NPO自転車活用推進研究会が自転車専門誌のバイシクルクラブと共同で、新型コロナウイルスの感染拡大対策の一つとして増えつつある自転車利用の現在と、コロナ収束後の自転車利用を予測し、どのような対策が必要かを模索するためのアンケートを行った。
2020年5月15日12時から5月19日24時までの間に1652件の回答があった。
今回のアンケートは自転車愛好家を中心としたデータで、さらに詳しい分析をするにはまだ時間が必要で、全貌を把握するにはもう少し時間がかかるという。ただ、単純に以下2つの質問から、コロナ蔓延前と経済活動再開後での交通手段の比較を集計すると、明らかな自転車へ通勤・通学へのシフトがみられた。
・コロナウイルス蔓延前の通勤、通学の主な交通手段はなんですか?
自転車利用率 全国37.6% 東京37.6%
・今後、経済活動が再開した場合、通勤や通学の主な交通手段はどうされますか?
自転車利用率 全国50.9% 東京54.3%
この結果から、公共交通機関から3密を避けられる自転車利用へシフトする人口が存在するといえる。ただ、今回のアンケート結果は30~40歳代を中心としていて、学生など10~20歳代の動向も追加で調べる必要があるという。
ここで東京を取り上げたのは、各都市を比較して自転車利用率の上昇が高いからだとも。普段から自転車利用が比較的多い大阪や愛知などに比べ、いままで東京は道路事情、駐輪場や会社の制度など通勤に自転車を利用する条件がそろっていないために、自転車通勤しにくいかった傾向がある。ただ、この時代の変化で自転車の利用が注目され、急激な変化が起きようとしている。
あくまでも愛好家のデータだが、増加する可能性は高い。
安全で快適な通行空間の整備は喫緊の課題だ
(自転車活用推進研究会小林成基)
特に東京のデータに顕著ですが、自粛解禁のタイミングでコロナ前に比べ電車通勤が約17%減り、自転車が同じくらい増えるという結果は恐怖を感じる。自転車の健全な活用を推進する立場としてはたいへんにうれしいことだが、この急激な変化で「健全」を維持することは至難とも思えるからだ。
東京の1日あたりの電車利用者はJR、地下鉄だけみても、京浜東北線約1500万人、山手線約1580万人、中央総武線約1950万人、東京メトロ9路線で約742万人、都営4路線で約282万人、私鉄を含めこれらと重複が多いのだが、人口の4倍にも当たる延べ約6000万人もの人が電車を利用していることになる。
今回のアンケートで、男性の40、50代の回答者が多いので、これらの路線の乗客で該当する割合を計算すると、約14%に当たる。実に約840万人。1日に20時間稼働しているから、単純計算では1時間に約42万人、その17%は約7万人である。そんなにも多くの人が新たに自転車通勤を始めたとしたら……。このデータは自転車愛好家のアンケートをベースにしているという前提なので、おおげさかもしれないが、想像を絶する明日がやってくるかも知れない。
海外の都市で、急増する自転車通行に備えて車線を変更したり、専用通行帯を整備し始めているのは、需要爆発が見えてきているからだ。パンデミック(世界的な感染拡大)は街の自転車にも伝播しつつある。シンプルでわかりやすいルールの徹底、そして安全で快適な通行空間の整備は喫緊の課題だと言えよう。
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