2020東京パラの42.195kmを自転車で走るバーチャルレース

東京都がデジタル技術を活用して東京2020パラリンピックマラソンコースをVR(仮想現実)空間で再現し、スポーツの新たな楽しさと東京が持つ観光の魅力を体験できる取り組みを開始。同コースにスマートトレーナーで参加できるバーチャルスポーツ大会の参加者を募集している。

大会はランとライド(自転車)の2部門があり、それぞれ5回の出走がある。ライドは距離10kmが4回。4回目のスタートはYoutube配信でライブ実況される。最後のスタートが42.195km。

参加費は無料、ゲストはYoutube配信回に出演し、芸人の安田大サーカス団長安田(ライド10kmに参加)、タレントの森脇健児(ラン5kmに参加)、パラリンピアンの土田和歌子(ラン5kmにレース解説として出演)。

安田大サーカス団長安田、タレントの森脇健児、パラリンピアンの土田和歌子

TOKYOVRRacing2021大会詳細
日時:2021年12月12日(日)10時~18時
内容:VRレース(ライド・ラン各5回)
オンラインで参加し、 VR空間内のアバターに参加者自身のライドやランの動きを投影し、レースを実施
*(ライド、 ラン各1回)
募集人数:オンラインで参加(上限あり)/東京体育館で参加:各回18名
その他、 サテライト会場からも参加できる
募集期間:2021年11月12日(金)から11月30日(火)まで
〇参加方法/以下のURLよりエントリーページへお入りください。
《レース》
●ライド
10km(浅草寺雷門→増上寺)
42.195km(東京2020パラリンピックマラソンコース
●ラン  
3km(銀座→増上寺
5km(浅草寺雷門→日本橋
21km(上記フルマラソンコースを活用したハーフコース

●TOKYO VR Racing2021大会のエントリーページ

4年間の成長した姿を見てほしい…高梨沙羅が夢を語る

スキージャンプ女子の高梨沙羅(クラレ)が11月4日に都内で行われたTEAM JAPANオフィシャル寝具パートナー「エアウィーヴ」の北京冬季五輪日本代表選手団サポート発表会に出席。開幕まで3カ月に迫った3度目の冬季五輪に向けた意気込みを語った。

エアウィーヴ社のポータブルマットレスパッド(左)とハイパーダウンを愛用する高梨沙羅

2014年のソチ、2018年の平昌に続いて3回目の五輪で悲願の金メダル獲得をねらう25歳。

かつては、寝る直前までジャンプのことを考えていて、そんなときは夢の中にもジャンプのことに支配されてしまったという。夢だけに「よく覚えていないんですけど」というものの、1回だけ「違和感のある夢を見てしまって、それだけに頭から離れない夢がありました」と告白。

「ソチの時に、飛んだままどこに行くか分からないような…」と、自らが迷走する姿にがく然としたという。それでも今季は好調で、「北京ではこのマットレスでちゃんと眠れます」と自信をのぞかせた。

「目の前のことをしっかりこなしていけば、いい結果につながっていくと思います。一番はこの4年間で成長した姿を見てもらえるように頑張りたいと思います」と決意を口にする。

エアウィーヴ社のポータブルマットレスパッドを担ぐ高梨沙羅

北京向けに開発した、カスタマイズできて持ち運べる3分割マットレスパッド

エアウィーヴは、TEAM JAPANオフィシャル寝具パートナーとして北京2022オリンピック冬季競技大会に出場するTEAM JAPANに、今回のために開発したマットレスパッドと掛け布団を提供する。同社は2013年に日本オリンピック委員会(JOC)とオフィシャル寝具パートナー契約を締結して以来、日本代表選手団を寝具を通してサポート。北京でも最新の高機能寝具を提供し、選手が最高のパフォーマンス を発揮できるよう応援していくという。

解析アプリで体型をチェックして3分割4タイプのマットレスパッドの硬さを割り出す

今回のTEAM JAPANに提供されるマットレスパッドは3分割構造になっていて、表裏で硬さが異なる3つのパーツを組み替えることで体形に合わせてカスタマイズすることができる。さらに、キャリングバッグに入れて北京に簡単に持ち運びできるように軽量化された。

マットレスパッドの硬さは4段階(柔らかめ・標準・硬め・とても硬め)で構成。軽いので、選手自身が簡単にカスタマイズすることができる。選手村のベッドマットレスの上に一枚重ねて敷くだけで理想的な寝姿勢を保つことができ、睡眠中の身体への負担を軽減する。

