山本大喜が110kmエスケープ…サウジツアー第3ステージ

サウジアラビアを走る5日間のステージレース、サウジツアーは2月1日に第3ステージが行われ、片山右京が率いるJCL TEAM UKYO(チーム右京)の山本大喜が110kmに及ぶ逃げを見せて、その名を印象づけた。

サウジツアー第3ステージ ©JCL / Yosuke SUGA

山本大喜が一時はバーチャルリーダーに

第3ステージ、レースは前日の砂漠地帯から赤い岩肌の山々に囲ま れた丘陵地に舞台を変えて行われた。アップダウンが目立つ中でもやはりサウジアラビアの風の洗礼を受け続けながら走るレース。選手たちの疲労も日に日 に増してきている。

サウジツアー第3ステージ ©JCL / Yosuke SUGA

この第3ステージで、JCL TEAM UKYOは登坂力とスプリント力を兼ね備えた岡篤志でゴール順位を狙い、総合で上位に希望がある山本は総合成績を上げる走りを作戦とし、レースに挑んだ。

スタートして間もなく発生した4名のアタック、ここに単独で山本が追いつきエスケープが成立。利害関係が一致したメンバーは時間が10分過ぎるごとにプロトン(大集団)とのギャップを1分ずつ伸ばす力走が続き、1時間経過地点で6分半のアドバンテージを稼いだ。

第3ステージのスタート前に清水裕輔監督が作戦を伝える ©JCL / Yosuke SUGA

グループを形成しているのは過去実績のあるコラテックの選手2名、クライマーのエウスカディの選手1名と地元サウジアラビアの選手1名、そして総合成績はトップから1分55秒遅れで最も上位につけている山本。タイム差が安定しサポートカーから現時点でバーチャルリーダーであることを伝えると、より走りにも集中力が増していく。

サウジツアー第3ステージ ©JCL / Yosuke SUGA

このリードが56km地点で8分45秒差まで広がると、プロトンはモビスターとコフィディスを中心としてスピードアップする。アップダウンと横風の中でのハイペースにプロトンは細分化しながら先行とのギャップを埋めていく。一方の先行グループでは73km地点のスプリント賞に向け活性化。先手を切ってアタックしたのは山本だったが、メンバーを振り切れず4位で通過。

第1集団を走る山本大喜 ©JCL / Yosuke SUGA

そして、後半の20kmの登坂に入る頃にはプロトンとのギャップは3分半まで縮まる。山本は猛追してくるプロトンに捕まるタイミングに警戒し、エスケープグループが登りで分解してもあきらめずに粘る。山本を吸収したプロトンは山頂に設置された122.8km地点のボーナスポイントにむけ活性化するも前方からの向かい風が強く、落車も発生したことでペースダウン。

石橋学 ©JCL / Yosuke SUGA

結果、プロトンは崩れずにゴールまでラスト4kmの登りに差しかかった。そびえ立つ巨岩を急勾配で切り通したヒルクライムでの優勝争いに展開は激化。ジョン・デゲンコルプなど有力選手が次々と脱落しながら、トップグループはゴールに突き進んだ。

サウジツアー第3ステージ ©JCL / Yosuke SUGA

この激戦のレースを制したのは2022年の世界選手権U23TTの優勝者、ウノXのソレン・バレンショルト。軽量でスプリント力のある岡は力及ばず、35秒差の39位でゴールをした。このステ ージで2位に入ったジョナサン・ミランが総合トップとなりリーダーが入れ替わり、翌日の山岳ステージを迎えることになった。

JCL右京の石橋学 ©JCL / Yosuke SUGA

「逃げ出しから協調して大きくリードできました。スプリント賞を取りに行く動きを自分から仕掛けたものの、みんな強くて逆に奪われてしまいました」と山本。
「110km近く積極的に逃げて捕まりましたが、最終展開まで走りを繋げたのでコンディションに手ごたえも感じることができました」

