北陸路・福井を自転車で旅する2回シリーズ。前回は永平寺、あわら温泉のある「嶺北」を走ったが、今回は気比(けひ)の松原や三方五湖(みかたごこ)のある「嶺南」へ。福井県越前市出身のプロ自転車選手、キナンサイクリングの中島康晴キャプテンに、自転車乗りとして行くべきところや食するべきものを教えてもらった。
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県南部は美しいビーチも点在する
日本海に没する夕日が随所で見られる福井県。嶺北の海岸線は、東尋坊に代表されるような柱状節理の荒々しい岩肌が見ものだが、漁火街道と呼ばれる海岸沿いをどんどん南下していくと、赤茶色の岩肌となり、ついには港町敦賀へ。日本海沿岸としては冬でも比較的おだやかなようで、美しい砂浜が点在する。「福井県は北と南で文化や景観がまったく異なるんです」と中島選手が言っていたとおりだ。
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そんな敦賀をベースにして嶺南サイクリングを開始。
「砂浜と松林はとてもきれい。デートの定番気比の松原」(中島選手)という観光スポットからロードバイクで敦賀半島の東側を北上していく。半島の真ん中を走る稜線は、交通量が少なく、照明の明るさもあるトンネルを利用して半島の西側に出る。「夏場はとてもキレイな水晶浜」があるのだ。日本でも有数の美しい砂浜ということで、この日は曇天にもかかわらず若い女子グループがインスタ撮影に夢中だ。公共交通機関を使ってのアクセスは不便で、こういったスポットを訪れるにはサイクリングは最強だ。
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三方五湖を自転車でまわる
ここからさらに西に進むとサイクリングコースとして定番の三方五湖を訪れることができる。5つの湖をすべて回ると距離30km、北部にある小さな湖2つをパスすれば18kmとなる。自分の力量に応じた距離設定が可能で、レンタルサイクル施設やトイレのある休憩ポイントも多い。
中島選手のイチ押しは湖を結ぶ浦見川。
「グーグルマップにも載っていない道を自転車で進むんです。先人の歴史を感じることができます」
三方五湖産の天然うなぎが提供される「淡水」は「いつも混んでいて、焼く匂いで立ち寄りたくなる」とのこと。今回は当然おいしくいただく。
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このエリアは京都や大阪からのアクセスがよく、関西圏のサイクリストにはよく知られた場所だ。一方で首都圏からは遠くなる。今回の2泊3日の福井サイクリングでは、往路は北陸新幹線で石川県の金沢駅経由、特急を乗り継いで現地入りした。帰路は東海道新幹線の停車する滋賀県の米原駅まで移動して家路に向かった。その移動さえ楽しいのが自転車旅だ。
「もうすぐ北陸新幹線が延伸します」と中島選手。
将来的に同新幹線は金沢駅から福井を経由して敦賀まで延びる計画だという。「首都圏から乗り換えなしで訪れることができるようになる福井。みなさんぜひ遊びに来てください!」
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サイクリング途中に寄ってはいけないのが博物館だが、ここは必見
三方五湖のひとつ、三方湖のほとりに福井県年縞(ねんこう)博物館がある。となりにある水月湖は、1年に1層形成される湖底堆積物のシマ模様が奇跡的に7万年も形成されているという世界で唯一の湖だ。ナウマン象や古代人がいた時代、世界各地の火山活動などが正確に特定できる「年代のものさし」となるという。
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博物館には45mにおよぶ堆積物がステンドグラスのように展示されているが、入館してすぐに案内されるシアターで4分ほどの映像を見るとその価値がわかる。
またステンドグラスの要所に貼られているQRコードを読み取ると、その年代に起きたことを解明する解説が読めるので、スマホを駆使することがおすすめ。
「地球は地軸が揺れ動く周期があって、温暖化のサイクルが定期的に訪れる」ということが堆積層からも判明しているという。現在は温暖化にブレる周期となっているようで、二酸化炭素の排出量増だけがその原因ではないという解説も。
一般500円、小中高生200円。JAF会員カードなどで100円引き。
●福井県年縞博物館のホームページ
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【福井県サイクリング三部作】
①福井県の走り方
②福井サイクリング嶺北編
③福井サイクリング嶺南編(このページ)
●福井県によるサイクリング情報ページ
●中島康晴のtwitter
●キナンサイクリングの公式ホームページ
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