4段階の硬さからマットレスパッドを最適な組み合わせにして安眠をサポートする

羽毛を一切使用しないハイパーダウンで極寒の北京の夜も暖かく

エアウィーヴのハイパーダウンは羽毛を一切使用せず、独自に開発した極細繊維を使用することで保温性と軽量性を実現した上掛け。 加えて、吸湿発熱性に優れていて、寝返りをうってもずれにくい縫製加工が施されているので、これまで以上に暖かく就寝することができるという。

羽毛を使用しないハイパーダウン(上掛け)で北京五輪の夜の寒さも解消

日本から男女6選手…Red Bull BC Oneはライブ配信で

世界最高峰の1on1ブレイキンバトルの世界大会、Red Bull BC One World Final 2021(レッドブル・ビーシーワン・ワールドファイナル2021)がポーランドのグダニスクで日本時間の11月7日に開催される。

日本のB-Boy、B-GirlはBC One優勝候補ばかり

ブレイキンとは通称ブレイクダンスと呼ばれるアクロバティックな動きを取り入れたダンスで「Hip-Hop」文化を構成する要素の一つ。ダンサーたちのことをB-Boy、B-Girlと呼ぶ。

日本からはCypher Japan勝者のB-Girl Ayane(23歳、大阪府)とB-Boy Nori(35歳、茨城県)、E-Battle勝者のAyumi(38歳、京都府)がLast Chance Cypherから参戦。

Red Bull BC One B-Girl初代チャンピオンのAmi ©Dean Treml/Red Bull Content Pool

World Finalからは、B-Girl Ram(20歳、神奈川県)とRed Bull BC One B-Girl初代チャンピオンのAmi(22歳、埼玉県)、そして2020年のRed Bull BC One世界チャンピオンShigekix(19歳、大阪府)がワイルドカード(招待選手)として参戦する。

Ram以外の5名全員がWorld Final出場経験者と日本選手は優勝候補の一角を占めている。

2020年のRed Bull BC One世界チャンピオンShigekix(右)、左はロシアのカステット ©Dean Treml/Red Bull Content Pool

ライブ配信は、Last Chance Cypherが日本時間の11月5日(金)、World Finalは日本時間の11月7日(日)に行われる。

Ami。2018年にスイスで行われたRed Bull BC One World Final B-Girl Battle ©Romina Amato/Red Bull Content Pool
Shigekix。2020年にオーストリアで行われたRed Bull BC One ©Little Shao/Red Bull Content Pool

Ami(1998年12月11日生まれ、埼玉県出身)

Ami ©Little Shao/Red Bull Content Pool

湯浅亜実。今でもお気に入りのムーブに挙げるウィンドミルを学びたいと思ったことが10歳でブレイキンを本格的に始めたきっかけ。姉のB-girl Ayuと成し遂げたBattle of the Year 2016 2 on 2 B-Girl優勝をはじめ、Silverback Open 2017 B-Girl優勝、Undisputed World B-Boy Series 2017 B-Girl優勝、そしてRed Bull BC One B-Girl初代チャンピオンに輝く。
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Ayane (1997年11月26日生まれ、大阪府出身)

AYANE ©Jason Halayko/Red BullContent Pool

幼稚園でダンスに出会い、小学4年生の時に見たダンスバトルに衝撃を受けブレイキンを始める。B-Girlの世界大会Battle Opsession 2015やBOTY B-Girl 1on1 Battle International Final 2018など数々の世界大会で優勝。キッズの頃から国内外で活躍するメンバーで構成の 「浪速平成シスターズ」でも活躍。
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Ayumi(1983年6月22日生まれ、京都府出身)

Ayumi ©Little Shao/Red Bull Content Pool

2004年に姉から教わったことがきっかけでブレイキンを始める。数々の国際大会で優勝・好成績を修め、現在は世界でも注目される’Body Carnival ’のメンバーとして ショー、コンテスト、バトルイベント、インストラクターとしてさまざまな活動を展開している。
●インタビューサイト

Nori(1986年9月26日生まれ、茨城県出身)

NORI ©Little Shao/Red Bull Content Pool

高校卒業後、東京を拠点に活動。The Floorriorz所属。Red Bull BC One World Finalに4度出場(2013、2016、2018、2019年)し、 国内の現役世代随一の経験と実力を誇る。