最後の上り坂を走る石橋学 ©JCL / Yosuke SUGA

山本大喜がアジア選手権出場…2018年はU23でアジア王者に

KINAN Racing Teamの山本大喜(まさき)が3月25日から29日までタジキスタンのドゥシャンベで開催されるロードアジア選手権の日本代表に選出された。

山本大喜 ©︎ KINAN Racing Team

ロードアジア選手権はその名の通り、自転車ロードレース種目でのアジア王者を決める大会。大陸王者となると、その証としてアジア自転車競技連盟に認められたチャンピオンジャージの着用が許されるほか、毎年秋に行われる同種目の世界選手権の国別出場枠の獲得にも結びつくなど、国際的にも重要なイベントとして注目が集まる。

山本は2018年大会において、アンダー23(23歳未満)カテゴリーで優勝していて、その時以来のアジア選手権出場となる。今回は最上位カテゴリーであるエリート部門への出走で、名実ともにアジアナンバーワンを決める戦いに挑む。

「日本代表としてアジア選手権に参加できることをうれしく思っています。アジア選手権に向けて、チームや周りで支えてくださる方々のお陰で、山本大喜らしい走りをする準備はできています。日本チームで勝利をつかみ取れるよう、全力で走ってきます。応援よろしくお願いします」と山本。

大会は25日から始まり、山本が出場する男子エリートロードレースは大会最終日の29日に行われる。大会へ向けて、山本は近日日本を出国。開催地入り後は同地ならびに日本代表チームの新型コロナウイルス対策に基づいて行動し、レース本番に臨む。

●日本代表選手
草場啓吾(AISAN RACING TEAM)
増田成幸(UTSUNOMIYA BLITZEN)
山本大喜(KINAN CYCLING TEAM)
女子の派遣はなし

山本大喜がJCL年間総合優勝…JCL那須塩原クリテリウム

国内サイクルロードレースのプロチームによるリーグ戦「三菱地所JCLプロロードレースツアー」は、発足初年度の最終戦として那須塩原クリテリウムが11月7日に行われ、KINAN Cycling Teamはレース後半に主導権を握ると、中島康晴を3位に送り込み表彰台を確保。前日の大田原ロードレースで年間総合トップを確定させていた山本大喜は7位とまとめて、リーダージャージにふさわしい走りを披露した。

優勝の沢田桂太郎(スパークルおおいたレーシングチーム)に続いて4位中島康晴らが集団フィニッシュ ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

2021年シーズンから始まったシリーズのフィナーレを飾るのは、栃木県那須塩原市・JR那須塩原駅前のメインストリート。過去にも国内シリーズ戦の開催実績のあるコースは、1周1.8kmで、ヘアピンコーナーが3カ所に加え、鋭角コーナーも多数待ち受けるテクニカルなレイアウト。実質オールフラットで、ハイスピードコースの印象。過去には逃げ切りとなったケースもあり、レース内での駆け引きも見ものとされた。

ここまで快調に戦い続けてきたKINAN Cycling Teamは、前日のメンバーからトマ・ルバと中島をチェンジ。スプリントも視野に入れたオーダーで挑むこととなった。そのほかは、シリーズ個人リーダーの山本大、山岳リーダーの山本元喜に加え、花田聖誠、新城雄大、畑中勇介の6人。

レース距離が短いこともあり、リアルスタート直後から攻撃的なレース展開に。次々と発生するアタックはいずれも決まらず、KINAN勢もときおり前線に顔を見せながら、動き出しのチャンスを図った。

終盤にレースをコントロールするキナン勢 ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

そのまま中盤まで進行したが、後半に入って動いたのがKINANメンバーだった。残り10周回を迎えたのを合図に、6選手がひとまとまりとなって集団牽引を開始。急激なペースコントロールに、集団後方では脱落する選手が続出。残り5周を切ろうかという頃には集団は20人ほどとなり、そのままスプリント勝負へと移っていくことが濃厚に。KINAN勢は役目を終えた花田が後方へと下がったが、5選手を残して数的優位な状況を作った。

