ツール・ド・フランスさいたま優勝のフィリプセンが将来を語った

ツール・ド・フランスさいたまクリテリウムが11月6日、さいたま新都心駅周辺で開催され、7月のツール・ド・フランスで最終日のパリ・シャンゼリゼを含むステージ2勝を挙げたベルギーのスプリンター、ヤスパー・フィリプセン(アルペシン・ドゥクーニンク)が初優勝した。大会は3年ぶりの開催となり、日本の熱心なファンが沿道を埋め尽くした。

マイヨジョーヌを着るビンゲゴーがアタックするとフィリプセンとトーマスが追従。3人の闘いとなった ©Yuzuru SUNADA

若手スプリンターのフィリプセンがオールラウンダーを制して優勝

世界最高峰の自転車レース、ツール・ド・フランスで活躍した52選手が距離59.5kmのサーキットレースに挑んだ。最後はトップスターばかり3選手によるスプリント勝負になった。2022年のツール・ド・フランス総合優勝者ヨナス・ビンゲゴー(ユンボ・ビスマ)、2018総合優勝のゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ)、そしてフィリプセンだった。

「シャンゼリゼとは異なるコースだったけど、スプリントには自信があるのでそれを生かすことができてよかった」と他の2選手を制したフィリプセン。

2022ツール・ド・フランスさいたまは快晴に恵まれてスタート ©Yuzuru SUNADA

レースは終盤に2013ツール・ド・フランス総合優勝のビンチェンツォ・ニバリ(アスタナカザクスタン)、元世界チャンピオンのアレハンドロ・バルベルデ(モビスター)がアタック。今シーズンを最後に引退する2選手は沿道のファンから大声援を受けながら激走。残り7kmで後続集団に追いつかれると、さり気なく握手をかわしてお互いの健闘をたたえた。

フィリプセンは今回のレースで、ツール・ド・フランス最多のステージ通算34勝を挙げているマーク・カベンディッシュ(クイックステップ・アルファビニル)と、前大会となる2019年のさいたま優勝者新城幸也(バーレーン・ビクトリアス)の3人でクリテリウムレジェンズという特別編成チームの一員としてとして参加した。

新城は「チームの結束力を高めるためにみんなで日本観光した」という。フィリプセンは初来日だったが交通系アプリのPASMOを駆使し、中野ブロードウェイや渋谷のスクランブル交差点を訪ね、寿司屋の大トロに舌鼓をうった。

フィリプセンがトーマスを制して初優勝した ©Yuzuru SUNADA

「日本は親切な人が多く、とても楽しかった。さまざまなことがベルギーとは異なって興味深かった。お互いをリスペクトする気持ちがある日本人のメンタリティはいいなと思った。国籍を変えたいくらいだよ」

今回の来日は区間2勝のいわばごほうびだ。
「世界のトップクラスに位置するクールな選手たちと戦うことができて貴重な経験ができた。いいシーズンだったと思うけど、ボクはもっと成長していきたい。最終的なゴールはツール・ド・フランスで勝つこと」とフィリプセンは記者会見で語った。

3年ぶり8回目となった大会には、待ちに待った自転車ロードレース好きが続々と集まった。併催イベントのフェスティバルやフランスの食文化が楽しめるグルメ会場では行列ができるほどの盛況ぶり。沿道も大勢のファンで埋まった。

マーク・カベンディッシュ(英国、クイックステップ・アルファビニル)も童心に ©Yuzuru SUNADA

ビンゲゴーがツール・ド・フランス連覇への意気込みを語る

ツール・ド・フランス総合優勝のビンゲゴーは王者の称号である黄色いリーダージャージ、マイヨジョーヌを着用して参戦した。

日本の食を体験するアレハンドロ・バルベルデ、ビンチェンツォ・ニバリ、大会アンバサダーのマルセル・キッテル ©Yuzuru SUNADA

「フィリプセンには10回勝負をして10回負けてしまう」とゴール後に語ったが、アルプスやピレネーを越える23日間のレースではビンゲゴーに分がある。2023年のツール・ド・フランスのコースも発表され、「いろいろな要素が盛りだくさんにあり、上りの厳しさも今年以上だ。いい準備をして来年7月に臨みたい」とはやくも連覇に意気込む。

●ツール・ド・フランスさいたまのホームページ

ビンゲゴーが復帰レースのクロアチアで最終日に落車逆転負け

6日間のステージレース、ツール・ド・クロアチアが10月2日に最終日を迎え、バーレーンビクトリアスのマテイ・モホリッチがユンボ・ビスマのヨナス・ビンゲゴーを1秒差で制して総合優勝した。