Ram(2001年4月11日生まれ、神奈川県出身)

Ram ©Little Shao/Red Bull Content Pool

5歳からブレイキンを始める。初めて正式競技に採用された第3回ユースオリンピック競技大会(2018年ブエノスアイレス)にて、「女子ブレイキン(個人)」、「混合団体」で金メダルを獲得。「川崎市スポ―ツ特別賞」を最年少受賞。2017年10月からThe Floorriorzに加入。

Shigekixx(2002年3月11日生まれ、大阪府出身)

Shigekix ©Little Shao/Red Bull Content Pool

半井重幸。姉Ayaneの影響により7歳の時にB-Boyingを始める。11歳で世界大会に挑戦を始め、Kidsの世界大会を総ナメにする。2017年に史上最年少記録となる15歳でRed Bull BC One World Finalに初出場し、2018年ブエノスアイレスユースオリンピックで銅メダル獲得。国際大会優勝数は45回。
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Red Bull BC One World Final 2021
開催日時 :11月7日(日 )午前2:00~6:00(日本時間、終了時刻は予定)
開催場所 :ポーランド・グダニスク
内容:2021年の世界No.1 B-Boy、B-Girlを決める大会
配信:
・Red Bull TV (午前4:00/Top 8~、ライブ&見逃し配信)
●対応アプリ入手
*Ultra HD / Dolby Atmos対応
YouTubeでも視聴可能
・(午前2:00/ Top16~、ライブ&見逃し配信)
YouTube
・WOWOWオンデマンド(午前2:00/ Top16~、ライブ&見逃し配信)
・WOWOWライブ(11/19[金]23:00~総集編)
※WOWOWオンデマンドで同時配信

●Red Bull BC Oneのホームページ

いつでも遊べる…かすみがうらアクティビティヴィレッジ開催中

2020年6月に設立された「かすみがうらアクティビティコミッション」が2021年は前回コンテンツに加え、新コンテンツを加えてパワーアップ稼働中だ。都心から約1時間のアクセスにありながら豊かな自然があふれる茨城県かすみがうら市で、ロードバイクの聖地である霞ヶ浦を最大限に楽しめるアクティビティフィールドを創造している。

全国サイクルツーリズム連携推進協議会の代表団体で、全国各地でサイクルツーリズム事業(自転車・サイクリングを活用した観光振興事業)を展開する一般社団法人ルーツ・スポーツ・ジャパンと茨城県かすみがうら市、 かすみがうら市環境協会、かすみがうら未来づくりカンパニーが連携した企画。

湖を使ったウォーターアクティビティが続々と新設

湖上サイクリング
「サイクリングは陸地の遊び」という既成概念をくつがえす「湖上サイクリング」 では、水上での新感覚スポーツサイクリングを体験できる。 陸上では意のままに操れる自転車も、湖の上では「まったく別の乗り物」に感じられるはず。1人乗りモデルだけでなく、2人乗りモデルもあるので、家族や仲間 とも一緒に楽しめる。当日参加可。
●詳細と申し込みページ

霞ヶ浦での湖上サイクリング

湖上ピクニック
湖上ピクニックは、丸いサップボートの貸出で、誰でも手軽に水の上という非日常空間を楽しむことのできるアクティビティ。乗艇場所に隣接する「かすみマルシェ」で、地域産品を使ったフードや飲み物を買って、湖の上でピクニック・カフェ気分を堪能。当日参加可。
●詳細と申し込みページ

霞ヶ浦での湖上ピクニック

ラジオドラマツーリングwith 根本凪
専用のアプリを使って、ナビゲーターの音声案内を聞きながらサイクリン グコースを楽しむことができる。茨城県出身で、茨城愛にあふれる根本凪(でんぱ組.inc/虹のコンキスタド ール)をナビゲーターに迎え、走って遊べる街「かすみがうら」を、サイクリングで盛り上げるべく試行錯誤する過程を音声ストーリーに仕立てた。
●詳細と申し込みページ

ラジオドラマツーリングwith 根本凪

ロードトリップ-premier-
ガイドのアテンドのもと、自転車に乗って生産者を訪ねて、生産現場を見ながら話をきく。その食材を使って、地元のシェフが腕によりをかけた「その日限りの特別ディナー」を、湖畔のアウトドアダイニングでいただく。かすみ がうらの食資源を結集した、至極のおもてなしサイクリングツアー。
●詳細と申し込みページ