ハイスピードを維持したまま迎えた最終周回。ここまでくるとさすがにスプリント狙いのチームが主導権争いに加わり、集団内は混沌となる。一気に加速したスパークルおおいたレーシングチームのトレインを中島がチェックした状態で最終のストレートへと姿を現した。

各チームのエーススプリンターが並んだ最後の勝負は、スパークルおおいたレーシングチームの沢田桂太郎に軍配。懸命に食らいついた中島は3番目にフィニッシュラインを通過し、表彰台の一角を確保。今節はこのレースに賭けて臨んだことが奏功した。

優勝争いの後ろでは、山本大が7位でレースを完了。すでに前日に年間総合トップを確定させていたが、この日もトレイン牽引やリードアウトで貢献。上位フィニッシュも果たして、初代JCL王者らしい走りを見せた。

山本大喜がリーダージャージを守り抜いた ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

また、同じくこの日は集団のペーシングで流れを作った山本元は山岳賞を獲得。KINAN Cycling Teamは個人タイトル2つを手に入れ、チーム力を証明した。

各地を転戦し熱戦を展開してきたシリーズは、全10戦を終えて初年度のレースを終了。一戦ごとに洗練されていくオーガナイズやレベルの高まりを感じさせた優勝争いなどは、国内レースシーンの進化を印象付けるものとなった。そして何より、最終節でついに有観客レースが戻ることとなり、会場全体が活気に満ちたものに。シーズンを締めくくるとともに、来季への期待を膨らませる好況のもと2021年を終えた。

那須塩原クリテリウム(45km)結果
1 沢田桂太郎(スパークルおおいたレーシングチーム) 1時間4分35秒
2 小野寺玲(宇都宮ブリッツェン) +0秒
3 中島康晴(KINAN Cycling Team) +1秒
4 石原悠希(チーム右京 相模原)
5 本多晴飛(VC福岡) 
6 孫崎大樹(スパークルおおいたレーシングチーム) +7秒
7 山本大喜(KINAN Cycling Team) +2秒
10 新城雄大(KINAN Cycling Team) +6秒
16 畑中勇介(KINAN Cycling Team) +1分27秒
17 山本元喜(KINAN Cycling Team) 
DNF 花田聖誠(KINAN Cycling Team) 

山本大喜が総合優勝のレッドジャージ、兄の元喜が山岳賞のレッドジャージを最終獲得 ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

JCL各賞リーダージャージ表彰(KINAN Cycling Team分)
●イエロージャージ(個人ランキングトップ)
山本大喜(KINAN Cycling Team)
●レッドジャージ (山岳賞)
山本元喜(KINAN Cycling Team)

山本大喜のコメント
「(シーズンを通しての活躍について)今年は今までにないくらい練習に取り組んだことと、多くの方々の支えのおかげで結果につながったシーズンになった。特に、ツアー・オブ・ジャパンの富士山ステージ(第1ステージ)で3位に入ったことが自信につながった。

山本大喜

(初代JCL年間王者に輝いて)9月の秋吉台カルストロードレースで勝って個人ランキング首位に立ったことで、少しずつリーダージャージを意識しながら走るようになった。リーグ全体がファンを増やすことやロードレースの普及を目指している中で、個人的には強い選手が現れることが一番効果のあることだと考えていたので、だったら自分が一番になって強さを印象付けようと思った。その点では狙い通りになった。

成長を感じられた1年だったが、それでも力の面でトマや増田成幸選手(宇都宮ブリッツェン)と比べるとまだまだ。国内レースでトップを走る選手たちにはまだまだ追いつけていないと思っているので、来年も今年のような取り組み方で力を伸ばしていきたい。ゆくゆくはみんなから強いと認めてもらえるようなベテラン選手になりたいので、その意味では今が一番重要な時期だと感じている」

秋吉台カルストロードで山本大喜がJCLシリーズ初優勝

三菱地所JCL(ジャパンサイクルリーグ)プロロードレースツアー第7戦、秋吉台カルストロードレースが9月12日に行われ、KINAN Cycling Teamの山本大喜がフィニッシュ前の急坂区間でトップに立ち、そのまま優勝。このシリーズで初の勝利を挙げた。

