欧州のような絶景、磐梯吾妻スカイラインはこの夏走る

標高1600m超。5カ月に及ぶ冬季閉鎖が解除されたばかりの福島県・磐梯吾妻スカイラインを走った。欧州のような絶景のなかを走り抜ける山岳ルートで、これからの季節はおすすめだ。つづら折りが少なく、上りも下りもそれほどハードではない。だから素晴らしい大自然を五感で楽しむことに集中できる。日本にもこんなところがあったのか!

独特の景観が広がる浄土平。欧州でたまに見かける光景だ

夏場に最適なルートは欧州のような絶景が広がる

山岳観光道路「磐梯吾妻スカイライン」を縦走し、吾妻・安達太良連峰の大自然のなかに飛び込んでいく。夏でも涼しいエリアで、標高約1600mの浄土平付近まで登りきると荒々しい山肌が広がり、欧州の山岳ルートに匹敵する絶景を堪能できる。温泉やフルーツなどの魅力に触れながらゴールを目指すという、地元サイクリストおすすめのコースだ。

11月中旬から翌年4月中旬までの冬季閉鎖が解除され、これからまさに旬。実走した5月15日は週末ということもあって、地元の健脚サイクリストがたくさん走っていた。壮大な景観のわりには上り坂の勾配は、つづら折りが連続する群馬県などの山岳に比べれば緩やかだ。標高1200m付近で稜線に到達し、そこからは急なアップダウンはなくなる。晴れていれば眼下に福島盆地がずっと展望できる。

スカイラインの東側にはずっと福島市街が見える

クライマックスは浄土平。火山活動でできた岩肌がむき出しになった光景は日本でもそんなにあるものではない。「火山性ガスに注意」「車の窓は閉めて」という看板が立ち並ぶのでビックリするが、密度の濃いガスはくぼ地に滞留するので、看板のあるところで立ち止まらなければまず大丈夫という。ホームページにガスによる注意喚起情報が掲載されているので、訪れるときは事前にチェックしておく。

5月の道路脇には残雪が残るほど標高が高い。最高地点は浄土平から南に2kmほど走ったところにある1622m。しばらくはスカイラインを気持ちよく飛ばし、緩やかに高度を下げていく。ブレーキレバーを握る手が痛くなってしまうほどの急坂ではなく、下りが苦手な人も無理なく走れる。路面状況もまずまずなので安心だ。

今回は距離70kmの周回コースとして実走した。どれだけ上ったかを表す獲得標高は1532m。これまでもそのくらいの標高差を稼ぐ峠を上ってきたが、今回は絶景に見とれてばかりで苦しくなかった。あるいはボクが強くなったか、どっちかだ。

磐梯吾妻スカイラインは稜線を走る緩やかなルートが特徴

輪行なら福島駅、クルマ利用なら道の駅が発着点

磐梯吾妻スカイラインは高湯温泉と土湯峠を結ぶ全長約29㌔。クルマに自転車を積んでいくなら「道の駅つちゆ」や「あづま総合運動公園」が発着地として便利。電車を使った輪行なら福島駅を発着として一周すると80km。ウインドブレーカーなどの防寒具必携。山岳部に入ると浄土平レストハウス以外に売店や自販機はなく、太陽光をさえぎる森林も少ないので補給食と飲料を。思わぬトラブルを想定して単独走よりも2人以上が望ましい。また火山活動や気象情報などの事前チェックを怠らず、悪天候のときは断念するのが正解。

浄土平から2kmほど南にいったところが最高地点

アプリイベント「サイクルボールふくいち」に注目したい

アプリ起動で完走を証明する「サイクルボール」でも日本7大一周ルートのひとつ、「ふくいち」として採用されている。発着地は飯坂温泉観光協会。6月から10月まで、好きなときに挑戦していい。参加無料ながら、アプリで完走認定を受けるとご当地土産などが当たる。120kmと難易度を半減させた60kmの2ルートが用意されている。
●サイクルボールふくいちのホームページ

自転車系YouTuberの今田イマオさん(左から4人目)、丸井なみこさん(同5人目)らも「ふくいち」を走破している

サイクリストならいつかはどこかを一周してみたい。日本一周は無理でも、霞ヶ浦や淡路島ならなんとかなりそうだ。日本の魅力あふれる一周ルートを厳選し、アプリ起動で完走を証明するイベントが注目されている。期間中ならいつでもチャレンジ可。しかも参加無料ながら、地元提供の特産物が当たる。

話題の自転車イベントは「サイクルボール」という名称だ。コロナ禍の新たなイベント様式として企画された。設定された期間内なら、参加者それぞれが走る日を決めていい。コロナ禍の「密」を回避できるやり方だ。受け付けもないので、完走を認定するのはアプリ起動で取得するデータだ。その町の観光協会が運営する施設などが発着となり、画面のスタートボタンを押して走り始める。コース上の道の駅などがチェックポイントで、アプリでこれをチェックしていく。完走したら走行記録が認定されるだけでなく、協賛社の賞品や地元特産物が当たる抽選にも応募できる。

浄土平レストハウスは地元サイクリストでにぎやかだった

これまでの参加型スポーツイベントは参加料ありきのものだった。今回なぜ無料化できたかといえば、イベント催行する地域が新たなビジネスモデルを構築したからだ。参加料を徴収するリアル大会は1〜2日で終わってしまうが、期間分散型なら1〜2カ月、定着すれば通年でサイクリストがその土地を訪れてくれる。都合がつく日に走ればいいから参加者数も増える見込みがある。

リアル大会を運営するよりコストは抑えられ、事前準備の人的負荷も大幅に下がる。だから費用対効果は確実に高まる。コロナ禍による観光産業の大打撃を逆手に取った、まさに起死回生の一手だった。

無料でダウンロードできるアプリを起動するとルート案内から完走認定までしてもらえる

2シーズン目となる2021年のサイクルボールは、日本各地にちらばる人気一周コースが設定され、6月1日に開幕した。

磐梯吾妻スカイラインを縦走するのが「サイクルボールふくいち」のルートだ。設定されたコースの発着点は飯坂温泉観光協会の案内所。自転車で3分のところに無料駐車場も用意されている。素朴な共同浴場が9つあるのでゴール後に汗を流すこともできる。ただし走り慣れた人でないと完走は難しく、走行距離と獲得標高(上りの標高差)が半分のショートコースも新登場した。

首都圏からのアクセスに時間がかかるだけに、交通量は少なく難易度をのぞけば走りやすい。最大の見どころは浄土平。ウインドブレーカーなどの防寒具は必携だ。スマホのバッテリーは満充電で。予備電池があると安心。そのコースレポートは次週で。

全国7つの一周ルート

◆かすいち=茨城県かすみがうら市発着・霞ヶ浦一周。154.7km 難易度1
◆富士いち=静岡県御殿場市発着・富士山一周。137.4km 難易度4
◆アワイチ=兵庫県・淡路島一周。149.8km 難易度4
 *コロナ禍のため夏季に順延
◆おしいち=宮城県石巻市発着・牡鹿半島一周。95.8km 難易度3
◆サドイチ=新潟県・佐渡島半周。132.9km 難易度3
◆ふくいち=福島県福島市、二本松市・磐梯吾妻スカイライン。110.1km 難易度4
◆伊豆いち=静岡県・伊豆半島一周。147.7km 難易度5
●サイクルボールのホームページ

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