ロードトリップ-premier-

既存コンテンツであるBBQ食材収穫サイクリング「ライドハンターズBBQ」や「謎解きサイクリング」も引き続き実施中。

併設かすみがうらアクティビティヴィレッジ CAMP WEEK

2021年10月23日(土)~11月7日(日)
同市歩崎公園にて実施される「かすみがうらアクティビティヴィレッジ CAMP WEEK」内でもコンテンツ提供をしている。上記期間であれば「キャンプ宿泊付き」で、アクティビティヴィレッジのコンテンツを楽しめる。
●詳細と申し込みページ

2020東京の公式グッズ特売は24日まで…用具展示と競技体験も

東京2020大会で選手が使用した競技用具の展示があり、パラリンピック競技体験ができる「東京 2020 ARIGATO イベント」が2021年10月16日(土)から24日(日)まで東京スポーツスクエア(有楽町)で開催されている。

マスコットグリーティング

東京都と東京2020組織委員会が連携し、東京2020大会の競技用具などの展示、競技体験、公式ライセンス商品のセールなどを行う。

東京都は、大会の感動を確かなレガシーとして将来に引き継いでいくため、大会を応援してくれた人に感謝の気持ちを込めての展示会を実施。イベント会場では、パラリンピック競技のボッチャの体験会も行っている。

話題になった選手村のベッドも展示

さらに、東京2020組織委員会は、東京2020マスコット関連商品、伝統工芸品コレ クション、公式アートポスターコレクションなど、約1200種の商品がセール価格となる「東京2020 ARIGATO セール」を実施。 セール会場では、期間中毎日4回、東京2020マスコット ミライトワ・ソメイティ と記念撮影ができるグリーティングも開催。

選手使用競技用具展示

東京2020 ARIGATO イベント
会場:東京スポーツスクエア
東京都千代田区丸の内 3-8-3
開催期間:2021年10月16日(土)~ 10月24日(日)
開催時間:11:30~19:00
実施内容:
・東京 2020 大会関連の展示
選手使用競技用具、聖火リレートーチ、メダリストやパラリンピック競技パネルなど
・パラリンピック競技体験=ボッチャ
・東京2020 ARIGATO セール
・東京2020 マスコット グリーティング ほか

ボッチャ体験会

<会場アクセス>
・JR山手線・京浜東北線「有楽町駅」下車[京橋口]徒歩1分
・東京メトロ有楽町線「有楽町駅」下車[D9出口]すぐ
・東京メトロ有楽町線「銀座一丁目駅」下車[1出口]徒歩3分
東京交通会館向かいの赤い屋根が目印の建物。

ARIGATOセール会場

●東京 2020 ARIGATO イベントのホームページ

メンタル問題はどんなアスリートも陥る問題…陸上ジョンソン

世界40カ国以上でスポーツを通じた社会貢献活動に取り組んでいるローレウスのアカデミーメンバーである元陸上競技米国代表、マイケル・ジョンソンが、10月10日の世界メンタルヘルスデーに合わせてメッセージを発信。自らの現役時代のメンタルヘルスに関連する体験談や、誰かが辛い状況に陥っているときに周りができるサポートなどについて語った。

マイケル・ジョンソン

どんなに優秀なアスリートであっても、スポーツ心理におけるメンタル面が、その身体能力を凌駕してしまうことがある

大坂なおみ選手がメンタルヘルスを理由に全仏オープンを棄権したことを初めて耳にしたとき、私は何が起こっているのかあまり理解できていませんでした。 しかし、先日大坂選手が「自分自身もまだ理解しようとしているところだ」と語ったように、第三者である私が理解できなかったのは当然なのです。

体操のシモーネ・バイルス選手が東京オリンピックで棄権したとき、私はBBCで仕事をしているところでした。全仏オープン以来、大坂選手の件をずっと考えていたので、今回は少し待ってみようと思ったのです。シモーネ選手が徐々に明かしていく心の内を聞くにつれ、理解は深まっていきました。

体操関係者の間では長く話題になっていた「ツイスティーズ」と呼ばれる現象についても学びました。どんなに優秀なアスリートであっても、スポーツ心理におけるメンタル面が、その身体能力を完全に凌駕してしまうことがあるのです。