2022ツール・ド・フランス総合優勝のヨナス・ビンゲゴー ©LaPresse – Fabio Ferrari

ビンゲゴーは第3ステージで優勝して首位に立つと、総合3位のモホリッチに2秒差をつけて最終日へ。残り2kmで落車し、規定により記録はトップと同タイムとなったが、最後のゴール勝負に加われなかった。

モホリッチはゴール勝負で2位となり、ボーナスタイムを獲得。わずか1秒ながらビンゲゴーを逆転した。

ツール・ド・フランス総合優勝のあと、個人的に不調を経験したというビンゲゴー。この大会で元気な姿を示してくれたことが収穫だった。このあとはイル・ロンバルディアに出場し、11月6日にはツール・ド・フランスさいたまに参加するために来日する。

ツール・ド・フランスさいたまが10月5日正午に特別アナウンス

世界最大の自転車レース、ツール・ド・フランスの名称をつけた注目の国内イベント、J:COM presents 2022ツール・ド・フランスさいたまクリテリウムが11月6日(日)、さいたま新都心駅周辺で開催されるが、そのスペシャルアナウンスメントが10月5日(水)正午に行われる。

2022ツール・ド・フランス総合優勝のヨナス・ビンゲゴー ©A.S.O. Charly Lopez

開催まで1カ月となる日程のため、今大会の出場選手に関する発表が行われると想定される。すでに2022ツール・ド・フランス総合優勝のヨナス・ビンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ビスマ)、ツール・ド・フランス最多勝利記録を持つマーク・カベンディッシュ(英国、クイックステップ・アルファビニル)の参戦が発表されている。

発表内容は公式サイトを参照。

●J:COM presents 2022ツール・ド・フランスさいたまクリテリウムのホームページ

ビンゲゴーが11月6日開催のツール・ド・フランスさいたまに参戦

2022ツール・ド・フランス総合優勝者のヨナス・ビンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ビスマ)が11月6日にさいたま新都心で開催されるツール・ド・フランスさいたまクリテリウムに参戦する。

2022ツール・ド・フランス総合優勝のヨナス・ビンゲゴー ©A.S.O. Charly Lopez

「日本のみなさんはじめまして! 私自身初めてのツール・ド・フランスさいたまクリテリウムの出場となります。マイヨジョーヌを着て日本の、そしてさいたまの熱狂的な自転車ファンの前で走ることを楽しみにしています」とビンゲゴー。

同大会は7月24日にパリ・シャンゼリゼで行われた第21ステージの次章とも言われることから、「ツール・ド・フランス第22ステージのさいたまで優勝したいです! 11月6日にさいたまでお会いしましょう!」とビンゲゴーは意欲を語っている。

●ツール・ド・フランスさいたまのホームページ

ビンゲゴーが総合優勝…開幕地となったデンマーク勢は26年ぶり

ユンボ・ビスマのヨナス・ビンゲゴー(25)が第109回ツール・ド・フランスで初の総合優勝を達成した。大会は史上初めて北欧のデンマークで開幕し、7月1日から24日まで行われた。同国選手として1996年のビャルネ・リース以来の2人目の勝者となった。

ユンボ・ビスマは最終ステージで、リタイアしたチームメート3選手のナンバーカードを掲げて圧巻の優勝を報告 ©A.S.O. Pauline Ballet

チームメートのワウト・ファンアールト(ベルギー)が連日にわたって積極的な走りを見せ、ビンゲゴーの勝利に貢献するとともに、区間3勝、ポイント賞、総合敢闘賞を集中にした。した。3連覇を狙ったUAEエミレーツのタデイ・ポガチャル(スロベニア)は総合2位。

デンマークの3日間は大盛りあがり ©A.S.O. Pauline Ballet

3連覇を狙ったポガチャルから離れず、タイムトライアルで突き放す

2021年にポガチャルに続いて総合2位となったビンゲゴー。第11ステージで首位に立つと、最終日前日の個人タイムトライアルで総合優勝を確実にした。その日の勝利者会見で「昨年からツール・ド・フランスに勝てると信じていた」と明かす。

