マルコス・ガルシアがツアー・オブ・ジャパン富士山を制して総合1位に

ツアー・オブ・ジャパンの最難関である富士山ステージが5月26日に静岡県小山町で開催され、キナンサイクリングのマルコス・ガルシアがフィニッシュまでの約7kmを独走。後続を一切寄せ付けない圧倒的な強さで悲願の富士山ステージ優勝を飾った。これにより、チーム内でリーダージャージが引き継がれ、前日に首位に立ったチームメートのトマ・ルバからガルシアの手に渡った。この第6ステージは新調されたコースセッティングのもと、ふじあざみラインの5合目を目指すヒルクライムレースとして行われた。

マルコス・ガルシアがツアー・オブ・ジャパン富士山ステージで圧倒的な勝利 ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

大会中盤戦から勢いが増したキナン勢の戦いぶり。チーム力を示す結果として前日の第5ステージ、南信州でルバが逃げ切りでステージ優勝。さらにはリーダージャージを獲得。個人総合で2位以下に1分以上の差をつけ、チーム内ステージ上位3選手のタイム合算で競うチーム総合でも首位に浮上。個人・チームともに最高のポジションで残るステージを戦うことになった。

そして迎えたこの日の富士山ステージ。キナン勢はリーダージャージとチーム総合のキープを念頭に置きつつ、山岳スペシャリストのガルシアでの上位進出もねらう構え。中島康晴、山本大喜、新城雄大の日本人ライダーがレース序盤を構築し、本格的な上りに入ってからはルバ、ガルシア、サルバドール・グアルディオラに勝負を託すことになる。

これまで数多くの伝説が生まれ、総合争いでも決定的瞬間が訪れた「ふじあざみライン」の上り。2018年からコース変更がなされ、2020年東京五輪個人ロードのフィニッシュ地点である富士スピードウェイの西ゲートからスタート。しばらく進んだのち、登坂距離11.4km、平均勾配10%、最大勾配22%のふじあざみラインへと入っていく。そしてフィニッシュは、富士山須走口5合目。レース距離はこの大会のロードレースステージにおいては最短の32.9kmとなる。

ツアー・オブ・ジャパン富士山ステージに挑むキナンチーム ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

正式スタートが切られると2選手が逃げを試みる。これを容認し、メイン集団のペーシングを図ったのはキナン。中島、山本、新城の3選手が先頭交代を繰り返しながら、安定したペースで進行。途中1人を逃がしたが、大勢に影響しないと判断し、そのまま3選手の逃げグループとして先行させる。一時は約1分となった逃げグループとのタイム差だったが、キナン勢の絶妙なペースコントロールもあり、徐々にその差が縮まっていく。ふじあざみラインに入ると同時に逃げていた3人をキャッチし、本格的な上りへと入っていった。

スタート直後から集団を牽引したキナン勢3選手が役目を終えると、レースはいよいよサバイバルに。集団から1人、また1人と後退し、力のある選手だけが生き残る状態となる。フィニッシュまで残り9kmを切ったところで、クリス・ハーパー(オーストラリア、ベネロング・スイスウェルネス)がアタック。2kmほど先行させたところで、メイン集団に決定的な動きが訪れる。動いたのはガルシアだ。

勢いよく集団から飛び出すと、グイグイと厳しい上りを突き進んでいく。すぐにハーパーをパスし、独走へと持ち込む。一定ペースを保って上るメイン集団にはルバとグアルディオラが待機。先を行くガルシアとは1分前後のタイム差で推移したが、終盤にかけてその差は広がることに。その間、メイン集団から追走をねらう選手の飛び出しがあったものの、ガルシアに追いつくまでには至らなかった。

登坂力の違いを見せつける格好となったガルシアの独走劇。最後までスピードは衰えることがないまま、富士山須走口五合目のフィニッシュエリアへと姿を現した。最後はバイクから降りて、自身に力を与えたヨネックスロードバイク「カーボネックス」を天高く掲げてみせた。過去2度、このステージでの優勝をねらいながら跳ね返されてきた悔しさを晴らす、雪辱の勝利。ツアー・オブ・ジャパン通算では2017年の第7ステージ(伊豆)に続く2勝目、プロ通算では4勝目とした。そして、チームとしても前日のルバに続く2連勝となった。

