eMTBで富士山麓にある送電線の保守用トレイルを走る

山道の上りはこれまでMTBを必死でこぐか担ぎ上げていたが、電動アシスト装備のeMTBなら激坂だってスイスイ上れる。今回は「電気つながり」ということで、東京電力が送電線の保守点検をするために管理している山道を走った。今春には「新ジャンルのハイブリッドトレイル」として一般の人も走れるようになるという。

メリダ社のeMTBは35万9000円から85万円(税別)。重量は20kg前後でロードバイクの3倍近くある

eMTBの機動力を富士山麓で十分に生かす

電動アシスト自転車は最近「eバイク」と呼ばれる。未就学児の送迎や、坂道の多い町の移動などに威力を発揮する。その動力機能はそれだけにとどまらない。電動パワーが最も威力を発揮するのはオフロードの激坂だ。これまで降車して押し歩きしていた坂も、サドルに座ってペダルを回すだけで上っていけるのだ。その楽しさに気づいたメーカーがMTBに電動アシスト機構を搭載したeMTBを次々と投入。欧州で夏場のスキーゲレンデで流行し、今は日本でも話題になっているのだ。

日本では道路交通法などの規制があって、時速24kmを超えると電動アシスト力がオフになる。ロードバイクは人間の力だけでもそのくらいの速度は出てしまうので、電動搭載のメリットは少ない。一方で、不整地のオフロードは低速でじっくりと登っていくので速度超過でアシストオフになるケースはほとんどない。だからMTBこそ電動なのだ。

送電線を保守点検するトレイルがMTBフィールドに
富士山麓の鉄塔の下を走った

実際に乗ってみた。これまでのMTBなら下車して押したような激坂もグイグイといける。多少の岩ならパワーでクリアできる。難関を突破したときの心地よさといったらこの上ない。

コツとしては一生懸命にペダルをこぐと電気でアシストする比率が低下するので、どんなに厳しい上りでもゆっくりとペダルを回すこと。そうすると「ウィーン」というモーター音とともに、坂の上に引っ張られるかのように進むことができるのだ。

デメリットは40万円以上と高額なこと。注目されてはいるが、販売台数が大きく伸びないのはそれが原因だ。また、重いので車載するなどが大変。階段を上るときも地獄だ。購入するより、必要なときにレンタルするのがいい。

山中をまっすぐに延びる送電線だが、その下の道は尾根や谷がある
送電線の下は管理者が歩くシングルトラックが伸びている

送電線の保守で必要なトレイルをMTBでも走れるように

東京電力パワーグリッドが静岡県の富士山麓に、送電線の下を走るトレイルコースを整備した。今春には有料で一般開放する予定だ。県と協同した地域振興事業で、その距離は7km。さらに13kmの延長も可能としている。

「東電の新規事業を社内で募集し、採用された6つのうちの1つ。若い社員の発案です」と静岡総支社の担当者。道路から離れた山中に敷設された送電線を管理するため、保守点検員が鉄塔を巡る道が必要で、これを維持するだけでもコストがかかる。新事業はMTBが走れるように手を加えたもの。途中には営林の林道がいくつか出現するので、トラブル時はそれを使って下山することも可能。

今回整備された送電線直下のコースは大半が自社所有地だったが、一部に私有地もあった。

「地権者も地域振興の目的に賛同いただき、無償で使用させてもらいました」

コース終点にはドロだらけになったeMTBを洗う水タンクがある

実走時はあいにくの雨で、さすがのeMTBでも苦難の連続。コースは下り基調だが、上り坂もあって、電動パワーを高出力モードにして難所を切り抜けた。かなりテクニックが必要な中上級者向きと感じた。

GPSデバイスで走行ルートを補足したが、こんな山の中なのにルートがまっすぐなことに驚いた。送電線の下の道だからである。心拍数がそれほど高くなかったのは電動アシストのおかげに他ならない。

同社では「新ジャンルのハイブリッドトレイル」を1日4000円の使用料(予定)で一般の愛好家にも楽しんでもらいたいという。eMTBなどの自転車は各自が持ち込む必要がある。

MTBコースを作った東京電力パワーグリッドのみなさん

●東京電力パワーグリッドの詳細ページ
メールでの問い合わせ:Fujiyamapowerline@tepco.co.jp
●静岡サイクリングのホームページ