熊野中止はショックだが全日本選手権に照準…山本大喜

新型コロナウイルス感染拡大でレースシーズン中断が続いているが、KINAN Cycling Teamは選手・スタッフとも日々前向きにシーズン再開の日を待ちながら過ごしている。そんなチームの様子をお届けするべく、いま世界的に叫ばれている「Stay Home」をキーワードに山本大喜にインタビュー。現在の生活、シーズン再開への思い、そして今後の目標を語った。

山本大喜

-ご家族も含めて、みんな元気に過ごせていますか?
家族全員元気に過ごしています。新型コロナウイルスに感染しないよう、できるだけ外出は控えて過ごすようにしています。

-現在トレーニングはどのように行っていますか?
レースがいつ行われるのかまだ分からないので、いまのところはオフシーズンに近い過ごし方ですね。筋力トレーニングであったり、昨年のツール・ド・熊野での落車以来体のバランスに左右差が出ているので、それを整えるトレーニングも行っています。熊野では左脚を負傷したのですが、復帰を急いだこともあって、体のバランスが悪いままレースを走っていました。それが修正されるよう、自分の感覚を頼りにしながら取り組んでいます。

-あらゆる面で自粛が求められている中、1日をどのように過ごしていますか?
最近は午前中に筋トレ、午後にライドして、あとの時間は家族で楽しく過ごしています。

-こうした状況下で、モチベーションはいかにして保っていますか?
レースの存在がモチベーションになることは確かですが、それ以外にも自分の能力を上げていくためにトレーニングすることが好きなので、メニューをこなして「昨日の自分より強くなっている」という実感がうれしくて前向きになることができています。日々進化する自分自身を楽しんでいます。

-自転車に限らず、日々なにか楽しみを見つけていますか?
娘がもうすぐ5カ月になるのですが、その成長を間近で見られるのがとてもうれしいです。一緒に散歩へ行くのも楽しいですし、自宅で遊んでいても楽しいですし…それが自分にとっては癒しでもあって、日々の生活を充実させられています。

©Syunsuke FUKUMITSU

-「Stay Home」が叫ばれる中で、なにか健康を維持する効果的な方法があれば教えてください
家の中でじっとしているだけではストレスが溜まってしまうと思うので、簡単な筋トレやローラーをしたりというのが効果的だと思います。自分のストレス発散方法としては、食べることが好きなので、家族みんなで料理することでしょうか。いまは餃子づくりにハマっていて、作って食べることで気持ちをリフレッシュさせています。

-食生活で気をつけていることはなにかありますか?
シーズン中ほど気を遣ってはいませんが、もともと体重が増えやすい体質なので、シーズン再開時にウエイトコントロールに苦労しないよう注意しています。1月のシーズンイン時と比べて5kgほど増えているのですが、いつもであればシーズン中とオフとで10kgくらい違いがあるので、いまはうまく抑えられているかなと思いますね。食べることを楽しみつつも、食べ過ぎないようにだけは気を付けています。

-レースに目を向けて、ニュージーランドでのシーズン初戦を振り返って、どんな走りができましたか?
ニュージーランド サイクルクラシックでは個人総合トップ10を目指して臨みながら、結果的に15位と外してしまい、その悔しさを今も抱えています。逆にそれがよかった面でもあって、「もっと強くなって次のレースへ」という思いを持って走ることができています。また、このレースでは体のバランスがよくないことにも気づけたので、現在のトレーニングにつなげられていると思います。

-UCI通達により7月に入ってからのレースシーズン再開に向けた動きが出てきました。これからはどこを目標にすえて取り組んでいきますか?
ツール・ド・熊野を今シーズン最大の目標に設定していたので、中止の決定は本当にショックでした。正直、メンタル的にもきてしまったのですが、いまはもう、国内外の情勢からみて仕方がないと割り切ることができています。これからは、ロード全日本選手権を意識していきたいです。ナショナルチャンピオンジャージがかかっているレースで、この大会で一番になることの意味は大きいので、全日本に照準を定めて取り組んでいきたいと思っています。  