初日はランパールトが優勝。たった1日だがマイヨジョーヌを着用した ©A.S.O. Pauline Ballet

一見か弱く見える選手だ。母国である開幕地で大声援を送られて思わず目頭が熱くなるほどの素朴な性格。ポガチャルのように若い頃から注目されることはなく、魚河岸でアルバイトをしながら練習し、プロになった努力家だ。しかしマイヨジョーヌを着用し続けていくうちに王者の風格が感じられるようになり、記者会見も堂々としたところを見せた。

マイヨジョーヌのファンアールトがまさかのアタック ©A.S.O. Pauline Ballet

2年前、チームは最終日前日にどん底に叩き込まれた。マイヨジョーヌを守ってきたプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)が個人タイムトライアルでポガチャルにまさかの逆転負けを喫したのだ。

「そんなことの再来は望んでいなかったから、いい走りができて首位を守ることができてようやく安堵した」と今回のビンゲゴー。

大会中盤はタデイ・ポガチャルが実力を見せつけて首位に。第7ステージのスタート地点 ©A.S.O. Charly Lopez

3連覇を狙ったポガチャルから、アルプスでマイヨジョーヌを奪うと、その後は息を呑むような戦いを展開する。どちらも守りに入らず、毎日全力でライバルを引き離しにかかった。攻撃の手を緩めないポガチャルに、ビンゲゴーは食らいつき、そして最終日前日の個人タイムトライアルで突き放した。

「お世話になったチームとデンマークにいい報告ができる。デンマークでの報道をまだ知らないけど、みんな興奮していることは推測できる」

2022ツール・ド・フランス第11ステージ ©A.S.O. Aurélien Vialatte

変幻自在の動きを見せたファンアールトが敢闘賞

ビンゲゴーの初優勝に大きく貢献したのがベルギーのワウト・ファンアールトだ。ステージ3勝と、スプリント王の称号であるポイント賞を獲得。序盤の4日間はマイヨジョーヌを着用したが、「チームエースはビンゲゴー」と割り切り、集団から遅れた同選手を引き上げたりした。

ファンアールトが先頭に立ってマイヨジョーヌのビンゲゴーを牽引 ©A.S.O. Pauline Ballet

最終日前日はそんなファンアールトにとっても感慨深い結果になった。2年前にログリッチが逆転負けしたときのチームメートだったからだ。自身がトップタイムで優勝するとともに、ビンゲゴーがマイヨジョーヌを死守してゴールすると感極まって頬に涙が伝わった。

「チームから総合優勝者が出ることは特別なことだ。ビンゲゴーは強くもあるが、人間としても素晴らしい。そんな彼をチーム全員が栄冠に導いたのだから、本当にうれしい」

マイヨジョーヌを獲得してからビンゲゴーはポガチャルを徹底マークした ©A.S.O. Pauline Ballet

コロナ禍での3年目のツール・ド・フランス

2002年は大会が2カ月遅れの秋に延期され、スタートとゴールに観客を入れない運営で開催。2021年は感染状況も落ち着いたことからいつもの夏開催へ。そして2022年はフランスに第7波が到来。4度の総合優勝を誇るクリストファー・フルームなど複数の選手が大会中に罹患しリタイアした。主催者は大会中盤から選手への接触を禁止。チームバスが駐車するエリアに立ち入るスタッフにマスク着用を義務づけた。

2022年のツール・ド・フランスは初日以外は快晴で、おりからの熱波もあって暑かった ©A.S.O. Pauline Ballet

感染者は多いもののフランスではコロナ以前の生活が戻った。海外からの観光客数は激減しているが、2024年のパリ五輪に向けて観光大国としての復権に努める。

【ツール・ド・フランス現場雑感】ビンゲゴーとポガチャルの激闘は最高に面白かった

第109回ツール・ド・フランスは7月24日に24日間の戦いの最終日を迎え、ユンボ・ビスマのヨナス・ビンゲゴー(デンマーク)が初の総合優勝を達成した。25歳。デンマーク選手としては1996年のビャルネ・リースに続く2人目。

ビンゲゴー、初優勝おめでとう ©A.S.O. Pauline Ballet

ビンゲゴーはアルプスの第11ステージで独走勝利して首位に立つと、ピレネーの第18ステージでも優勝。3連覇を狙ったタテイ・ポガチャル(UAEエミレーツ)に2分43秒差をつけた。

ユンボ・ビスマ勢が集合写真 ©A.S.O. Pauline Ballet

総合敢闘賞はステージ3勝、ポイント賞のマイヨベールも獲得したユンボ・ビスマのワウト・ファンアールト(ベルギー)が選出された。山岳賞はビンゲゴー。新人賞はポガチャル。チーム優勝は英国のイネオスグレナディアーズ。

