自転車に乗り始めた人が最初に直面する難題は、サドルに腰かけたときの「おしりの痛み」だ。30分程度の乗車なら問題ないが、長時間・長距離になるとかなり痛くなる。あまりの痛みに耐えかねて、健康維持・増進をサポートしてくれるサイクリングをやめてしまう人もいる。今回はどうしておしりが痛くなるのかを分析するとともに、その対処法を紹介。
痛みに耐えきれずやめてしまうほど切実な問題です
おしりが痛む原因はさまざまだ。乗車姿勢の悪さや不適正なセッティング、背負った荷物の重みがかかって痛くなることもある。男性と女性で痛む部分も違う。女性に比べて骨盤が狭い男性に多いのは、サドルが当たる座骨の痛みだ。サドルと座骨にはさまれた筋肉がこすれて座骨滑液包炎を発症するケースが多い。座骨神経を圧迫して、しびれが生じることもある。
筋肉が損傷するので、ベッドに仰向けになって足を上げることも痛くてできなくなる。このケースの予防には乗車前のストレッチが有効だ。おしりの筋肉を伸ばすために、前屈してしっかりと伸ばしておく。日常からセルフマッサージをして筋肉をほぐしておくのもいい。もし痛くなってしまったときはアイシングする。
スポーツ用自転車は前傾姿勢がキツいので、下腹部や尿道部を圧迫してしまうこともあり、まれに男性機能障害となることも。神経が回復すれば直るが、繰り返しその症状が発生するのはよくない。おしりの痛みを緩和するために、パッドが内装された自転車専用パンツをまずは試してみる価値は十分ある。
バイクプラス所沢店の女性店長が教えてくれた
正しいポジションと適正なセッティングを心がける必要もある。乗り慣れないために緊張して背中が突っ張ってしまい、骨盤が前方に倒れすぎていたり、サドルが低すぎて体重がおしりにかかりすぎていたり。埼玉県所沢市の自転車ショップ「バイクプラス所沢店」の宮﨑早香店長がアドバイスをしてくれた。
サドルの高さを適正に
サドルがペダリングするのに最適な高さになっているかが大事。低すぎると坐骨に荷重が極端にかかってしまう。高すぎると腰が左右に揺れて摩擦が増えるだけでなく、ペダルまでの距離が短くなるように無意識にサドル前方の細いところに座るようになるので痛くなりやすい。
適正な高さを算出するために、股下の長さに係数をかけて算出したりもするが、それはあくまでもセッティング開始時の目安。大事なのはペダリングしたときの関節の可動域に対して効率的で無理のない高さに合わせること。乗り慣れている人のアドバイスが必要だ。
「サドルは高さだけでなく前後位置も大切なので、お店でフィッティングしてもらうのがいいです」と店長。
サドルの柔らかさを選ぶ
クロスバイクは上半身が立ち気味の姿勢なので、おしりに体重がかかりやすいため、ロードバイクよりクッションが多めのものを。体重がある人も厚いクッションがおすすめ。表面は柔らかめで、内層は硬めのクッションを採用したモデルも多い。
坐骨幅に合ったサドルを
坐骨の幅は体重・体型に関係ない。痩せ型でも広い人、ガッチリ系でも狭い人もいる。完成車にはライディング姿勢に適した柔らかさのサドルが装備されているが、その幅は人によっては細すぎることもある。セッティングはいいのに座り位置が落ち着かなかったり、腰が左右どちらかに落ちて座っているようならサドル幅が合っていないのだ。
「坐骨幅はお店で簡単に計測できるし、サイズが複数あるサドルが多く市販されているからきっとぴったりのサドルが見つかるはずです」
ペダリングをたまにサボるといい
乗車中にどれだけペダリングを休むかも、おしりの痛みを緩和する。ゆっくりまったりと漕いだり、休み休みペダリングをするような走りの場合は、速いペダル回転を維持し続けるよりもサドルに荷重がかかりやすく痛みやすい。上り坂やコーナーの立ち上がりでおしりを浮かせてちょっと走るだけでも効果あり。