聞き手:KINAN Cycling Teamメディアオフィサー 福光俊介
インタビュー実施日:2020年4月24日

●キナンサイクリングのホームページ

中島康晴がニュージーランド・サイクルクラシック最終日10位

KINAN Cycling Teamが出場したニュージーランドサイクルクラシック(UCIオセアニアツアー2.2)は1月19日に行われた第5ステージをもって閉幕。最終日は120kmで争われ、集団スプリントに挑んだ中島康晴が10位でフィニッシュ。6人全員が完走を果たし、個人総合ではトマ・ルバがUCIポイント圏内の8位に。開幕以降チャレンジを繰り返してきたチームは、収穫と課題を明確にして次の戦いにつなげていくことを誓った。

中島康晴がニュージーランド・サイクルクラシック最終日10位  ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

15日にレースがスタートした大会は、上りフィニッシュや平坦ステージなどが設けられ、総合的な力が試される戦いとなった。そんな中でKINAN Cycling Teamは、最難関の第4ステージでトマ・ルバを4位に送り込んだ。

そして迎えた最終日。大会の拠点であったマスタートンを基点とする10kmの周回コースを12回めぐる120km。カテゴリー山岳が設定されない、おおむねフラットのコースとあって、スピードレースとなることが予想された。実際、レースはその通りに展開していくことになる。

スタート直後のアタックに乗じたのは椿大志。5人が先行するが、その中にリーダージャージのライリー・フィールド選手(オーストラリア、チームブリッジレーン)ら実力者が加わったこともあり、メイン集団も簡単には容認しない。リードを奪おうと先を急ぐも、椿らはいずれも集団へと引き戻されてしまう。

その直後からはスプリント狙いのチームが中心となって集団を統率するが、5周目を迎えて1人の飛び出しを容認。タイム差は2分以内にとどめつつ、追撃のタイミングを図る。KINAN勢も集団に待機し、6人が固まって次の展開に備えた。

しばし逃げと集団との構図が変わらなかったが、逃げる選手の背中を視界に捉えたところで、集団から1人がブリッジ。一時的に2選手が先行する格好となったが、次の周回ではメイン集団が完全に飲み込み、プロトンはスプリント勝負に向けて状況を整えていった。

終始ハイペースで進んだレースにあって、勝負どころを見据えて集団内でのポジショニングを図ったKINAN勢。最終周回を前に前方へと上がっていき、中島でのスプリントに賭けた。

そしてステージ優勝は大集団でのスピード決戦に。アシスト陣の援護を受けた中島は好位置から加速。トップまではあと少し及ばず、10位でフィニッシュラインを通過。以降、残る5人も次々とレースを完了させた。

15日から始まった大会は、全5ステージを終えた。KINAN Cycling Teamは、この日メイン集団で走り切ったトマが個人総合順位を変えることなく、8位を確定。UCIポイント(3点)圏内でのフィニッシュとした。

シーズン初戦を終え、先々に向けた収穫と課題が明確になり、選手たちはそれぞれにレースやトレーニングの方向性も定まった様子。次戦は2月5~9日のヘラルド・サン・ツアー(UCIオセアニアツアー2.1)が予定されるが、これからはチーム内でのセレクションも含め、レースを高いレベルで戦えるだけのコンディションづくりに取り組んでいくことになる。

ニュージーランドサイクルクラシック2020 第5ステージ(120km)結果
1 ディラン・ケネット(ニュージーランド、セントジョージコンチネンタル) 2時間41分9秒
2 イェンセン・プロウライト(オーストラリア、チームブリッジレーン) +0秒
3 コルビン・ストロング(ニュージーランド、ニュージーランドナショナルチーム)
4 トーマス・ボルトン(オーストラリア、オリバーズリアルフードサイクリング) 
5 大前翔(愛三工業レーシングチーム) 
6 岡本隼(愛三工業レーシングチーム) 
10 中島康晴(KINAN Cycling Team) 
31 山本大喜(KINAN Cycling Team) 
34 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team)
57 新城雄大(KINAN Cycling Team) +9秒
63 山本元喜(KINAN Cycling Team) +1分8秒
64 椿大志(KINAN Cycling Team) 

