ライフスタイルの変化に応じてフレーム職人も新たな提案

日本最大級のスポーツ自転車フェス「サイクルモード」が4月2〜3日、3年ぶりに開催された。今回は自転車の骨格であるフレームにスポットを当ててご紹介。コロナ禍やガソリン高騰でライフスタイルが変ぼうするさなか、乗る側の求めるところを探りながら作り手として新たな提案をする。そこには職人としてのさまざまな思いが込められている。

後部に子供乗せを搭載したブルーノ

サイクルデザイン学校で3年間の技術習得の集大成

日本で最初の自転車を学ぶ学校、東京サイクルデザイン専門学校の3年生がグループで企画・製作をしたeバイク(電動アシスト自転車)が展示された。テーマはアクティブシニアと呼ばれる元気な60〜70代に乗ってもらうための新たなeバイクだ。

競輪界で唯一の女性フレーム職人だった北島有花さん。現在は専門学校で後任の指導をする

同校でフレーム溶接などの講師を務めるのが北島有花さん。京都の自転車商社、岩井商会でガンウェルブランドの競技用フレームを手がけていた。日本で唯一、競輪用自転車が作れる女性フレームビルダーとして10年超のキャリアを持っていた。2020年春から同校の講師に。若い世代の育成を担っている存在だ。

同校は東京・原宿にキャンパスがあり、知識や技術を最短で学ぶ2年制、2年間で習得した技術を用いて自主製作する3年制がある。卒業生の多くは著名な自転車関連企業に就職している。
●東京サイクルデザイン専門学校のホームページ

ペイントは愛車の魅力を最大化できる

フレームやパーツのペイントを手がける沼田スワンプ明大さん

神奈川県の二子新地でハンドメイド自転車を製造・販売するABOVE BIKE STORE。フレーム素材やデザインなどをオーダーできるのが魅力だが、自転車の顔とも言える塗装を担うのがペイントフィニッシャーの沼田スワンプ明大さん。塗装はフレーム保護という目的があるが、自転車の美しさを強調する手段でもあり、所有欲を満たしてくれる。塗装にかかる工程は想像以上に多く、手間のかかる作業だ。こだわればどこまでもできる領域。満足できる愛車を作るなら塗装に着目してみるのもいい。
●ABOVE BIKE STOREのホームページ

ライフスタイルに合わせて装備品をチョイスできるeバイク

ブルーノは家族構成やライフスタイルが変わっても、付属品を交換することでいつまでも乗り続けることができる自転車。新登場のeバイク仕様は27万9950円。道路交通法の最大積載量は30kgだが、50kg荷重に耐える後ろ荷台、子供を乗せたときも安定して駐輪できるスタンドを装備する。

自転車商社のダイアテックがプロデュースするブルーノはさまざまなライフスタイルに適応する

後ろ用チャイルドシートやフロントバスケットなどのアクセサリー類も別売りで用意される。子育て世代だけでなく、クーラーボックスやバーベキューグリルを積載して楽しむアウトドア派も便利。装備を交換することでいつまでも利用できる愛車になる。
●ブルーノのホームページ

リヤの荷台は設計上50kgの荷重に耐える

鉄職人の情熱がカーボンに投入された決戦トラックレーサー

鉄の溶接職人・宮沢清明さんとカーボンフレームが融合した決戦バイク

カーボン繊維商社が興したBOMAは、台湾と中国の工場で生産するカーボンフレームを安価に安定供給する。その展示ブースに、老練な競輪フレーム職人である宮沢清明さんの持つチクリ・キヨ・ミヤザワとコラボレーションしたモデルが出展された。東京の小岩に工房を持つ宮沢さんは鉄製チューブ溶接を得意とするが、競輪界で培ったノウハウをカーボンフレームに適用させ、勝つための短距離用・高剛性トラックフレームを作り出した。
●BOMAのホームページ

公認サイクリングガイドの講習会と検定受験の参加者募集

一般社団法人日本サイクリングガイド協会(JCGA )が広島県の尾道しまなみ海道と神奈川県の湘南エリアでJCGAサイクリングガイド基礎検定講習会2022を開催。その参加者を募集している。

神奈川県藤沢市で行われたJCGAサイクリングガイド基礎検定講習会

一般観光客を対象とするサイクルツーリズムには専門知識と技術を有するプロフェッショナルなサイクリングガイドが不可欠。公益財団法人日本サイクリング協会(JCA)の「JCGA公認/JCA認定サイクリングガイド検定(JCA検定)」を基軸に、その育成と組織化を行っている。