選手が太ももの裏をつかんで、足を引き上げるのを目にすれば、何が起きているのかは大体わかります。何が問題なのか、それを解決するためには何が必要なのか、その選手がどのように感じているのかが理解できます。

メンタルヘルスは、私たちの誰もが影響を受けうる問題です。しかし、その影響の程度はひとりひとり異なります。放送スタジオやソーシャルメディアで、リアルタイムに診断や分析ができるようなものではないのです。私たちはしっかりと耳を傾けなければいけません。

メンタルヘルスという言葉は、私が現役選手のころはあまり使われておらず、馴染みがありませんでした。しかし、スポーツ心理に関する議論はさまざまなところでなされていました。マインドセット、集中力、プレッシャー下でのパフォーマンス、周囲からの期待、そして一般人よりもはるかに複雑なアスリートのワークライフバランスなど。当時の分析は、いずれもメンタル面と関わりのあるものでした。

実際には、スポーツ心理と、スポーツ選手のメンタルヘルスとの間に、はっきりとした境界線はないのです。若い選手たちが競技におけるストレスに対処する方法も、ワークライフバランスの取り方も、同じように語られるべきものなのです。

メンタルヘルスは、私たちの誰もが影響を受ける問題であるが、その影響はひとりひとり異なる

かつての私や今の大坂選手、シモーネ選手が競技しているような世界トップレベルになると、何百万人もの人々の前でパフォーマンスすることになります。フィジカル面をどんなに整えていたとしても、精神的な負担は存在します。このときのために人生をかけてトレーニングしてきて、心の底から成功を望んでいる。けれども、失敗するかもしれないし、このような機会は二度とないかもしれない。チームメイトを失望させてしまうかもしれない。契約が更新されないかもしれない。そして何より、皆がいつも自分を見ている。

大坂選手やシモーネ選手にとって、実際にどのようなことを負担に感じていたのかは私には分かりません。それを理解するには、本人たちの話を聞く必要があるからです。ここでは、私の場合がどうだったかをお話します。

リアルタイムに診断や分析ができないため、周囲がしっかりと耳を傾ける必要がある

1992年、バルセロナオリンピック。私は24歳でした。当時の私は、2年にわたり200mでの無敗記録を更新し続ける世界チャンピオンであり、金メダルの最有力候補と言われていました。 ところが、大会開幕直前に食中毒になってしまったのです。

症状が回復したときは、それがのちにオリンピックの舞台でのパフォーマンスに影響するとは思いもしませんでした。順調に回復し、体調もよかったのです。スタートの号砲が鳴り響き、 レースが始まるまでは…。そのときは、まるで誰か他の人の体で走っているような感じでした。

結果、準々決勝までは進めましたが、決勝には届きませんでした。

米国代表チームには、1992年当時でもスポーツ心理士が同行しており、私はすぐに面会することになりました。チームは、私が“スランプ”と呼ばれる、負のスパイラル状態に陥ってしまう可能性があると考えていました。スランプ中は、自分自身を信じられなくなります。まさにそれは私に起こっている状態でした。

しかし、ホテルの一室で、心理士の前に腰を下ろした瞬間、これは自分が必要としていることではないと気付いたのです。もちろん、人によっては効果的な方法なのかもしれません。ただ、私には当てはまりませんでした。

私はラッキーでした。両親が兄姉とともにバルセロナに来てくれていたのです(私は5人兄弟の末っ子です)。父はホテルの部屋に来てくれて、私は自分の気持ちや不安を、父が理解してくれると思いました。父はただ私の話を聞いてくれました。そして、私にこう言ったのです。

「お前は決勝戦で負けたわけではない。今回は優勝できなかった。だがそれは、競技に加われない状況だったからだ」と。

これは私の競技人生の中で最も落胆した出来事であり、その気持ちは米国に帰る飛行機に乗ってからも変わりませんでした。 帰国後数週間、家の中でじっとそのことだけを考え続けていました。今思えば、私には考える時間が必要だったのだと思います。私は怒りを感じなければならなかったし、失望しなければならなかった。起こった出来事を消化する前に、まず、こういった感情をすべて経験しなければならなかったのです。