個人総合
1 ライリー・フィールド(オーストラリア、チームブリッジレーン) 15時間18分8秒
2 アーロン・ゲート(ニュージーランド、ブラックスポークプロサイクリングアカデミー) +25秒
3 コルビン・ストロング(ニュージーランド、ニュージーランドナショナルチーム) +41秒
4 ヘイデン・マコーミック(ニュージーランド、ブラックスポークプロサイクリングアカデミー) +48秒
5 キース・デュベステイン(ニュージーランド、チームブリッジレーン) +49秒
6 コナー・ブラウン(ニュージーランド、ニュージーランドナショナルチーム) +51秒
8 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) +55秒
15 山本大喜(KINAN Cycling Team) +1分59秒
42 新城雄大(KINAN Cycling Team) +4分37秒
62 椿大志(KINAN Cycling Team) +11分6秒
65 山本元喜(KINAN Cycling Team) +12分47秒
75 中島康晴(KINAN Cycling Team) +25分0秒

ポイント賞
1 ディラン・ケネット(ニュージーランド、セントジョージコンチネンタル) 37pts
14 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) 4pts
22 山本元喜(KINAN Cycling Team) 1pts

山岳賞
1 フィン・フィッシャー=ブラック(ニュージーランド、ニュージーランドナショナルチーム) 16pts
10 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) 4pts
12 山本元喜(KINAN Cycling Team) 4pts

チーム総合
1 ブラックスポークプロサイクリングアカデミー 45時間56分48秒
7 KINAN Cycling Team +4分58秒

山本大喜

山本大喜のコメント

「昨年のこの大会ではトマに頼りきりだったが、今年はみんなが逃げにチャレンジしたり、中島さんのスプリント、自分の総合と、どれもベストな結果ではなかったがあらゆる挑戦ができたことは大きな収穫。個人的には総合を狙う意識で臨みながら、最終的にトマに託す形になってしまったことが反省点。

シーズンが本格化するにつれてアシストに回ることも出てきて、自分が総合を狙える立場になることは減るかもしれないが、数少ないチャンスを生かせるようになりたい。マークをかいくぐって逃げ切ったり、それをきっかけに総合成績も狙ったり、スマートに戦って勝負できる機会を増やしたい。

今シーズンの目標は、ツール・ド・熊野。(和歌山県)新宮市に住んでいて、みんなが応援してくれている。地元レースで期待に応えられるよう走って、総合優勝したい」

ニュージーランド・サイクルクラシック開幕…キナンが参戦

KINAN Cycling Teamの2020年初戦、ニュージーランド サイクルクラシックが1月15日に開幕。同国の首都ウェリントン近郊のマスタートンを発着とする122kmで争われた第1ステージは、トマ・ルバがチーム最上位の19位。山本大喜も26位と続き、上位陣が見える位置でフィニッシュ。選手たちは終始前線が見える位置でレースを進めながら、この先のステージへとつなげている。

ニュージーランド・サイクルクラシック第1ステージ ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

チームにとって2年連続となるニュージーランドでのシーズンイン。2019年のこの大会では、総合・ステージそれぞれで上位争いに加わり、最終的にトマが個人総合5位で終えた。2020年も前回同様に、長いシーズンを見据えて勢いをつけるべく、日本とは季節が反対の南半球でのスピードレース出場を選択。トマと山本大のほか、山本元喜、椿大志、中島康晴、新城雄大の6人で挑む。

大会は同国唯一のUCI(国際自転車競技連合)公認のステージレースで、2020年で33回目。過去にはロビー・マキュアン(オーストラリア)、ジョージ・ベネット(ニュージーランド、現ユンボ・ヴィズマ所属)といった世界的ライダーもこの大会で優勝を経験。レースカテゴリーはUCIオセアニアツアー2.2ながら、例年スピードと駆け引きに富んだレースとなるのが特徴だ。