しかしJCA検定にはツアー実務者レベルの技術と経験が求められるため、一般の中上級サイクリストやガイド未経験者にはかなり高いハードルとなっている。そこで、ツアー実務経験のない一般サイクリストやサイクリング経験に乏しいツアー事業者などを対象に、交通法規、走行技術、公道での引率技術、自転車メンテナンスなどのガイド業務に必要な基礎技術を2日間でひと通り体験して学ぶことができる「基礎講習会」を、2020年度より開催している。

座学は交通法規の理解と応用、サイクリングガイドの技術

「基礎検定講習会」は、4日間の「JCGAサイクリングガイド基礎講習会」の最終日に「JCGA公認サイクリングガイド基礎検定(ベーシック検定)」を組み入れた新設定の講習会。まず第1日程の2日間では、基本的なガイド技術全般について受講者自身の技術レベルを講師と相互確認し、第2日程までの自主練習で解決すべき課題を設定。そして、第2日程でそれらの課題の達成度を確認することで、過不足を洗い出して必要な技術の定着を目指す。

走行前の自転車点検とブリーフィング

申し込み時に「最終日の基礎検定受験とJCGA一般会員入会を希望」し、第2日程の1日目終了時までに講師から受験許可を受けた受講者は、4日間の講習満了をもって「JCGA一般会員」となり、「JCGA登録サイクリングガイドアシスタント」または「JCGA公認サイクリングガイド ベーシック(検定合格者)」として、JCGA公式WEBサイトに肖像写真入りのプロフィールが掲載される。

実技となるサイクリングガイド走行

その他の受講者は、4日目も引き続き基礎講習を継続して技術の定着を目指し、4日間の講習満了をもって「JCGA賛助会員登録サイクリングガイドアシスタント」として認定。JCGA公式WEBサイトに氏名などが掲載される。

JCGAサイクリングガイド基礎検定講習会 2022 尾道しまなみ
開催日程:第1日程:6/14(火)-15(水)、第2日程:7/12(火)-13(水)、合計4日間
講習会場:広島県尾道市内(市役所付近および向島内施設を想定)
受講費用:総計121,000円または99,000円
●JCGAの詳細ページ

JCGAサイクリングガイド基礎検定講習会 2022 神奈川湘南
開催日程:第1日程:6/7(火)-8(水)、第2日程:6/28(火)-29(水)、合計4日間
講習会場:神奈川県藤沢市内
受講費用:総計121,000円または99,000円
●JCGAの詳細ページ

基礎講習会だけのセミナーも同時募集

JCGAサイクリングガイド基礎講習会 2022 尾道しまなみ海道
受講費用:総計55,000円(2日分)
●JCGAの詳細ページ

ファンバーレが北の地獄パリ〜ルーベV…新城幸也は負傷リタイア

第119回パリ〜ルーベは4月17日、フランスのコンピエーニュからルーベまで、一部に石畳区間を走る257.2kmで行われ、イネオスグレナディアーズのディラン・ファンバーレ(オランダ)が後続に1分47秒差をつけて初優勝。バーレーンビクトリアスの新城幸也は途中の落車で負傷してリタイアした。

ディラン・ファンバーレ独走。2022パリ〜ルーベ ©A.S.O. Pauline Ballet

平均時速45.8kmはパリ〜ルーベ史上最速記録

ファンバーレはイネオスグレナディアーズでクラシックレースでエースを務める存在。チームメートが序盤の舗装路区間で先頭を固めてハイペースな展開に持ち込んだ。折からの横風もあって大集団が分断され、チームは作戦通りの状況を作り上げた。

「北の地獄」と呼ばれる石畳区間では多くの選手が落車やパンクに見舞われてストップ。終盤でマテイ・モホリッチ(バーレーンビクトリアス)、トム・デブリーント(アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)、イブ・ランパールト(クイックステップ・アルファビニル)と抜け出したファンバーレは、残り19kmの石畳区間で単独に。ゴールまで逃げ切った。

2022パリ〜ルーベ ©A.S.O. Pauline Ballet

1分47秒遅れでゴールした2位ワウト・ファンアールト(ユンボ・ビスマ)、3位シュテファン・キュング(グルパマFDJ)は、前半戦で第2集団に位置していた選手で、ここまで追い上げた。

平均時速は119回の大会での最速となる驚異の45.8kmで、イネオスグレナディアーズ勢のハイペース作戦が新記録をもたらせた。出走169選手で、ゴールのルーベ自転車競技場にたどり着いたのは107選手。新城は序盤から第1集団に加わり、エースのモホリッチをアシストしたが、110km地点で落車に巻き込まれて負傷。レースをリタイアした。

2022パリ〜ルーベ ©A.S.O. Pauline Ballet

「単独でルーベの競技場に入るのは感無量の境地だった。監督が無線で最後の瞬間を楽しめと伝えてくれた。いつかは石畳のレースで勝ちたいと夢見てきて、チームとともにさまざまな機材をテストしてきたことがこの日の勝利につながった」とファンバーレ。

