国内サイクルロードレースのプロチームによるリーグ戦「三菱地所JCLプロロードレースツアー」は、発足初年度の最終戦として那須塩原クリテリウムが11月7日に行われ、KINAN Cycling Teamはレース後半に主導権を握ると、中島康晴を3位に送り込み表彰台を確保。前日の大田原ロードレースで年間総合トップを確定させていた山本大喜は7位とまとめて、リーダージャージにふさわしい走りを披露した。
2021年シーズンから始まったシリーズのフィナーレを飾るのは、栃木県那須塩原市・JR那須塩原駅前のメインストリート。過去にも国内シリーズ戦の開催実績のあるコースは、1周1.8kmで、ヘアピンコーナーが3カ所に加え、鋭角コーナーも多数待ち受けるテクニカルなレイアウト。実質オールフラットで、ハイスピードコースの印象。過去には逃げ切りとなったケースもあり、レース内での駆け引きも見ものとされた。
ここまで快調に戦い続けてきたKINAN Cycling Teamは、前日のメンバーからトマ・ルバと中島をチェンジ。スプリントも視野に入れたオーダーで挑むこととなった。そのほかは、シリーズ個人リーダーの山本大、山岳リーダーの山本元喜に加え、花田聖誠、新城雄大、畑中勇介の6人。
レース距離が短いこともあり、リアルスタート直後から攻撃的なレース展開に。次々と発生するアタックはいずれも決まらず、KINAN勢もときおり前線に顔を見せながら、動き出しのチャンスを図った。
そのまま中盤まで進行したが、後半に入って動いたのがKINANメンバーだった。残り10周回を迎えたのを合図に、6選手がひとまとまりとなって集団牽引を開始。急激なペースコントロールに、集団後方では脱落する選手が続出。残り5周を切ろうかという頃には集団は20人ほどとなり、そのままスプリント勝負へと移っていくことが濃厚に。KINAN勢は役目を終えた花田が後方へと下がったが、5選手を残して数的優位な状況を作った。
ハイスピードを維持したまま迎えた最終周回。ここまでくるとさすがにスプリント狙いのチームが主導権争いに加わり、集団内は混沌となる。一気に加速したスパークルおおいたレーシングチームのトレインを中島がチェックした状態で最終のストレートへと姿を現した。
各チームのエーススプリンターが並んだ最後の勝負は、スパークルおおいたレーシングチームの沢田桂太郎に軍配。懸命に食らいついた中島は3番目にフィニッシュラインを通過し、表彰台の一角を確保。今節はこのレースに賭けて臨んだことが奏功した。
優勝争いの後ろでは、山本大が7位でレースを完了。すでに前日に年間総合トップを確定させていたが、この日もトレイン牽引やリードアウトで貢献。上位フィニッシュも果たして、初代JCL王者らしい走りを見せた。
また、同じくこの日は集団のペーシングで流れを作った山本元は山岳賞を獲得。KINAN Cycling Teamは個人タイトル2つを手に入れ、チーム力を証明した。
各地を転戦し熱戦を展開してきたシリーズは、全10戦を終えて初年度のレースを終了。一戦ごとに洗練されていくオーガナイズやレベルの高まりを感じさせた優勝争いなどは、国内レースシーンの進化を印象付けるものとなった。そして何より、最終節でついに有観客レースが戻ることとなり、会場全体が活気に満ちたものに。シーズンを締めくくるとともに、来季への期待を膨らませる好況のもと2021年を終えた。
那須塩原クリテリウム(45km)結果
1 沢田桂太郎(スパークルおおいたレーシングチーム) 1時間4分35秒
2 小野寺玲(宇都宮ブリッツェン) +0秒
3 中島康晴(KINAN Cycling Team) +1秒
4 石原悠希(チーム右京 相模原)
5 本多晴飛(VC福岡)
6 孫崎大樹(スパークルおおいたレーシングチーム) +7秒
7 山本大喜(KINAN Cycling Team) +2秒
10 新城雄大(KINAN Cycling Team) +6秒
16 畑中勇介(KINAN Cycling Team) +1分27秒
17 山本元喜(KINAN Cycling Team)
DNF 花田聖誠(KINAN Cycling Team)
JCL各賞リーダージャージ表彰(KINAN Cycling Team分)
●イエロージャージ(個人ランキングトップ)
山本大喜(KINAN Cycling Team)
●レッドジャージ (山岳賞)
山本元喜(KINAN Cycling Team)
山本大喜のコメント
「(シーズンを通しての活躍について)今年は今までにないくらい練習に取り組んだことと、多くの方々の支えのおかげで結果につながったシーズンになった。特に、ツアー・オブ・ジャパンの富士山ステージ(第1ステージ)で3位に入ったことが自信につながった。
(初代JCL年間王者に輝いて)9月の秋吉台カルストロードレースで勝って個人ランキング首位に立ったことで、少しずつリーダージャージを意識しながら走るようになった。リーグ全体がファンを増やすことやロードレースの普及を目指している中で、個人的には強い選手が現れることが一番効果のあることだと考えていたので、だったら自分が一番になって強さを印象付けようと思った。その点では狙い通りになった。
成長を感じられた1年だったが、それでも力の面でトマや増田成幸選手(宇都宮ブリッツェン)と比べるとまだまだ。国内レースでトップを走る選手たちにはまだまだ追いつけていないと思っているので、来年も今年のような取り組み方で力を伸ばしていきたい。ゆくゆくはみんなから強いと認めてもらえるようなベテラン選手になりたいので、その意味では今が一番重要な時期だと感じている」
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