今回は、同国北島に位置するマスタートンを拠点に、全5ステージで構成。第1ステージはこの街を発着とする122kmに設定された。スタートからしばらく北向きに進行し、山岳ポイントを含む周回をめぐってからは、行きとは進路を逆走。おおむね行って戻ってのルートだが、フィニッシュ前1kmから続く上りがこのステージのカギとなる。特に最終局面は道幅が狭いこともあり、ポジショニングも重要な要素となってくる。

こうして迎えたレースは、これまでと同様にリアルスタートから激しい出入りの連続。逃げのチャンスと見るや山本元や新城が乗じて、集団に対してリードを奪おうと試みる。なかなか決定打とはならずも、前方をキープして重要な局面に備えていく。

アタックとキャッチの繰り返しは1時間以上続き、44km地点に設けられた山岳ポイントをきっかけに10人以上の逃げが一度は決まることとなる。ここにトマが加わり、さらには山本大が集団からのブリッジに成功。強力な先頭グループが形成されたかに思われたが、メイン集団はこの状況を許さず。結局トマと山本大は引き戻され、その後3人の飛び出しを容認して、レースは落ち着きを見せた。

以降は逃げグループを2分程度の差にとどめつつ、スプリントを狙うチームがメイン集団をコントロール。徐々にその差を縮めながらフィニッシュに向けて各チームとも準備を進めていく。残り4kmで逃げる選手たちを捕まえると、いよいよ最終局面へ。

激しい主導権争いから残り1kmを切ってフィニッシュへと続く上り。最後はポジショニングとパワー勝負。メイン集団がいくつにも割れる中、KINAN勢はトマと山本大がトップから11秒差で、それぞれ19位と26位。その後も大差なく続々とステージを完了させて、続くステージへと駒を進めた。

まずはトラブルなく最初のステージを終えて、次へとつなげた選手たち。レース勘を戻して、さらに戦えるチーム状態へと整えていく。翌15日に行われる第2ステージもマスタートンを発着。今度は南に針路をとって、山岳・中間スプリント両ポイントを通過した後、同地へと向かってレース後半は北上。全体的には平坦基調で、ハイスピードの展開となることが予想される。レース距離は121kmに設定されている。

2020 ニュージーランドサイクルクラシック 第1ステージ(122km)結果
1 アーロン・ゲート(ニュージーランド、ブラックスポークプロサイクリングアカデミー) 2時間49分41秒
2 イェンセン・プロウライト(オーストラリア、チーム ブリッジレーン) +0秒
3 ディラン・ケネット(ニュージーランド、セントジョージコンチネンタル) +1秒
4 コルビン・ストロング(ニュージーランド、ニュージーランドナショナルチーム) +3秒
5 エイデン・トゥーヴェイ(オーストラリア、チーム ブリッジレーン) 
6 ルーク・マッジウェイ(ニュージーランド、ブラックスポークプロサイクリングアカデミー) 
19 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) +11秒
26 山本大喜(KINAN Cycling Team) 
43 山本元喜(KINAN Cycling Team) +19秒
49 椿大志(KINAN Cycling Team) 
53 新城雄大(KINAN Cycling Team)
78 中島康晴(KINAN Cycling Team) +1分1秒

個人総合
1 アーロン・ゲート(ニュージーランド、ブラックスポークプロサイクリングアカデミー) 2時間49分31秒
2 イェンセン・プロウライト(オーストラリア、チーム ブリッジレーン) +4秒
3 ディラン・ケネット(ニュージーランド、セントジョージコンチネンタル) +4秒
4 コルビン・ストロング(ニュージーランド、ニュージーランドナショナルチーム) +13秒
5 エイデン・トゥーヴェイ(オーストラリア、チーム ブリッジレーン) 
6 ルーク・マッジウェイ(ニュージーランド、ブラックスポークプロサイクリングアカデミー) 
19 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) +21秒
26 山本大喜(KINAN Cycling Team) 
44 山本元喜(KINAN Cycling Team) +29秒
50 椿大志(KINAN Cycling Team) 
54 新城雄大(KINAN Cycling Team)
78 中島康晴(KINAN Cycling Team) +1分11秒