「スタート前は集中していた。チームは横風を利用して、ファンアールトらの優勝候補を分断させることに成功した。ボクは終盤の石畳区間でどんな作戦を取ろうかと考えていた。チームメートのミハウ・クフィアトコフスキが、お前は強いから自分を信じろ。してほしいことはなんで言ってくれればそれをしてみせると言ってくれ、そのとおりにしてもらった」

「ベン・ターナーは空腹で力が出ないと言ったので、ジェルを渡して行けるところまで引っ張ってくれと頼んだ。彼はそれをしっかりとやってくれたので、先頭集団を追ってボクはアタックできた。先頭に追いつくのは大変だったが、彼らを捕まえてちょっと休んだら体力が蘇った。そのとき自分が一番強いと確信した」

マテイ・モホリッチ(バーレーンビクトリアス)とトム・デブリーント(アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)。2022パリ〜ルーベ ©A.S.O. Pauline Ballet

「トロフィーを飾るためにテーブルを補強しないとね」

ファンバーレは2021年の世界選手権で2位に入った実力選手。オランダナショナルチームの強化で才能が開花し、ついにパリ〜ルーベのタイトルを集中にした。

「このトロフィーの飾る場所を考えたことはなかったけど、世界選手権の銀メダルの横に置きたい。その前にテーブルを補強する必要があるかもね」

グルパマFDJのクレモン・ダビィ。2022パリ〜ルーベ ©A.S.O. Pauline Ballet
ボーラ・ハンスグローエのニルス・ポリッツ。2022パリ〜ルーベ ©A.S.O. Pauline Ballet
ディラン・ファンバーレが2022パリ〜ルーベを制した ©A.S.O. Pauline Ballet

地獄を抜けて天国に…パリ〜ルーベ女子でロンゴボルギーニ優勝

第2回パリ〜ルーベファム・アベックズイフトが4月16日に北フランスで開催され、イタリアチャンピオンのエリーザ・ロンゴボルギーニが残り34km地点から単独で抜け出して優勝。トレック・セガフレード勢は前年の第1回でもエリザベス・ダイグナン(英国)が優勝していて、チームとして連覇した。

パリ〜ルーベファム優勝のロンゴボルギーニを中央に、左が2位ロッテ・コペキー、右が3位ルチンダ・ブラント ©A.S.O. Pauline Ballet

トレックチームは中盤で形成された第1集団にルチンダ・ブラントを送り込み、レースを掌握。終盤にその逃げが吸収されたところで、ロンゴボルギーニが勝負を仕掛けた。

「ブレークがキャッチされたのを見て、本能的にアタックした。ルチンダが先頭集団で走っていて、いい動きだと思ったので全力でいった」とロンゴボルギーニ。

Zwiftが冠スポンサーとなったパリ〜ルーベファム ©A.S.O. Pauline Ballet
2022パリ〜ルーベファム ©A.S.O. Pauline Ballet

ロンゴボルギーニのシーズン当初は理想的ではなかった。副鼻腔炎を患って、呼吸することが困難だったと言い、ロンゴボルギーニはアムステルゴールドレースとブラバンツペイユをスキップ。抗生物質を服用しなければならず、当初はパリ〜ルーベを走る予定ではなかった。

2022パリ〜ルーベファム ©A.S.O. Pauline Ballet

「でも、この冬は全てをうまくやったし、春の間ずっと病気だったし、思うようにパフォーマンスができなかった。病気から回復するとコンディションも上がってきた」

「天候は(泥沼だった2021年とは)まったく違っていたが、簡単なレースではなかった。道路や石畳の上にはたくさんのほこりが積もっていた。単独で行こうとしたのは走行ラインを選ぶことができるから。間違ってはいなかったが、安全ではなかった。それがルーベです。ゴールのベロドロームに入るのは素晴らしい瞬間だった。地獄を通り抜けて楽園にたどり着いたような気持ちだった」

イタリアチャンピオンのロンゴボルギーニが独走 ©A.S.O. Pauline Ballet
北の地獄を走るエリーザ・ロンゴボルギーニ ©A.S.O. Pauline Ballet

伝統の男子レースには新城幸也が初出場

第119回パリ〜ルーベは4月17日、170選手が出場する。通常なら4月10日の開催だが、フランス大統領選挙のため、パリ〜ルーベが日程を変更した。伝統の春開催は3年ぶり。2020年は新型コロナウイルス感染拡大のために中止。2021年も延期となり、異例の10月に行われた。