次第に、バルセロナオリンピックでメダルを獲得した3選手のことを考えるようになりました。金、銀、銅メダリスト。オリンピック前の2年間、私はその全員と何度もレースをして、彼らに負けたことは一度もありませんでした。そう考えると、来年のレースでは、彼らに勝ち、自分が1位でゴールする可能性が十分あることに気づいたのです。 私は何も間違ったことはしていない。 本来の力を失ったわけでもない。 そして、私が世界最速の200m走者であることに変わりはないのだから、と。

辛い状況に陥った際には、自分自身を知り、自信を持つことが大切

1996年、アトランタオリンピック。私はそれまでのキャリアの中で、一番プレッシャーを感じていました。その一部は自分自身に原因がありましたが、あえてその状態を望みました。こういった問題をアスリートたちに話すとき、私はいつも同じところから始めるようにしています。それは、自分自身を知る、ということです。自分の強みや弱み、モチベーション、恐怖心、その理由は何なのか、ということについて、できるだけ正直に見つめることです。

1996年を迎えるまでに、私は本当の自分を理解するようになりました。自分が、最も大きいプレッシャーの中で、最も幸せで最高の状態になれることを知っていました。 私がイメージしていたのは、オリンピックや世界選手権の決勝戦が始まる30分前のコールルームに、私と7人の選手がいるところです。30分後に、そのうちの1人が金メダルを手にし、他の7人は獲得できません。

私は金メダルを取るのが自分であって欲しいと考えています。そして、皆も私が取るのだと何となく感じているのです。もし、このような瞬間に自信が持てなかったら、自国開催のオリンピックで200mと400mのダブル出場ができるよう、IOCにスケジュール変更を要請しなかったでしょう。そして、あの黄金のスパイクを履くこともなかったでしょう。とても悪い結果に終わる可能性もありました。

自分自身を信じることに加え、家族やスタッフなどのサポート・応援が回復を後押しする

3年前の2018年、マリブで脳卒中を発症しました。発症後は、身体に加え精神的なリハビリも行いました。メンタル面の回復はとても大変でした。 脳から体の一部への接続が断絶されていたため、歩き方も一から学び直しました。それまで当たり前だと思っていた歩くための一連の動作がすべて失われてしまったのです。回復できるという確信がないまま、リハビリを行っていました。 鏡を覗き込むと、そこにいる人物は、かつての自分の姿と重なって見えました。そして、自分の運動能力がすべて、あるいは一部でも回復するかどうかさえ分からず、自信がありませんでした。

やがて、私は1992年のバルセロナオリンピックの後と同じように考えるようになりました。自分の中にある恐怖や怒り、悲しみを素直に感じることを、自分に許してあげる必要がありました。 そして、自分の生活の質をできる限り回復させることをモチベーションにしたのです。 脳卒中が起きる前と同じように、ハイキングやサイクリング、パドルボードを楽しめる自分になりたいと思ったのです。

こうして私が経験した過程を話してみると、解決策は自分自身の中から生まれたものなのだと改めて思います。 しかし、私の家族やマイケル・ジョンソン・パフォーマンスのスタッフ、そしてソーシャルメディアで私の回復を見守ってくれていた人々のサポートがなければ、私の回復は実現しませんでした。 彼らが私を後押ししてくれたのです。

10月10日は世界メンタルヘルスデーです。この問題をただのきれいな箱に入れてしまわないでください。この問題を箱にしまうことはできません。この問題は、テレビの中のスポーツ界のスターにも、あなたが一緒に暮らしている人々にも影響を与えるものです。そして、その影響の仕方はひとりひとり全く異なるのです。

誰もが、自分の成功と失敗の両方を、実際よりも大きく見せてしまうことがあります。トレヴァー・モアワドは私の親しい友人で、最高のスポーツメンタルコンディショニングコーチでした。個々の問題に取り組むことでアスリートのパフォーマンス向上を支援する団体「マイケル・ジョンソン・パフォーマンス」でともに働いた仲間でもありました。トレヴァーは残念ながら最近亡くなりましたが、ニュートラル思考、中庸を維持する方法や、どんな状況でも現実的でいる方法をテーマにした本を書いています。

これらは私たちが自分自身を大切に扱うために必要なツールです。そして、互いに助け合うこともまた必要です。私が脳卒中から回復できたのは、人の助けがあったからだと思っています。バルセロナで父を必要としたとき、父がそこにいてくれたことを覚えています。 一流アスリートや身近な人が彼らのメンタルヘルスについて打ち明けたときに、私たちにはできることがあります。それは、耳を傾けることです。