出た。最後まで油断はできなかったが、フィニッシュ前100mでやっと優勝を確信できた。
これからは、日本大学の一員として走るインカレも勝ちたいし、KINANメンバーとしてJCLやUCIレースのメンバー入りも目指していきたい。アンダー23の日本チャンピオンに恥じない走りをして、将来的にはエリートでもこのチャンピオンジャージが獲れるような選手になっていきたい」
大会最終日・26日に控えるエリートカテゴリーのロードレースへ向けて、チームに勢いをもたらす最高の結果。仮屋の走りに続くべく、もう1つタイトルを狙っていく。なお、エリート部門には山本元喜、小出樹、花田聖誠、山本大喜、中島康晴、新城雄大、畑中勇介の7選手が出走する。
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