2022年のレースはコンピエーニュ城の正面をスタートし、ルーベの旧自転車競技場を目指す。総距離は257.2kmでこのうち54.8kmが石畳。

パリ〜ルーベのプレゼンテーションに登場した新城幸也、ディラン・トゥーンス、フレッド・ライト ©A.S.O. Gautier Demouveaux

小野寺玲がJCL第1戦カンセキ真岡芳賀ロードレースで優勝

ジャパンサイクルリーグ(JCL)が主催する自転車ロードレース「三菱地所JCLプロロードレースツアー2022」の第1戦となるカンセキ真岡芳賀ロードレースが4月16日、栃木県の真岡井頭公園周辺で開催され、宇都宮ブリッツェン小野寺玲が優勝した。

カンセキ真岡芳賀ロードレース優勝直後の小野寺玲 ©ジャパンサイクルリーグ

レースは1周7.2kmのコースを18周回、129.6kmで行われた。2位には小野寺のチームメイトである増田成幸が入り、宇都宮ブリッツェンが地元開催レースをワンツーフィニッシュで飾った。3位は畑中勇介(KINAN Racing Team)。

久々に有観客での開催が実現し、沿道には観戦を待ちわびたサポーターが集まり、選手たちに声援を送る様子がみられた。

カンセキ真岡芳賀ロードレースは宇都宮ブリッツェンとキナンがレースをコントロール ©ジャパンサイクルリーグ

小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)のコメント
最終スプリントを担う選手としてチームに送り出してもらった。前半から中盤にかけてチームメイトにはかなり助けてもらったので、勝たなければという責任感を感じていました。途中ローテーションにも加わったが、集団内で足を休めることができ、スプリントに備えることができた。 最後は自分含め、5人中2人チームメンバーを入れることができたので、増田選手のアシストを受けながら攻める走りを実行することができました。 明日も地元開催、クリテリウムということで、優勝を狙っていきます。

カンセキ真岡芳賀ロードレース中盤の逃げ ©ジャパンサイクルリーグ

増田成幸(宇都宮ブリッツェン)のコメント
かなり波乱なレース展開で、自分自身も焦りがありました。 正直少し諦めかけた場面もありましたが、展開にも恵まれてベストな形でフィニッシュすることができました。 翌日のレースも狙っているレースですし、気を抜かずしっかりと準備したいと思います。

カンセキ真岡芳賀ロードレース終盤に追走集団が積極的な走りを見せた ©ジャパンサイクルリーグ

畑中勇介(KINAN Racing Team)のコメント
中盤にできた8名の強力な逃げが決まってしまいそうだったが、より厳しいレースにしていこうという思惑がキナンを含めた有力チームにありました。力のあったチームは宇都宮ブリッツェンとKINAN Racing Teamでした。その中でもやはり数的有利をうまく作り出せたのは宇都宮ブリッツェンでした。最終勝負は自分でいくとチームオーダーで決めていたので、勝負をしたが、最後は力負けで した。チームのパフォーマンスは良好なので、順位をひっくり返せるようレースに臨んでいきます。

宇都宮ブリッツェンの小野寺玲がカンセキ真岡芳賀ロードレース優勝 ©ジャパンサイクルリーグ

スポーツバイク販売店スタッフ対象の℮ラーニング開催

一般社団法人自転車協会が第9回となるSBAA PLUS新規資格取得講習2022のエントリーを2022年4月22日(金)から5月8日(日)まで行う。受講は2022年5月17日(火)~5月31日(火)、試験は2022年6月2日(水)~2022年6月9日(木)に開催する。

自転車協会では、安全・安心なスポーツ用自転車の供給販売を通してスポー ツ用自転車市場の健全な発展を目的としたSBAAマーク制度を2007年よりスタートした。2022年4月1日現在、SBAA PLUS資格者800名が在籍する店舗は全国45都道府県にあり、206社が特別賛助会員として参加する。

この制度は、スポーツ用自転車を取り扱う販売事業者で一定の資格要件を満たし、かつ同会主催の講習会修了後試験に合格し、特別賛助会員に入会した場合にSBAA PLUSの資格(SBAA PLUSマークを貼付できること)が取得できる制度。今回で9回目の開催となる。スポーツ用自転車の安全で安心 な利用を消費者に正しく理解してもらい、その楽しみを伝える担い手となる人材にとって必要な資格だ。

2021年5月に閣議決定された「第2次自転車活用推進計画」では、身体に合った自転車選びをアドバイスする人材としてSBAA PLUS認定者が取り上げられ、自転車協会では国も推奨している認定資格制度としての普及の波をさらに広げていくため、認知拡大や資格の魅力・価値の向上を図る施策を実施。

9回目となる新規資格取得のための講習・試験を、インターネットを活用した学習形態であるeラーニングを採用し、全国どこからでも受講することができるようにした。

●SBAAのホームページ