山本大喜のウイニングポーズは直前を走る関係車両を回避して撮影された ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

この結果により、シリーズリーダーの証であるイエロージャージも獲得。個人ランキングでトップに立っている。

前日の11日から行われてきたJCLの山口ラウンド。先だって行われ山口ながとクリテリウム」では、中島康晴がチーム最高の5位。秋吉台に舞台を移して行われるロードレースでは、クリテリウムで逃したレース表彰台の最上段を狙って挑んだ。

日本最大のカルスト台地・秋吉台を縦断するカルストロードをメインに据えたレースコースは、29.5km。これを4周する公道コースが設定され、総距離118kmで争われる。ハイライトとなるのが、フィニッシュ前1.3kmからの急坂区間「カルストベルグ」。平均勾配15%、最大で22%に及ぶ急勾配は、勝負を決めるにふさわしいポイント。実際に、この上りで戦いが決することとなる。

山本大に加えて、中島、山本元喜、トマ・ルバ、新城雄大、そしてシリーズリーダーのイエロージャージを着る畑中勇介と、前日と同じオーダーでスタートしたKINAN Cycling Teamは1周目から積極的に展開。まず中島がスプリントポイントを1位で通過した。

大きく動いたのは2周目半ば。数人が飛び出したところに山岳賞のレッドジャージを着る山本元がジョイン。そのまま5人の逃げが決まると、長い時間レースを先行することとなった。タイム差は最大で約1分。この間、2周目と3周目のカルストベルグをトップ通過。労せず山岳ポイントを加算し、レッドジャージのキープを決めた。

最終周回でさらにレースは激化。徐々に絞られていたメイン集団からトマが抜け出して、先行していた山本元に合流。先頭は3人となって、一時メイン集団に対して50秒差まで広げる。しかし集団もペースを上げて、最終周回の復路で先頭に合流。おおよそ15人ほどのグループから優勝者が出るのは濃厚な情勢に。ここで本多晴飛選手(VC福岡)が飛び出したのを機に、トマが集団牽引を開始。KINANメンバーも前線に位置してカルストベルグでの勝負に備えた。

そして、本多選手とは10秒ほどの差で最後のカルストベルグへ。勾配が厳しくなる区間でアタックが散発するが、山本大は冷静に対処。脚を残して仕掛けるタイミングを計ると、残り200mでカウンターアタック。この一発で後続を引き離して、単独でフィニッシュへと到達した。

厳しいマークに遭いながらも、最後の力勝負を制してシリーズ初勝利。チームとしても、このシリーズでは3勝目とした。同時に、山本大は個人ランキングでトップに立ち、畑中に代わってイエロージャージに袖を通している。

シーズン後半を迎え、各レースの勝利だけでなく、シリーズタイトルを賭けた戦いも熱を帯びている。この先は、リーダージャージやチームランキングの首位を守ることも意識しながら、主要なレースに臨むこととなる。

KINAN Cycling Teamのホームページ

山本大喜がJプロツアー初優勝。西日本ロードクラシック1独走

国内レースの最高峰である「Jプロツアー」の広島2連戦が8月29日開幕。広島県中央森林公園サイクリングコースを舞台に行われる「西日本ロードクラシック」のDay-1は、KINAN Cycling Teamが終始優勢にレースを展開。最後は山本大喜(まさき)が独走に持ち込み、Jプロツアーでのシリーズ初勝利を挙げた。

山本大喜がJプロツアー初優勝。西日本ロードクラシックDay-1で独走 ©︎KINAN Cycling Team / Midori SHIMIZU

幾多の名勝負が生まれた広島のコースで行われる伝統の一戦。この日は、今節に照準を合わせた山本大のほか、山本元喜、トマ・ルバに加えて、前日のバンクリーグを走った新城雄大も出走。4人での出場と他の有力チームと比較し少数で挑むこととなるが、勝負どころとなる終盤に攻撃を仕掛けていく戦術で勝機を見出していくことに。