ポイント賞
1 ディラン・ケネット(ニュージーランド、セントジョージコンチネンタル) 11pts

山岳賞
1 マーカス・カリー(オーストラリア、チーム サプラサイクリング) 6pts

チーム総合
1 ブラックスポークプロサイクリングアカデミー 8時間29分11秒
9 KINAN Cycling Team +33秒

山本大喜

山本大喜のコメント
「逃げはなかなか決まらないだろうと思っていたので、個人的には落ち着いてレースに入ることを心掛けた。上りでトマたちが飛び出していったのを見て、自分もブリッジを試みて合流することができた。そのまま逃げられる感触はあったが、強いメンバーがそろっていたこともあって思ったように協調することができなかった。ただ、あの動きを見逃していたら逃げ切られていた可能性もあったので、しっかり対応できたことはよかったと思う。

まずは気持ちよく1ステージを終えられた。上りも軽くて、走りの感覚はとても良い。総合成績を意識しているので、明日以降も無駄な動きをなくして、勝負どころでしっかり対応できるようにしたい」

神々が宿る那智山の頂へ…熊野古道ヒルクライム開催

紀伊半島南部の和歌山県那智勝浦町で11月3日、晩秋恒例の「熊野古道ヒルクライム」が開催された。約300人のサイクリストが、神々が宿るとされる那智山を激走。今回もゲストライダーとしてKINAN Cycling Teamから5選手が参加。走りはもちろん、トークショーや抽選会、表彰式といったステージイベントにも臨み、イベントを盛り上げた。

熊野路を駆けるサイクリングイベント ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

300人が激坂含む2つのコースへとアタック

熊野古道ヒルクライムはユネスコの世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産に含まれる熊野路を駆けるサイクリングイベント。各種スポーツイベントを企画・運営する「NPO法人スポーツプロデュース熊野」が主催し、今回で14回目を迎えた。回を重ねるごとに人気の仲間利を見せ、2019年は北は北海道、南は九州地方からの参加があり、地元和歌山県や近隣府県にとどまらず各地から健脚自慢が集った。

約300人のサイクリストは、主会場でもある同町の海水浴場「ブルービーチ那智」を出発し、5.4km先の大門坂駐車場までパレード走行。いったん息を整えたら、いよいよリアルスタート。そこからは、神仏習合による数々の伝承が残される那智の山道を駆けあがっていく。スキルや脚力、好みによってコース選択ができるよう設定されており、Aコースは標高931mの大雲取の山頂を目指す30.9km、Bコースは妙法山阿弥陀寺へと向かう14.6km。途中、勾配が20%に達しようかという激坂区間が複数待ち受けるほか、長くテクニカルなダウンヒルも控え、サイクリストたちにとっては力が試されるポイントに。参加者たちは己の限界に挑戦すべく、勇んでコースへと繰り出した。

キナン勢も参戦 ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

山本大喜が“那智山の神”の座を防衛

ゲストとして招かれたKINAN Cycling Teamは、山本元喜、椿大志、大久保陣、山本大喜の4選手が大雲取へ、新城雄大と加藤康則ゼネラルマネージャーが妙法山阿弥陀寺を目指すコースへと出発。また、“山の神”として数多くのヒルクライムを制する森本誠(GOKISO)、テレビ番組出演でアイドル級の人気を誇る筧五郎(56サイクル)も同様にゲスト参加し、大雲取へと挑んだ。

距離が長く、難易度も高い大雲取の頂へ、ゲストライダーによるトップ争いが展開された。序盤は一般参加の実力者も加わっての先頭パックが形成されたが、山本元によるハイスピードのペースメイクによって徐々に人数が絞り込まれていく。やがて先頭に残ったのは山本大と森本。最速の登坂勝負は2018年の再現となった。

山本大喜が“那智山の神”の座を防衛 ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

熾烈な争いは、普段のトレーニングコースとしても大雲取を走る山本大が後半に入って、地の利を生かして森本を突き放すことに成功。下りを得意とする森本は、その後のダウンヒル区間で山本大を猛追したが、最終盤の激坂区間で再び山本大がアタック。

