チームユーラシアIRCタイヤサイクリングアカデミーが7月21日から8月22日の夏休み期間中に中高生を対象にしてベルギー・コルトレイク市を拠点に行なわれた。
チームユーラシアIRCタイヤサイクリングアカデミー
サイクリングアカデミーは2019年で5回目。レースに参加して結果を残すことは重要な課題ではあるが、同時に「戦略」「テクニック」「安全」など自転車に必要なスキルや知識を学びながら、現地で競技生活を送っているチームユーラシアの選手たちと一緒に生活することで集団生活の基本的な経験も積んでいく。
レースの結果 全日程33日間で参加したレースは15レースに参加 10位入賞の成績は以下の通り 7月29日 Izegem 6位 津田悠義 8月10日 Denderwindeke 3位 鳥海祐甫 8月13日 BRASSCHAAT 6位 鳥海祐甫 8月14日 Lessin 3位 川崎三織 8月14日 Lessin 6位 西本健三郎 8月14日 Lessin 8位 留目夕日 8月18日 GP Philip Gilbert (UCI1.1)9位 川崎三織 8月21日 Ruiselede 7位 鳥海祐甫全レースのレポート
落車事故への取り組み
落車を防ぐための講座にチームユーラシア所属の選手たちも参加
サイクリングアカデミー期間中はさまざまな取り組みを行っているが、特に力を入れているのは「落車」について。トレーニング中はもちろん、レース中であっても落車は「ゆるされるものではない」ととらえ、「落車事故」の低減に努めている。トレーニング中の落車はここ4年間で1回と成果をあげている。
レース中の落車については2017年から力を入れて取り組む。2週間程度の滞在期間中では落車の確率を下げることに限界がある、が2018年以降では約半分にまで減りその成果が表れてきているという。
年によって参加者数、参加レース数、参加期間が異なるので、それぞれのレース参加者数を足したものが「ユニット」。例えばRR年のXXのレースでエントリーが4名、YYのレースでエントリーが6名の場合はユニットが10となる。
落車数をユニットで割ったものが「1人の選手が1レースで落車する確立」となる。2016、2017年では12~13%発生していた落車が6~7%台に減っている。また、落車を防ぐための指導をチームうユーラシア所属の選手たちも参加して行うことで、ユーラシアの選手たちの落車の確率も低減(2019年のユーラシアの選手たちが参加したレース数は228で落車している確率は平均して2.19%)。
8月10日のDenderwindekeで3位に入賞した鳥海祐甫。欧州レース初参戦ながらラスト1kmでメイン集団から抜け出し3位に
高木秀彰サポートプログラム
チームユーラシアIRCタイヤサイクリングアカデミーに高木秀彰サポートプログラムよりサポートを受けた川崎三織が欧州遠征が実現させることができた。8月6日ベルギー入り。17日間で6レースに参戦する予定だったが、インターハイ後に体調を崩し、2レースをキャンセル。初戦は8月14日のLessinとなった。
8月14日 Lessin U19 8.9kmX10周 89km Kawasaki Miori 3位 Nishimoto Kensaburo 6位 Todome Yuhi 8位
3周目に2名が抜け出し、そこに反応することが出来ずに逃してしまい、最後まで逃げきられてしまった。3位以降は約15人の集団のまま最終周回となり、ラスト1kmで集団から抜け出した川崎が逃げ切り3位に入賞した。
8月18日 ラ フィリップ ジルベール UCI1.1 ジュニア 126km 出走127名 9位 川崎三織 DNF 五十嵐洸太 DNF 留目夕陽 DNF 西本健三郎 DNF 堀川敬太郎 DNF 上野颯斗
このレースはフィリップ・ジルベールのファンクラブが主催し、リエージュ〜バストーニュリエージュで有名な「ラ ルドゥ」の丘(1500m 平均勾配9.4%、最大勾配13.7%)を2回通過する。コースは山岳賞のかかった登り6ヵ所に加え、フィニッシュは6回目の山岳ポイント「ラルドゥ」の中腹に設定され登りゴールとなる。126kmのコースで獲得標高は2050m。登りと下りしか無いコースレイアウト。特にレース後半となる80km過ぎから厳しい登りが待ち構える。
参加選手は川崎三織、五十嵐洸太、留目夕陽、西本健三郎、堀川敬太郎、上野颯斗の6名。チームとしての目標は序盤の逃げに加わることを第一とし、逃げに加われなかった場合は各登りでの中千切れに注意しつつ、80km以降の後半に備えて温存し完走することとした。
川崎三織を含む15名は120km地点のラルドゥの登りの麓で先行する選手たちを吸収
スタートして40kmで集団落車が発生。上野と留目が落車。留目はすぐに立ち上がり集団を追い、集団に復帰したが、上野は追いつくことができずにリタイヤとなった。メイン集団では常にアタックが掛かっている状態で、20秒以下の小さなギャップで先行するグループができても集団が吸収したいた。レースは80km過ぎに9名が最大で90秒先行し、ここから本当のレースが始まった。この時点でメイン集団は50名前後に絞られ、残っていたのは川崎のみ。
104km地点の登りで後続集団のペースが上がり約15名が飛び出し、川崎がここに加わった。川崎を含む15名は120km地点の「ラルドゥ」の登りの麓で先行する選手たちを吸収し、レースを振り出しに戻した。ラルドゥの登りを先頭で通過した川崎だったが残り5kmの下り区間で8名の先行を許し、逃げ切られてしまった。川崎は後続の集団の先頭でフィニッシュし9位に入賞した。
登りを得意とする川崎だが、得意な登りでその実力をいかんなく発揮することができた。ただし夢中で走り続け自分でレース展開を組み立てながら進行させることはできなかった。今回は展開にも助けられた上での9位入賞だったが、今後も実力を発揮し国際大会でよい成績を残していくには「展開力」も求められてくる。残る高校生活および来るべきU23としての競技生活の中でより積極的にレースを展開してほしい。
このレースには世界選手権ジュニアロードレースで7位に入賞した英国代表のAlfred George や同4位、個人TTで2位のオランダ代表のEnzo Leijnse 以外にも数名が各国の代表として走っていて、とてもコースのみならずとてもレベルの高いレースだった。2020年もぜひチャレンジしたい。
川崎三織は後続の集団の先頭でフィニッシュし9位
1 BROUWERS Emile AVI les 126 km en 3h09’04” (moy. 39,986 km/h) 2 GELDERS Gil OOP 00:02 3 REINDERINK Pepijn BAL 00:02 4 ANDREASEN Jeppe VKO 00:02 5 STOCKWELL Oliver GBR 00:05 6 ASKEY Lewis GBR 00:08 7 PEATFIELD Isaac FEN 00:08 8 VAN OOSTEN Koert BAL 00:08 9 KAWASAKI Miori EUR 00:17 10 LEIJNSE Enzo WPG 00:17
今回のこの大会は故高木秀彰氏の「若い選手を応援したい」という意思と、ご遺族、関係者の支援により実現させることができた。ナショナルチームの海外遠征が減っていく中、若い選手が欧州の国際レースに参加することができた点は、今回の結果に関わらず参加した選手にとって大きな「自信」「課題」「希望」を残した。いまのこの気持ちを忘れずに突き進んでほしい。
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