その見立て通り、残り2周で発生したアタックからKINAN勢が確実に反応していく。ライバルのチェックに動いた山本大を含む3人が先行すると、その後ろでは山本元を含む追走グループも形成される。最終周回に入るタイミングで山本元らが先頭に合流し、山本兄弟を含む5人がレースをリード。さらには、後ろで余力を残していたトマも前方へと上がり、先頭グループにはKINAN勢3人が入る数的有利な状況を作り出す。そこからは、3人が断続的にアタックを仕掛け、先頭グループを崩していく。

ライバルの消耗を誘いながら抜け出すポイントを探っていた山本大がアタックを決めたのは残り3km。下りを利用しての加速で、10秒、20秒と後続との差を広げていく。そのまま単独で最後のストレートへと到達。最後は体全体で勝利の喜びを表してのウイニングライドとなった。

山本大をトップに送り出した山本元、トマは最終盤での追撃の芽をしっかりと摘み取るアシスト。最後は山本元がスプリントで3位を決め、KINAN Cycling Teamはワン・スリーフィニッシュを達成。トマも4位で続いている。

優勝した山本大は、チーム加入1年目だった2018年の全日本選手権U23個人タイムトライアル以来の公式戦勝利。もちろん、Jプロツアーでは初勝利。好調なチームは、これでシーズン3勝目となった。

広島での戦いは、翌30日のDay-2へ。この日は欠場となった椿大志と中島康晴が合流し、6選手で出走する。(Text: 清水翠、Edit: 福光俊介)

西日本ロードクラシック広島大会(61.5km)結果
1 山本大喜(KINAN Cycling Team) 1時間30分47秒
2 西村大輝(宇都宮ブリッツェン) +27秒
3 山本元喜(KINAN Cycling Team)) 
4 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) 
5 阿曽圭佑(eNShare Racing Team) +28秒
6 増田成幸(宇都宮ブリッツェン) 
13 新城雄大(KINAN Cycling Team) +1分44秒


山本大喜のコメント

山本大喜

「めちゃくちゃうれしい。いまはそれに尽きる。今季KINAN Cycling Teamとしては3勝目。例年はUCIレースに挑戦しているが、今季は新型コロナウイルスの影響もあり、国内をメインに走っている。レース数が少ない中で、Jプロツアー3勝目はうれしい。
レースが後半に動くだろうと想定し、脚を抑えて、勝負どころで戦おうとチームとしてまとまっていた。前方に3人入ることができて、最終局面でそれぞれの選手が仕掛けるという共通認識を持って戦えたことが勝利につながったと思う」

山本元喜のコメント

山本元喜

「(山本)大喜が飛び出した場面は、もし(大喜が)捕まったとしても自分がスプリント勝負できるように脚を残して走っていた。その場合は自分ががんばらなくてはと。トマが合流してくれたことで、チームとして有利な展開になり、これは勝たなければならないと思っていた。予想される展開を絞り、個人ではなくチームで勝てることを一番に考えた作戦がきれいにはまったと思う」

●キナンのホームページ

キナンの山本大喜がKINAN AACA CUP第7戦いなべで優勝

KINAN Cycling Teamがホストを務める東海地区のロードレースシリーズ「KINAN AACA CUP」は、今季の第7戦を8月1日に三重県いなべ市・いなべ市梅林公園を舞台に開催。72kmで争われたメインの1-1カテゴリーは、マッチスプリントを制した山本大喜が優勝。ホストライダーとしての役割を果たしている。

山本大喜がKINAN AACA CUP第7戦いなべで優勝 ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

新型コロナウイルス感染拡大にともなうレースシーズンの中断で、このシリーズもしばし休止を余儀なくされたが、7月下旬から活動を再開。今節からは最上位クラスの1-1カテゴリーも戻り、よりハイレベルのレースが展開されることとなった。レースイベントの実施にあたっては、選手・関係者すべてに検温と健康状態の提出を義務付けたほか、会場内ではソーシャルディスタンスを確保するなど、感染リスクの抑制に努めた。