自身が2018年マークした56分55秒のコースレコードには及ばなかったものの、山本大が実質2連覇となる大雲取頂上制覇。スポーツプロデュース熊野・角口賀敏理事長の激を背に受け、ガッツポーズでフィニッシュラインを通過。少し置いて森本も頂上へとやってきた。

その後は、続々とサイクリストが頂上へ到達。フィニッシュが近づくと歯を食いしばって懸命にペダルを踏む姿が光った。そして頂上へと到達、晴れて“ヒルクライマー”となった瞬間だ。

レベルアップを誓って来年のスタートラインを目指す参加者の姿も

お昼からはブルービーチ那智へと戻って、特産品の振る舞いやステージイベントが展開。その目玉として、ゲストライダーたちによるトークショーが催された。那智山登坂の完走や、今後の目標などが主なテーマとなったトークだが、那智山2連覇を果たした山本大は、2018年「自分が“山の神”」と宣言し会場を驚かせたが、改めてその座を守り続けていることを強調し胸を張った。

300人のサイクリストが神々が宿る那智山の頂へ ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

一方、元祖“山の神”森本は2018年の「山の民」宣言で笑いを呼んだが、「もはや完全に“山の民”ですね…」とトーンダウン。3年連続での2位フィニッシュをユーモラスに表現してみせた。

そのほかステージでは、選手たちがプレゼンターを務めた表彰式や抽選会も行われ、大きな賑わいの中でイベントは閉幕。参加者からは、「KINANメンバーのペースにトライしたがあっという間に遅れてしまった」「何度でもチャレンジしたいコース。また1年鍛えて戻ってきたい」などの感想が聞かれ、1日を通して満足できた様子。

また、イベントの成功にあたっては、主催のスポーツプロデュース熊野や地元関係者による事前の準備によるところが大きかったことも押さえておきたい。10月に起きた台風19号発生時には、コースとなる道路がふさがるほどの枝木の落下に見舞われ、その清掃作業に追われたほか、今回の開催直前までアスファルト上に生えた苔を除去するなど、多くの人たちの尽力あって迎えたヒルクライム開催であった。

スポーツプロデュース熊野主催イベントは次回、11月24日の「紀南シーサイドヴェロフェスタ」が行われる。今回同様にKINAN Cycling Teamの選手たちもゲスト参加を予定しており、ライドとグルメが融合した楽しみ満載の1日を盛り上げることになっている。

●熊野古道ヒルクライムのホームページ

キナンの山本大喜は骨折で全日本選手権を欠場

KINAN Cycling Teamの山本大喜(まさき)は左大腿骨大転子骨折により、エントリーしていた全日本選手権タイムトライアル(6月27日)とロードレース(6月30日)を欠場する。チームが6月14日に明らかにした。

キナンの山本大喜

山本は6月2日に行われたツール・ド・熊野の第3ステージで、10.5km周回4周目の下りコーナーでオーバースピードで進入し、スリップして落車。その後、レースを再開しメイン集団への復帰を目指したが、左脚付け根を強打した影響によりレース途中でリタイアしていた。

レース翌日の初診では骨の異常は発見されなかったが、落車から10日以上経っても痛みが引かないため、再診したところ「左大腿骨大転子骨折」であることが判明した。幸い、骨のズレは認められなかったため、今後は保存治療を行い、1カ月をメドにリハビリとトレーニングを開始。9月頃のレース復帰を目指していく見通しとなっている。

山本はこの負傷により、エントリーしていた全日本選手権タイムトライアルとロードレース(6月30日)を欠場する。

山本大喜のコメント
「今回の怪我でたくさんの方に心配や、ご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありません。骨は折れてしまいましたが、心は折れていないので、安心してください!
 少しの間、レースから離れることになりますが、必ず一回り成長した山本大喜になって帰ってくるので、楽しみに待っていてください!
引き続き、KINAN Cycling Teamの応援をよろしくお願いします!」

●キナンのホームページ