2022ツール・ド・フランス第21ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet

シャンゼリゼにゴールした最終21ステージの優勝はゴールスプリント勝負を制したアルペシン・ドゥクーニンクのヤスパー・フィリプセンで、今大会2勝目。

●4賞ジャージ
マイヨジョーヌ(個人総合成績)ヨナス・ビンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ビスマ)
マイヨベール(ポイント賞)ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ビスマ)
マイヨブラン・アポワルージュ(山岳賞)ヨナス・ビンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ビスマ)
□マイヨブラン(新人賞)タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEエミレーツ)

2022ツール・ド・フランス第21ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet

パリは嫌い。最高に楽しい夏祭りが終わってしまう場所なので

いよいよツール・ド・フランス取材も最後の1日となりました。パリ郊外のサクレー大学の新しくて快適で安価な宿泊施設に連泊して、この日も日の出からしばらくしてからラン練習に出かけました。パリまでわずか20kmほどですが、森林に囲まれて大学キャンパスが点在し、隣接して牧草地もあります。自転車道も整備され、さわやかな朝の空気を満喫。それでも45分のラン練習メニューが終わる頃は強烈な日差しを感じるまでに。今日も熱くなりそうです。

2022ツール・ド・フランス第21ステージもファイナルラップ ©A.S.O. Pauline Ballet

フランス革命200周年の1989年にツール・ド・フランス取材に派遣され、帰国後に自転車雑誌サイクルスポーツで初となる別冊付録ツール・ド・フランスを編集。以来、現地取材を他の社員に譲ったことはあるものの、毎年の別冊付録を担当。そして社員編集者として最後となった1996年に総合優勝したのがデンマークのリース。その快挙をきっかけにデンマークに自転車ブームが到来し、今日に至るわけです。

1996年の別冊付録を出版社への置き土産として、1カ月後に独立。翌1997年から単独でツール・ド・フランス全日程を回る旅が始まり、そして2年間のコロナ禍での中断を経て3年ぶりの全日程取材に突入したわけです。

マイヨベールと総合敢闘賞を獲得したファンアールト ©A.S.O. Pauline Ballet

いよいよ最後の日。朝食は前日に検査を受けた医療機関の近くで食べることにして、荷物を整理してクルマに積み込み、ゆっくりとドライブを楽しみながらパリ16区へ。時速50km規制となる急な下りを走っている途中で、前方にエッフェル塔が出現します。途中でセーヌ川沿いにクルマを止めて、新設された自転車専用レーンを見学。パリは2年も来ていなかったうちに、自転車に優しい街に変わっていました。

前日にPCR検査を行い、その日のうちに陰性の通知メールを届けてくれた16区の医療機関では、訪れるとすぐに英文も混在する検査結果を出力してくれて、ボクが日本から持ってきた厚生労働省の陰性証明フォーマットにも手書き。最後にサインと刻印をしてくれました。

自転車を掲げたビンゲゴー ©A.S.O. Pauline Ballet

医療機関を出るとすぐにこれを路面に追いてスマホで撮影し、ファストトラックにアップロード。すると10分ほどで受理されたようで、スマホアプリのカラーが黄色から緑に進化しました。数時間後には「完了」と示す青に。これで日本に帰れます。

総合優勝のビンゲゴーを中央に、左が2位ポガチャル、右が3位ゲラント・トーマス ©A.S.O. Pauline Ballet

フランスでの最後の朝ごはんは、シャンゼリゼに入ると人が多いと思ったので、医療機関のある16区でのんびりいただきました。安心したこともあっておいしい朝食でした。そして朝のパリの空気が気持ちいいこと。

その一方で、地球温暖化でシャンゼリゼの木々が枯れて落葉していることに気づかぬわけはありません。もう秋のような無残な光景に心が痛みました。欧州の人たちは相当の危機感を持っているはずです。

2022ツール・ド・フランス第21ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet

そしてツール・ド・フランスも最終日。ボク自身は3年ぶりの取材を無事に完走。こんなに毎日が楽しく充実した大会はこれまでなかったです。

実は最終日のパリは嫌い。熱狂的な夏祭りが終わってしまうからです。2023年の第110回大会は7月1日、スペイン北部のバスク地方で開幕します。

2022ツール・ド・フランスを完走しました

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