そんな中で行われた1-1カテゴリーのレースには、ホストであるKINAN Cycling Teamからも山本大のほか、山本元喜、椿大志、トマ・ルバ、中島康晴、新城雄大の6人が参戦。このレースの前に行われたキッズレースでもアテンド役を務め、イベントの盛り上がりにも一役買っている。

いなべ市梅林公園に設定された1周1.8kmのコースは、ツアー・オブ・ジャパンいなべステージのコースを一部採用。アップダウンとコーナーが連続し平坦区間が少ない中で、どれだけ変化に耐えられるかが勝負のポイントに。この日は気温が35度を超える暑さだったこともあり、サバイバル化することも予想された。

その見立ての通り、スタートから速い流れで進む。5周目までに数人がメイン集団から抜け出すと、そこから阿曽圭佑(Asia cycling academy / enshere / team aso)と香山飛龍(Yamanakako Cycling Team)の2人がリードを開始。メイン集団が落ち着いたことも関係し、最大で45秒差まで広げる。

ただ、この構図は長くは続かず、中盤に入ったところでメイン集団もペースアップ。山本大やトマらの引き上げによって、ちょうど中間地点を迎えるタイミングで先頭の2人に合流。この動きで集団の人数が絞られ、10人による争いとなる。

この状態から阿曽が再度アタックしたことでレースが活性化。香山と山本大が続き、少し置いてトマと津田悠義(EQADS)が合流。一時は5人で進んだ先頭グループだったが、香山が遅れ、残った4選手がそのまま終盤へ。この中から優勝者が出ることが濃厚になった。

決定打が生まれたのは残り3周。攻撃を繰り返す阿曽と山本大がアタックを成功させ、2人で逃げ切る態勢へと変化。その後ろでは津田とトマが追うが、先頭の2人が十分なリードを得たまま最終周回へ。阿曽、山本大ともチャンスとあらばアタックを試み、激しい駆け引きが繰り返されたままフィニッシュへと近づいていく。

両者一歩も譲らない戦いは、最終コーナーを前にしたアップダウンで山本大が加速。その勢いのまま最後の直線へと突入すると残り数十メートル。阿曽の追い上げをかわして、優勝のフィニッシュを飾った。

再三のアタックで強さを示した阿曽の2位に続き、速い流れを呼び込んだ津田が3位でレースを終えている。

今節は1-1カテゴリーを含む4クラスのレースが行われたほか、チームサプライヤーでもあるYONEX、ATHLETUNE(株式会社隼)、光設備などによるブース出展もあり、華やかなレース会場の趣きが少しずつ戻ってきていることを感じさせる1日となった。

KINAN AACA CUP 2020 第7戦 1-1カテゴリー結果
1 山本大喜(KINAN Cycling Team)
2 阿曽圭佑(Asia cycling academy / enshere / team aso)
3 津田悠義(EQADS)
4 トマ・ルバ(KINAN Cycling Team)
5 小島渓円(MiNERVA-asahi) 

KINAN AACA CUP 2020 ポイントランキング(第7戦終了時)
1 山本大喜(KINAN Cycling Team) 768pts
1 椿大志(KINAN Cycling Team) 768pts
3 津田悠義(EQADS) 640pts
4 小山智也(Hincapie LEOMO P/b BMC) 576pts
5 山本哲央(Yamanakako Cyclisme Formation) 512pts

山本大喜

山本大喜のコメント

「目標である“目立って勝つ”ことができてうれしい。序盤から逃げていた阿曽さんたちが強いことは分かっていて、差を広げられすぎると不利になると思ったので、5周くらいは自分ひとりで引き続けた。それが脚のあるメンバーだけに絞り込むことにつながったので、いい展開に持ち込めたと思う。
フィニッシュに向けては、最終コーナーを先頭で入ったもの勝ちだと分かっていた。直前の上りで阿曽さんが先に仕掛けたので、それに合わせて自分がカウンターでスプリントを始めてそのままトップを譲らず走ることができた。
次週はJプロツアーの宇都宮2連戦。とにかく“目立って勝つ”ことがテーマなので、それを結果に結び付けたい」