ガルシアのフィニッシュ後、追走を図った2選手に続いてメイン集団でレースを進めた選手たちが続々とやってきた。リーダージャージのルバをケアし続けたグアルディオラは自慢の登坂力を発揮し、ガルシアから2分4秒差の7位、さらに9秒差の10位にルバも続き、キナン勢がトップ10に3人を送り込んでチーム力を証明。レース序盤のコントロールを担った中島、山本、新城も走り切り、次のステージへ駒を進めている。

これらの結果から、グリーンのリーダージャージはルバからガルシアへ移動。チームリーダー2人がここまで予定通りに戦いを進めている。ガルシアは2位に総合タイム差39秒としている。また、個人総合3位につけるルバは同2位の選手との差17秒。同6位にグアルディオラが続くが、前後の順位が僅差となっていることから、さらなる総合ジャンプアップの期待が高まっている。

同時にトップを走るチーム総合でもリードを広げ、後続に5分以上の差をつけている。山岳賞でもガルシアが首位と1ポイント差の2位に浮上していて、キナン勢の複数タイトル獲得の可能性も出てきている。

熱い戦いが続く大会は終盤戦へ。26日に実施される第7ステージは、日本サイクルスポーツセンター内のサーキットコースがメインとなる通称「伊豆ステージ」。2018年から修善寺駅前を出発してのパレード走行が行われ、その後しばしのワンウェイルートを経て、1周12.2kmのサーキットへと入る。周回数は9回。テクニカルなコーナーやアップダウンが連続する難コースは、山岳ステージに匹敵するレベル。有力チームが捨て身の攻撃に出ることが例年の流れで、2018年もサバイバルレースが予想される。

2018年はこのステージでガルシアが感動のプロ初勝利を挙げたが、2018年はプロトンのリーダーとしてレースを迎えることになる。キナン勢はいかに戦うか。リーダージャージの堅守が最大のミッションとなるが、その他さまざまなチャンスにかけて、トライを続けていく。

マルコス・ガルシアがツアー・オブ・ジャパンの総合1位に ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

ツアー・オブ・ジャパン第6ステージ結果(32.9km)
1 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) 1時間19分19秒
2 ヘルマン・ペルシュタイナー(オーストリア、バーレーン・メリダ) +28秒
3 クリス・ハーパー(オーストラリア、ベネロング・スイスウェルネスサイクリングチーム) +1分48秒
4 ホセマヌエル・ディアス(スペイン、イスラエルサイクリングアカデミー) +2分0秒
5 ベンジャミ・プラデス(スペイン、チームUKYO) +2分4秒
6 ホセヴィセンテ・トリビオ(スペイン、マトリックスパワータグ)
7 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team)
10 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) +2分13秒
70 中島康晴(KINAN Cycling Team) +20分3秒
71 山本大喜(KINAN Cycling Team)
75 新城雄大(KINAN Cycling Team) +23分10秒

個人総合時間
1 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) 14時間2分52秒
2 ヘルマン・ペルシュタイナー(オーストリア、バーレーン・メリダ) +39秒
3 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) +56秒
4 サム・クローム(オーストラリア、ベネロング・スイスウェルネスサイクリングチーム) +2分5秒
5 ベンジャミ・プラデス(スペイン、チームUKYO) +2分11秒
6 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team) +2分17秒
56 中島康晴(KINAN Cycling Team) +31分27秒
59 山本大喜(KINAN Cycling Team) +34分2秒
70 新城雄大(KINAN Cycling Team) +44分34秒

ポイント賞
1 グレガ・ボーレ(スロベニア、バーレーン・メリダ) 72pts
4 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) 41pts
14 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) 14pts
17 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team) 13pts
36 新城雄大(KINAN Cycling Team) 6pts

山岳賞
1 小石祐馬(チームUKYO) 16pts
2 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) 15pts
9 新城雄大(KINAN Cycling Team) 3pts

チーム総合
1 KINAN Cycling Team 42時間12分4秒

マルコス・ガルシア

マルコス・ガルシアのコメント
チーム全体でレースをコントロールできた1日だった。アシストには序盤を中心に集団をコントロールしてもらい、本格的な上りが始まってからは力勝負に持ち込んだ。その結果、私が勝利することができた。上りで力を発揮できたのは、チームメートが序盤からリズムを作ってくれたからこそ。独走になってからは自分のペースを保って走ったが、すべてがプラン通りに運んだ。後続との総合タイム差39秒は決して安全なタイム差とは言えない。特に伊豆のコースは難しく、どんなレース展開でも起こり得る。それでもチームメートを信じて走れば、きっとリーダージャージはキープできると思う。

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